ポルノグラフィティの20周年のキックオフとなるイベント「しまなみロマンスポルノ」。そこには二日目が雨天中止となるという辛い現実が待っていた。
そこから、新たな一歩を踏み出す姿をNHK「SONGS」のスタッフは映し出してくれた。
SONGS ポルノグラフィティ×密着・20年目のふるさとライブがダメ、本当にダメ
それに対して、感謝しきれない畏敬の念を抱いた。
しかし、この度。この番組のスタッフは、またとんでもないことをしてくれた。
それが第493回 THE YELLOW MONKEYの特集である。
僕はもうSONGSスタッフに足を向けて寝られない。
THE YELLOW MONKEYの19年ぶりとなるオリジナルアルバム「9999」のリリースに伴い、メンバーは数多くのプロモーションを行っている。
その中で、今回「SONGS」に出演が決定した。2016年にも一度出演しているが、冒頭は再集結からの軌跡が語られる。NHKホールのステージに4人が顔を合わせ、それぞれの想いを語っていく。
ようやく叶った紅白歌合戦への出場や、代々木二日目にメンバーにも言わなかった「もう絶対THE YELLOW MONKEYは解散しない」という吉井和哉の言葉のこと等が語られる。
やられたのは、番組終盤である。
NHK 「SONGS」第493回
THE YELLOW MONKEY
Horizon
"Horizon"はメンバーにとっても、THE YELLOW MONKEYの音楽を愛する人にとっても、大切な曲だ。
以前歌詞について触れたが、また改めて思うことがあり、それを書きたい。
菊地英昭(エマ)によって書かれた曲は、メロディだけで弟菊地英二(アニー)を泣かせ、その歌詞で廣瀬洋一(ヒーセ)を泣かせた。
ここで語られたのは歌詞の「打ち上げ花火」について。
再集結のアリーナツアー中、菊地兄弟の父親が亡くなったことが映画「オトトキ」で明かされた。
そして、その葬儀の日が、ちょうど花火大会の日だったという。
菊地兄弟は日野に生まれ、八王子で育った。
それもあり、おそらくその日は八王子の花火大会だったのではないか。
僕自身、生まれも育ちも八王子で今も住んでいる。
2016年7月30日に花火大会は行われた。
そして、その日確かに僕はその花火を見ていた。
八王子の花火大会は正直規模も小さいし、毎年隅田川の花火大会の裏で、多摩地域としても立川の花火大会の裏という、とにかく目立たないものだ。
それでも、僕はあの年も八王子の花火を眺めていた。
菊地英昭が打ち上げ花火の向こうにメンバーが待っている姿を見たとき、僕は花火の向こう側に、確かに居た。
オレンジの箱
"Horizon"の歌詞に、
真っ直ぐ西に伸びる線路 オレンジの箱
という歌詞がある。
解釈の記事でも引用したが、それは吉井和哉の言葉が語っている。
「僕たちが再びオレンジ色の中央線のラインに繋がったドキュメンタリーです。怒涛のような1年を松永監督の目線で追いかけます。ファンの方々にとっては、イエローモンキーの映画であると同時に皆さんの映画でもあると思います。」――吉井和哉
中央線のオレンジ。
僕はそこから、西に伸びる、斜陽という景色が、そのまま人生に重ねているのではないかと考えた。
その未来と同時に、今いる場所から育った八王子という場所を繋ぐもの。
そして、もうひとつ大切な場所である。
再集結した時の特番でハマ・オカモトがTHE YELLOW MONKEYにインタビューをするというものがあった。
そこで、吉井和哉が語ったのは、高円寺のスタジオで演奏したかったということ。
高円寺のスタジオはアマチュア時代にリハーサルで使用していたものだという。
実際、それが叶うことはなかった。
だけども、オレンジのラインは八王子だけでなく、高円寺にも繋がっている。
つまり、西に向かうほど、菊地英昭は過去とも向かい合うということにもなる。
未来と過去がオレンジの線で繋がっている。
だからこそ「真っ直ぐ西に伸びる線路 オレンジの箱」という歌詞は深いものを秘めているように思えてならない。
重荷
『音楽と人』のインタビューで菊地英昭の言葉で印象に残ったものがある。
エマ:もちろん期待とか、昔から好きでいてくれる人たちのことを考えると、重たさもありますけど。個人的に〈そこまで考えなくていいな〉って思っちゃってて。
──背負いすぎなくていいってことですか?
エマ:うん。とくにロビンとかほんと背負っちゃってると思うんだけど、僕はもっとドライでいいなぁと。
《中略》
また一からはじめるなら、背負うのは、20キロぐらいでいいんじゃない?
──20キロですか?(笑)
エマ:(笑)わかんないけど、デッカイ十字架みたいなのは背負わないでもいいなぁと思う。
引用終わり。
この言葉に菊地英昭の優しさが全部出ていて、パラッと立ち読みした時点で泣きそうになっていた。
吉井和哉に「ひとりで背負わなくていいよ」と伝えたのだ。
それは、吉井和哉が何度も語る2013年のメールに繋がる。
今でもその話題を引きずるように、吉井和哉にとって「また僕とバンドをやってください」というメールは、大きな不安もあったのだろう。
しかし、現実は吉井和哉の不安以上に、他の3人の吉井和哉を想う気持ちはそれを上回るものだった。
そのひとつが、菊地英昭の言葉にあるのだろう。
だからこそ。この歌詞が、より強く胸に突き刺さる。
大丈夫僕ら君の味方だよ
この「大丈夫」の言葉に込められた想いは、計り知れない。
だからこそ、このフレーズを聴く度、前以上の感動が訪れた。
そして物語は、未来を唄い終わる。
そうさいつも君の味方だよ
We must go on!
「もう絶対THE YELLOW MONKEYは解散しない」
大きな不安を抱えていた吉井和哉に、この言葉はどう響いただろうか。
アルバムを聴けば、ファンであってもなくても、皆が吉井和哉に言ってあげられるのではないか。
大丈夫僕ら君の味方だよ
We must go on!
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