2018年12月2日日曜日

ポルノ全アルバムレビュー4th「WORLDILLIA」








亀の歩みでお馴染みのこのシリーズ。ようやく4thアルバムに取り掛かる。

せっかく全曲配信も始まったので、ポルノを聴く人が増えた今、なるべく書いていかねば。


ポルノグラフィティ全アルバムレビュー
4th「WORLDILLIA」






アルバムについて









「WORLDILLIA」は2003年2月26日に発売された。

オリジナルアルバムとしては3人でのポルノグラフィティの最後の作品である。

タイトルの読み方は「ワールディリア」。
これは「World(ワールド)」「Shangri-La (シャングリラ)」「Arcadia(アルカディア)」などの言葉を組み合わせた新藤晴一による造語である。

ちなみに「シャングリラ」と聴いて電気グルーヴを思い浮かべるか、チャットモンチーを思い浮かべるかで昭和と平成が区別されるという乱暴な理論を提唱している。

そんなタイトルであるが、これを書いている2018年現在で考えても、最も内向的な作品といえる。



1. CLUB UNDERWORLD

作詞:新藤晴一 / 作曲:Tama


ギラギラとした明かりが浮かぶような曲。まさに六本木の夜のような世界。

地上では隠してる姿をさらけ出せる場所こそCLUB UNDERWORLDである。それは「夜がすべてを隠してくれるから」。

それは日常との解離であり、そうすると、ライヴという空間もまたそんな場所に見える。

そこはきっと、夜を少し長くしたり、たゆたえるほどのテンポに時計の針がゆるめられた場所なのだろう。自分を開放した夜の先に待つdaily lifeを忘れる星球のようなひととき。

微笑むNORMA JEAN(ノーマ・ジーン)はそのままマリリン・モンローを指すのだろうか(ノーマ・ジーンはマリリン・モンローの本名)。因みに新藤晴一の愛するBARBEE BOYSには"ノーマジーン"という曲がある。




2. 惑星キミ

作詞・作曲:岡野昭仁


不思議な浮遊感のある曲。
ふわふわと宙を漂うような感覚は、ちょっとスーパーカーっぽいなと思ったりする。

タイトルの「惑星キミ」から秀逸だと思う。真面目に考えると結構恥ずかしいことを言っているのに、全然そんな感覚にならないところが岡野昭仁の凄さだと思う。むしろ妙な説得力があるほどだ。



3. 元素L

作詞:新藤晴一 / 作曲:ak.homma


名曲。

というだけで終わらせてしまいたいくらい名曲である。
シングルにして欲しかったくらい好きだけど、そうでないからこそファンにも大切にされているのではないかと思える曲。

タイトルは元素と書いてエレメントと読み、Lは聴き手の解釈に委ねられる。「Love」という意見が多いかもしれない。ちなみに僕は「Live」と想像した。


愛の言葉はねぇ 優しいくせに
舌先離れるまで なんて苦い
好きな人に好きと言うだけで
なぜこんなにも大変なのだろう


というフレーズは、どれだけオッサンになろうとキュンとなる。



4. Mugen

作詞:新藤晴一 / 作曲:ak.homma


アルバムに収録されたシングルは2曲なので、あらためてシングルとしての存在感と強さを感じる。

シングル級の曲たちが続いてここまでくるが「これがシングルだ」という貫禄すらある。

それほど、あらためて聴く"Mugen"は、強い。

ポルノ全シングルレビュー 9th「Mugen」


5. デッサン #3

作詞・作曲:新藤晴一


フィクションではなく現実にあった出来事を歌詞にする「デッサン」シリーズ。これが3作目であり、これ以降は作成されていない。
そういえば昔ニューシングルのタイトルは「デッサン#4 悠久」なんていうデマが一部のファンの間で出回ったが、覚えてる方はいるだろうか。

今回はスタッフの失恋がテーマだという。


日々のささいな事にも
いくつもの分かれ道があって
大樹のような迷路で
折れた枝に辿り着いた


という歌詞は僕の大好きな選択と結果、未来というテーマであり、この頃から、それが描かれていると思うと、ニヤリとしてしまう。選択と結果、未来については"スロウ・ザ・コイン"の記事などで触れたので、これを読んでから読んでいただきたい。



6. ヴィンテージ

作詞・作曲:岡野昭仁


岡野昭仁の作詞作曲した中で好きな曲というアンケートでは必ず名前が挙がる曲。そんなアンケート見たことないが、そう思うほど人気な曲。

それに相応しいほど、魅力的な楽曲である。

恋愛をワインに例え、時間を深めれば深めるほど濃くなる、となる。しかし「世の中で語られる『恋愛』の類いでもない」という一節があるせいで、ややこしくなる。



7. ワールド☆サタデーグラフティ(★★★)

作詞:新藤晴一 / 作曲:ak.homma


「よくできたので★★★(星みっつ)」というよく分からない理由で★★★がついた「渦」のカップリングナンバー。

タイアップもあったので、こうして聴くとシングル然とした強さを感じる。

カップリング時代との変更点は最後のボコーダーを使ったコーラス。アルバム収録においてミックスとマスタリングも変わっているはずだが、ポンコツな僕には分からない。









8. 素晴らしき人生かな?

