※ツアー終了したので注意文を抜きました
15thライヴサーキット “BUTTERFLY EFFECT”
@NHKホール 2018.2.1(Day.2) 後編
※文中敬称略
前編はこちら↓
【ネタバレ有】15thライヴサーキット “BUTTERFLY EFFECT” @NHKホール Day.2 前編
「午前5時に反転したものは」
新藤晴一の声が響く。
「海底から見た魚は空を飛んでいて、雲の上から見た鳥は海を泳いでいる」
「2人が黙った時間を『沈黙』と呼び、1人静かにいる時間を『静寂』と呼ぶ」
散文詩のような言葉たち。
すべては覚えきれなかったけど、生中継もあったのでそちらに譲ろう(八王子公演まで見れないのでやってなかったらすみません)
「午前5時に反転したものは」
「夜の本当は朝のウソ」
岡野昭仁が再びステージ中央に戻る。ギターでリズムを刻みながら歌い出す。
"月飼い"
どこかで、本当にうっすらとだが、今回やりそうな予感がしていた。それはネタバレなしのファンの反応から、この辺りの曲をやったのではと、漠然と感じていたからだ。しかし、そんな薄ぼんやりとした感情でいてさえも、慟哭に胸が押し潰されてしまいそうだった。
何度も繰り返し強調されていた「午前5時」というキーワード。それは歌詞としては"THE DAY"や"グァバジュース"などに登場する。タイミング的にも"THE DAY"に行きそうな流れであった。
しかし"月飼い"である。これを踏まえた"午前五時"で頭に浮かんだのはマジックタイムである。夜が朝に溶け込む、その刹那の刻。シングル「シスター」のジャケットの空。夜と朝が静かに共存する刹那の時間。
サビでバンドが入ってくるアレンジも絶妙だ。
この曲は別れの曲だ。しかし、同時に決意の曲でもある。「最後の恋人」との別れ、それでも主人公は歩み出す。空に浮かぶ月から、水面の月に浮かぶ月に視点が移る。鏡のように月を写す水槽の水は主人公の心をも写し、「2つの月」を通して主人公の心情も鮮やかに転換するのだ。
惜しむらくは「最後の恋人」のフレーズだけは間違えないでいて欲しかった。このフレーズこそ"月飼い"において最も重要なフレーズなだけに。
"Part time love affair"
また静かに夜が落ちるように、一音一音がしっとりと心に響くようなイントロ。タイミング的にも披露して欲しいと思っていただけに、静かなイントロとは対称的に心の高ぶりは穏やかではない。
中盤の間奏がハーモニカに変わっていて、これもとても面白いアレンジだった。とても都会が似合う曲だ。
"Fade away"
「ガツンとくる」というのは正にこういう曲のことだろう。「BUTTERFLY EFFECT」の中で最も重さを持つ曲だが、これを生で体験してしまった今、CDの音源ですらもまだ物足りなさを感じてしまうほど、この曲はライヴで聴いてこそという曲だ。
ポルノに対するファンたちの意見とパブリックイメージは違っていて、こういう曲をシングルとして切るのは決断がいる、というようなことを言っていたが、今はこういう曲をポルノが切ってもしっかり受け入れられる世相ではないかと思う。こういう面があるということを、より多くの人に知って欲しいと願うばかりだ。
昭仁「今日は色々な色の曲をやってきたけど、前向きになれるように希望を感じる曲たちを聴いてもらいます」
"Rainbow"~"ギフト"
なんというリレー。久しぶりの"Rainbow" に感動。ついさっきまで「何が正しい?見えない未来」という閉塞感を歌ってたとは思えないほど、突き抜けるような青空になったようだ。そうだ、虹は雨の後に掛かるのではないか。
そして、自分の中でもとても大切な曲"ギフト"。
少しは自分にも期待してみたらどうって?
