2017年6月23日金曜日

Mr.Children「Starting Over」歌詞解釈~ミスチルというモンスター





ミスチルが2015年に「REFLECTION」という大傑作ともいえるアルバム。

その中で最も異彩を放ち、アルバムの"顔"ともなった曲が"Starting Over"である。

先日久しぶりに聴いて、やはり感動させられてしまい思わず筆を取ってしまった。
少し歌詞を解釈していきたいと思う。


Mr.Children「Starting Over」歌詞解釈









肥大したモンスター



「肥大したモンスター」というキーワードが出てくる。
1番においては、このモンスターとの対峙が主題である。

主人公は散弾銃を手に立ち向かうのであるが、このモンスターが何を示しているのかがこの曲の重要な要素といえるだろう。

虚栄心?
恐怖心?
自尊心?

など、モンスターについて主人公はいくつかの推察をするが、具体的にモンスターの正体が明かされることは最後までない。

主人公がモンスターに銃弾を撃ち込み手にするものは最後まで「何か」で終わってしまうのだ。

ただ分かるのはこのモンスターこそが過去と未来を隔てているものであるということだ。
だからこそ、現状を打ち破り未来を手にするため、主人公は散弾銃を手にする。

なぜ「何か」なのか、それは先に待ち受ける未来のことは誰にも分からないからである。
そしてその「何か」を掴むために主人公は銃口を向けるのだ。

この曲におけるモンスターは「自身を見つめ直すもの」あるいは「過去の自分」である。
それと向き合い乗り越えていくことが最大のテーマとなる。

レコーディングドキュメンタリーを見るとサビの頭は「僕しか行けない世界に」という歌詞であった。
完成版である「僕だけが行ける世界に」と、意味は同じであっても、完成版の方がより冒険心ポジティブな印象を受けないだろうか。










孤独と純粋のモンスター



2番ではモンスターの内面が少し読み取れる。
そこに見えたのは「孤独」と「純粋さ」。

膨れ上がったもののコアにはそんな心が潜んでいた。

それは主人公が向き合うのが、今まで築き上げてきた自分とであるからである。

ロープで繋いで飼い慣らしてしまうこともできる。
このロープは過去と自分を縛るものである。

過去の自分を乗り越えることは、過去の自分を否定することである。
だからこそ手離したくない、愛でていたい。

1番の「今度こそ躊躇などせず」という言葉からも何度も失敗していることが分かる。

そんな葛藤を抱えた主人公、しかし肥大していく自分にとっての"負"と向き合い乗り越えなければいけないと決意する。


主人公の決意の強さは「静かな殺気」に込められている。
感情のままではない、強い決意だからこそ殺気を圧し殺すことができるのだ。

自分の気持ちとは裏腹に膨れ上がり続ける虚栄心、恐怖心、自尊心たち。

振り払うには引き金を引くしかないのだ。

最後のサビは1番と同じでありながらも、より強い爽快感に満ちている。

ラブコメで主人公がようやく一歩踏み出して告白したようであるかのような爽快さだ。



Mr.Childrenというモンスター



さて。

"Starting Over"の歌詞を見てきたが、あちらやこちらで散々言われている通りアルバムの中でも、かなり現在のミスチルのモードを色濃く表している曲である。

「REFLECTION」はMr.Childrenにとって明確な節目となった。

プロデューサーであり、ほぼ第5のメンバーと化していた小林武史との離別。
小林武史の功績はとてつもなく大きい。それは分かるのだが、ファン目線から見れば後期の"オーバープロデュース"とも取れるほどであるのは映画「Split the Difference」のレコーディングシーンでも見受けられた。

バンドであるということからかけ離れていく感覚。

そこから離れメンバー4人で新たな一歩を踏み出したのが「REFLECTION」であった。

膨れ上がったのは虚栄心、恐怖心、自尊心どれか。
いや、僕はMr.Childrenそのものだと思う。

だからこそ"リセット"として小林武史から離れ、バンドを1から見つめ直したのではないだろうか。







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