2020年8月8日土曜日

ポルノ全シングルレビュー 21st「Winding Road」







2006年10月4日にリリースされたポルノグラフィティ21枚目のシングル「Winding Road」。 シングルの中では様々な面で異質な存在なので、何を書こうか迷っているうちに書けないままでいた。


取り留めない頭で書いていくが、よく考えたら元々が取り留めのない人間なので意味がなかった。

ポルノ全シングルレビュー 21st「Winding Road」



 


1. Winding Road

作詞・作曲:岡野昭仁
「天保異聞 妖奇士」第一期エンディングテーマ 



 2006年夏、初の横浜スタジアムで発表された。 

その時にアルバム(「m-CABI」)の発売と、この曲が先行シングルとなるといった発表がされる。

横浜スタジアム初日はそれが上手く伝わらずアルバムの先行シングルなのか、アルバムの先行曲なのか判らずにファンが困惑した。 

 2日目は補足されて、その内容が映像化されている。それだけ見るとなぜあんなに強調しているのかと思うだろうが、初日の反省を踏まえてのことだ。 

 秋~冬に掛けてが舞台の曲だが、夏の夜の野外で聴いたそれはそれで乙なものだった。冷たい風に負けそうなら長袖を着ればいいじゃない。

さて、曲について。
この「Winding Road」(ワインディング・ロード)というのは、曲がりくねった道という意味だが、それを人生などに当てはめやすいため、様々なアーティストが「Winding Road」というテーマで曲を書いている。 

もっと元はあるかもしれないが、ほとんどはビートルズの"The Long And Winding Road"から取られて いることが多い。

この曲自体は、当時のビートルズのメンバー間の関係のいざこざをポール・マッカートニーが書いたものだ。詳しくは近所のビートルズ好きのおじさんに訊けば、まるで見てきたように3時間くらい話すと思うので是非訊いてみるといい。

 岡野昭仁作詞作曲だが、ものすごく語弊のある言い方をすると、とても「普通」の曲だ。 

メロディは普通に良いし、歌詞も海の底で物言わぬ貝になりたいほどひねくれてなくて、比較的平易な言葉と比喩が使われている。 

けれど、この曲はどうも「普通」ではないのだ。 しかし、その「普通」というのが曲者なのだ。

この曲を見ていくたびに「普通であることが普通ではない」「普通に普通じゃない」といった側面が顔を覗かせるのだ。



 ◯普通であることが普通ではない 



ポルノグラフィティの歩みについて特に考えず曲だけ聴いた人がいたとしよう。
というよりも実体験なのだが、学生の時にある男に「"ハネウマライダー"に比べて普通」と言われたことがある。 そいつは顔が気に食わなかったので殴っておいたが、ただ「普通の曲」という感覚を受けることは理解できる。


心は空を裂く号令を聞いた ハネウマのように乱暴だけど、
それでも遠くまで運んでくれる。

 
まだ君が好きだから 素直に受け止められずに
この雨に流されてすべてが嘘だと
もう一度微笑んで

この2つを並べられたら、そう見えても仕方ない。

しかしながら、冷静になってみると「普通」という観点からすれば、新藤晴一の表現がそもそも「普通」のそれではないのだ。

僕らファンは、その「普通でない歌詞」が「普通」であると思い込んでいたのではないか。 

 その目で"Winding Road"を聴くとどうなるか、それは「ポルノグラフィティがこんな『普通』の曲を出すなんて『普通じゃない』」という感覚に陥るのだ。なんかのパラドックスみたいだな。

だからこそ"Winding Road"がポルノグラフィティにとってスタンダードな曲への挑戦という曲に見えたのだ。 

何を言いたいのかわからないかと思うが、まさにそんな感覚で、自分にとって「普通」とは何かが足元から揺らいでしまったのだ。

挑戦という意味では、岡野昭仁がクロマチックハーモニカをイントロとアウトロで吹くこともまた、新たな挑戦だ。見るたびに露骨に巧くなっていくので、もっとライヴでやって欲しい。

あと細かなポイントだが「二人」や「一つ」のように漢数字が使われているので、岡野昭仁自身が縦書きの文学性を意識していたのではないかと思う。 



 ◯普通に普通じゃない


そんな曲なのだが、更にその感覚を増幅させるのがアートワークである。

初めてジャケットを見たとき「?」マークが136個くらい頭に浮かんだ。 

「普通」の感覚であれば、そうだ「この胸を、愛を射よ」のジャケットのようなイメージが浮かぶのではないだろうか。 

 改めてジャケットを見て欲しい。 どう考えてもカップリングの"Devil in Angel"や"ウェンディの薄い文字"の世界観である。 

この世界観がキービジュアルとして、PVにも用いられている。
時代をあまりに先取りした「タヌキとキツネ」でお馴染みのPVだが、主役のうさぎの女の子がウェンディにしか見えない。かわいい。

