2023年8月24日木曜日

【完全ネタバレ】『シヴァリング・ファイア編』ジャンケットバンク感想







※本記事ではジャンケットバンクのゲームシヴァリング・ファイアの結末(125話まで)に触れてます。
単行本未収録部分もあるため、単行本派の方は御注意ください


ヤングジャンプ・ジャンプ+で連載中のマンガ『ジャンケットバンク』。

今回は初の1ヘッドとなったゲーム《シヴァリング・ファイア》の考察をしていこう。

読者が増えてきたことと、オチ予想が過熱してきているので『予想どおり』と言われていることも多いけど、その辺りについても触れておきたい。

先に僕の結論を書いておくと、僕はこのゲームの結末に大満足だ。

特にラストシーンなんて、俺涙が止まらなかったよ……




理の外へ




真経津の最終的な狙いは温度差によるガラスドームの破壊による脱出。

ここの点については、予想していたという読者もそれなりにいたと思う。

けれど改めて見ていくと、そこに向けた伏線と布石はとても多くあり、それだけロジカルに構築された結末だと判る。

つまりは読者にとってもフェアであるとも受け取れる。


●ルール(抜粋)
・6戦を1ラウンドとした全4ラウンド
・勝利条件は対戦相手の死亡のみ
・ジャンケンの結果によってオーダーが成立
・ダイナーはオンボロで冷房が壊れて毎ラウンド両者の部屋は−10℃室温が下がる
・全4ラウンド終了後、10分間の待機時間を経ても両プレイヤーが生存している場合は、両者の部屋の室温を強制的に100℃まで上昇
・100℃で1時間以上両プレイヤーが生存していた場合は総ストック数が少ない方を銀行が直接処刑


●禁止行為
・暴行
・通信機器の使用
・遅延行為(全ての行為を1分以内)
・両プレイヤーと審査役及び特0行員以外のダイナーへの立ち入り


基本的にネタバレで大丈夫な人向けに書いてるから、細かいところは省いているけれど、重要な部分は網羅できてると思う。

逆にいうと、112話までの段階でオチに向けた布石は十分に打たれているんだよね。

少し見ただけでもポイントはいくつもある。


①"オンボロ"ダイナー
②100℃耐久後の念入り過ぎる0課の配備
③暴行禁止
④ダイナーへの立ち入りの禁止
⑤床に固定された机と椅子


②は真経津さんも言及してるけど特に重要で。
場合によっては両者ガラスドームを破壊→100℃耐久脱出になる展開も可能性があるんだよね。

それで両者生存なんてなったら行員全員デアゴスティーニされるので、本当に銀行側のセーフティネットの意で0課が配備されていると思うと筋が通ってるんだよね。



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)


あと「マフツさんなら100℃耐えられる」とか聖杯戦の「ルールの裏を狙う奴向けの罠」とかがメタ的な引っ掛けすぎる。

聖杯戦は特に賛否あったけど、ジャックポット・ジニーの後にこのゲームの必要性はマジで大きかったと思う、

暴行禁止についてもいくつか布石があって。

③の暴行の定義は『人の身体に対する不法な有形力(物理的な力)の行使、逆にいえば人の身体以外は暴行に当たらない。
同時に「両者が暴行できる立場になり得る」という意味もある。

最初の室温変化の時に真経津さんが「グッ」って堪えるところは、いま見返すとドームの素材確認と「ドームを押すこと」がNGかどうか確かめているように見える。

あと4ラウンドで真経津さんがナイフで自分の手を刺すところ(文字だけだとシュール過ぎる)は、実はナイフ使用と貫通したナイフが机を傷つけることでNGにならないか確認している。

④についても「立ち入り」は禁止だけど立ち去ることは禁止されていないということになる。

あと台車で傷つけないように、という伏線は全く気づかなかった。
というか色々と考察はリアルタイムで追っていたけど、これを指摘してた人いたかな?ってレベル。


(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



なんも関係ないけど、この時の「司会のお兄さん」って呼び方が変にツボった。


ちなみに耐熱ガラスでも、温度差が120度を超えると割れてしまう恐れがあるらしい。それを踏まえて真経津さんの最後の温度差を見てみるといい。

とまぁ、序盤だけでこれだけ丁寧にポイントを見せている。

逆に言うと、ここまで丁寧に伏線が張られているからこそ、読者にも気づかれることはやむを得ないと思う。

連載だと休載を挟みつつ決着まで4ヶ月かかっているから、それだけ色々と考察もされてきたしね。

個々人の楽しみ方があるから賛否は当然あると思う。ギャンブルのオチを読めてしまってつまらないという人もいるだろう。でもそれだけでは勿体ないと思っていて。

僕はあくまでも「マンガとしての面白さ」を求めるので、特にラストに向けての1話1話は演出と絵の見事さに、毎週膝を打っていた。

まさにバツばかり数えるのではなく、マルも数えることも大切ではないだろうか。

それでもまだグダグダ言うなら教育強度上げるぞ?



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)


なんだよ教育強度って!!!!



田中先生、マンガとしての魅せ方が本当に巧いと思う。

眞鍋先生の爽やかすらある最期なんて、読んで途方もなく号泣してしまった。

実際にガラス破壊自体は賛否がそれなりにあったけど、この結末は読者コメントほとんどが"やられて"いた。


勝負中のレスバも考えさせられるものが多くて、もっとハッキリ言えば読者をもぶっ刺してきた。
僕はこの言葉の応酬(レスバ)も好きなので、そもそもの満足度が高かったのかもしれない。



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)




(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



先生、胸が痛くなってきたのでやめてもらっていいですか?


