2017年11月7日火曜日

【感想】ハルカトミユキ "手紙" (映画「ゆらり」主題歌)






「人は失くした時に本当に大切だったものに気づく」


あまりにも使い古されて、陳腐な言い回しだ。

でも、なぜこんなに陳腐に聞こえるほど使い古されているのだろう。

それは教訓として過去から脈々と受け継がれていながらも、本当に大切なものを失うことが、自分にとってそう何度も訪れるものではないからかもしれない。
或いは、常にそこに"存在"する限り、本当に大切なものだということに気づかないからかもしれない。

ハルカトミユキの新曲"手紙"を聴いてそんなことを考えた。






愛とは手紙のようなものですね。
受け取るばかりで気がつかずに





無償の愛がそこにあるとして。
愛情は当たり前になってしまうだろうか。そこに愛があることが当然だからだろうか。


返事はもうこなくたって
いつまでも待てる気がします


返事はもう返ってこないと知っている。
でも雲の上にいってしまったあなたには、たとえ返事がなくても伝わっている。なぜなら私があなたから受け取ったものと同じだから。

手紙に気持ちを乗せた時、私はあなたが与えてくれたものに気づいたのだろう。だからこそ、それまでごまかしてきた愛というものと素直に向き合えるようになる。

それと同時に自分の気持ちに向けた手紙でもある。あなたがくれたもの、そっと心に遺していったもの、それを言葉にして噛み締めているそんな言葉にも聴こえた。


あの日、野音で聴いて、なんて綺麗な曲なんだろうと思った。美しいピアノも優しい歌声も、でもどこか儚げで。

一音一音が身体に届きそっと溶けて沁みていく感覚。ハルカトミユキの楽曲の中でも、最も普遍的な愛情を写した作品だ。


"夏のうた"において煙のように笑って泣いて眠った君。


どうしても苦しい時はたまに思い出してください。
幸せな時は忘れていてください。いつでも側にいます。
そう たとえば透明な 夜明けの月みたいに


"夜明けの月"では語り部分が意図的に残されていて、そしてこの曲の語りに"手紙"に出てくるあなたを重ねる。


たとえば僕が まちがっていても
正直だった 悲しさがあるから…流れていく
"流星"


僕の欲しかったものは、君ではなく。君の持つ未来と可能性だった。年を重ねた自分と、眩しいほどの黒髪の少女。
流れて消えていくばかりのもの、僕の欲しかったもの、それはもう戻らないもの。それでも《幸福だとは 言わないが 不幸ぶるのは がらじゃない》という強がり。

でもそれこそが、


Story of My Life(それが僕の人生の物語)
"Story of My Life"


なんてね。


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