2017年11月25日土曜日

【映画】「gifted/ギフテッド」ネタバレ感想







映画「gifted/ギフテッド」を観た。

「(500)日のサマー」のマーク・ウェブ最新作である。
僕は後半おんおんと泣いてしまいまして、そんな映画の感想を書きたいと思う。



あらすじ







めいで7歳のメアリー(マッケンナ・グレイス)と片目の猫フレッドと共に、フロリダの小さな町で生活している独り身のフランク(クリス・エヴァンス)。平穏に過ごしていた彼らだったが、メアリーにある天才的な能力があることが判明する。フランクは彼女に普通の子供と同じように育ってほしいと願っていたが、彼の母エブリン(リンゼイ・ダンカン)は二人を引き離してメアリーに英才教育を受けさせようとする。



マッケンナ・ グレイスという才能




決して派手な映画ではない。
身も蓋もないことを言ってしまえば、予告通りのストーリーだし、そこから想像されるストーリーをほぼ外すことなく展開し着地する。

だが、僕はこの映画が愛しくて仕方がないのである。
もっと率直にいえば、こういう映画が好きで仕方ないのだ。

それにはいくつかの要素があるが、まず何においても、今作の魅力において最も重要な要素が数学の才能を持つ7歳の少女メアリーである。これを演じたマッケンナ・ グレイス何よりもキュートだ。





数学の稀有な才能、ちょっとませた感じは、やりようによってはとても可愛げのない姿になってしまうが、マッケンナ・グレイスはそれらのシーンどこを切り取っても全て愛くるしい姿に見せてしまっているのだ。

しかも笑う時に前歯が全部抜けているのももうあざといくらい可愛いんだもう。

教室で嫌々「おはようございます。スティーブンソン先生」とボニーに挨拶するセリフ、これが少し後にある場所で繰り返される。これがもう可笑しくて可笑しくて。しかもそれをいう時のイタズラな表情が最高である。



よくこういう子役に対してのコメントでテンプレで「数多くの子役をオーディションしたが、この子が入ってきたときに『この子だ!』と思った」というシーンがインタビューとかであるじゃないですか。

マーク・ウェブのインタビューでも似たようなことを言っていたけど、映画を観た自分でも、マッケンナ・グレイス以外のメアリーは想像できない、というくらいベストであった。

「(500)日のサマー」(後に「キックアス」)を見てクロエ・グレース・モレッツが出てきたときも凄い子が出てきたなと思ったけど、こういう子がポンと出てくる映画業界はやはり凄いと思わざるを得ない。








言葉



クリス・エヴァンス演じるフランクとのコンビネーションも抜群で、クリス・エヴァンスは役者としてこれで新たな魅力を発揮させることができたのではないだろうか。

メアリーを叱る際のフランクの言葉はとても建設的で、2人の会話シーンがとても愉快だ。
一方で時にフランクは感情的な言葉も放つが、そこにもちゃんと後に冷静にフォローを入れたり、フランクの人柄が随所に表れている。

フランクがメアリーに教えた「年長者を正すな。小賢しいと思われる」という教えなど痛快である。

かといってフランクは聖人という訳でもなく、金曜の夜には毎週バーにいて、メアリーに「土曜の朝は家に入っちゃいけない」という"約束"をしている辺りとか、完全に独身のダメ男である。

かつて哲学の准教授であったフランクと数学的にとても論理的なメアリー。
その言葉と言葉のコミュニケーションが前半では目立つ。

特にあまりに美しい夕焼けのシルエットの中2人でじゃれ合いながら会話するシーンは、本作で一番好きなハイライトの1つだ。





しかし後半に差し掛かるにあたって、その言葉と言葉のコミュニケーションの壁を破る。


映画で泣いた場面が3つある。メアリーを里親に預けるシーンと、クライマックスのメアリーを迎えにきたフランクとのシーン。

そしてもう1つが実の父親のことを知りショックを受けたメアリーを立ち直らせるために、フランクが病院に連れていくシーンである。

そこの待合室で出産の報告を親族たちにする姿を見せるフランク。

メアリー「私の時は誰が報せたの?」
フランク「俺だ」

そのセリフからメアリー「もう少し見てく!」というセリフと共にまた別の家族のシーン、そこにいつしか混じって一緒に喜ぶメアリー。このシーン、もう泣けて泣けて。いま思い出してもうるっときてしまうほど好きなシーン。

