2020年11月10日火曜日

【ライヴレポ】THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE -DOME SPECIAL- @東京ドーム 2020.11.3








THE YELLOW MONKEYが東京ドームでの有観客ライヴを行った。

コロナ禍と呼ばれる状況になってから、有観客のライヴ公演としては最大規模のものだ。
日本国内だけでなく、世界規模で見てもドームクラスの公演は初ということもあり、世間の注目が集まったライヴとなった。

エンターテインメントの未来すら左右する、東京ドームに集まった19,000人の観客たち。その1人になった人間が会場で感じたものを記録として残したい。

ライヴの具体的な内容については、当日の中継やストリーミング配信もあったので、そこまで深くは語らないので、ライヴのことだけ見たいという方はご注意を。

THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE -DOME SPECIAL-
@東京ドーム 2020.11.3


※TOP画はオフィシャルサイトより引用





THE YELLOW MONKEYは30周年を記念してドームツアーを行った。
2019年12月のナゴヤドーム、2020年2月の大京セラドーム大阪、そして2020年4月に東京ドーム2daysの4公演を予定していた。大阪までは無事に開催した。しかし、大阪公演の少しあとに、世間の状況は一変した。

少し長くなるが、記録としては重要なポイントなので書かせていただきたい。

Perfumeがドームツアー「8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」の千秋楽である2月26日の東京ドーム公演について、当日に中止にするという旨を発表して話題となった。前日の公演は行っており、まさにそこが一つの水際となったのだ。

2月半ばには大阪のライヴハウス2箇所で感染者が出たことで、世間の注目を浴びてしまった。
(自分も同じ週末に別のライヴハウスで大阪遠征をしていたので他人事ではない)

以降、ほとんどの公演が中止か延期になりエンターテインメント業界は窮地に立たされた。

THE YELLOW MONKEYも4月の開催は難しいということで公演の中止を発表した。

春には外出自粛が呼びかけられ、エンターテインメントはおろか、人と人が集まることさえできない状況が続いた。エンターテインメント業界は不要不急という名の下、ほとんど活動ができない状況となった。出口の見えない暗闇を手探りで歩いている状況だ。

無観客での配信ライヴも行われているが、興行としてみればメジャーのミュージシャンであっても厳しい面が多いようだ。

秋になり少しずつ規制が緩和され、観客を入れたライヴ公演も再開の運びとなった。しかし、ロックコンサートは観客が50%以下と制限されている。会場代などを考慮すれば到底採算に見合うものではないだろう。それでも、ミュージシャンにとって観客の前でライヴができる喜びは、大きいようだ。

それは観客も同じだ。音楽好きにとってライヴというものは、日常であり生活の一部のようになっている。ライヴというものは日常の中の非日常というのは音楽好きにとって不可逆なのだ。

そんな中で、THE YELLOW MONKEYは予定していた東京ドーム2daysの振替として、東京ドームを含む4つの会場で4つの公演を行うと発表した。発表時点で観客の動員については確定させず、状況に応じて動員を決めるというものであった。

先に触れた規制緩和の件もあり、東京ドームでのライヴを有観客にするというアナウンスがされた。

当然ながら賛否両論が出ていた。THE YELLOW MONKEYとして踏み出そうとした一歩を評価するものもあれば、否の意見についてもまた対局にあるわけではなく、THE YELLOW MONKEYがこうした挑戦をしてもしものことがあったらというファンの心理から出ていたもののように感じた。






コロナ禍移行で過去に例を見ない規模で観客を入れて行うということで、運営側からは徹底した対策がアナウンスされた。人がどれだけ盤石の態勢でいても、それを時に上回ってしまうのが自然だ。それでも万全の策を打ち、1%でも0.1%でも危険の芽をつぶし、成功へと繋げようとしていた。

公演2週間前から接触確認アプリの起動が義務付けられているので、(日々気をつけてはいるが)感染についてはより気を掛けるようになった。

当日。ライヴ前は絶対に緊張する。「何が起こるかわからないドキドキ感」と書けば簡単だが、今回はその種類が違う。何が起きるかわからない、何も起きてほしくないという気持ちが、心を緊張させていたのだ。

