2025年1月11日土曜日

2024年に映画館で見た映画ベスト10






昨年に続き2024年の映画を振り返っておこう。
今年は毎週なにかしら映画館で映画を観るという縛りを設けていたので、最終的に62本の映画を観ることになった。

ハシゴで観たりもあったので想定以上の本数だ。
※予定があって行けない週は前後の週で2本観た

ということで2024年の自分なりのベスト10を発表しよう。

ちなみに自分はジャンルは恋愛映画少なめ、ホラー多めな人間であることを承知のうえ、読んでいただきたい。明るい映画もちゃんと観てるよ。
自分は2023年は「パール」を1位にするタイプである。




10位:悪魔と夜ふかし






監督:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ
出演:デヴィッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、フェイザル・バジ、イアン・ブリス、イングリット・トレリ、リース・アウテーリ、ジョージナ・ヘイグ、ジョシュ・クオン・タート


ものすごく人を選ぶ映画だ。
正直、深夜にテレビを点けたら偶然やって見てしまったみたいな出逢い方をしたかった。傑作というよりは秀逸な佳作という映画。

日本で今年は「イシナガキクエを探しています」が話題になったけど、あの雰囲気とか白石晃士作品が好きな人には特にオススメである。

1977年に深夜のトークショー番組で起きた事件にまつわるファウンド・フッテージもの。
この架空の番組の雰囲気づくりがうまくて、画面に引き込まれる。





この映画で悪魔が憑いているという少女リリーを演じたイングリッド・トレリがとても良かった。可愛いのにどことなく「M3GAN」を人間にしたみたいな独特な雰囲気。

自分がこうしたファウンド・フッテージものが好きなので、たぶん世間一般の反応よりも思い入れが強いかもだけど、ラストに向けた悪夢のようなゴアシーンは最高だ。

日曜の夜に某映画館で見てたんだけど、まぁそこそこ空いていて始まるまでチュロスをモリモリ食べていたら、同じ列のシートにいたお姉さんもチュロスをモリモリ食べてて。
日曜の夜に1人でチュロス齧りながらこの映画をチョイス、映画ならここから恋に発展するところだ。もちろん何もありませんでした。



9位:ダム・マネー ウォール街を狙え!





監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セス・ローゲン


僕はこの映画の基になった所謂「ゲームストップ株騒動」は当時から知っていて、なかなか興味深い事件が起きたな、これいずれ映画化するだろうなとしげしげ眺めてた。ま、するよね。

それが原作が「ソーシャル・ネットワーク」、監督は「ラースと、その彼女」のクレイグ・ギレスピー、主演はポール・ダノというだけで映画の株価ストップ高ってなもんだ。
派手な映画ではないけど、こういう映画好きなんだよな。

「空売り」とか基本的な投資の知識があった方がより楽しめる内容だ。空売りって「007 カジノ・ロワイヤル」(ダニエル・クレイグ版)でも出てくるよね。

物語としては「金持ちファンドvs庶民」という構図である。要すると空売り──株価が下がると投資家が儲かる仕組み──を利用したファンドの横暴に庶民が団結して喝を入れた事件である。

ウォール街に一般人たちが一泡吹かせるんだから、もう痛快でしょ?



8位:ゴールド・ボーイ






監督:金子修介
出演:岡田将生、羽村仁成、黒木華、星乃あんな、前出燿志、松井玲奈、北村一輝、江口洋介

「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」や「ラストマイル」もそうだったんだけど、男性俳優では今年の邦画の自分の中で岡田将生無双だった。女性俳優は後述。

原作は中国のベストセラー小説。
殺人事件を撮影してしまった少年たちと殺人鬼の物語。

舞台が沖縄というのがとても良くて、日本なんだけどどことなく漂う異国感が映画を引き立てている。

監督が金子修介だけあって少年少女たちの描き方が巧みだ。

一癖も二癖もある展開なので、ぜひあまり予備知識薄めで観ていただきたい。



7位:胸騒ぎ




監督:クリスチャン・タフドルップ
出演:モルテン・ブリアン、スィセル・スィーム・コク、フェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース

 2022年のデンマーク・オランダ合作のスリラー。
今年この映画のハリウッドリメイクである「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」の公開もあった。

リメイク版も評判が良いんだけど、僕はこのオリジナルの最悪な後味を味わって「最悪で、最高だ」という気持ちになったので、ここに選出する。

たしかにラストの展開は「もうちょっとは抵抗しろよ」と思わされるのだけど、僕は「人間こういう状況まで追い込まれると、こうなるのもおかしくない」という事を悲しいかな理解しているので、堪らないラストであった。

