その“カップリング”として収録されているのが"OLD VILLAGER"という楽曲である。
アルバム「暁」ツアーの最終である日本武道館公演で披露された新曲が、こうしてシングル収録された。
"REUNION"もだけど、どう考えてもカップリングの概念が狂っている。
そんな楽曲について見ていこう。
OLD VILLAGER
作曲:岡野昭仁、tasuku
作詞:新藤晴一
アルバム表題曲である"暁"を生み出した組み合わせである。
作曲の役割としてはtasukuはベースとなるトラックを作成して、そこに岡野昭仁がメロディを付け足す方式で創られている。
※そういえば"解放区"をこの組み合わせと勘違いして記事にしていて、申し訳ありませんでした
通常の作曲とは違う工程ということもあり、"暁"のときも苦心もしたらしいが、ある種のお題があることで、今までになかった曲が生まれた。
この曲の誕生について、岡野昭仁は武道館公演のMCでこう述べた。
tasukuがトラックを創って、ワシがメロディをそこに付けた。tasukuと色々話したのはロックナンバー、今はギターが鳴らない時代だけど、ギターが鳴ってるようなロックナンバーが創りたいと。
それがまたポルノっぽさ、みたいな攻撃的な曲になれば。BPMの早いね、攻撃的な曲になればいいな、そんなイメージで曲をこしらえました。
もうこのMCで泣いた。
チケット代もっと払わせろ。
僕はやっぱりロックというものを好きで、信じてきた人間だ。
とりわけギターという楽器に、僕はロマンを見出してしまった。或いは人生を踏み外したとも言う。9割は新藤晴一とS楽器のN原店員のせい。
世間の流行的には所謂ロックバンドの音楽は、決して主流とはいえない。
それでもロックバンドたちは信念で新しい曲を生み出し、世に送り出し続けている。
そういう音楽こそが、僕の胸を打つのだ。
なので"OLD VILLAGER"が刺さらないわけがなくて。
僕の歪んだ心を、歪んだギターが貫く。
静かにしろい この音が…… オレを蘇らせる 何度でもよ
tasukuがギターアレンジを全力で遊んでいて、最近ギター熱が落ち着いていた僕も久しぶりにCubase(音楽ソフト)立ち上げるくらいにはしっかり影響された。
リズムだけでかなり力強いので、これにメロディを付けるだけでも大変そう。
だけど、このメロディがまた絶妙なポップスの残り香をまとっていて、こういうバランスが取れるのがポルノグラフィティの恐ろしいところだ。
そして、歌。
これ本当にどうなってんだよ。凄すぎだろ。
いや、もうここ数年は毎回言ってるけどさぁ。
本気で全盛期を随時更新してくるベテランのヴォーカリストってなんだよ。
ということで曲だけでもあまりに強烈、というインパクトを残す曲だと思う。
何度聴いてもこれがカップリングであっていいはずがないんですけど?
掟とルール
"OLD VILLAGER"の歌詞は、まさに新藤晴一の真骨頂である。
全体的なテーマは「暁」ツアー日本武道館MCで語られているので引用しよう。
我々がこう、自分の未来を想像する時に。なかなか、凄い自分って想像できなくて。
やっぱこう、ある程度(の自分)を想像する傾向にあって。
なんでそうなるかというと、やっぱり傷つきたくないからで。凄い自分よりも低い自分を見積もって、もしかしたらこっち(凄い自分)にもいけるかもしれないんだけど、結局低く見積もった自分に向かっていくってことなのね。
そういうのが、あると思うのね。
それを、皆がどう見るか、そんな曲です
やっぱこう、ある程度(の自分)を想像する傾向にあって。
なんでそうなるかというと、やっぱり傷つきたくないからで。凄い自分よりも低い自分を見積もって、もしかしたらこっち(凄い自分)にもいけるかもしれないんだけど、結局低く見積もった自分に向かっていくってことなのね。
そういうのが、あると思うのね。
それを、皆がどう見るか、そんな曲です
これだけ聞くと、出てくる言葉の予想って、ビジネス本コーナーで1億冊くらい売ってる自己啓発本みたいなの想像するじゃないですか。「凄い人の選択法」みたいな。
けど。
神か仏か知らないけど 輪廻転生のことわりを
発動させる頃合いだろ 飽き飽きしている
発動させる頃合いだろ 飽き飽きしている
出だしから、これである。嘘だろ。
新藤晴一という成分があるとしたら、ワンフレーズで軽くオーバードーズしてくる。これ保険おりるかな。
ゴリゴリにロックな曲に、ゴリゴリにロックな思想ぶち込んできた。
