2018年1月5日金曜日

170828-29歌詞解釈 赤いボタンの上で僕らはピースする




僕らの平和はあの国がボタンを押さないことの上に立っている。


金正恩氏、新年の祝賀メッセージでアメリカを威嚇「核のボタンは机の上にある」



ポルノグラフィティのアルバム「BUTTERFLY EFFECT」に収録された"170828-29"の歌詞は、タイトルの通り2017年8月28日に書かれたものである。

ポルノグラフィティには"∠RECEIVER"や"Twilight,トワイライト"のように、社会情勢を切り取った曲がいくつか存在する。"170828-29"もそんな曲の中のひとつである。

この曲については晴一さんの中では比較的平易な言葉の歌詞なので、言葉の通りに受け取るだけでもメッセージが十分に伝わってくる。
だが、新年早々入ってきたニュースを前に、書かずにいられなくなった。



ボタン





歌詞にもあるように、北朝鮮のミサイル問題をテーマにした曲である。

昨年も北朝鮮のミサイルが何度も日本の領域を犯した。タイトルの意図は下記のインタビューの引用を参照いただきたい。

──晴一さんの曲で言うと、11曲目の「170828-29」はかなりの問題作のような気がします。タイトルになっている今年の8月29日は、北朝鮮が初めて弾道ミサイルを発射した日ですよね。

うん。この曲のメロはちょっと前からあったんだけど、歌詞を書いたのが8月28日で、歌入れをしたのが29日だったんです。北海道の上空をミサイルが飛んだことを受けてあたふたと歌詞を書いたわけではなく、実は前の日に書いてたんだよってことを言いたくて、あえてタイトルには28日も入れたんですけどね。


北朝鮮のミサイルを通して伝えるメッセージは平和の本質である。

カフェイン11でも以前言っていた、僕らが今こうして平和な日々はあの国が"決定的なボタン"を押さないことの上に成り立っている。

そのボタンは云わずもがな"机の上にあるボタン"である。

よく「核の抑止力」という言葉が使われるが、圧倒的なまでの凶器を互いに持つことで、戦争を牽制し合う、その上にある平和というのはとても歪である。
因みにであるが、言葉を引用しよう。

核抑止(かくよくし)とは、核兵器の保有が、対立する二国間関係において互いに核兵器の使用が躊躇される状況を作り出し、結果として重大な核戦争と核戦争につながる全面戦争が回避される、という考え方で、核戦略のひとつである。核抑止理論、また俗に「核の傘」とも呼ばれる。



俺の傘など華奢


歌詞に登場する「戦場からインスタグラム」。今現在も紛争が続く地域もあるが、この戦場とは世界そのものではないか。
そのボタンが押された瞬間に世界は争うしかない。何故なら抑止力はそこにはもうないからである。

更にいえば、いつどこでテロが起こってもおかしくない今の世の中と捉えてもいいかもしれない。

そんな、いつ、どこで、戦場になるか分からない世の中でインスタグラムにはきらびやかな世界が並んでいる。









ピース




──みんながピースサインを掲げることが武器になるという強いメッセージは、今だからこそよりリアルに響くところはありますよね。

ポップソングに持っていくためにそういう落ちにしたところはありますけど、まあでもそれは僕のリアルな気持ちですよね、本当に。この曲の意味がなくなってしまうような現実にならないことを祈るばかりです。ミサイルとかホントにやめてほしい。



歌詞の通りに捉えると確かにそう思うのだが、どうしてもこの「ピースサイン」は皮肉なのではないかと穿った見方をしてしまう。

それは先の「戦場からインスタグラム」にもあるように、ボタンひとつで壊れてしまう平和の上で僕らは呑気に平和ボケしてピースサインを掲げていないかという思いからである。

テロが発生した時、テレビやネットから伝わる情報に僕らは震え怯える。しかし、しばらくして僕らはそれすら忘れてまた日常を生きる。

無論、毎日テロに怯えながら生きる訳にはいかないが、あまりに"馴れ"すぎてはいないかと考えてしまう。


同様にとても怖いと思う表現がこれである。

星に祈るみたいに ミサイルを見上げては
願い叶いますように


これがあまりに強烈な皮肉だ。

ミサイルを流れ星に見立て祈るのは、ミサイルが落ちないこと。更には「見上げては」という言葉。そう僕らは何度も見上げてきた。為す術もないままに。

最後に「若きソルジャー 母を泣かすな」という言葉を受けて僕が思い出した言葉を書いて終わりたい。
「X-FILES」のシーズン10の5話「バビロン」より、自爆テロ事件に纏わる事件を終えたモルダーの言葉である。

「憎悪よりも強いものは母の愛情だ。母親なら我が子に殉教は望まない。母の望みはもっと高い」


ピースピース



【全曲感想】ポルノグラフィティ 11thアルバム「BUTTERFLY EFFECT」


★歌詞解釈シリーズ



AGAIN歌詞解釈~「遥かな昔海に沈んだ架空の街の地図」とは

スロウ・ザ・コイン歌詞解釈~人生の分岐点と正解の道

月飼い歌詞解釈~東から漕ぎだした舟が向かう先

ジレンマ歌詞解釈~ジレンマが示すもの

Hey Mama歌詞解釈(+和訳) 〜あなたのパパは何者?

