ツアー「PG wasn't built in a day」で披露された新曲である。
ポルノグラフィティが描く最新鋭のメッセージソング。
進化が止まらない彼らの最前線を読み解こう。
解放区
"解放区"
作曲:岡野昭仁
作詞:新藤晴一
キラキラしたアルペジオと、空間系のエフェクターが効いたギターもあって、爽やかさも感じるけど、込められたメッセージと歌声は力強い。
このメッセージってたとえば"メジャー"とか"ブレス"と通ずるものだと思うんだけど、そうするとこれらの楽曲に対して、歌声がかなりハッキリと力がこもっているように聴こえる。
この荒々しさみたいな部分に、25年を経ても尚進化を続けるポルノグラフィティの信念が表れているのではないかと。
アレンジでいうと、ちょっと驚いたのが最後のサビ。
落ちサビからの展開でフレーズに対して追っかけコーラスが足されていたこと。
※追っかけコーラスは"メリッサ"の「君の手でー(君の手でー)」っていう類のやつ。正式名称は知らない
このアレンジが女王の言葉に対しての「呼応」に聴こえたんだよね。
一方的な投げかけだけではない、そんなことを感じさせるアレンジだと思った。
さて、ここからは改めて歌詞について見ていこう。
後半はちょっと生意気なことも言うけどファンのよしみで勘弁してほしい。
解放区の言葉①
この曲のテーマは読み解く必要はない。
YouTubeで公開されているレコーディング映像で語られている。
あんまりひたすら「頑張れ!頑張れ!」って言うのもおかしな話だし。「明日が良い日」とか「太陽」とか「光」とか普通は使うけど。それがないと楽しくないみたいなのは、そんなこともないんじゃないかという立ち位置からの表現。
なので"メビウス"みたいな歌詞から意図を読み解くみたいな苦行━━もなく(それはそれで喜んでやってる)、受け入れやすい。
しかしながらそれを表す言葉に、やはりやられてしまうのだ。
夜の国の女王は夜な夜な演説をする闇を嘆かずランプに火を灯せ
1行目でノックアウトである。
名古屋初日、もう頭真っ白になった。恋だと思う。
このメッセージを伝えるため「夜の国」というワードを持ってくるセンス。
僕は基本的に夜に籠もっていたい人間である。
そう思う自分に、その最適解みたいな曲こそが"解放区"なのだ。だから、もう堪らず震えてしまう。
語り部の目線から「お前」っていう代名詞を持ってくることが特徴だと思う。
「お前」って本来ならかなり主従的で、ウエメセに聴こえかねないんだけど、決してそうは感じなくて。
それは。
この国は終わらない 私とお前がここにいる限り 終わりはしない
ってフレーズに全て表れてる。
この曲は来る25周年を祝うツアーに向けて書き下ろされた楽曲だ。
それだから、メッセージの主な受け手は僕らファンである。
僕らはこれまで何度もMCなどで繰り返し言われてきた。
君たちは運命共同体だ
君たちが求めるから僕らはやっていける
相互補助なのか一蓮托生なのかもはや判らないけど、僕は共犯者だと思っている。
もちろんファン以外の人もライヴに来るけど、この人たちは「そういう人たちは既存のファンの君達が責任持って沼に引き摺り込んで」って開き直っているので。
そんな人たちが届けてくれる最新のメッセージ。
たとえわずかな一歩でも進むことだ光の国では言うだろそれさえできない夜はここにおいで
泣かずにいられるだろうか。少なくとも僕は無理だった。
このメッセージってすごく優しいんだけど、決して優しいだけではなくて。
なぜかというと「君は君でいい」っていうのは、確かな自分を持っている人にしか響かないはずなのだ。
でも、あえてそういうメッセージを持って来るのは、こういう意図じゃないかなと。
僕らはみんなポルノグラフィティが好きという自分を持っている。
少なくとも、僕はそこに揺るぎないものを持っている。
別に皆が皆そういう想いでいる必要はない。それだって「そういう君は君でいい」っていうメッセージが直撃するんだよ。ポルノグラフィティ怖い。
ごちゃごちゃ書いてきたけど、兎に角嬉しくて嬉しくて。
僕は心底ポルノグラフィティが怖いなって思った。
もう一つ気になったのは最後のフレーズ。
I allow you to make the rules
直訳すると「私はあなた(お前)がルールをつくることを指示します」
もうちょっと意訳すると僕は「ルールはお前がつくるものだ」ってことだと思うんです。
「ルール」っていうのは新藤晴一にとっては特別なものがあると思っていて。
