2019年8月26日月曜日

【ライヴレポ】ハルカトミユキ Best Album Release Tour 2019 “The Origin” @渋谷LOFT HEAVEN ネタバレ注意







ツアー中につき、ネタバレ注意。
TOP画はTwitterより引用

ベストアルバムリリース後のバンド編成のツアーを経て、今回は2人だけのアコースティック編成のツアー。

11月23日の三井ホールのファイナルに向けたツアーが始まった。今回はそのツアー2日目にあたる渋谷 LOFT HEAVENの公演について。


ハルカトミユキ
Best Album Release Tour 2019 “The Origin”
@渋谷LOFT HEAVEN ネタバレライヴレポ


ネタバレ有







ライヴレポ①




ベストアルバムを引っ提げた、今までのハルカトミユキを網羅してようなバンドツアー。
今回のツアー「The Origin」はそれと対になる、いやハルカトミユキのもうひとつの魅力を堪能できるツアーだ。

それは、ハルカとミユキ2人だけで行うアコースティックな側面だ。

バンドツアー時のMCで2人が「バンド編成でも2人編成でもどちらもハルカトミユキで、どちらも好きになって欲しい」ということを話していたように、どちらもハルカトミユキなのだ。

協力なサポートミュージシャンたちに支えられても、2人だけで音を奏でても、どちらも違った魅力を放つ。

それが出来るのは、シンプルな構成でもしっかり聴かせるメロディの力、歌や演奏の力である。特に言葉の力が強いミュージシャンだからこそ、音数を削ぎ落とし、剥き出しで渡されるメッセージは、よりダイレクトに心に響く。


冒頭2曲"夏のうた""空"とデモに収録されている初期の楽曲を演奏し、"ヨーグルト・ホリック"に続いた。

初期の楽曲は今聴いても、他の楽曲たちと全く遜色ない。それは、音楽的な表現が広がっても、ハルカトミユキが変わらない信念で活動してきたからこそだろう。

フラワーカンパニーズのカバー"感情七号線"。CDではバンドサウンドだが、僕はこのYouTubeにもアップされたアコースティックスタイルのバージョンも、とても好きでこうして改めて聴けたことが嬉しい。

「月曜は好きですか?」という問いから始まった"MONDAY"。お盆休み明けの週なので、これほど月曜が憂鬱だった週もそうない時に聴くと、別の意味で心に来る。

そういえば、改めて歌詞をしっかり見ながら聴き返していたら、今まで気づかなかったことがあった。「大人なのに恥ずかしくないの?」という歌詞、最初のサビでは「?」が付いているけど、最後のサビでは消えて「大人なのに恥ずかしくないの」となっている。

平気だといえるほど大人には、まだ成れてはいない。けれどまだ馴れてはいない。子どもの目線からの曲だけど、それは子どもだったときの自分が今の自分を見つめる目かもしれない。

変わらないまま歳を重ねている。

それでも「変わらない」からこそ「忘れてはいけないこと」も変わらず受け止められる。
辛いことがあっても、日常の繰り返しの中にたまに覗く蜜のような甘美な毒、それこそが生きる意味をくれて、生きている実感をくれる。

"MONDAY"のピリピリとしたアウトロのサウンドがそのままゴポゴポとした水の音に変わっていき、そのまま"水槽"へ。

渋谷LOFT HEAVENという会場は天井にヒラヒラが付いていて、それが青い照明に照らされると、この空間が本当に水槽の中になったような感覚になる。それを感じられるだけでも、この雰囲気の中で聴くことができるのはこの日だけの特権だ(グランドピアノがあることも)。






ミユキのピアノが鳴る。そのイントロは、デモ版にしかない"アパート"のアレンジ。このイントロと、ミユキのコーラスが大好きで、元々大好きだった曲が、デモ版を聴いて、より好きになった。このアレンジ聴くと、郷愁がより増す


"17才 (piano ver.)"。今回は2人だけのピアノバージョン。
バンドバージョンともまた違う、とても美しいアレンジなのだけど、やはり2番サビで終わってしまうのがとてももどかしい気持ちになる。

なぜなら、僕は"17才"のCメロ「空はまた晴れてゆく~」から広がりが好きなのだ。だからこそ、この美しいアレンジでこのフレーズを聴いてみたかった。もし、叶うならライヴで今後やってくれないだろうか。

それでも、ハルカトミユキにとってまた新しい「扉」を開けた大切な曲としての強さは変わらず響く。止まらない電車に流されていくと歌っていた時から、窓の外へ走り出す。










ライヴレポ②




ミユキ:楽しんでくれてますか。初めての人どれくらいいますか?
観客:(パラパラと手が上がる)
ミユキ:まあまあいる?ほとんどが、熟練ってことです。熟練の人は初めての人を支えてあげてくださいね。今日が夏の良い思い出になるようになったらと思って演奏します。

ハルカ:東京の人って、私に言われたくないだろうけど、斜に構えてるよね。わーって盛り上がるんじゃなくて、ちょっと引いて見てるっていうか。……ごめんね。いや、今回はノンビリとトークをしながらやって距離を縮めてこうかと……だいぶ曲やったけど……思ってたのに。北海道が初日で盛り上がったんだけど、来た人、います?
観客:(微妙な反応)
ハルカ:あんまり、いない?東京以外から来た人。
観客:(パラパラ手が上がる)
ハルカ:東京の人。
観客:(自分含めパラパラと手が上がる)
ハルカ:え、他の人は……?