意外にうまく跳びだせるかも 想像よりもやれるかも
とてもシンプルなメッセージ。それがあのメロディに乗せ岡野昭仁の歌声で鳴り響くと、この瞬間に僕はいつも音楽の魔法を感じるのだ。聴くたびに泣きそうになるのだが、今回も案の定である。
昭仁「今日という日が特別な日になりますように」
"THE DAY"
横浜スタジアム、そして幕張のAmuse Fes、そしてROCK IN JAPANと大きな箱で聴いてきたこの曲。それがホールという箱で鳴らされると、恐ろしいほどの密度に圧縮されたパワーが襲い掛かってくる。ホールツアーの好きなところはここにある。大きな箱のダイナミックな演出も良いが、ホールツアーのじっくりと1曲1曲を味わえるところが好きなのだ。
何度聴いても高揚が沸き立つ。ここでも岡野昭仁の強烈なロングトーンが鳴り響く。
ギターソロ前には演奏の掛け合いが入るアレンジになってたりして、また新たな魅力と出逢えた。
"ハネウマライダー"
もはや語る必要ないだろう。いつもの、だ。ライヴでこれだけ聴いてるのに、何で何度聴いてもこんなに楽しいんだろう。そうだ「明日の忘れ物」を失くさないためだ。
昭仁「今日は本当にありがとう!次で最後の曲です」
"キング&クイーン"
最後はアルバムと同じく"キング&クイーン"。こういう爽やかな曲で本編が終わるのも良いですね。
このブログでは何度か書いてきたが、ここまでストレートにぶち抜けてくれたら、もはや快感という曲。ここまでひねくれた僕でさえも、これだけやってくれたら、もう有無を云わず好きになってしまう。ここ最近のシングルでもかなり好きな部類の曲とまでなった。
それはライヴでもやはり健在で、ギフトと同様におろおろと泣いてしまう類いのものである。ある曲を紹介したい。
do you realize - that happiness makes you cry
気づいてる?幸せに泣いてしまうってこと
The Flaming Lipsというオクラホマのバンドの"Do You Realize??"という曲なのだが、まさにこの歌詞にある通り。
あまりの幸福に、涙が止まらない、まさにそんな感じだ。純粋に音楽を愛する気持ち、それが滲み溢れる、そんな心地で本編を見終えた。
少し補足すると、本編で新藤晴一はヴィンテージのレスポールをかなりメインで使用していた。まだこのサウンドが聴けて感涙ものである。後半ではヴィンテージのテレキャスターを中心に時折、黒テレとレスポールを混ぜる形であった。
アンコール
アンコール1曲目では新曲"カメレオン・レンズ"が披露された。前日はまさに「月蝕の夜」だったこともあり、このポルノグラフィティの新機軸となりそうな、新曲をこんなに早く生で体感できた。
ライヴでの再現が難しいタイプの曲だが、全く遜色ないどころか、生で聴いてもとても魅力的であった。スクリーンに映った歌詞とともにじっくり聴き込みたいけど、身体は勝手に動いてしまう、そんな名曲である。
メンバー紹介
サポートメンバーをいつものように、紹介してからメンバー紹介へ。そこでのMCの記録を残しておく。
晴一「さすがシティ。チリバツだったね」
観客「( ゚д゚)ポカーン……」
昭仁「あなたの『チリバツ』で客席ひどいことになってますよ笑」
晴一「こうして18年やってきて、18年までくれば、じゃあ20年って軽く考えてしまう。でも200m走の最後の20mを足がもつれつつ走って、なんとかゴールではいけないのよ。
デビューしたころは、そこは可能性の大地で、どこを見ても可能性しかなかった。そこからいくつかを選んでここまでこれた。でも「もうやれることないんじゃないか?」と思ってしまうこともあって。でもさっきの新曲の"カメレオン・レンズ"みたいに新機軸になるような曲を、自分たちで探していかなければいけないし、長いツアーだけど1本1本可能性を見つけていきたい」
18年という月日も、日々の積み重ねの上に立っている。その1日1日もBUTTERFLY EFFECTにおける雨の一粒。小さな雨が18年というポルノグラフィティという大河に降り注いでいる。
