2020年12月10日木曜日

【ライヴレポ】ポルノグラフィティ CYBERロマンスポルノ'20 ~REUNION~








「人生最大の幸福は、愛されているという確信である。自分のために愛されている、否、もっと正確には、こんな自分なのに愛されているという確信である。」
〜ヴィクトル・ユーゴー


ポルノグラフィティの「CYBERロマンスポルノ'20 ~REUNION~」が開催された。

東京ドーム2days以来、1年3ヶ月ぶりとなるライヴだ。

コロナ禍で初めて行われたポルノグラフィティのライヴ。そこで受け取ったギフトを記す。

※TOP画は特設サイトより引用


【ライヴレポ】ポルノグラフィティ 

CYBERロマンスポルノ'20 ~REUNION~





今回のライヴは有観客+配信という形で行われた。
僕は誉れが足りず、チケットは全て落選したので配信で見た。悔しいです。

2020年という1年は多くの人にとって辛く苦しい日々であったことだろう。
その中で差した一筋の光、僕にとってそれがポルノグラフィティのライヴであった。

何が起こるのか、ポルノグラフィティがいま何を伝えたいのか、今まで以上に何が起こるかわからないセットリストに、単純な期待だけともいえない、ただならぬ緊張感を抱えていた。


オープニングのシーケンスが流れる、とてもスタイリッシュだ。

メンバーが登場し、いよいよ1年3ヵ月ぶりの幕が開ける。



僕らが生まれてきて
半世紀後の世界
サイバー空間で
あなたとつながりたい



"アポロ"
こう来たか。替え歌のサビ始まりとは、予想外だ。

聴いていて気づいた。なぜ"アポロ"だったのか。それは宣言だったのではないだろうか。
「変わらない愛のかたち探してる」この街がジャングルだった時から変わらないもの。

「REUNION」というライヴで、ポルノグラフィティはコロナ禍の世界で、新しいスタイルで「変わらない愛のかたち」を唄ったのだ。「愛」というものの強さを示すように、確かめ合うように。


大統領の名前なんてさ 覚えてなくてもね いいけれど


しかも、どこまで意図したかはわからないが、これだけアメリカで大統領選がこじれ、地下を巡る情報に振りまわされる毎日に、これほど相応しい曲はないではないか。



同時に、新藤晴一にとって「テクノロジーと人間」というテーマは、初期からずっと密接に関連していたのだけど。だからこそテクノロジーで人は繋がれるではなく、人は繋がりを求めてテクノロジーを得た、という考えに着地したように思えて仕方ない。

あとアポロでヴィンテージのレスポールを使うのって珍しいなと思った。ここ最近はほとんどテレキャスターだったはず。


"オー!リバル"
とても挑戦的な選曲だ。"歌いんさい"としてリリースされたが、当然ながら会場にいる観客は声を出せない。けれど、それぞれの胸の中で確かに声が響いたはずだ。 場所や距離など関係ない、見ているファンの想いは簡単にそれを乗り越えられる。

そして、何よりも目玉は配信向けの演出だろう。

3Dのサイを可愛いと思っていたら、サビでスクリーンから外へ飛び出した。さながら、「The dice are cast」のツアーのように、僕らはまたしてもサイに度肝を抜かれた。
AR技術を用いて、リアルタイムでライヴを配信するというのは、他のミュージシャンであったのだろうか。もしかしたら、ここまでやったのは初めてじゃないだろうか(あったらすみません)。


"星球"
演奏された中では、最も意外な選曲の1つだっただろう。けれど、この曲を序盤で演奏するということが、とても興味深かった。
「星球みたいな時」それはライヴを見る僕らの心を表すようなフレーズだ。日頃、住んでる場所も年齢も違う人々が、ひと度ライヴという場所に集まれば、特別な時間を分かち合うことができる。

だからこそ続いてきた「日常」という根幹が揺らいだ時、特別だったライヴという場所も存在の意義を変えた。

ライヴが終わって戻るのは、去年までとは決定的に変わってしまった「新しい生活様式」という名のdaily lifeだ。けれど、一つ変わらないものは、そこにポルノグラフィティの音楽は変わらずあるということだ。