ここまで心を圧し折りにくるような映画に出会える衝撃。その慟哭のために、僕は今日も映画館に通うのだ。

リメイク版もオススメだけどね。
先にこっち見た方がよりリメイクが映えるかも。



6位:ぼくのお日さま




監督:奥山大史
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩


僕の兄がハンバート ハンバートが大好きなので、必然的に自分もよく聴いていた。

その中で"ぼくのお日さま"はオールタイムベストに放り込むくらい入れ込んで好きな曲である。
その曲からインスパイアされた映画なのだから、観に行かない理由がない。

ストーリーは、ある田舎の雪町で吃音を抱えている男の子が、フィギュアスケートをしていた女の子に恋焦がれというストーリーだ。ざっくりしすぎだが。

メインキャラとなる3人のシーンが愛おしくて、愛おしくて。特に池内壮亮は良い俳優だ。
ゾンビーズの"Going Out of My Head”をバックに凍った湖でスケートする場面は今年の映画でも思い出深いシーンの一つだ。

かといってそのほんわかと暖かいままで終わらないストーリーも絶妙だ。



5位:密輸1970





監督:リュ・スンワン
出演:キム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソン、パク・ジョンミン、キム・ジョンス、コ・ミンシ


韓国の海女さんケイパーもの。

娯楽映画として完璧だと思う。
ポップコーンがもりもり進む。

海女さんたちによるケイパーものという点でポイント高いのに、途中から出てくる密輸王のチョ・インソンがただのチャラ男かと思ってたらマジで強いの最高すぎる。眼帯の男と共に見せるホテルのバイオレンスシーンは白眉。

あとキム・ヘスの70年代レトロポップなファッションスタイルがめちゃくちゃカワイイ。

ケイパーものはさっき挙げた「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」とかも良かったんだけど、上記の要素が個人的にツボったので選出した。



4位:ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ





監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ


全然トップ3どころか1位にしてもいいくらい好きな作品だ。大切な映画でもある。

こういう余韻を残す映画が、僕はやはり好きなんだろうな。

何よりの魅力は主役の3人の関係だろう。
特にポール・ジアマッティは今更僕が言うのが野暮なほど素晴らしい。

もう色々なところで語り尽くされてるし、アマプラにも来てるんだから、とにかく見て欲しい。クリスマスは終わってしまったけど、まだ冬のうちに。

こういう映画に出会いたくて、こういう気持ちになりたくて僕は映画を観ている。


ここからトップ3になるけど、ぶっちゃけトップ10入る映画はどれも1位に成り得る要素を持っているので、あまり気にしないでいただきたい。

「悪は存在しない」とか「梟」も良かったし、ホラー・スリラーだと「ソウX」は久しぶりに会心の一撃だったと思う。
あとシャマランの「トラップ」も良かった。あと「夜のまにまに」は奇妙礼太郎の主題歌とともに強い余韻を残してくれた。映画って本当に素晴らしいですね。


そもそも何故自分がこうした年間ランキングを書いているのか。

それは映画の格付けではなくて、2024年の自分がどういう心境だったのか残すためだ。それは、いまこの瞬間しかできないことだ。

そういった視点で思い返したとき、2024年で最も刺さった映画トップ3を発表しよう。






3位:カラオケ行こ!




監督:山下敦弘
出演:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、北村一輝、加藤雅也、やべきょうすけ、吉永秀平


純粋に今年観た回数なら1位だと思う。
「シンゴジラ」くらい気軽に観ている。

劇場で結局3回観たのかな、あとは配信で観たしもちろん円盤も買った。特に1回目の鑑賞での笑いによる連鎖反応的な盛り上がり具合は最高であった。




これもまた映画館で見る喜びである。まぁ今年客席隣人の酷さで泣かされたこともあるけど……

映画として原作を尊重しながら、素晴らしい映像に仕上げている。それにしても「ラストマイル」といい、野木亜紀子マジで天才過ぎないか。
山下敦弘監督のファンなのもあって、もう最高。

