2018年9月4日火曜日

【感想】ハルカトミユキ「朝焼けはエンドロールのように」







人は何かを得るから、それを失う。

それならいっそ、最初から出逢わなければよかったのだろうか。


試聴だけでも、是非聴いてもらいたい。






ハルカトミユキが2018年11月14日にリリース予定のシングルより、カップリングの"朝焼けはエンドロールのように"を先行配信した。

ハルカトミユキにとって初めてのシングル形態でのリリースとなる。

シングル表題曲はタイトル未定で、この曲はP. A .WORKS制作による新作オリジナルアニメ『色づく世界の明日から』の オープニングテーマとなっている。


エコーがかった静かな唄い出し。


ゆっくり注いでいく
ゆっくり溢れていく
ゆっくり流れていく


どこか遠くの彼方から呼び掛けてくるような声。
真夜中を漂うように。

キーボードの音色が美しいのに、どこか重くて切ない。

一歩すつこれ以上近づけば、戻れない二人。


サニーデイ・サービスに"八月の息子"という曲がある。

99年にリリースされたアルバム「MUGEN」に収録されている。







「見つかった?/見つからない/何がある?/何もない/夏の終わりに。」というピリオドで終わる曲。その中の歌詞に、


近づくほど遠ざかる夏
あぁ 八月の息子は歩く


という歌詞があって、それを連想した。

リリース日が折しも8月31日だったからかもしれない。


朝焼けの街なんて見たくはなかった
一人ぼっち 青く冷えていく
道端に捨てられた人形と同じ
僕は動けない


この曲は今までのハルカトミユキの集大成だと、初めて聴いた時に感じた。

集大成であり、次なる一歩。

デビュー当初のイメージカラーともいえる"青"。 世界と心の間にある壁。切なさが込み上げて溢れだすようなサビ。

"春の雨"で足をとめ、聴いていたのは「命の音」。そして待つ「君の征く未来」
"LIFE2"でも夜明けまで、ただ君のことを待っていた。

集大成とは、ゴール地点ではない。

これこそが、また一歩次のステージへと進む一歩となるうる曲、それこそが"朝焼けはエンドロールのように"ではないか。

容赦なくやってくる朝、それは逃れようの無い次のスタートでもある。











部屋にこもって時間を忘れたい主人公。

しかし夜は明け、朝焼けがやってくる。
窓辺の果実も腐り、時を知らしめる。

どれだけ拭おうとしても、弱さを映し出す。

本当はどれだけ待っていても迎えが来ないことを知っている。だけどもそれを願ってしまう。

人形も自転車も自力で動くことはできない。
それと同じように主人公も君という存在が原動力となっていた。

それを失ったことで、主人公は打ちひしがれる。
もう帰らない日々を、何もかもが取り返しつかないということも。

あの日にこぼした赤いジュースのように、汚れてしまったらもう戻れないことに気づいているから。

優しいふりをして、本当に僕がずるかったなら、同じ仕打ちができた。だけど、君は白いまま、跡形もなく。


部屋には 匂いは残さない
期待は抱かない
最後に失うなら


本当はそう思っていないからこそ、そう願ってしまう。

主人公が明日を願わないのは、それが少しでも残っていて欲しいから。
それでも時は容赦なく僕らを明日へと連れていく。


人は何かを得るから、それを失う。

それならいっそ、最初から出逢わなければよかったのだろうか。


数えきれないほど失くしてきたけれど
本当に欲しいものは一つだけだった
"Vanilla"



最後に。


哀しみはひとつの色へ

朝焼けの街なんて見たくはなかった

そんな曲が入ったシングルの表題曲のタイアップが「色づく世界の明日から」なんて。もう狙ってるとしか思えない。

これをやってしまうんだから、やっぱり僕はハルカトミユキが大好きなのだ。



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