同時に、逆説的ではあるんだけど、当たり前のようにライヴがあった日々、それもまた僕らの愛する「daily life」でもあったんだと思う。

それにしても、山口寛雄のブリッブリのスラップがめちゃくちゃ気持ち良かった。


MC
配信ライヴはいくつかしか見たことがないが、やはりMCのペースというか、リズムを掴むのが難しいようだ。そんな中で「君は面白いこと言わなくていいから気が楽じゃろ」という新藤晴一の言葉とか、戸惑いながらも叫んだ久しぶりの「わしらがポルノグラフィティじゃ」という言葉に、ポルノグラフィティのライヴがまた返ってきたのだと、笑いながらも感慨深い気持ちになる。



"ワンモアタイム"
比較的確信に近い気持ちで「これはやるだろう」と思っていた。
いや、正しくはやって欲しかった。

今年、「Dispachers」で岡野昭仁による弾き語りでも配信されたが、やはりバンドサウンドになると力強さはより増していた。それだけではない、やはり観客を前にした岡野昭仁の歌声は、何倍にもなる。

直前に"星球"をやっていたことで「遠くに一つ輝く星の」という歌詞が、日常の中にある「星球みたいな時」の輝きにも繋がっている気がした。

目にするたびに岡野昭仁の歌声は凄みを増しているが、今回もまた恐ろしさすら感じるほどだ。伊達に本人が「歌が上手くなった」と自負しているだけある。怖い。このままのスピードで世界が回ったら岡野昭仁ver.100はどこまで行ってしまうのだろう。

それと最後のサビのドラムの展開とか、玉田豊夢のドラム……ほんと好き……
前にもどこかで書いたけど、僕の好きなドラマートップ3に入るくらい好きなドラマーです(今回生で見たかったのはそれが大きかった)。



"2012Spaek"
序盤は特に2010~2012という時代の流れを感じた。
いうまでもなく、あの震災を挟んだ年だ。ポルノグラフィティが最後にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でライヴをしたのは2010年の「∠TARGET」以来である。それにしてもこの時も友人だけ参戦していたので、僕には違う意味で因縁の会場だ。

震災にコロナ禍、世界はその時を境に決定的に変わってしまった。

「2020の街」と言い換えられた歌詞。またしても、時代は僕らを容易く未来へ連れて行ってはくれない。分断の世界を表すような左右に分かれて交互に光る赤と青の照明がとても印象的だった。

また、最近はMr.Childrenのライヴ映像で見て驚いたステージの床にLEDのスクリーンを仕込む演出が、ポルノグラフィティでも取り入れられた。

思えば、"2012Spark"はMVで当時最先端のトピックライトを用いている。時代を唄うことを意識して創られた"2012Spark"のメッセージは、8年の時が流れても変わらないものがある。どれだけテクノロジーが進化しても、人は変わらない抱く愛を探すと唄う"アポロ"のように、時代に立ち向かう力をくれるのだ。

あとイントロでギターのチューニングをDドロップにしたけど、音ずれていたのか最初のメロでもう一度直してたのが印象に残った。


"リビドー"
そのままDドロップのロックナンバー。あぁ、やはりtasukuがいることによるギターの厚みがたまらない。

初めて単独で渋谷公会堂でライヴ「東京ロマンスポルノ Vol.4 『横G 』」の際にも演奏された曲だ。そんな懐かしい曲を、どんな気持ちで演奏していたのだろうか。
※見てきたように言っているが当然僕は見ていない


"ヴォイス"
東京ドームの感想で「フルで聴かせてくれ」と騒いだのを読まれたとは思わないが、「(俺の参戦したライヴで)」が抜けていた。
いや、それでも聴けて嬉しいけど。

ピアノのフレーズの流れ違ってた気がするけど、アレンジなのか普通に間違ったのかはわからない。けど、これはこれで面白いなと思った。

声が出せない会場で、その声を求めた人たちが集まって、それは確かに互いの左胸が呼んだ声だ。
思わず「現地羨ましいなぁ粉雪でも降って電車止まんねえかな」と思った(失礼)。



