公式があまりに25周年を意識しすぎて24周年という言葉が全く出ないけど、24周年である。
TikTokにて嚴島神社でのアコースティク形式のライヴ配信を行った。
※ライヴ自体は録画
無料ということはあるけど、こっちはもうオジさんなんだからあんまりキラキラしたフィールドに引き摺り出さないでほしい。
30分という短い時間でありながら、多くの余韻を残してくれたライヴだったので、一つの記録として残しておく。
ていうか、これをアーカイブに残さないの人類にとって損失になりません?
嚴島神社
まずライヴ会場となった嚴島神社について。
……ライヴ会場って称していい場所ではないけど。
今回のライヴで大事な知識なのでコピペラッシュだけど読んでほしい。
1400年以上前の推古天皇時代に創建されたと伝えられていて、1996年に世界遺産に登録されている。
こうして海に面して潮の満ち引きの影響がある場所にあるのって、昔から不思議に思っていてこの機に調べたら、宮島(通称=厳島)そのものを御神体として捉えていたことで、土地や木を削ることで御神体を傷つけないようにという意図があったという。
海上に浮かぶように建つ社や鳥居にはそのような意味があったのだ。
祀っているのは「宗像三女神(むなかたさんじょしん)」という3柱の姉妹神。
・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと) :商売繁盛、芸能、金運、勝負、豊漁、交通安全、五穀豊穣、海の神
・田心姫命(たごりひめのみこと):結び、夫婦円満、子宝
・湍津姫命(たぎつひめのみこと):航海安全,交通安全の神
特に市杵島姫命は弁財天様を習合しているんだって。初めて知った。
|
引用:月刊モーニングtwo『聖☆おにいさん』より
|
なので、広島という意味合いはもとより、今回の「奉納」という趣旨にとても合ってるんだよね。
ポルノグラフィティが周年の節目に選んだのは、そんな場所なのだ。
ライヴレポ
では本題のライヴレポに入っていこう。
まずはセットリスト。
1. アポロ
2. ハネウマライダー
3. ギフト
4. サウダージ
5. アビが鳴く
以上、全5曲。
ライヴはアコースティックと明言されていたが、サポートメンバー4人を含めたバンド編成であった。
サポートメンバーは以下の通り。
tasuku(ギター)
高間有一(ベース)
皆川真人(キーボード )
田中駿汰(ドラム)
特に高間有一は「しまなみロマンスポルノ’18」以来ぶり。
場所が神社ということもあってハットのイメージがある皆川真人や高間有一もちゃんと脱帽していたので、ちょっと新鮮だった。
バンド編成といってもサポートメンバーもアコギとアコベだったり、ドラムも時にブラシを使ったりしたアコースティック編成。
“アポロ”
嚴島神社の鳥居の空撮から"アポロ"の歌い出しで、もうチケット代の元をとった。
いや、これ無料ライヴだった。おい、こんなもん見せつけてんだから金払わせろよ。
うまく言葉にできないけどアコースティック編成なこともあって、いつもより一層、一つひとつの音が丁寧に紡がれているような印象を受ける。
アコースティックな演奏ってリラックスしたムードだったりするんだけど、今回は他で見てきたようなアコースティックライヴとまた違う印象を受ける。
それもそのはずで、舞台にもバックにも嚴島神社が映っているのだ。
普段であれば視聴者であるはずの僕らに向けて演奏しているんだけど、今回はもっと大きな存在(もの)に向かって音を奏でているように見える(実際、正面には赤い大鳥居と向かい合っていた)。
信仰とかそういうものを超えて、もっと普遍的な祈りを捧げるように。
“アポロ"は人類の技術の進歩と普遍的な愛を求めることを歌っている。
どれだけ時代が変わっても平和を求める心が変わらないように。
“ハネウマライダー”
アコースティックだからということではなく、頭の中で「=タオル回す」ってことが完全に抜け落ちていた。
それは悪い意味ではなくて、それくらい演奏に引き込まれていた。
普段のライヴだと前へ前へって感じでグイグイと容赦なく引っ張っていってくれる曲だけど、今回の演奏の印象は演奏の間の余韻でふわっと導かれて、気付いたらとんでもないところに辿り着いてしまったかのよう。人生をかけた飴と鞭プレイすぎる。
これ演奏している時、すごく良い風が吹いていただろうな。
あと確かギターソロが最近のライヴでやっているようなスタイルを踏襲していた(はず)。
MC
昭仁:今回はこうして嚴島神社で「奉納演奏」をしております。
晴一:長いことやらしてもらっているということを
昭仁:そんな感謝を込めまして。普段なかなかこんな場所で演奏できることはないので、身が引き締まる思いです。
ここには色んな願いを持ってくる方が集まっていると思います。そんな人たちのちょっとだけ背中を押せるような曲を届けたいと思います。
“ギフト"
もう情緒グチャグチャですが?
兎にも角にも直近のROCK IN JAPAN FES '23で喰らったのに、返刀でまだ切ります?
