2021年9月22日水曜日

【感想】ポルノ全シングルレビュー51st「テーマソング」






――あなたが最後にワクワクしたのはいつですか。

ポルノグラフィティのニューシングル「テーマソング」がリリースされた。

シングルとしては実に51作目となる作品で、これだけ作品が出ていればそろそろ惰性になってもおかしくないのに、ポルノグラフィティは惰性どころか、より先の世界へ新たな挑戦をしている。

僕はフラゲ日に「CD買う→REUNION映画観る→帰ってCD聴く」という流れだったので、久しぶりに刺激が強すぎて脳が壊れるかと思いました。
ファンになって20年以上が経つが、CDを手に取り再生ボタンを押すのにこんなにワクワクできるなんて、夢にも思わなかった。

新藤晴一が「3曲とも期待に応えられるものになったと思う」と自負していた通り、3曲入りのシングルはとても満足度の高い仕上がりとなっている。


【感想】ポルノ全シングルレビュー51st「テーマソング」








1. テーマソング




表題曲。

爽やかな曲調の応援ソングというと、下手をすれば軽くなってしまいかねないが、今のポルノグラフィティがやってそれで済むはずがなかった。
先行配信もあったので結構な回数聴いているのに全く飽きないどころか、歩きながら聴いていて曲が始まると毎回ドキドキする。老化か恋だと思う。

曲については初聴きの時などでも触れているが、改めて書こう。

印象的なのが、クラップや合唱のコーラスパートだろう。
これからツアーが控えているが、クラップは出来てもコーラスはまだ観客には許されないものだ。

だからこそライヴにおける"テーマソング"が本当に完成するのは、まだ少し先の世界だ。 それが悔しさでもあり、暗い世相の中においての微かな希望ともなっている。満員の場内にこのシンガロングが響く日が、待ち遠しい。

今回、歌詞について新藤晴一は折に触れて「応援ソングは得意ではないので」と語っている。逆にいうと、得意なのはピュアではないラブソングやひねくれた目線の歌詞だというのはどうかと思うが、たしかに新藤晴一の作家性にはあまりない。

手掛けた中で方向性として応援ソングと呼べるのは"ギフト"や"A New Day"、"ブレス"なんかが近いかもしれない。

とりわけ"ブレス"では直接触れているが、無暗に背中を押すようなものではなく、君は君だという厳しいながらも優しいメッセージだ。なので"テーマソング"も背中を押してくれる曲というよりは、背中を支えてくれて一歩踏み出す勇気をくれるような曲になっている。

その一歩とは闇雲に歩き出すというものではなく、自分自身が信じた道なのに一歩が踏み出せない人へ向けているように思う。それプラス、今のコロナ禍という世の中においては、今まで以上に自分以外の要因で気持ちが止まってしまうことが多い。自分だけの力で乗り越えるのが難しい世界だ。

だからこそ、あえて新藤晴一は今まで以上に踏み込んでメッセージを歌詞にしたのだろう。 ここまで踏み込んでいるからこそ、(たとえとして適切ではないが) ドーピング的に心を揺さぶる歌詞になっている。

ただ、やっぱり最後に一歩を踏み出すのは自分自身であるということは揺るがない。だからこそ、新藤晴一はこう書いた。


その胸は 震えてるか?



この問い掛けこそが新藤晴一なのだ。


 





2. REUNION





東京ドーム以来、久しぶりに行われた有観客+配信のハイブリッドライヴ「サイバーロマンスポルノ'20 ~REUNION~」のために書き下ろされた新曲。

晴れてCDにも収録されたのだけど、音源化に際して歌詞が変更になっている。というか新たにCメロが追加されてて、そのCメロがもう大変すぎて頭が溶けそうになる。ちょっとどうかしてる。


我と彼を隔てるのは 此処と其処を割かつのは
止まった思考と 固定された視点だ
I am you, Here is there 真理を孕んだこの矛盾



という読んでるだけで涎が出る歌詞もたまらないのだけど、それを歌い上げる岡野昭仁の歌声が凄まじいことになっている。

今回のシングルで作曲は2曲あるけど、作詞は3曲とも新藤晴一が担っている※。その代わり岡野昭仁の歌が、岡野昭仁が7人くらいいないと成立しないくらいヴォーカルが多様に富んでいる(インタビューでは謙遜して「5つの歌声くらいにはなった」と言っていたが、それどころではないだろう)。
※"REUNION "のサビの英語フレーズのみ岡野昭仁が書いている

その口から、喉から、魂から届けられる歌声が「歌そのもの」でとても強いメッセージになっている。これは間違いなく、ソロ活動を通して岡野昭仁が改めて歌というものと向き合った結果といえる。

このCメロは特にソロ2曲目に発表された辻村有記とのコラボ曲"Shaft of Light"の力が大きかったのではないかと思う。この楽曲で、音楽界のイオンモールことポルノグラフィティでもなかった、また新しいジャンルへの挑戦だった。