"シスター"
MCに入った時に、新藤晴一がアコギで5カポだったので反射的に「あ、次は"シスター"か」と判ってしまった。たぶん病気だと思う。
しかしながら、演奏されたのも久しぶりだっただけに、感動だ。

"シスター"には表の意味でも裏の意味でも「新たな船出」というメッセージが込められている。それは歌詞の世界もだし、2人になったポルノグラフィティの新たな一歩でもあったからだ。

例えば2011年の震災後に、ポルノグラフィティは「ポルノ丸」という船で僕らをまた未来に運んでくれた。
消えない悲しみと永遠に向き合う心も一緒に。



"ルーズ"
実は、ここまで「配信も案外楽しいじゃん」と思って見ていた。ビール飲みながらでも見れるし。
しかし、この曲のイントロが流れた瞬間、心が穏やかではいられなくなった。ちなみに僕が"ルーズ"をどれだけ愛しているかを知っている母に横で「あーあ、可哀想に」と言われた(友人が現地参加していたことを知っていたため)

いや、もう僕だけじゃなく、これだけ人気ある曲だし同じ想いだった人も多いと思う。生で見たかった。嫉妬や。

あまりに不憫に思ったのか、現地参加した友人が「ビール何杯でも奢ってやる」と言っていたので赦そう。え? 言ってないって? きっと感動で記憶がなくなっているんだろ。

15周年ツアーで聴いてはいるけど、あれなら5年経った演奏と唄は、全く違って聴こえたはずだ。しかも、新藤晴一はヴィンテージのレスポールで弾いたのだ。とりあえず心が穏やかでいられるはずがない。若干ソロのダウンチョーキングは怪しかったけど。



"カメレオン・レンズ"
配信では歌詞がAR演出で飛び出て表示された。
"カメレオン・レンズ"の持つメッセージが、コロナ禍の世界で、悲しいほど強まってしまった。

それぞれの目に映る違う世界のかたち。
それが、正しい方向に向くならば、人は本当の多様性を受け入れることができるようになるだろう。

改めて、何度聴いても心がソワソワしてしまう曲だ。
やってくれて本当に嬉しかった。


"海月"
正直に言えば『UNFADED』ツアーで披露されたので、しばらくは、下手したらもう二度と披露されないとさえ思っていた。
前日に配信された前夜祭でflumpoolの山村隆太が”海月"の名を挙げていたが、まさか本当にやるとは思ってもなかった。もはや何かがリークされたんじゃないか。

「何一つ変わってない」というフレーズは、これまでの意味とは違って、新しい生活の中でも変わらない想いを唄っているように聴こえる。

ならば「何一つ歪めない」というのは、まさに直前の"カメレオン・レンズ"の「ありのままの真実」そのものなのではないかと思う。

世界がどれだけ変わったとしても信じられるもの、それがどれだけあるのか。



この世界に鳴り響いてる そのほとんどの 音が邪魔で そんな時も聴いていたのは キミの声だけだったよ



それはきっと、左胸から聴こえてきた声で。
それはきっと、互いを想いあってきたからこそ響いた声だったのではないだろうか。


昭仁:"ルーズ"も久しぶりにやりましたけど。ファンクラブの方からもとても人気の曲※で、すごく喜んでいただけたようで嬉しいです。


おお、なんだ? 石鯛シャツ。死体蹴りか? オーバーキルか?(嫉妬です)
※15周年ツアーのアンケート企画で「ライヴで聴きたい曲」の2位になった実績がある。


昭仁:配信の方はARで、スタッフが頑張ってくれて。ここにいる人は是非アーカイブで見てもらえれば、一粒で二度美味しいみたいな。







晴一:このライヴの前に全国の方にTwitterでメッセージを送ってもらったり。何度も言うけど、こう言う形で、現地で、配信もあって、ARもあって、時代は進んだなあと。 それでこのライヴは「REUNION」ってタイトルで、また繋がるみたいな意味でしょ。だからこのライヴが、コロナ後の世界に繋がるように。 そして、ライヴがとても貴重な時間だって改めてわかったし。今日僕らは、色々な表現方法があるけど、拍手にも魂が込められると再認識したね。