だって、小説の2作目が「ルールズ」だからね。
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自分は新藤晴一の描く「ルール」って「理(ことわり)」だと思っている。
だとするとね。
"ルーズ"において「綻びのないルールがある」というフレーズがあるけど、それは「一度壊れた愛は戻らない」というもの。
ちょっと飛躍した解釈になるんだけど、僕はそれ以上に「星が全部ほら空から落ちる」にも掛かっていると思っていて。
つまりは「明けない夜はない」という理(ことわり)。
そんな定められた絶対的なルールがあるとしても、それが全てではない。
明けない夜はないように、やってこない夜はない。
せめてそこに居場所を残してくれる。それが新藤晴一であり、今のポルノグラフィティなのだ。
その場所を、ライヴという空間に重ねられずにいられるだろうか。
久しぶりの声出し解禁ツアーで、25周年でこんなことを歌うポルノグラフィティが、本当凄いなって。
さて、ここからちょっとネガティブな意見が少々混じるので、そういうの読みたくない人はここでやめてほしい。
でも、僕は必要と思うので、ここで書いておきたい。
色々書くけど、オールタイムでも最高に近いくらい素晴らしい楽曲、と思っているということを念頭において読んでほしい。
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解放区の言葉②
褒めちぎったから少しだけ、苦言というほどではないけど言わせてほしいこともある。
何かっていうと、もうちょっとカタカナ英語減らして欲しいなって気持ちもあって。
ダンス イン ザ ダークネスワールド
とかの文字列が悪い意味で引っかかってしまった。こういうのが好きな人には申し訳ない。
他の日本語部分がずば抜けてる分、どうしても違和感がある。
元々英語詞を日本語に直した部分が他にもあるみたいなんだけど、それでももうちょい日本語に寄せてもよかったと思う。
端的に言ってしまうけど、ちょっとダサさが勝っている。
そうした狙いが良さになる場合もあるかもしれないけど、今回の場合はミスマッチだったと、おこがましいが言ってしまいたい。
例えば"OLD
VILLAGER "は言葉でどんどん心がえぐられる喜びに満ちていたので、尚更の対比になってしまっている。
と言っても1億点が9999万987点になるくらいの次元なんだけど。
それとは別に、夜の国に居たい人たちにとって「ダンス」が別世界に感じてしまうのもあると思う。踊ってない夜しか知らないんだ、俺は。
それだけではない部分も含んでのは百も承知だが。
新藤晴一って、僕から見ても陽キャだと思うの。
もっと言うと、自分の中で
岡野昭仁は太陽
新藤晴一は月
岡野昭仁は陰
新藤晴一は陽
だと思っている。
だから、ありとあらゆる角度から楽曲や言葉に打ちのめされる。
陰陽明暗が無数に混在するポルノグラフィティ。
真っ直ぐなようでいてレディオヘッドが好きな岡野昭仁にも、捻くれているようでエアロスミスが好きな新藤晴一にも刺さる部分があるってのが、ポルノグラフィティの恐ろしいところなのだ。
文句のように見えてしまうだろうけど、それ以上にこの"解放区"の歌詞は凄まじい。
ここで書いた苦言のようなものすら超えるくらい、僕の心は深く深くえぐられている。
けど、だからこそそこすら乗り越える余地が残っていると思う。
今の音楽好きって、思ったよりも言葉を大切にしている人も多いと思うんだよね。
"解放区"は名曲だと思うし、今日だけで35回くらい聴いた今でも泣けるくらい素晴らしいと思うからこそ。更にそんな人たちを刺し続けてほしいのだ。
繰り返すが、生意気なことを言っているのはわかっている。
けど、やはりファンは両手を挙げて「降伏」したいのだ。
だってその同音異義語が「幸福」なのだから。
こういう苦言めいたものって、個人的にもあまり読みたくないものだから、不快な思いになった方には申し訳ない。
けど、本当に大好きな曲だからこそ、書かずにいられなかった。
人生でこの先もずっと大切な曲であるからこそ、僕はそんな曲をこれからもポルノグラフィティに生み出してほしいのだ。
それですら「あえて言えば」っていうところが、今のポルノグラフィティなのだ。
ありがとうポルノグラフィティ。
ずっと、大好きです。
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