"Zombies are standing out"もそうだけど、こういう曲に殺されたいんだよ、俺は。
なんだよ「輪廻転生のことわりを発動」って。
といっても、テーマが示されている以上、歌詞の読み解きはそこまで必要なくて。
……最近ライヴでの初披露が多いからこのパターン多いな。※"メビウス"を除く。
サビで「予定調和のばかし合い」という言葉が出てくる。
この「予定調和」をはじめ、歌詞では四字熟語を多用しているのが特徴だ。世界観的には"REUNION"にも通じてると思う。
僕の漠然とした感覚なんだけど、四字熟語って歌詞にすると凄く機械的な響き方をする。
これ、すごく穿った見方になるんだけど、「予定調和としてしまう見方」まで皮肉ってるんじゃないかなと思ってしまえて。
何かというと、こういう四字熟語のようなものって、結局のところ日常的に使う慣用句じゃないですか。「教育強度」とか。
(引用:集英社『ジャンケットバンク』より) |
なにかしらこう、パターンに当てはめることを皮肉っている歌詞なわけで。それは逆にいえばパターンにハマってるということでもあるから。
そうするとね。
古の掟などお前たちのものではない。
"解放区"のこのメッセージって、"OLD
VILLAGER"の「更なる“続”」なんじゃないかって。
そんなルールに縛られないという信念こそ、ロックンロールの根幹にある叫びなのだから。
ちょっと飛躍するけど、今回のシングルって"解放区"〜"アビが鳴く"〜"OLD
VILLAGER"って並びじゃないですか。
とすると、「掟」とか「ルール」なんてものがあったとしても、人の願いは千年経っても変わらないっていう"アビが鳴く"のメッセージが、あまりに強烈に響くようになってると思う。
そのツアーで“アポロ”をやる意義よ?
OLD VILLAGERとは誰か
この曲は、語り部をどういう人物として捉えるかが難しい。
それは様々なことに重ねられるように、わざと明確にしていないという狙いだと思う。
語り部はタイトルの通り「OLD VILLAGER」、歌詞中の言葉で言えば「このムラの生ける伝説」。
ワードだけで想像すると「ブラッドボーン」のガスコイン神父みたいな姿しか想像できない。
ここから自分の解釈になるけど、新藤晴一(もちろん岡野昭仁も含む)が見てきたロックスターたちなんじゃないかなって。
そう考えるとまさに曲のテーマの一つである「理想と現実」に一本の筋が通る気がした。
新藤晴一がちょくちょく言ってきた「破天荒なロックスターに憧れてきたけど、自分たちはそう成れなかった」というような言葉。
まぁ実現したらしたで、ステージ上でドラッグをキメてアンプに頭から突っ込むような眉毛みたいな仕様になっても困るけどさ。
改めてそういう目で見ると曲前のMCの言葉が、とても自虐的に見えてしまうんだけど。
そうした時に、やはり僕はこの言葉を思い出さずにいられなかった。
人生にはたくさんの選択肢がある。その中から自分で道を選んで進んでいく。その道が正解かどうか、そこで選ばなかった道の先は分からないのだから確認はできない。
ならば、自分で選んだ道を正解にしていくしかない。
ならば、自分で選んだ道を正解にしていくしかない。
「道」という話はまさに今回のツアー「PG wasn't built in a
day」で岡野昭仁が言っている「僕らに道を示してくれるのは(ファンである)君たちだ」という言葉。
それが「道」ならば2016年の横浜スタジアム「THE WAY」。
このライヴの最後にポルノグラフィティは“所信表明”として"ダイアリー00/08/26"を演奏した。Guitarは夢を描くペンであり、相変わらず離さないもの。
それがいつしか。
これも今回のツアーのさいたま公演のMCでも言っていたけど、後輩のミュージシャンから「憧れてました」と声を掛けられた。
憧れていたミュージシャン像に、いつしか自分たちがなっていたのだ。
これって、まさに「輪廻転生のことわり」ではないだろうか。いや、まだ死んでないけど。
千年の祈りのように、受け継がれていくもの。
僕ね、"OLD VILLAGER"って言葉にどうしても「老婆心ながら」とか「老害」って言葉を浮かべてしまってたの。
けど、そうなら。
こんな平和の祈りが当たり前に老害になるような世界になってくれればいいなと。
ここ数日うちに泊まっている姪っ子の未来を想像して思うのです。
それがOLD VILLAGERの願いなのである。
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