この辺りは正直なところ個人的な事情で、前年に自分に姪っ子ができたということが大きいと思う。自分は出産日は仕事で立ち会えなくて、だからこそ余計に思い入れが深いのだろう。

このシーンがあったことでメアリーの「フランクは良い人だと思う、最初から私を愛してくれたから」ってセリフの説得力が増すんですよ。
一方で祖母(フランクの母)であるイヴリンは、メアリーが7歳になり、数学の才能を発揮しだしたことによってようやくメアリーを意識する。

そこに直接的な言葉はないがフランクがダイアンから受け継いだ言葉。

フランク「論文は死後発表して欲しいと」
イヴリン「死んで6年になるわ」
フランク「……自分のじゃない」

この一言の言葉の重みである。
ここに全てが詰まっていて、このセリフで胸にまたずしんと重いものが下りた。


家族の在り方



ちょっと長くなってきたのでそらそろ終わらせますか、最後に。

マーク・ウェブのインタビューで語られたこと。

「僕がこの映画で伝えたかったことのひとつは、家族は選べるということ。血の繋がった家族に失望させられることも多いけど、そういうときは自分で家族を作ればいいんだよ。例えばフランクとメアリーは叔父と姪で、母親代わりは近所の黒人女性。典型的な家族じゃなくても、そこに愛があれば家族だ。多様化する社会では新しい家族の形がどんどん増えていくはず。それを寛容に受け入れなくてはね」

これと似たコメントを見たなと思って、それが星野源が"Family Song"に当てたコメントである。

「例えば、友達や仕事仲間も”ファミリー”って言ったりするじゃないですか。広い意味で、これからの時代に向けての”ファミリー”なんです。あと例えば、両親が同性同士の家族だったりっていうのも、これからどんどん増えてくると思うんですよね。そういう家族も含めた、懐の大きい曲を作りたいな思って作りました」


2017年という年代に、こうして全く違う角度から同じことに焦点が当てられている。

「gifted/ギフテッド」はとても普遍的なストーリーであるものの、そのメッセージには今の時代の家族の在り方というものがしっかり込められているのだ。

「ベイビー・ドライバー」を見れてないので、言い切りたくはない気持ちもあるけど、現時点で間違いなく今年ベストの作品です。というかオールタイムベストに入れるくらい、大好き。

こんな映画に出会えるから、映画好きはやめられない。


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2 件のコメント:

  1. 「ご無沙汰しております。」

    が、常套句になりつつありますが、ご無沙汰しております。

    サトシさんおすすめの『gifted』がずっとずっと観たくて、やっと今日観ました。

    手元においておこう と思うくらいすごく素敵な作品でした。

    (Amazonで1000円だったのできっとお年玉で年明けには買ってます。)


    この出会いはサトシさんのおかげです。

    メリークリスマス、サン・・いやサトシさん。




    追伸

    僕も「音楽文」に挑戦してみようと思い、ちょっとずつしたため始めてるのですが・・

    なにかサトC先生なりに攻略法があれば是非ご教授を。

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    1. ご無沙汰しております。
      こちらもポルノポルノばっかりですみません笑

      もちろん大作映画とか名作と呼ばれる作品はたくさんあるんですけど、自分はこういう「gifted」とか少し前だと「スクール・オブ・ロック」みたいな派手さはないけど良い余韻に浸れる佳作が好きだなぁと思わされます。
      それにしても、メアリー役の子は本当に可愛いですよねえ。

      「音楽文」是非!
      採用についてはそんなに厳しくないので、批判的な内容とかなければ大抵採用はされます。

      攻略法、なんでしょう笑
      たとえば感動させられた音楽についてなら、なぜそれほど感動したのかを掘り下げていき、それを素直に書くといいかと思います(自分がそうとしか書けないのもあります)。

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