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2018年9月18日火曜日

【感想】嘘喰い49巻(最終巻) 〜ハンカチ落とし編完結 屋形越えの先に【ネタバレ】








遂に、遂に終わってしまいました。

ヤングジャンプ連載の『嘘喰い』が49巻、全539話をもって、11年の連載に幕を下ろした。
実際書いたのは終盤だけではあっても、当ブログでも最後もきっちりと感想を書いて終わりたい。


……と書き出して、途中まで書いた段階で記事を書くのを止めてしまっていた。これが書き終わるということは、僕の中で本当に『嘘喰い』が完結してしまう、それが惜しかったのだ。

すみません、嘘です。書きかけで忘れてました。

というか書いたつもりになってました。

ということで、完結してだいぶ経ってしまいましたが。

気を取り直していこう。


最後まで読んでも若干モヤモヤとした箇所もあるが、それは追々1巻から読み直して整理しながら考察したい。

あー何から書けばいいだろう。
とりあえずは最後のゲーム「ハンカチ落とし」の決着から見ていこう。


『嘘喰い』49巻(最終巻) ネタバレ感想






屋形越え「ハンカチ落とし」完全決着



前巻で嘘喰いが仕掛けた「閏秒」の罠。それにより、累計4分58秒の臨死を受けた創一。誰もがその死を見届けたと思った矢先、創一は目覚めた。

5分というデッドラインに2秒達することができなかったことが要因か、まさかの10回戦の幕が上がる。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


運否天賦に任せるしかない嘘喰いは、ギリギリの精神状態の中、勝負を続けるが、シリンダーは蓄積されるばかりであった。

15秒以上の座視の際でチェック失敗となるなか、嘘喰いは最後のチェックへと挑む。

そのチェックの果て、貘と夜行が見たものは、床に倒れ、果てた創一の姿だった。


(引用:集英社『嘘喰い』より)



結果的には、創一が蘇ったというのは極限状態の精神が見せた幻影だったのだ。しかし、嘘喰いと夜行の2人もが同じ幻影を見ていた、その凶事は夢幻と片付けるには、生易しいものであった。

幻影であることは、蘇生した(ように見えていた)創一の言葉について「音と声のみ」が頼りな外野は反応していないことが伏線になっている。

幻影の中でも、嘘喰いのチェックは成功していた。
これを持って屋形越え「ハンカチ落とし」は完全決着を見た。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


前巻でもうひと波乱ありそうではあったけれど、こう来たか。

ギャンブルとしてはどうしても「エア・ポーカー」と比べてしまうと、見劣りしてしまう部分もあったなと思う。

と言っても「エア・ポーカー」はちょっと異次元のレベルに達した面白さだったので、その辺のギャンブルマンガに比べればハンカチ落としの面白さはやはり比類なきものであったと言いたい。

あらためて読み返して、幻影だと分かって読んでいても、その圧倒的な描写に気圧され、緊張感が潰えない展開は流石の一言。

閏秒についても、前巻の解説による丁寧な積み重ねの先と考えると、週間連載でよくこれだけのことをやってのけたなと、迫先生の凄さを思い知ることになるのだ。



新賭郎のお屋形様として




(引用:集英社『嘘喰い』より)



創一の死亡により、屋形越えは決着。勝者の斑目貘は賭郎の新たなお屋形様となった。

ここから物語は終結に向けて動き出すことになる。

貘はアフリカの反政府組織「アル・ヒーブル」と接触を図る。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


その裏にはアイデアルの秘密が隠されていた。

貘にエア・ポーカーで敗北し、死亡したアイデアルのボスのヴィンセント・ラロ。その死体は現れたアノマという人物に回収され、ラロの生前の希望に沿い、死体をダイヤモンドにしていた。

そしてその受け取り相手に指定したのは「自分を殺したもの」、つまり獏であった。 ダイヤは金庫の鍵となっており、その中のスマートフォンには、アイデアルが持つ全情報が詰まっていたのだ。

通常接触すら困難な「アル・ヒーブル」のような組織と接触できたのには、そんな裏があったのだ。では、貘は何故そんなことをしていのか。それは後に明かされる。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