とりあえずハイボール飲みながら見てたんですけど、口から入れた水分が全部目から出るんすよ。
いや、ちょくちょくライヴでやってくれるのは嬉しいんだけど、こうしてフェスとか特別な場所でのライヴでまで選ぶって、もうなんか僕をピンポイントに刺しに来てるとしか思えないんですよ。思い上がりであればその方がいいわ。
それはさておき、これだけ大切なポイントで演奏されてきた曲ということは、メンバーにとっても特別な曲なのかもしれない。
今度もうちょっと「次、刺すから」とか予告してほしい。
新藤晴一メインの間奏のリフを、12〜15フレット辺りの結構高めの音で弾いていたのが印象的だった(確かサビでもちょっと高めのフレーズ弾いてた)
“サウダージ"
最初のガットギターの「ジャラーン」で身体がもう”サウダージ”だと判るようになっていて、なるほどこれがパブロフの犬かと思わず悟ってしまった。
全体的にはTHE FIRST
TAKEとか、それを受けて「続・ポルノグラフィティ」で演奏されたガットギターとアコーディオンメインのアレンジを踏襲してるんだけど、そのどちらとも違う印象を受けた。
特に2番のAメロの最初が歌と高間有一のアコベだけになって、それがすごくハッとするくらい良いアレンジだった(優劣の”良い"ではない)。
こうしてさりげないアレンジの違いで、こんなにも印象が変わるなんて音楽って本当に面白いと思う。いや、そういうアレンジがポンポン出てくるこの人たちがおかしいんだけどさ。
昭仁:ここまで4曲を奉納してきたんですけど、次の曲、この曲をここで演奏する意味が色濃くなるんじゃないかと。”アビが鳴く"
晴一:広島で今年サミットがあって。世界の首脳が広島に集まることの意味があると思って、それの応援ソングとして書いたんですけど。
平和とかそういうものを歌詞にするのは簡単じゃなくて、言葉にしづらいものだから広島の鳥のアビとか、この厳島神社とか、こういう悠久の時間が流れるもののイメージを借りて書きました。
昭仁:そうじゃね。平和を願う気持ちって、皆さんお持ちだと思いますので、その気持ちがずっと続けばという願いを込めて創った曲です。
ここで演奏するということで、震えるような気持ちで演奏します。
“アビが鳴く"
見ている間。本当に何もできずただ画面を見つめていた。
最後の音が鳴り止む、その時まで。
場所、目的、手段が完璧に一致しすぎている。
本当にこの時のために"アビが鳴く"は生まれたんじゃないかって思えるくらい。
演奏も歌もとても良くて、特にさりげないけどサビ入前の「ナナナーナ」ってコーラスをギターで弾いてるのとか、すごく良かった。
これだけ完璧なまでにシチュエーションがマッチしてるのに、「しまなみロマンスポルノ」のライヴ・ビューイングの"愛が呼ぶほうへ"とか、因島ライヴの小学生たちの前でやった"愛が呼ぶほうへ"といい、何故映像として記録を残さない?
Why?
いや、今回は特に本当に思っていて。
僕らはまた今日を記憶に変えていけるかもしれないけど、これを記憶だけに留めてしまうのは、人類にとって損失になると思う。
今年、8月6日ROCK IN JAPAN FES ‘23でも演奏された。
改めて、その時の岡野昭仁のMCを引用する。
今日、8月6日は僕らにとって大きな意味がある日です。わしらは広島出身なんだけど、今日は世界で初めて、原子力爆弾が落とされた日です。
政治的なこととか世界情勢がこととか、難しいことを言いたいんじゃありません。
たとえばね、ここにいる一人一人が平和であると思います。その身近な人たち、旦那さんとか嫁さんとか子どもでもいい、そんな身近な人たちを傷つけたくない。それが平和の根本にあるものだと思います。
だから、次の曲でその気持ちを歌わせてください。この気持ちが、この小さな場所から広がっていくようにという気持ちを込めて、次の曲を聴いてもらおうと思います。
この時にも直前に”ギフト”が演奏された。
こうなるともはや意図的だとしか思えなくて。
「ギフト」ってなんだろうと、改めて考えた。
それはきっと一人一人が持っているもので、ある人にとっては大切なものだろうし、ある人にとっては気づかないものかもしれない。また、ある人にとっては見て見ぬ振りをしているものかもしれない。
「身近な人たちを傷つけたくない。それが平和の根本にあるものだと思います。」
そう思うこともまた。
「人類にとって言葉より早く音楽が存在していた」
しばしば、そう言われる。
例えば「物を叩く」それがリズムになる。
そうして発する音に意味を持たせたものが「言葉」になったんだと思う。
もちろん諸説あるだろうし、僕はただのポンコツなので何の理論も持っていない。
けれど、こうして音楽というものに言葉にできないほど心を動かされるのは確かである。
いや、こんだけ書いてる自分が言っても説得力ないが。
音を出すということは意思表示なのだ。
何かを伝えたいと思うことが、音となって相手に届く。
そう思えば、音楽もまた悠久の時を経て今も繋がる存在だと言える。
歴史を紡いだこの場所で、変わらない、変わってはいけない願いを”アビが鳴く”に込めて。
それはあまりに大きなテーマで、決して答えがあるものではない。
答えを出すことが正解ではない。
自分にとって大切な人を傷つけたくない、その思いは世界から見たら小さなことでも、自分の人生にとっては大きな存在で胸に抱いているものだ。
このたった30分のライヴで、またポルノグラフィティが好きになってしまった。
また彼らを誇らしく思ってしまった。
この時代に生まれてよかったとさえ思ってしまった。
それが、ただただ嬉しかった。
島から海を渡り。
人と人の縁を繋いで。
この場所で音楽という芸能を見せ。
「奉納演奏」と言っていたけれど、それは宗像三女神からもたらされたものではない。
彼らが一歩ずつ重ねてきた足跡の先にあったものだ。
それが信じ続けて重ねた日々の結果だから。
きっとこの先も同じ願いを抱え、また歩いて行くことだろう。
なぜなら、その先に”THE DAY”が待っているのだから。
【ライヴレポ】ROCK IN JAPAN FES
2023「ポルノグラフィティ」セットリスト+ネタバレ感想
【ライヴレポ】ポルノグラフィティ CYBERロマンスポルノ'20 ~REUNION~