ハルカ:東京の人はシャイですよね。いや、本当にごめんなさい。でも、私もそうだから、よくわかる。シャイって言ってごめんね。


自分は東京出身だから関東圏のライヴが多いけど、やはり地方毎に違うのかな。でもシャイな感覚って、自分もそうだから、とてもよくわかる。ハルカトミユキでは遠征したことないから、いずれは地方ならではの光景を見てみたい。


ビートが鳴り、それに合わせてこの日初めてシャイな観客側からもクラップが響く。ハルカもミユキも顔を綻ばせ、MCを経てから会場の雰囲気もまた少し変わった。

それに合わせて歌われるのが"インスタントラブ"というこもが堪らない。皮肉たっぷりなこの楽曲はライヴで聴くたびにマゾヒスティックな気持ちが刺激される、しかもそれが瑞々しい"17才"の次に来るのだから。それでいて昨日も今日も未来を見失いそうになった時に見つめる「現在(いま)」を歌っているからだ。


"二十歳の僕らは澄みきっていた"
この曲のなかで「変わらない景色 見送って」それは"17才"を思わせる。歌をやめることを決めた君、繰り返す終わりと別れ。それでも、生きていくことは終わりの先、新たな季節へ走ってゆく。


それを告げるかのような"バッドエンドの続きを"が続く。この曲で語られる言葉こそ、ハルカトミユキが歌い続けてきたテーマだ。


それでもいつか
後悔が答えになるように
生きるよバッドエンドの続きを
信じて


「生きる」ことこそが答えであり、復讐でもある。


"POOL"
また水音と青の照明で、会場は水の中へ。最後の方でヴォーカルに強いエフェクトが掛かるアレンジで、リヴァーヴの効いた声がとても印象的だ。

「電車に乗るのもそろそろ飽きた」という言葉は、自分の力でなく何かに自然に流されている自分が重ねられている。
この曲についてのコメントを引用したい。


AメロBメロで散々勝手な事を並べ立てた挙句、サビでは「いいだろういいだろう」とそれだけを繰り返す。
感情の内で、白か黒か言い表せない部分の不安定さと、その移ろいやすさ。同時に、それが心の中にはどうしようもなく確かに存在するということ。
そういうものを書きたかった。
【連載】ハルカトミユキ (vol.2)


その想いは変わらない。「白と黒」人の心は、世界はそんなに単純な仕組みではできてはいない。それなのに白か黒でしか語られないことへの怒りこそが"わらべうた"では直接的に歌われる。


白か黒しかわからない
想像力のない奴ら
~"わらべうた"


時折なぜこの曲のタイトルは"POOL"なのだろうと考える。しかしいつも答えは出ない。けどひとつ思うのは、"水槽"もそうだけど、水槽やプールを思い浮かべたイメージとして持つ青、しかし水そのものは無色透明で、何かに歪められて見えている世界というイメージが浮かんだ。







ハルカ:今回初めてフォトブックというものを作りました。今年ロンドンに行って、そこでアー写を撮って、その時の写真がたくさんあったり、ベストアルバムも発売するので、今までのライヴ写真を入れてます。タイトルは『memento』といって「記憶」とか「記念」とかって意味があります。私たちから皆さんへの感謝の気持ちを込めてます
せっかくなら2人の言葉をいれたくてフォトブックにはミユキとの対談も入れて。普通のインタビューでもあまり話さないようなことが載ってます。今まで言えなかったこととか、話してなかったこととが入ってます。最近知ったって人も読んで欲しいけど、今まで聴いてくれてた人も初めて聞く話もあるので、是非手にとってみてください。

ハルカ:そのなかで。大変だったとか辛かった時期の話もして。なんで歌ってるんだろうと思うような時期もあった。その時の想いをぶつけた曲を書いて、その曲が今でも自分を励ましてくれる曲になりました。そんな曲をやりたいと思います。


"その日がきたら"
今回のグッズのフォトブックに収録されたハルカとミユキのトークセッションは、言葉のとおり確かに今まで語られることのなかった2人の話が語れている。

特にハルカの苦悩は何度か語られてきたが、ミユキの苦悩については、記憶が正しければほとんどあまりなかったのではないだろうか。どちらかといえば、ライヴでもムードメーカーであり、ハルカトミユキの音楽性をさらに広げるのになくてはならない存在こそが、ミユキだと思っていたからだ。

曲を作ってもボツをくらい、思うようにいかない日々。しかし、一度はやめようかとさえ考えたハルカを思い止まらせたのもミユキだった。そして、近年のミユキ作の曲たちは、僕の大切な存在となっているものばかりだ。