更に貘は賭郎を使って、アイデアルの情報と「相手組織を乗っ取る」という特性を更に推し進めてたんですね。

それはそもそもヴィンセント・ラロが賭郎を乗っ取ることの目的とも合致するものであった。

つまり貘の行いは創一やラロの意志を継ぐことにもなっていたのだ。ここがまた熱く、憎い展開です。

話は一旦それて梶たちの物語へ。



病院にて




ある病院の更衣室。そこにいたのは島を出たノブ子であった。

更衣室では最近続いているという銃の乱射事件、そしてプロトポロスの島で起きた悲惨な事件の噂であった。病院内で梶とスレ違うノブ子。

どうやら梶は気づいていないが、ノブ子は気づいているようである。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


ここに梶たちがいる理由。それは、切間創一が蘇生したためであった。塔で死亡が確認されたが、梶とマルコが持ってきたAEDにて蘇生していたのだ。

恐らく後遺症が残っているのだろうか、その顔はどこか虚ろである。しかしながら叶わないと思っていた創一とノブ子のシーンには胸が熱くなる。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


病院から出た梶の前に現れたのは、フロイド・リー、そして横井の姿であった。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


フロイドは大船の件を追い、黒幕を暴き、大船の無実を晴らしていたのだ。これにより大船は死人扱いではなくなり、普通の人間として日本に戻ることができるようになった。

言葉で呆気なく済まされたが、これ本気でやったらスピンオフで成り立つくらいのことをしてのけたフロイド・リー、やはり元は敵ながら憎めない良いキャラになったね。

話としてはそこから貘の回想に行くけれど、こちらにまとめた方が分かりやすいので、こちらのパートを続けます。

更にその後、梶の前には懐かしい姿が。

カール・ベルモントの復活である。再び姿を見せたカールが語る「ヴァイス・ファンド」と呼ばれる最大級の"陰謀"。それは酒、煙草、ギャンブル、兵器を扱うファンドであった。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


たとえば銃の乱射事件が起きれば、銃メーカーの株は下がらず、上がる。銃規制の声が高まり、規制になる前にと銃の購入に走るので需要が高まるからである。




これを読んだ直後、アメリカの学校でまた銃乱射事件が発生し「教師に銃を」なんて意見が出るような事態になった今、フィクションでは済まされない話である。

都市伝説の中で「紛争での銃器の使用は、銃火器メーカーの世界に向けてのPRである」というものを思い出す。

その"ヴィゾーム"と呼ばれるヴァイス・ファンドは7つの組織、7人"悪党(ヴァイス)"たちが仕切っていて、その中の一人はアイデアルのヴィンセント・ラロであった。








6本の木と蟻塚の搭




(引用:集英社『嘘喰い』より)


話は少し遡る。

「はちの王」が2種類あることを知った貘は、創一の為に、栄羽によって仕込まれていた「6本の木」「蟻塚の搭」のメッセージから六本木の蟻塚ビルを突き止め、単身乗り込む。


栄羽セキュリティ甘くね?


(引用:集英社『嘘喰い』より)


まぁ、創一がいつ来てもいいようにと言ってはいるが。ほら、監視カメラとか、あるじゃない。


そこで貘は創一の記憶に纏わる病を知ることになる。
ここで発症の周期を知っていたことが、後に2人の運命さえ決定づけることに。

そして創一の母である蒼田絵子が遺したビデオレターを目にする。



(引用:集英社『嘘喰い』より)


そこで伝えられるメッセージは、絵子が視力を失ったことで孤独になったが、同時に"戦って得ること"、そして"強くなるには、より強い者と戦わねばならない"ということ。

そしてビルにおいて知り得た情報で最も重要なものはハルは切間創一であり、賭郎のお屋形様であるという真実。

かつて貘を取り巻く「黒服」の存在を知らないと言った"小さな嘘"、それを貘は許さなかったのだ。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


記憶が消えるという事実、それをタワーの混乱で知り得た貘。そこから卍が張られ、自分が「刻」を引いたことで、その全てを賭けた、閏秒の1秒のために。


絵子のメッセージには続きがあった。

暴力は決してなくならない、ではどうしたらいいのか。そのためには「支配すること」だという。持つ"力"で悪を支配するほどの"巨悪"になること。それが天命であると。

そのために貘は戦う"自分以外の悪を支配する"ために。

貘がQ太郎から廃ビルを奪った際に、夜行に告げる言葉「世界平和、かな」まさかこんなジョークめいた言葉すら回収するか。

このあと帰ってきた栄羽に見つかりそうになるが、命からがら逃げ延びる。

その際に死んだネズミの血がスーツに付いて、それが以前貘の部屋に掛けてあったスーツに血が付いていたことと繋がる。細けぇ。



ドナーゲーム




物語は佳境へ。
そこでヴィゾームの1人であるメイソープ協会のアビ・カーンが登場する。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


