"フラワー"において、ポルノグラフィティは実在した命を描いた。
それは20年目にしてこそできた挑戦と呼べる。
しかしながら、"フラワー"の前にもポルノグラフィティは命と向き合っている。
そして、あらためてファンとして、ポルノグラフィティが描いた命と向き合おうと思ったのだ。
※アップまで時間が掛かってしまい所々時系列がおかしい記事なことをご了承ください
ポルノグラフィティが描いてきた命を歌詞から紐解く
永遠と一瞬
それは、先日アップした「愛が呼ぶほうへ」のシングルレビューで"愛が呼ぶほうへ"を繰り返し聴いていたことに起因する。
もう何回聴いたか分からない曲なのに、あるフレーズが不意に刺さった。
君は知っているだろうか 悲しみも喜びも
My name is love 僕が持つたくさんの名前のひとつだから
そう 永遠で一瞬で君にとってのすべてだ
永遠で一瞬で君にとってのすべて、その言葉が唐突に僕の心に何かを宿した。
そして、理由もわからないままに、ただ泣きそうになってしまった。
永遠で一瞬、人の人生とは、なんと儚いものだろう。
そう、新藤晴一という人は、岡野昭仁という人は、これまでもそんな瞬間を描いてきた。
泡沫の夢としても
それが僕達のすべてで
たくさんの愛を残して
静かにひとつはじけた
~"デッサン#2春光"
父親の死と向き合って書かれたこの曲、新藤晴一は「泡」と表している。
これらのフレーズから思い浮かべるのは、この歌詞。
永遠でなくてもいい 限りある命と
愛しい時が流れて
小さな 泡になって 消えていく瞬間
それさえ愛したい
~"グラヴィティ"
「人生と泡」
それは、昔から例えられてきた象徴でもある。
たとえば、1957年公開の映画「めぐり逢い」にはこの台詞。
“人生はシャンパンの泡だ、軽く陽気に”
或いは。
村上龍が1985年に発表した『テニスボーイの憂鬱』では。
誰かを幸福にすることなどできない、他人にしてやれることなんか何もない、他人をわかってあげるのも無理だ、他人に自分をわかって貰うのも無理だ、他人を支配するのも不可能だし、支配されることもできない、そのことを、女だけがわからせてくれる。電話をするたびに胸が震えるような素晴らしい女だけが、そのことを教えてくれるのだ。他人は必要ではない、そんな生き方をしなければいけない。つまりグラスのシャンペンみたいにキラキラと輝いていなければいけない、他人に対してできることは、キラキラと輝いている自分を見せてやることだけなのだ……
と表している。
或いは。
誰もが一度は聴いたことがある童謡"シャボン玉"。
シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
こわれて消えた
この曲の作詞をした野口雨情が産まれたばかりの長女を亡くし、その鎮魂として書かれた歌詞であるというのは、比較的有名なエピソードかもしれない。
しかし、実はもっと根本、根底の部分で泡とは命であると繋がっている。
それは命の起源。
命の起源
ジャイアント・インパクト説というものがある。
インパクトドライバーを持ったジャイアンと覚えよう。
原始の地球に火星ほどの大きさの惑星が衝突した。
それが砕けたものの一つが月になり、そして地球では衝撃で内部にあった物質が一気に表面に噴出、その有機物のスープとなった海で、分子同士が結びつき、液滴という泡となり、そこに遺伝子が生まれたというもの。
※諸説あります
かなり省略しているので、興味ある人は調べてみてください。
つまり、生命の起源は「ひとつの泡」であったということ。それを思うと、命を儚い泡に重ねること、それは実のところ起源にも繋がる意味が含まれている。
そうした時に思い浮かべてしまうのが、岡野昭仁によって創られた"海月"である。
古来より、受け継がれてきたもの。
辿れば僕らは一つだったから
輪廻転生の 消えない記憶で
何度も出会っているのだろう
"フラワー"において、命の象徴とされる花。それは一輪咲く姿に孤独のように描かれるが。
大地の深くにまで 張り巡らされた根が
命の記憶とつながって
と表されるように、その命を繋いできた証でもある。
だからこそ「UNFADED」ツアーでこれが続いたことが、運命的であり必然であるように思えたのだ。
それこそが。"デッサン#2 春光"のフレーズ。
「どこに還るの?」訪ねてみたら
何も言わずに僕の胸の方を指差した
とも通ずるものではないだろうか。
泡沫
もう一度、あらためて見て欲しい。
泡沫の夢としても
それが僕達のすべてで
たくさんの愛を残して
静かにひとつはじけた
~"デッサン#2春光"
「泡沫」とは、水面に浮かぶ水泡、そして「儚く消えやすいもの」の意味である。
岡野昭仁が歌詞を書いた曲には、まさに"うたかた"というタイトルがある。この曲で「儚く消えやすいもの」として描かれるのは「あなたへの想い」だ。
数多幾千うたかたと消えた想いを
空へと放って燦々と浴びてみようか
~"うたかた"
あなたへの想いは決して成就することはない。まさに泡のように儚く消えてしまう。しかしそれでも主人公は「こんな気持ちを知っただけでも 幸せだと言えるのだろう」と思う。
たとえそれが強がりだったとしても。
愛とは、ある意味においては「命を繋いでゆくためにあるもの」と言えるのではないだろうか。
人と人は愛し合い、次の世代へと命を繋いでゆく。
すべては繋がっていて。
悲しみも喜びも、愛も。
君にとっての一瞬、それは命のすべてなのだから。
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