岡野昭仁のソロライヴの感想でも書いたけど、岡野昭仁はたとえ人の書いた歌詞であっても自分の言葉として表現する力に長けている。THE FIRST TAKEもそうだったけど本当に最近のこの人は歌の権化みたいになってきた。歌声聴いて「ありがたい」って思うようになってきたもん。

ライヴでの"REUNION"からの短い間での進化もまた、ソロ活動の成果が母屋にもたらされた実感を持たせてくれる。一言でいうと、怖い。


3. IT'S A NEW ERA




え?これカップリングでいいの? とドギマギした。
入ってる元素(エレメント)が全てLの大好物です。本当にありがとうございます。

"テーマソング"がシングルA面として直接的な言葉を多く用いて応援歌を描いているのに対して、"IT'S A NEW ERA"は新藤晴一らしさが随所に散りばめられた、メタファ満載の応援歌となっている。歌詞カード読みながらの初聴きで、もう楽しくて楽しくてニヤけてしまった。 そう思っていたら、やはりインタビューでも「表現は違うが"テーマソング"と同じテーマ」と言っていた。

個人的に感じたのは"シスター"から通じる世界観ではないかということだ。"シスター"における船出の先にあるものが"IT'S A NEW ERA"ではないだろうか。

こういった細かな考察がたくさんしたいので、また別の記事で歌詞は深堀りしようと思う。そうでないとここから5000字くらい記事が長くなる。

メタファ満載といっても回りくどさみたいなものは感じさせなくて、すっと言葉が入ってくる。なぜそうなっているかというと、宗本康兵によるアレンジと岡野昭仁の歌声があるからに他ならない。

冒頭の音数を減らしてクラップを使ったアレンジは、憶測だけどコールドプレイの"Hymn for the Weekend"辺りのイメージなのではないか。岡野昭仁の力強い歌の裏で鳴る少しツインギター寄りなギターサウンドが印象的だ。個人的にはこれこそがポルノグラフィティの真髄ではないかと思う。

岡野昭仁の揺るがぬ声の力と包容力、新藤晴一の寄り添うギターと言葉、外から内から僕らの心を動かしてくれる。そうした一歩一歩、確かに歩を進めるような展開の先、Cメロからギターソロにかけて霧が晴れていくかのように視界が拓けていく。

そこから一度落ちサビになるところで立ち止まり決意し、最後のサビで走り出す。青空が映り、真ん中に「IT'S A NEW ERA」と画面に出る。

俺はいま映画を観た。
4分半の曲なのにクリストファー・ノーランの映画を観終わったような満腹感。


けれど、このシングルの恐ろしさはそれだけではない。
僕は基本的にリピート設定にしているので、青空から暗転してエンドロールにはいかず、カメラは下にパンしてドラムのイントロからまた"テーマソング"が始まる。

"REUNION"~"IT'S A NEW ERA"を経て改めて響く"テーマソング"2回目が、より強くなる。ワクチンの副反応かよ。

これこそがシングルを聴く喜びなのだと思う。
ひとつひとつが強靭なのに、3曲が束になるとMCUくらい壮大な世界になる。満足度が多次元宇宙である。

このシングルの曲たちを引っ提げたツアーというだけで楽しみだし、この曲たちがまた東京ドーム公演のような場内で響く世界になることを祈っている。


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2 件のコメント:

  1. 先ほど、ウチのカミさんとREUNIONのライブ映像見ながら
    今度のライブへ気持ちを高めています。
    私たちは大阪が初日で、豊橋、名古屋と参戦します。
    メンバーも目下。絶賛レッスン中でしょうか。
    先日の THE FIRST TAKE でも感じましたが、
    ポルノは歌ぢからもさることながら、
    REUNIONの歌詞にもある「マントラ」の力が強いと感じますね。

    私論になりますけど、最近気が付いたのですが、
    晴一さんの詩は1番に刺さるフレーズが多く、
    先に気を引くというか印象的な歌詞でハートを掴む先行逃げ切り型なのに対して
    昭仁さんの詩は2番に印象的なフレーズが多い、
    ジワジワとくる追い込み型なのかとふと思ったりしました。
    「邪険にしないで」も、初めは昭仁さんっぽい歌詞、世界観だと思いつつも、
    1番が引っかかり、よく見ると晴一さんの詩でしたね。
    考えてみればシャイな晴一さんっぽいなぁ、とも。
    本当はセトリ予想のとこに書くべきだったかもと思いつつも。

    なおにゃ


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    1. コメントありがとうございます。
      ツアー楽しみですよね!自分は12月の有明なのでまだまだヤキモキ期間が長いです笑

      2人の歌詞の違い興味深いですね。たしかにその傾向あると思います。晴一さんが1番の歌詞でフックを効かせるのはシングル書く機会多かったからでしょうかね。
      昭仁さんはどんどん感情が押さえきれなくなっていって、後半にかけて想いが爆発するような展開多いですよね。"キミへのドライブ"とか。

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