このアビ・カーンのキャラクターがあまりにも強烈で、終盤でこれだけの出番だったことが惜しまれるほど。

「半分くらいで満足するのが、健全」とラロとカラカルの縦に半分にした死体を掲げるシーンは、もうぶっ飛んでて最高である。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


これほど濃いキャラクター達を出し続けてきたなかで、最後にまでこんな見た目一発でもヤバいし、中身もヤバいキャラクター出すなんて、恐ろしい子。

アビ・カーンの部屋の人体模型、そして開胸された貘というイメージは、ハンカチ落としの最中に出てきたモチーフである。
47巻の512話で出てきます。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


かつて斑目貘は「ドナーゲーム」という勝負をしていたことが判明する。

その勝負において掛けられたのは己の心臓。そして貘は敗北し、心臓疾患のある男の心臓と自分の心臓を交換させられていたのだ。ところで手術したのはアビ・カーンらしい。

というか貘勝ってもいいことなくね?



(引用:集英社『嘘喰い』より)


斑目貘は疾患を患った心臓になる、つまり"生きていること"さえもギャンブルという生き方をしていたのだ。

同時に何かと取り沙汰されていた貘の虚弱体質とかカリ梅にそんな理由があったのかと驚くばかりである。ギャグなだけかと思ってた……
「世界平和」といい、迫先生、えげつない回収っぷり。もはや最初のレンタルビデオにすら伏線があるんじゃないかとすら思えてきた。



完結




(引用:集英社『嘘喰い』より)


そしていよいよ物語は完結へ。

最終話にしてヴィゾームの創設者"ゴーネン"が登場する。その見た目は嘘喰い斑目貘にそっくりであった。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


移植した貘の臓器(心臓)によって見た目が変化したものである。

死んだような描写であった貘は生きていて、潜入していた梶とマルコと共に作戦を実行する、というところでエンドとなる。


(引用:集英社『嘘喰い』より)


最終話でヴィゾームの親玉を出すことで、貘にとっての"世界平和のために倒すべき敵"を提示しておわることになる。

ということで、これだけ見ると打ち切りのように見えるが、ここから「ヴィゾーム討伐編」とか始められても困るので、これで終わりというのもいいのではないだろうか。

それに、実際のところヴィゾームを根絶したとしても「世界平和」は訪れない。

それは人間があまりに欲深い生き物であるというとこを49巻に渡って読んできた読書ならわかるだろう。

それでも戦う貘の終わりなき戦いと思えば、このラストも頷けるのではないだろうか。

ちなみに迫先生は続編かスピンオフには意欲的なので、そのために余白を残したのかもしれない。




――本誌での連載が終わり、『嘘喰い』ロスの日々を送っています。今後、続編やスピンオフの予定はありますか?

迫先生:もちろんやりたいし、やるつもりです。

【BookLive!独占インタビュー】『嘘喰い』完結記念特集


続報がまったくない実写映画に合わせて短期のスピンオフをやりそうな予感がする。


フロイド・リーのスピンオフなんて陰謀はないでしょうか?


新連載も始まっているので、いまさら云うのもなんですが連載お疲れさまでした。

そして、ありがとうございました。

いつまでも大好きなマンガです。




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2 件のコメント:

  1. 僕もさっき漫画アプリで全話見終わりました!
    伏線回収凄すぎますよね。
    この解説のお陰でモヤモヤしていた事もスッキリしました。
    わかりやすい解説ありがとうございます!!!!

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    返信
    1. コメントありがとうございます。あれも伏線だったのかと驚かされますよね!
      嘘喰いは何回も読み返すたびに発見があるので、一気じゃなくても読み返すとまた楽しいですよ!

      最終巻はわりと唐突に展開が進むのでややこしいですよね。少しでも助けになれて良かったです。

      削除