TVの中のロックスター、憧れと現実

THE WAYのダイアリー00/08/26に涙した理由

LiAR歌詞解釈~揺れてるばかりの記憶のあなた

メリッサ歌詞解釈~自分にとってのメリッサとは

アポロ歌詞解釈~変わらない愛のかたち探してる

Part time love affair歌詞解釈〜パートタイムの恋人

パレット歌詞解釈~泣いた月と唄う鳥の示すもの

PRIME 歌詞解釈〜変われない自分と変わらない願望

稲妻サンダー99歌詞解釈(?)〜99秒、33文字の歌詞に3000字書いた全記録

アゲハ蝶歌詞解釈~夏の夜に咲いたアゲハ蝶

素敵すぎてしまった歌詞解釈~Wonderful Tonight

ラスト オブ ヒーロー歌詞解釈~ヒーローは逃げない、一度も

夜間飛行 歌詞解釈〜「偶然は愛のようにひとを束縛する」

"君の愛読書がケルアックだった件"の歌詞が実はとんでもなくヤッバイ内容な件

MICROWAVE歌詞解釈〜Believe when I say "I want it that way"

"Working men blues"の替え歌の件についてちょっと本気出して考えてみた

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ポルノグラフィティ新曲"カメレオン・レンズ" 歌詞徹底解剖 新藤晴一文学の集大成













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2018年1月3日水曜日

高橋優"CANDY"の歌詞に込められた意味に自分の世界は狭いと気付かされる







世の中には"CANDY"をタイトルに含む曲が数多くある。

その多くはsweetの意味そのままのもので、どちらかといえばキラキラした曲が多い。

僕は真っ先にMr.Childrenの"CANDY"が頭に浮かぶ。
そういえばこのブログのタイトルにも飴玉という言葉が入っている。

しかし、そんな甘酸っぱいワードを完全に逆手に取ったように、高橋優の"CANDY"という曲は絶望の言葉として使われる。







「この色キャンディみたいだね」と誰かが笑った
「ほんとだ、絵の具じゃないみたいだね」と別の誰かも笑った


その筆は僕の口元に差し出され
「ほら舐めてみろよ」と女は笑った
抗うよりも応じる方が痛くされないと
僕は知ってた 僕は知ってた


自身のいじめ体験を元に書かれ話題となった曲である。
この曲へのコメントを引用しよう。

──イジメは報道で取り上げられることも多いですが、世間に向けて、ということは意識しました?

うーん、苛立ちはありましたね。テレビを観ていても、表面的には「イジメはダメ」って言うけど、まるで「イジメをやれ」って煽っているかのような取り上げ方だなって。イジメられている渦中の人は、それが永遠に続くと思ってしまうけど、いつか終わるんですよ。必ず終わるんです。それは僕が身をもって証明できる。だって僕は、イジメられていたことがカッコ悪い過去だと思っていたけど、今は別にどっちでもない、ただの経験のひとつだって言えるようになったわけだから。だったら、もしかしたら歌う意味もあるんじゃないかとは考えました。








母が買ってくれた
大好きなキャラクターが
大きくプリントされた傘
木の枝で叩かれて幾つも穴が
空いてた
「この方がお前によく似合う」
と笑われた

あの人たちが何をしても
やり返す事だけはしなかった
川辺の土に傘は埋めた
落として流されたことにした


2番の傘のエピソードも想像するだけで心にくるものがあるが、この歌詞を人はどう捉えるだろうか。

ある人は自分と重ねるかもしれない、ある人は木の枝を突き刺した側の人間かもしれない、ある人は、何も感じないかもしれない。エピソード自体に思いを重ねることはなくとも、大なり小なり生きていくなかでそんな場面に遭遇することがあるだろう。

この感覚は映画「桐島、部活やめるってよ」を観た時に感じたものと同様のものである。
折しもこの映画の主題歌は高橋優の"陽はまた昇る"。こちらも紛れもない名曲である。






「桐島、部活やめるってよ」が優れていた点は、ほぼ全編学校という舞台のみでストーリーが展開し、作中で所謂"大人"の介入がないところにある。
その演出によって学校というかなり「閉じた世界」の物語であるように感じる。

それでいて観たものそれぞれが身を置く自分自身の「閉じた世界」にも重ねられるというメタ構造になっているのだ。

大人になってしまえば、学校なんて世界はいかに小さなものであったかに気付かされる。しかし、そんな学校を卒業しても、ほとんどの人間は就職し、また新たな"会社"という「閉じた世界」に身を置くことになる。

社会と世界、それは似て非なるものだ。

「今居る場所が世界の全てではない」

とは言うことができても、それは外から見ている人間の言葉であって当人にとっては、いま居る場所こそが世界の全てであるのだ。
良くも悪くも宗教にはそういった側面があるので、想像しやすいのではないだろうか。

それは無責任な言葉になってしまうかもしれない、そうだとしても。
そこから死んで逃げるなんてことは、する必要ないのだから。

そんな曲は次の言葉で終わる。


強かに生きていこうと誓った
これは繰り返さぬための歌
追いつめ奪うのが正義なら 僕は世界でも敵に回そう
愛はどんな味でしょうか?
友情はどんな形でしょうか?
毎日のように差し出されたキャンディの味を僕は忘れない


ミュージシャンの名言・暴言集まとめ part.1
ミスチル桜井和寿の天才的な歌詞フレーズまとめ10選












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