昭仁:その通り


"アゲハ蝶"
魂の手拍子が会場に響く。
そして、この曲は配信組の想いが最も乗ったものとなった。

事前に募集されたメッセージたち。投稿者の住んでいる地域ごとに日本地図が埋まっていく。数えきれないアカウントのアイコンたちは、地図のほとんど全てを埋め尽くした。僕らは知っている、ポルノグラフィティを愛している人たちが、待っていた人たちが日本中にいたことを。

そのメッセージは蝶となって会場に集まった。無数の青とピンクの蝶たち。それは会場で紙吹雪のようにスクリーンから舞っていった。そのAR演出があまりに見事で、また泣けてしまった。

蝶たちはデジタル空間を飛んでいたとしても、そこには紛れもない、一人ひとりのファンの魂が詰まっている。声や姿が届かなくとも、想いは伝わっている。

想いが届き、美しい光景を生み出した。
それぞれ画面唄ったラララも、きっと彼らに届いているはずだから。
ついでに”ルーズ”を生で聴きたかった怨念もな!


"Hard Days,Holy Night"
12月なのでやるとは思っていたが、やはりやったか。

「すぐに帰ってきて!」というフレーズは会場の女性ファン中心に叫ばれるけど、今回はそれがない(シーケンスは流れたけど)。それでも岡野昭仁が「帰っちゃう」と思わず言ってしまったのは、ジョーク以上に本当に会場の心の声が、これも配信越しに叫んだファンの声が届いたからではないかと思う。

だって、ファンにとってライヴはクリスマスくらい特別な日なのだから。


"VS"
皆川真人の奏でるイントロで高揚感ともまた違う昂りを覚える。
東京ドームで見た景色、それは20年間の集大成としてのポルノグラフィティの姿だった。

あれから1年3ヵ月。
ライヴという場所が遠退き、誰しもが待ち望んでいた光景。


バーサス 同じ空の下で向かいあおう


たくさんのことが変わった。それでも、ポルノグラフィティが見せてくれた景色は、あの日と同じで、変わらない感動をもたらしてくれた。

どれだけ世界が変わっても、変わらないこともある。いや、変えられない想いがある、と何度も同じようなことを書いてしまうが、確かに何度も感じた想いなのだ。

それを僕らは何度も体験してきたではないか。



昭仁:この1年3ヶ月、ずっと表立った活動をしてなかったのに。普通なら、見放してもいいはずじゃん。でも、今日はこうして来てくれて、配信を見てくれて。ほんまに、ありがたい。
この1年3ヶ月の間、ずっと、ずーっと君たちの声は届いておったよ。それでわしらは1年3ヶ月、贅沢な時間を過ごさせてもらいました。
やっぱり、ポルノグラフィティの歯車を、グググっと動かしてくれるのは、やっぱり君らなんよ。そして、その後に遠くまで、遠くまで運んでくれるのも、やっぱり君ら。
そんな君たちと、まだまだ、まだまだ遠くへ行ってみたいから。これからも、よろしくね。


心は、空を裂く号令を聞いたハネウマのように乱暴だけど、
それでも遠くまで運んでくれる。
ただ必死にしがみついてたら、君が目の前に現れた。
Hey you このBig Machineに乗っていけよ。


"ハネウマライダー"
こんなの、こんなのずるいよ。あんなに何度も聴いてきた"ハネウマライダー"なのに、また新しい未来へ僕らを連れていってくれた。

2人のコーラスで歌い上げたサビのフレーズ。
僕らを幾度となく未来へ連れていったフレーズ。岡野昭仁は「君たちが」と何度も言ってくれたとしても、僕らは幾度となく「あなたたちだったから」と返すしかない。

僕はポルノグラフィティがいたから人生を救われた。
ポルノグラフィティのライヴを生き甲斐に、ここまで歩んでくることができた。

どれだけ大袈裟に取られても構わない。
それが、僕の人生だった。

こんな気持ちになれるミュージシャンに、人たちに出逢えることは、それだけで人生の幸福そのものだと思う。

たとえば宮沢賢治が『銀河鉄道の夜』で問いかけた「ほんとうの幸(さいわい)とは」という問いかけ。自分なりに考えた時、僕は「自分を受け止めてくれる人に出逢えるか」ということだと思った。心で誰かと繋がること、それがどれだけ幸福なことだろう。