あと地味に綾野剛とやべきょうすけの並びがウシジマくん思い出せて嬉しい。


原作にない要素でいうと「映画を見る部」の設定が本当に絶妙だと思っていて。
巻き戻しのない青春、取り返しのつかない声変わり、最後に現れる陽の差す窓、完璧だ。

大抜擢となった岡聡美を演じる齋藤潤そのものとも重なるようになっていて、間違いなく今この瞬間にしか生まれなかった作品となった。

それにしてもあの細身でスーツの綾野剛の色気は男目に見ても凄まじい破壊力だ。あんな見た目になりてぇ……


僕は音楽に人生を狂わされた人間だ。
だからか音楽を大切にしている映画は、ちょっと人よりも思い入れが強くなる。

まさかXの"紅"で泣く日が来るなんて思わないじゃないですか。もう僕は"紅"で泣く身体になってしまった。

笑って泣けて、泣けて笑って、笑いながら泣いてて。映画を観る喜びってこういうことなんだと思う。



2位:ロボット・ドリームズ





監督:パブロ・ベルヘル


これも会話がない映画だけあって、音楽要素で更に印象が強くなった作品だ。

もう大ネタ中の大ネタという曲になったアース・ウィンド&ファイアの"September"をこんな見事に重ねる映画が誕生するとは。

正直、途中の犬にすごくヤキモキしていた。なんだコイツって。
けれどとっくに気づいているんだよね。あの犬のダメさは、自分のダメさなんだって。

良くも悪くも、本当にこの主人公の"Dog"に共感してしまうばかりで。誰か、僕の人生を変えてください。

けれど、自分なんかよりあの犬はもっと人生をちゃんと生きていて。その姿に、励まされてしまった自分がいたんだよね。

それに対するロボットの存在。

ピクサーの「ウォーリー」とかもそうなんだけど、僕の涙腺は無機質なものが向ける健気な愛情を見ると無条件で泣けるようにできている。

もう砂浜での鳥とのストーリーなんて、そこまで泣くとこじゃないはずなのにボロボロに泣いた。




寒くなって乾いた風に響く"September"に、聴き返しながらまた僕は泣けてしまうのだ。



1位:ルックバック





監督:押山清高
出演:河合優実、吉田美月喜


「ルックバック」に関しては、原作からして思い入れがあまりに強い作品だ。理由は後述する。

そんな思い入れ強い物語を、これほどまでに真摯にアニメーションヘ落とし込んでくれた、押山清高へ感謝しかない。プレッシャー凄かったと思う。

原作に対してのアニメーションとしてのアプローチが完璧にハマっているし、映画のために無理やりストーリーを足して尺を伸ばすこともなく58分にした決断に感謝だ。
そして映画で足されたさりげない要素たちも絶妙であった。

あと何より主役2人の声がとても良くて、特に河合優実は「あんのこと」でもやられたけど、今年は間違いなく河合優実の年だ。※「ナミビアの砂漠」はスケジュールが合わなくて未見


人生は「きっと、こうだったら良かったのにな」と後悔し続ける旅だ。

物語に「ifもの」というジャンルがあるのか分からないけど、歴史に「もしも」があったらというフィクションストーリーである。

クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」がインスパイア元の一つであることは原作でも言及されている。





僕はこの映画を初めて観たとき、涙が止まらなかった。

シャロン・ステートの事件は当然知っていたけど、劇中でシャロン・ステートを演じるマーゴット・ロビーがあまりにも愛おしかったのだ。
あの映画館で自身の映画を観る姿に、涙せずにいられるだろか。あと火炎放射器は笑い死ぬかと思った。

「この人に、あんな事件で死んでほしくない」と思いながら映画を観ていた。それが、あの物語が「if」に入った瞬間、タランティーノの描きたかったストーリーと自分の想いが全て重なった。


「ルックバック」はやはり同じで、僕は"あの事件"が起きたとき、あまりに呆然としてしまった。何故こんなことが起きたのか、どうしてこうなってしまったのか。

感想記事に書いていなかったことがあって。
今年書こうとしていた小説(?)のアイデアがあって、試しに書いてみようかと結構真剣にプロットを練っていた。

そしたらある日、たまたまとある映画の話題を見て、それがちょうどまさに書こうとしたアイデアのものだった。

当然それを見て憤るなんてことはなくて「俺が、考えつくアイデアなんて誰か思いつくよな」って笑って諦めたんだけど、世の中にはそれで全ての歯車を狂わせてしまう人間が、たしかにいるという恐ろしい事実。

悲しみを繰り返さないために、人は物語を生み出すのかもしれない。

人生に「もしも」はない。

だから人は「もしも」を求めてフィクションを創るのだ。人は物語の中ならどんな残虐だってエンターテイメントにしてしまうんだから(「テリファー3」のヒットなんてまさにそれだ)

人は抗うために物語を生むのだ。

だから人は、かき続けるのだ。


なんか、そんなことを書いているうちに1月が瞬く間に過ぎていって、これを書いている当日に法政大学の八王子キャンパスで女子学生がハンマーで複数名に殴り掛かるというニュースを見てやるせない気持ちになった。


最近は映画公開後にすぐに配信されるので、劇場へ行く人が少なくなっているかもしれない。

正直自分も一時期映画館行くのが億劫になっていたこともある。だから週一の習慣にするルールを設けたのだが。

例えば「関心領域」なんてまさに劇場でなければ体験できない映画だ。

あと自分は大抵ポップコーンを昼ごはん代わりに食べてるんだけど、食べ比べるとTOHOシネマズのは特に自分の好みだなぁと思う。

映画館でなければ体感できない経験は間違いなくある。また来年もそんな経験ができればいいな。


【番外編】
配信部門:地面師たち





理由は、もうええでしょう。最高。

2025年も素敵な映画に出逢えますように。










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