同時に、おそらく全世界で誰も見たことがない新しいドームライヴが待ち受けているということで、そういった意味でのソワソワとした地に足のつかない気持ちもあった。単純に期待とも不安とも言い切れないアンビバレンツな心境だ。兎に角、過去に類を見ない独特の緊張感であった。

正直、中に入って観客席とステージを見て、会場の空気に触れた瞬間に感極まるんじゃないかと思った。けれど、思ったよりも冷静に受け止めていた。もちろん感動していないわけではないのだけど、5年ぶりとかそういう単位でライヴを見たわけではないので、どちらかというと今まで通りの感覚でいれたからかもしれない。

座席は1Fスタンドだった。1席ごとに間が設けられている。スクリーンにはカウントダウンの表示がずっと出ていた。
5分ほど前になると、TYMS PROJECTの方がステージに出てきて、改めて注意事項をアナウンスし、その後に今日のライヴへ向けての意義が語られた。スタッフ側が徹底して準備してきた空間、全国が注目するステージ、そこに立ち会う意識が強まる。それに応えるように響いた大きな拍手の音に、とても感動させられた。

声ではなく、拍手で迎えられたカウントダウン。暗転した瞬間、全員が衝動に叫びたい気持ちを抑えたことだろう。映像が流れ、そのバックに流れるオーケストレーションが、あの曲のフレーズを紡ぐ。それに気付いた瞬間、目に涙が浮かんでいた。万雷の拍手で迎えられたメンバー、そして” 真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~”のイントロが鳴り響いた。

この曲から始まるとは想像さえしていなかった。けれど、いざそれが現実になると、この曲ほど相応しいものはなかったではないかと思わされる。


砂時計の悪戯を手品みたいに呼び戻して 飾りたてた骸骨とラスト・ダンスを


THE YELLOW MONKEYのシーズン2の中で「時」が重要な要素となっている。
砂時計はそのままでいれば、淡々と時を刻む。しかし、世界がこのような状況になり、淡々と刻み訪れるはずだった時は、迎えることができなくなってしまった。それでも、再び運命のタイマーは回り、時はまた刻まれ始めた。

しかしながら、映像からもおそらくコロナ禍にならずとも、このオープニングであったことは変わらかったと思われる。それはやはり、東京ドームというこの場所が、THE YELLOW MONKEYにとって終わりを迎えた場所だからだろう。それでも、アウトロで響く「change's coming」という言葉はどうしても現在の「快楽と狂気の間」の世界とこれからの世界を唄っているように思えて仕方ない。

“追憶のマーメイド”、”SPARK”と続く。どういう展開のライヴのなるのだろうと思っていたのだけれど、ある意味で潔いほど”いつも通り”のステージを見せてくれた。「Are you ready to spark?」のフレーズや、”Tactics”のコール&レスポンスなど、観客側が唄えない状況でもあえてそのままやってくれたことで、それぞれの胸の中で合唱が鳴り響いていたように思う。

曲が終わって暗転しても、センターステージにメンバーが向かっても歓声は沸かない。そMCで吉井和哉は「みんなでほんとにルールを守って、このロック、っぽくない感じ?」と言っていたけど、統制と抑制の場内で、一人ひとりが「この中から感染者を出してはならない」という執念にも似た感情で見守っていたからこそだ。

センターステージで披露された”Four Seasons”が印象的だった。世界に溢れる情報の嵐の中「人間らしい君と」というフレーズは、「change’s」の中で変わらない喜びに満ち溢れていて、ライヴ、音楽を聴くことへの純粋な感情を思い出させてくれる。ある意味観客は言葉を封じられた中で見ているので「身体で表現してください」という吉井和哉の言葉ではないが、限りなく人間が猿だった頃の原始的な感覚ですらあるかもしれない。

祈りにも似た”JAM”の光景。フリフラが赤く光り、会場には事前に募集された歌声たちが響いた。

ふと気付いたことがあって。「ジャム」はトーストとかに塗るジャムで、曲中でおそらく血の比喩として使われている。それとジャムって、音楽ではバンドが集まって即興的に演奏することを「ジャムる」と言うよなということを思い出した。