歯車って、本当はネガティブな響きになりがちだし 、社会の歯車とかそういう意味で。けれども、ポルノグラフィティはそこに「自分たちを遠くへ連れていってくれる原動力」という意味をくれたのだ。

タオルを回せない会場でも、家で振っていた人も、きっと心の中で新しいギアが回り始めたことだろう。



"一雫"
この流れ、本当にどうかしている。
今回、何が聴きたい曲だったか、ずっとわからないでいたけど、そうだ"一雫"があったではないか。なぜか自分の中で完全ノーマークだったせいで、震えっぱなしだ。

tasukuのアコギの刻みが心地よい。


時間は距離じゃない


負け惜しみじゃなく、配信組であったからこそ、このフレーズがより一層強く心に響いた。

「光年」という言葉がある。よく時間と間違われるって話(ネタ)があるけど、光の速さでなければ表せない距離が、宇宙にはあって。そこに挑んだかつての人類は月に到達した。 そして今、光の回線を使って、僕らは距離を越えて同じ時間を共有できるようになった。

それくらい人類は進歩したんだけど、それがもたらしたのは、こうして変わらない愛を確かめ合うことだった。

確かに、東京ドームでやらなかったのは、結構残念な気持ちだったんだけど、こうしてこのタイミングで聴くと、今こそがこの曲を届ける最適解だったとしか思えない。なぜなら、この曲は過去を振り返ると共に、また未来に向けて進む決意を唄っているからだ。


新藤 はい。これはね、僕が今までのライブのMCで発言してきたことを要約して歌詞にしたんですよ。もちろんこの曲のために今回書いた言葉も含まれているけど、要は“新藤晴一がよく言ってることシリーズ”ですね(笑)。昭仁のようにみんなへの感謝の気持ちはもちろんあるけど、自分はポルノグラフィティに対してこれまでも、今も、そしてこれからも思い続けるであろうことを書いてみたという。
ポルノグラフィティ「VS」インタビューより


それにしても、やべえラップ生で聴きたかったなぁ。



アンコール

岡野昭仁のMCから、未発表の新曲へ。この日のために創られた、リリースもタイアップも何も決まっていない新曲だ。


"REUNION"
身も蓋もない話をすれば「ま、1曲くらいは新曲やるだろ」くらいには想像をしていた。夜神月か秋山深一くらいの顔で「想定内だ」と待ち受けた。
それが、まさかこれほどの曲とは思っていなかった。ほろよいを頼んだのにテキーラショットが出てきた。

驚いたのが、オープニングのSEがこの曲のコラージュでできていたことだ。最初から高らかに打ち鳴らされていたのだ。

そして、ポルノグラフィティは"ワンモアタイム"のように、こういう時にこそ力強い楽曲を僕らに届けてくれるのだ。

間奏部分のアシッドっぽいベースの作りは、折しもハルカトミユキが今年リリースした"最愛の不要品"のアレンジのようだ(無理やりねじ込むくらいカッコイイので全員聴くように)。

少し不穏があるのだけど、そこに乗る新藤晴一の歌詞(勘だけど多分そうだろう)、そして真っ直ぐな岡野昭仁の声が、見えない未来を照らす光となっている。

さて、兎に角やられた歌詞が、これだ。


意志を紡いで 縒り合わせ 繋いで
決して切れない意図に変えて張り巡らせよ


このフレーズ、本当に凄い。これ、耳だけであったら「決して切れない糸を」と受け取っていただろう。というか、僕のような凡人常人はそれしか思いつかない。
「意図」という言葉をもってして、「切れない」という言葉を並べるというのは、まさにWonderだった。今年のベストフレーズ確定である。

意図というのは「何かをしようとすること」の意である。
では、ポルノグラフィティが僕らに見せてくれた意図とは何か。


会場で同じ空間に居る喜びも、それぞれの場所や方法で参加して頂くことも、状況は違えど、これまでポルノチームが一番大事にしてきた「観客がいて初めてLIVEは完成する」というライヴイズムに変わりはありません。


