THE YELLOW MONKEYの19年ぶりのオリジナルアルバム「9999」がリリースされた。
今回はアルバムのオープニングを飾る"この恋のかけら"を徹底的に語りたい。
これほどアルバムの1曲目として相応しい曲があるだろうか。
イエモン "この恋のかけら"歌詞解釈
エンドロールの先
錆びついたエンドロールが流れていく
またひとつ僕たちの映画が終わる
そのフレーズにどうしても映画「オトトキ」を重ねてしまう。
「オトトキ」において過去と向き合い、今を見つめるまでが描かれた。中盤に出てくる「夢の途中で死んだ父親と」というフレーズには菊地兄弟の父親が浮かぶし、映画でも改めて語られる吉井和哉の若くして亡くなった父親のことも感じさせる。
もうひとつ、一度はバンドとしての歩みを止めてしまったTHE YELLOW MONKEYのことも表している。
終わりは新たな始まりのために。
そして、アルバムとはバンドの今とこれからを示すための指標である。
そのオープニングにこの唄い出しを持ってきたこと、それは自分たちは未来=エンドロールの先へと行くという宣言だ。
「少ない色しかない良さもあるね」はバンドサウンドに焦点を当てること、自分たちを見つめ直すような「泣いても 笑っても 残された/時間は長くはないぜ」という言葉、つまりはアルバム全体のテーマをこの"この恋のかけら"で宣言している。
その意図からも、"この恋のかけら"が1曲目に選ばれた事の意味は大きい。
決して派手な曲ではない。しかしそこに込められている想いは熱く、強く胸に響く。
そして「この恋のかけら どこに埋めればいいのだろう」という言葉で終わる。
では「この恋のかけら」のかけらとは何であろうか。
恋のかけら
「この恋のかけら」というタイトルがとても印象的で、歌詞にも出てくるこの言葉は何を示すだろう。
恋のかけらをどこに埋めればいいのだろう、それは共に探していこうということにも聴こえる。
恋のかけらとは、THE YELLOW MONKEYを愛している人々の心にそれぞれあるのではないだろうか。
かけらとは、破片であり、ピースだ。
美輪明宏の有名な言葉だが「恋とは自分本位なもの、愛とは相手本位なもの」というものがある。
だからこそ、恋のかけらとは独り善がりの恋だけではなくなったのではないか。
その言葉を踏襲すれば、アーティストとファンの関係とはまさに「恋」だ。
一方的に想いを伝え合う行為、しかしその想いは計り知れなく強い。
そして「この恋のかけら どこに埋めればいいのだろう」とは探し続ける決意でもあり、自分の足跡に残してきた軌跡の証でもある。
なぜならTHE YELLOW MONKEYの一番のファンは吉井和哉なのだから。
最初「埋める」という言葉にネガティブな響きを抱いていた。しかし、改めて考えると、埋めるとは隠すことではなく、「安らかに眠らせる」ことでもある。
たとえば葬儀や埋葬が遺された者の気持ちの区切りとなるように、過去を受け入れ、感謝をして先に進むことでもある。
その区切りとなる過去とは。
ミュージシャンとしての自分かもしれない、或いは仲間かもしれない、或いはバンドそのものかもしれない、或いはロックという音楽かもしれない、或いは死んでいってしまったかつて憧れたミュージシャンかもしれない、或いは死んでいった父親かもしれない、或いはいつまでも少女の母かもしれない。
人それぞれの過去があり、それは破片となって心に残る。
全て抱えるにはその存在たちは大きすぎる。でも、かけらであれば、そこに確かな想いは残るのだ。
そんな区切りとして、この曲では季節が印象的に使われる。
FOUR SEASONS
歌詞では「春」と「冬」の季節が描かれる。
青春、玄冬のように、陰陽五行思想によって、季節に色が当てられている。
青春→朱夏→白秋→玄冬と季節が巡る様を人の一生に重ねる。
エンドロールが終わりを示すように、
冬になるとこの辺りは雪深くなるから
これより先は行き止まりになる
というフレーズは、一度は足を止めてしまったバンドが、文字通り「行き詰まって」しまっていたことを表す。
だからこそ、2番で描かれる「春」は、また新たな始まり、バンドの再集結を感じさせる。
いきなりポルノグラフィティの話になって恐縮だが、ポルノグラフィティが2009年に行った東京ドーム公演のタイトルは「愛と青春の日々」というサブタイトルがついていた。
そのライヴの中で「『青春』は繰り返すもの。だから季節を表す言葉が使われてるんだと思いませんか」というメッセージが流れた。どうしてもそれを重ねてしまう。
奇しくも東京ドームはTHE YELLOW MONKEYがその歩みを止めた場所。
※【重要】ポルノグラフィティは2019年9月7日と9月8日に東京ドーム公演をまた行います。イエモンファンの方も楽しめるはずの『神セトリ』の二日間、是非お越しください
In changing time's four seasons I'm crying
美しい希望の季節を
In changing time's four seasons I'm crying
ねえ探しに行かないか?
また季節は巡る。THE YELLOW MONKEYがファンと共に歩む季節が。
また新しい春がやってきた。
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