何回も書いてきたが、僕が「BUTTERFLY EFFECT」に感じたまとまりのなさ、煩雑さというのは、裏を返せばポルノグラフィティはまだもがいている証なのだ。新しいポルノグラフィティを求めて。
そうしてアルバムを見たときに、それまでの「BUTTERFLY EFFECT」とは全く違って響いた。ポルノグラフィティにはもうすでに強力な武器がたくさんあって、やろうと思えばそれを使って活動を続けていくこともできる。しかし、2人はそこに驕ることなく、もがいてもがいて、また僕らをワンダーな気持ちにさせてくれるのだ。あらためてファンにとってこんな幸せなことはないのではないかと思えて仕方ない。
昭仁「僕らはとても優秀なスタッフがいて、サポートメンバーが支えてくれて、その上でパフォーマンスをすれば、良いものはできる。でも最後の1ピースはそれだけではできなくて、最後の1ピースは君たちの楽しむ姿でライヴは完成する」
その後のMCだ。
これだけ力量のあるスタッフが支えていれば、普通に演奏しても十分なライヴをすることは可能である。しかし、2人はそれに驕ることなくその土台の上で更に上に行こうともがいているのだ。そのがむしゃらさこそが「BUTTERFLY EFFECT」であったのなら、僕は考えをあらためなければならない。当たり前のようにいつも楽しいライヴが見れること、思えば数え切れないほど見てきたポルノのライヴでマンネリを感じたことは一度もない。それどころか、いつだって過去最高地点に到達しているライヴを見ていたのだ。
そしてライヴは最後の1曲。
MCの続きから書いていこう。
昭仁「そんな完成したものを、コーティングするには?」
観客「???( ゚д゚)ポカーン」
昭仁「コーティングするには、アホになるしかない!」
観客「( ゚д゚)ポカーン……お、おう!」
リアクションに困るとしか言えないMCからラスト1曲へ。もちろんこの曲である。
"ジレンマ"
ソロ回しでは宗本康兵が初代パッチ師匠直伝の首ブリッジを披露したり、
nang-changはテルミンを観客に弾かせてみたり(羨ましい)、
そしてトドメに新藤晴一は背中弾きを見せたり。
あぁなんて楽しい。
これだ。この終わってしまう悲しさと、底抜けの楽しさのせめぎ合い。またライヴが終わってしまう。でも岡野昭仁の「自信持っていけ!胸張って行け! 」の言葉で明日からも生きてゆける。
こうしてNHKホールのライヴは終わった。
※生声は忘れてしまいました。
アルバム曲では"MICROWAVE"、"I believe"、"スパイス"をやらなかったり、シングルでは"LiAR"をやってなかったりと後半に向けてまだ伸び代を残しているところが恐ろしい。後半でどれかやってるらしいが、ネタバレ見ないようにしているので分からない。八王子を楽しみにしよう。
外に出ると雨は雪に変わっていた。
雪の降る寒さでも冷えることのない熱き想いを胸に僕らは駅へ、明日へと足を早めた。
SET LIST
“BUTTERFLY EFFECT”
@NHKホール Day.2
01. 夜間飛行
02. Montage
03. 真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ
04. ワールド☆サタデーグラフティ
05. ダリア
06. ネオメロドラマティック
07. メリッサ
08. Working men blues
09. 170828-29
10. 君の愛読書がケルアックだった件
11. クリスマスのHide & Seek
12. カゲボウシ(弾き語り)
13. 月飼い
14. Part time love affair
15. Fade away
16. Rainbow
17. ギフト
18. THE DAY
19. ハネウマライダー
20. キング&クイーン
アンコール
21.カメレオン・レンズ
22.ジレンマ
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