PVを考えたとして、僕のような凡凡人が考えたら、たとえばスキマスイッチの"冬の口笛"のPVのような世界観を想像することは容易い。 

しかし、"Winding Road"はあの世界観だ。炊飯器で米を炊いたらパンが出来上がってしまったような感覚だ。 それが悪いのではなく、この世界観を見てきたファンにとって、あの世界観以外"Winding Road"を表すものはないという思いさえ芽生えている人もいるのではないだろうか(全員がとは言わない)。 

色々なことが異質なのに、それが一つのパッケージに収まるというのもポルノグラフィティの恐ろしさだ。 
 ただし、ブックレットの最後の1ページのオチが異なるというだけの違いで初回盤AとBでリリースするようなものはやめていただきたい。 どんな違いか?簡単に聞き出そうなんて、わざわざ定価で2枚買った人柱人間に失礼だと思いなさい。自分で買ってください。 

ちなみにタイアップの「天保異聞 妖奇士」というアニメだが、残念ながら日本ではあまり話題にならなかったが、海外では比較的ウケていたらしい。 ポルノグラフィティがロサンゼルスでライヴをした際に久しぶりに演奏されたのはそういった背景がある。

ちなみに、あらすじは以下の通り。
 
時は天保14年。マシュー・ペリー提督の黒船が来る10年前の江戸の町では、異界から骨肉を持った獣「妖夷」(ようい)が出没し、人々を襲っていた。それに立ち向かうのは、「蛮社改所」(ばんしゃあらためしょ)と呼ばれる組織に属する、「奇士」(あやし)と呼ばれる者であった。

エンディングとはいえ、"Winding Road"合うかこれ?
見ていた方は是非ご一報を。
この文章の取り留めのなさで、僕の混乱っぷりがよくわかったと思う。 

最後になるがギターソロ、ポルノグラフィティの中でTOP5に入るくらい好き。




2. Devil in Angel

作詞・作曲:岡野昭仁


切ないミディアムバラードから、いきなりポップでロックなナンバーへ。 

しかし、それもまた"サウダージ"から"見つめている"、"デッサン#2 春光"から"ミュージック・アワー Ver.164"を経験しているファンには奇とするにあたらないものだ。 

カラッとしたギターアプローチと、前へ前へ強く出るヴォーカルが力強い。 ライヴで盛り上がるのに、あまりやってくれないのが悲しい。 

この後のアルバム「m-CABI」を引っ提げたツアー「OPEN MUSIC CABINET」で"オレ、天使"から、この曲に繋がる展開は圧巻である。

自分の正義を貫くため 誰か傷つけてしまう
あなたはそれを悪魔の仕業って 気が付けるかい?

◯◯警察とか言ってる人や、中傷をしている岩手県民に叩きつけたくなる。 最近、思うことだけど、たとえば「自分の正義」を決める心があるとして、その人にとっては、それが天使の囁きに聞こえてるんだと思う。 

昔の曲で「天使のような悪魔の笑顔」というフレーズはあるけど、まさに本当の悪魔は、天使のような顔をしている。 

それを信じてしまう人にとって"オレ、天使"に出てくる「これだけオレが親切に正しい道を説いてやっても」という言葉の通り、それに気づきもせずに「自分の正義」を掲げているんだろう、と。

 だからこそ。

 噂が世界を巡る 天使と悪魔 
本当のところ やつらは双子だって!? 

考えて見るといい、 その「噂」は、悪魔の囁きではないか? 

決めるのは自分自身の心なのだからこそ。


右へも左へも進める道の果てに  自分で選んだものを掴めたら 
蹴落としたとしても 優しくあっても  誰もがDevil in Angel 


本当に信じるべきは、自分の魂から生まれるもの。 それは岡野昭仁がずっと唄ってきたテーマそのものなのだ。 

 選ぶのは、決めるのは、自分自身の心だ。


3. ウェンディの薄い文字

作詞・作曲:新藤晴一 


度肝を抜かれるとはこういうことなのだろう。

新藤晴一がヴォーカルというのは聞いてはいたが、まさかこんな曲が生まれるとは。 

どこをどう切り取っても「普通に普通じゃない」類いの曲だ。 
サブスクで聴いたファンではない人が、突然これが流れたらどういう反応するか観察してみたい。

これに関しては再三言ってきたが、かといってこの曲を当時の岡野昭仁が歌ってもウェンディが「ゴースト・オブ・ツシマ」のお題のフォントみたいな字を書くとこなので、薄氷を思わせる新藤晴一の歌声が合っている。





歌詞については以前に書いているが、正直書ききれてないので、もう一度仕切り直そうかと思っている。思うだけ。 

でも、ロックバンドでのし上がってやろうと上京してきた自分たちが、「ペンのさき~がなぜるだけさ」と唄うようになるとは、自分たちが一番思ってなかったのではないだろうか。

ましてや20周年の東京ドームでイントロが流れた瞬間、様々な悲鳴に近い声が上がろうとは、当時想像ができただろうか。 

こういった曲が受け入れられる土壌が、7年掛けてポルノグラフィティとファンの間で育まれてきたことが信頼の証なのだ。知らんけど。


 

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