作詞:岡野昭仁 / 作曲:Tama


ここから岡野昭仁鬱曲シリーズが続く。「WORLDILLIA」が暗いと云われる所以は、これとこの後の“朱いオレンジ”の並びのせいだと思う。

当然ながら「素晴らしき哉、人生」から取られたタイトル。その問いかけのように、気だるさのある楽曲だ。

ジャジーな楽曲ながら、トランペットの音が冴えなさに拍車を掛けて、これこそアレンジの妙としかいえない。

そして数少ないTama×岡野昭仁という楽曲であることは見逃せない。この後脱退するTamaが最初にリリースしたアルバムがトランペットをフィーチャーしたものであることを考えると、色々思ってしまう。

なお、ライヴDVD「"BITTER SWEET MUSIC BIZ" LIVE IN BUDOKAN 2002」の"Aokage"ではトランペットを吹くTamaの姿が見れる。



9. 朱いオレンジ

作詞・作曲:岡野昭仁


これも暗い色を落とす感情の曲だ。
それでいながら、誰しもが持つ感情でもある。そして"素晴らしき人生かな?"とは違って、暗い中にも熱がこもっているような曲。

感情を吐き出せず溜め込んで固まってしまったもの。
それはしこりのように、心の澱(おり)となって留まり続ける。それを溶かすのに必要なものは、愛情である。

しかしながら「綺麗なもの」「歪んだもの」が自分にあると認めること、それは弱さではなく強さでもあるのではないかと思う。



10. Go Steady Go!

作詞:新藤晴一 / 作曲:Tama


「Mugen」のカップリングナンバー。鬱々とした曲が続いたところでこの曲に来るので、カンフル剤のような役割である。

それでいて"朱いオレンジ"において自分の内面に向けていた心が、世界に向かって最後に「今こそ君に会いたい」と紡がれるところが、実は秀逸な流れなのではないだろうか。




11. カルマの坂

作詞:新藤晴一 / 作曲:ak.homma


ファンの中でも圧倒的な人気を誇る曲である。
歌詞という短い言葉の制約があるなかで、壮大な世界観を描く。

ある少年の物語。少女との出逢いの物語であるが、その想いが迎える結末は、あまりに残酷だ。

それが伝えるメッセージは、ファンタジーなどでなく、どこかの国で本当に起こりうる現実のようにも見える。

少年が最後に下した決断は、悲しいながらも、真の救いとなっているのかもしれないと思えるうちは、僕はまだ幼いのだろうか。



12. didgedilli

作曲:新藤晴一


「ディジュデリ」と読むギターインスト曲。いまだにソラで綴りが書けない。
ポルノグラフィティでギターインストが入るのはこれが初となる。

この前のツアー「BITTER SWEET MUSIC BIZ」で披露されていた曲である。






タイトルは意味はなく、曲のイントロの音を英語表記した、らしい。歌詞がない分タイトルには頭を悩ませるようで、後にリリースされる"螺旋"というギターインスト曲は若手スタッフに意見を求めて命名されたりしている。

内向的な曲が多いのでカンフル剤の役割ともなっている。




13. 渦(Helix Track)

作詞:新藤晴一 / 作曲:Tama


シングル版との違いは確かドラムのミックスが変わったり、アコギが強調されたり、ヴォーカルにエフェクトが掛かっているのだったと思う。
シングル版はCCCDでパソコンに取り込めない上に、シングルが今行方不明なので、聴き比べられない。

Helix(螺旋)と"渦"が掛けられているタイトルである。LINE6からHelix Floorというギタープロセッサーが出ているが関係あるかは不明である。

ポルノ全シングルレビュー 10th「渦」


14. くちびるにうた

作詞・作曲:新藤晴一


ひらがなのタイトルから受ける印象の通り、温かくて優しさを感じる。
最後のフレーズで猫が登場し、長い夜が明けると唄われることで1曲目の"CLUB UNDERWORLD"と対になり、アルバム全体の結びともなっている。

この曲はふとしたタイミングで聴くと、泣けてしまう。

「凍えて」「願い」「夜空」など、所々にアルバムの曲を連想させるような言葉があって、アルバムを回顧しつつ「心を抱いてあげましょう」というフレーズに繋がる辺りに感じる優しさが、沁み入る。

オールナイトニッポンの最終回で最後にこれを生演奏して終わったというのも、涙を誘う要因かもしれない。


ということで、アルバム「WORLDILLIA」について書いてみた。

あらためて考えると、個人的にとても好きなアルバムの1枚なんだなと思えた。
同時に、ポルノグラフィティにとっても、異質でありながら重要な立ち位置となったアルバムであると再認できた。



★アルバムレビュー


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★シングルレビュー


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↑「WORLDILLIA」はアルバムツアーとしてはないけれど、一応これがアルバムを基にしたツアーとなった。内容は、云わずもがな素晴らしいものである。








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