もちろん演奏はリハーサル等で入念に固められたものではあるのだけど、ライヴの演奏の最後のピースとなるのは、僕ら観客だ。誰かに音楽を届けること、目の前にいる人へ、画面の向こうの人へ音楽を奏でる。だからこそ、一つとして同じライヴはないのだ。観客がいることによる化学反応、それもまた一つのジャムの要素なのではないだろうか。

そしてライヴというものを大切にしてきたバンドだからこそ「君に逢いたくて」というフレーズは、このライヴにとってとても重い意味を持つこととなった。この曲もまた、コロナ禍によって本来の意義以上の意味が生まれたのだ。

終盤にかけてはフリフラの演出や、観客たちもペースに馴れてきたこともあり、歓声がないのみでそれ以外はまさにこれがライヴという光景が広がった。“SUCK OF LIFE”でコロナ禍仕様のマスク越しの絡みが生まれ、”バラ色の日々”の前の「40周年か、50周年でまた必ずやります」という宣言が胸を打つ。

そして本編のラスト。ライヴにおいて、1曲目と本編の最後の曲はとりわけ強い意味を持つ。
選ばれたのは、THE YELLOW MONKEYが再集結をして最初に生まれた楽曲。

“未来はみないで”

最も聴きたい曲だった。名古屋公演ではやっていないので、今回初めて生で聴くこととなった。

この曲について名古屋以降(CDが届いてから)、事あるごとに解釈を語り合った。その中で夏頃に自分の中でひとつの解釈が生まれたのが、2番のBメロだった。


誰かの歴史をなぞった スーパースターが横切った 子犬を抱えながら


このフレーズについてしばらくの間、意図はわかるが意味が完全につかめないという状態でいた。

ある時、ふと気付いたのがスペースの文節ごとの区切りがそのまま「過去 現在 未来」になっているということだった。そして、そこに「継承」の意味が込められている。歌詞を書いた吉井和哉としては、スーパースターが特定のモデルがいるのかもしれない。しかし僕らにとって、東京ドームのステージで演奏を打ち鳴らしたTHE YELLOW MONKEYは、間違いなくスーパースターだった。

子犬(赤ん坊とかにしない辺りが吉井和哉らしいと思う)が未来を象徴する存在であり、僕らが見たスーパースターたちは何を抱えていたか。それは、エンターテインメントの未来なのだ。

2020年11月3日、東京ドームで行われた公演が、今後の礎となるか最悪の前例となってしまうのか。そんな、とてつもないプレッシャーとリスクを、メンバーもスタッフたちも受け入れ、それでも未来へ音楽、ライヴを繋ぐために公演を行ったのだ。

たしかにルールと規制で雁字搦めのライヴかもしれない。でも、僕らの目にたしかに映ったのは、時代錯誤なくらいギラギラの衣装(およびタンクトップ)を着て、音楽を届けてくれた、最高のロックスターの姿だった。

そんな人たちが、1万9千人のファンを信じて待っていてくれたのだ。多くのファンにとって、楽しいばかりではない想いが詰まった東京ドームで、吉井和哉は「また逢いましょう」と言ってくれた。


好きな歌を一緒に歌わないか? そのために歌があるなら


たとえ会場に響かなくても、1万9千人の声は響いていた。あの場にいた人々の心に、たしかにそれは聴こえた。

ライヴとは確かめ合う事だ。あの場に生まれた笑顔は、決して不要不急の存在なんかではなかった。

アンコールの大ラスで”プライマル。”を選んだこともまた”ずるい”演出だ。

2016年5月11日。国立代々木競技場第一体育館で”プライマル。”から始まった旅が、フィナーレに選ばれたのだ。しかしながら、それは本来4月に想定していたラストなのだろう。まだTHE YELLOW MONKEYは続いている。


本来であればライヴが終わって家に帰るまでがライヴだ。
しかし、今回はそれでも終わらない。少なくとも二週間後「感染者は0でした」という事が判るその日まで、あのライヴは続いている。

そこでようやく東京ドーム公演は成功となり、未来へのバトンが繋がれるのだから。




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