詳しくは、是非フォトブックを手にとって欲しい。特に昔から好きだったというファンには必見のものとなっている。

それがなかったならば、"二十歳の僕らは澄みきっていた"で書かれた見送ってきた光景、それがこちら側の景色になっていたかもしれない。

こうして今ハルカトミユキの音楽を聴ける喜びを、今一度噛みしめる。


本編最後の曲は"LIFE 2"
これまで何度も見てきたハルカトミユキのライヴ。数え切れないほどの感動をくれた瞬間たち。それをもってしても、今回演奏された"LIFE 2"はまさにBESTという名に相応しい心が震えるものだった。

アウトロで全霊を込め全身で音楽を表したハルカ、それはまるで歌い終わったら力尽きて倒れてしまいそうなほど歌に全てを込めるような声。それを優しいピアノとコーラスでそれを支える。

あまり好きな言葉ではないけれど、手垢まみれで使い古されたあの表現「『人』という字は支えあって出来ている」。その言葉自体はともかく、僕は何かと好きなアーティストが2人組ばかりだなあと思う。2人になってしまったということもあるがポルノグラフィティはもちろんのこと、印象派、FINLANDS、最近狂ったように聴いてるなきごと。

どのアーティストも共通で、その2人を見ればあまり似ていない、なんなら正反対ともいえる2人だったりする。

だからこそ、そこに互いの足りないものを補い合うことの相乗効果が生まれる。2人だからこそ、1人ひとりの力がより必要となる。そうして生まれる力に惹かれてしまうのかもしれない。

"LIFE 2"で歌われるのは「あるもの」と「ないもの」の先にあるもの。
https://sp.uta-net.com/today/news.php?id=9740

そこに間違いなくある、あたたかい命。まだ何も終わっていない。人が命が受け継いでいく限り、そこに終わりはない。





アンコール




ミユキによるグッズ紹介コーナー。
トートバッグを愛用してる話とか、バスタオルの売れ行きが微妙という話。

ミユキ:バスタオル買ったって人いますか?
客席で手が上がり
ミユキ:何に使ってますか?
ハルカ・観客:(バスタオルなのに)何にって。

でも、その方は枕カバーとかに使ってるらしい。
ミユキ:ほら、枕カバーにも、寝るときに掛けても、バスタオルとしても使える。なんて便利なんでしょう!


ハルカ:ツアー2日目。「The Origin」というタイトルを付けて、「起源」って意味のとおり昔の曲とかもやってきました。このツアーのファイナルとして「7 DOORS」というライヴを日本橋三井ホールでやります。2人だけとしては一番大きい会場で、今までとも違うようなライヴをやれたらと思います。

ハルカ:今日は家からとか職場から来てくれた人もいると思いますけど、この場所で時間を過ごすと選んできてくれたことが、すごく不思議な感覚になります。みんながなにかを選んできた先が、この場所だったことが。ドアって開けようとしなければ開けられないし、気にもしなかったらただの壁みたいに見えるかもしれない。けど、みんな色々なドアを一生懸命開けてきて、今日この会場のドアを開けてくれた。この先も色々なドアを開けて、その先がファイナルの会場だったら嬉しいです。


それぞれが、それぞれの扉をくぐってここに来た。

それは何より、この日、この時間に、この場所があったからだ。

この2人でなければ、ハルカトミユキはなかった。続けて来なければ、この日のライヴは、確かに心動いた自分はいなかった。

選んできたことと同じ以上に、選んで来れる場所を与えてくれた、その場所を最高の時間にしようと懸命なミュージシャンが、スタッフがいる。だから、僕らはライヴという場所へ何度も足を運ぶ。


最後の曲は"世界"
バンドツアーでも最後をつとめた、旅立ちの歌。


「生きているだけで意味があるだろう」


それは本当に甘やかす言葉だっただろうか。時間は残酷なまま、何もかも削っていく。その間に人は多くのものを獲ては失っていく。

終わって消えていくもの。そして新しい始まり。それを繰り返していくことが人生だ。それができるのは、自分自身でドアを開けてきたから、そしてそこに確かな命があったから。


ハルカトミユキの起源を辿るようなツアー。2人の鳴らすサウンドは、今も色褪せてはいない。変わらない想いを変わらない決意で歌い続けてきたからだ。

しかし、それは成長していないということではない。多くの葛藤と苦しみの先に、2人が鳴らした曲は描いた青写真の先で、確かに1人ひとりの心に響いていった。

音楽が空気に溶けて消えていく。しかし、それが心に溶けた時に忘れがたい記憶となる。

大好きなアーティストが大好きな音楽を鳴らす場所。
それが続いていく限り、僕は何度でもドアを開けるだろう。

そして、今11月23日に開かれるドアに向けて、また歩み出そう。


【セットリスト】
1. 夏のうた
2. 空
3. ヨーグルト・ホリック
4. 感情七号線
5. MONDAY
6. 水槽
7. アパート
8. 17才 (piano ver.)
9. インスタントラブ
10. 二十歳の僕らは澄みきっていた
11. バッドエンドの続きを
12. POOL
13. その日がきたら
14. LIFE 2

EN.1 世界



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