待っててくれる人のために音楽を鳴らすこと。

僕らはそれを受け止めること。

ネットワークって言葉があるけど、まさに「網」のように張り巡らされていることを指す。

"アゲハ蝶"で全国の地を埋め尽くさんとばかりに並んだアイコンたち、そして会場にいる人々。まさにどこにでも、繋がっている存在。それを繋いでくれているポルノグラフィティという存在こそが「決して切れない意図」に他ならないのではないだろうか。

その網が、僕らを繋ぐ、助け合うセーフティネットでもあったのではないだろうか。
それくらい、流れるチャットのコメントに、Twitterを流れる呟きに、愛が満ち溢れていた。



メンバー紹介
それぞれの言葉も良かったのだけど、岡野昭仁がおもむろに言った言葉が、この日一番胸を打った。

昭仁:こうして僕らのホームでいてくれた。けれど、それに胡座をかくことはせず、また遠くへ、僕らが運ぶこともあるでしょう、


「ポルノグラフィティ、全盛期は、これからです」 


この言葉がどれだけ嬉しかったことか。
2019年の曲たちもそうだが、何より岡野昭仁の歌声が、ここにきてまた一段と磨きがかかった。すごい高い自転車のギアくらい何段あるんだかわからない。

めちゃくちゃな世界になって、辛いことばかりなんだけど、こうしてまたポルノグラフィティと未来に向けた新たな一歩を踏み出せたことが、何よりも嬉しかった。

だって、これが大言壮語の言葉じゃないと知っているから。それが信じられるから、僕らはこの人たちが大好きなのだ。


"ジレンマ"
イントロで石鯛シャツを脱ごうとして脱げない岡野昭仁に爆笑してしまった。 久しぶりの"ジレンマ"終わり。会場は叫びたくて仕方なかったろう。それでも、映像からその興奮と熱が伝わってくる。

ライヴって、なんでこんなに楽しいのだろう。これほど生きている実感をくれる存在はない。

当たり前のように叫んで、隣の人にちょっと気を遣うくらいの距離で、満員の会場で、またアホになれる日がやってきますように。祈るように、願うように。


あまりの濃さに終わった後、画面越しに見ていたはずなのにグッタリとしてしまった。それくらいのエネルギーが生まれたのだ。

ポルノグラフィティが用意してくれた場所、それは守るべきものを教えてくれた。


これだけ言葉を並べてきた人間が言うのもなんだが、最後は言葉を超えた何かなのだ。 それっぽい言葉みたいになってしまったけど、何か考えるとやっぱりそれは魂と魂の繋がりなのだと思う。

直接触れられなくても、声が掛けられなくても、信じていれば気持ちは伝わるのだ。


「人生最大の幸福は、愛されているという確信である。自分のために愛されている、否、もっと正確には、こんな自分なのに愛されているという確信である。」
〜ヴィクトル・ユーゴー


REUNION NOW   REUNION START


また新たな旅が始まる。

旅路の果ては、まだ遠い。


【セットリスト】
01. アポロ
02. オー!リバル
03. 星球
04. ワンモアタイム
05. 2012Spark
06. リビドー
07. ヴォイス
08. シスター
09. ルーズ
10. カメレオン・レンズ
11. 海月
12. アゲハ蝶
13. Hard Days, Holy Night
14. VS
15. ハネウマライダー
16. 一雫

17. REUNION
18. ジレンマ

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2 件のコメント:

  1. 初めまして。村上春樹と晴一の比喩についての記事を去年見かけてからちょこちょこ覗かせていただいてます。
    小6からポルノファンの27歳(女です)で、今晴一の影響で記者、ライター、校正校閲者と文章を書く仕事をしています。私も言葉に物凄くこだわっているので、主様のポルノに対する思いや感覚が痛いほどわかります。むしろこんなにも同じことを考えて、ブログという場で言語化してくれる人がいるということに救われます。泣けてくるほどに。
    これからも更新楽しみにしております。

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    1. 遅くなりましてすみません。
      コメントありがとうございました。

      自分自身が色々な方のポルノに対する言葉に救われてきたので、そういっていただけて、とてもありがたくもあり恐れ多い気持ちです。

      今後ともよろしくお願いします。

      削除