面白い作品というのは分かっていても面白いもので、そういう作品はミステリとかブルース・ウィリスは実は死んでたとかいう作品でも、何度見返しても楽しめるものだ。

何故ならそれは展開がわかっていながら、それ以外の要素に自分に刺さる要素が必ずあるからで、たとえば出てくるキャラクターが魅力的で何度も会いたくなるからとか、そういうこともあるだろう。


現に熱心な読者たちは何度も『ジャンケットバンク』を読み返しているではないか。僕もその1人だ。

そしてマンガ的なといえば、124〜125話の作画なんて、週刊連載とは思えないほど、どのコマも凄まじい画力である。


この2話の原画だったら言い値で買う(そもそもデジタルだけど)。

次にキャラクター面から見ていきたい








それぞれのシヴァリング・ファイア




①眞鍋 瑚太郎



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



今回の対戦相手。


いや、本当に僕は『ジャンケットバンク』でも1番好きなキャラだったかもしれない。
(過去形にしなきゃいけないところでまた泣けてきてしまった)






個人的に参戦ムービーの「美斗さんが育てたアサガオは クラスで一番立派に咲いたんですよ?」は見たときから作中で1番好きなコマだった。
※それまでは渋谷さんに蹴られる医者のコマが1番好きだった。

それだけ最初から思い入れがあったから、ラストで先生自身が最高のコマを更新してくれて泣いたよね。


(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)





(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



2回も。


こんなの朝から読んだらダメだよマジで。
※夜中だと寝れなくなると思って朝読んだら結局ダメだった

マンガ読んでむせび泣くほどおいおい泣いたのなんてヒカルが自分の碁のなかに佐為を見つけたシーン以来だ。

来週ジャンプラ配信になったら何枚Tシャツ作ればいい?


そういえば、いま見返すとアサガオのシーンもまた「子どもはマルにもきちんと目を向けるけど、大人はバツしか数えない」という先生の正確を象徴していたね。

先生って立派な大人を探すという煉獄にずっと囚われていたんだよね。

それが真経津さんと出会ったことで、自分が探し求めていたものの間違いに気づく。

この出会いがなければ、先生はどれだけ長生きしようと、死ぬまで答えを見つけられないまま苦しみ続けていたはずだ。


なんでお前らハーフライフ以下で出会わなかったんだよ!!!!!!


その成長によって先生は煉獄から開放され、真経津に未来と希望を見るんだよね。
だからこの最期はある意味先生にとっての幸せな結末だったとも言える。


……いや!それでも寂しいわ!

先生、なんとか一度死んでから生き返って!ハム盗んで喜んでる大人コドモたちに説教してやって!マルチバースとか?

雛形もそうだけど、死が確定したギャンブラーが潔く凛としているのは、このマンガの特徴だと思う。

『エンバンメイズ』の最終決戦もそうだったけど、田中先生の作家性の強みだと思う。

潔く死を受け入れた敵をどん底に突き落としてから殺す嘘喰いさんと真逆で興味深い(それはそれで好き)。



(引用:集英社『嘘喰い』より)




あと誰とは言わないけど4リンクで舐めプしてイキってたら返り討ちにされて無様な姿を晒した方の潔くない姿を思い出した。



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)





②真経津 晨



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



もはやナイフで自傷行為は当たり前、そこそこの火傷もかすり傷みたいな真経津さんだけど、今回の勝負中にひとつ大きな武器が明らかになる。

それが「他人をエミュレートできる」という能力で、鏡らしい力だ。
なんだこれハンターハンターか?



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



序盤〜中盤にかけては御手洗暉を"装って"いたんだけど、この辺りで本気で真経津さんの底が見えなくなって、ちょっと怖いくらいなんだよね。

そして終盤にかけては直接的に言及されないけど、おそらく獅子神さんを"装って"いたんだろう。そりゃ教師にとってこんな最高の生徒いないわな。



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)


ナイフを刺すのがあえて利き手の右手なのも、"友達の言葉"を引用したり。

獅子神敬一という株にストップ高はないの?

ワンヘッド初勝利ということでヘックスメダルも貰えるはずなんだけど、真経津さんってギャンブルで遊ぶのを楽しみにしてる人だからあんまり使い道なさそうだよね。

ワンヘッドで死んだギャンブラーを生き返らせる権利とかないですか?

今回の特にラストの展開で「やっぱり真経津さん主人公だわ」って瞬間がたくさんあって。

先生の最期の問いに屈託のない笑顔を見せたり、「やっぱり成長には価値があるな。たとえ今日が最期の日でも」と言われたあとの表情とか、今までなかったような表情が見れたと思う。

あそこだけは間違いなく誰も装わない、真経津晨という1人の男だったんだと思う。


ところで次回のゲーム以降で真経津さんにもめでたく通り名が付くはずだけど「我慢(ペイシェンス)」になるか賭けません?



③白金 円



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



何気にこのゲームのMVPだと思う。

ひたすら続くアイコ合戦をなんとか盛り下がらないように繋げ、終盤には試合展開を理解できなくなるVIPを心配するそつがなさは、さすが主任といったところ。

白金主任の班の行員もギャンブラーもまだ未登場だけど、ここもクセがありそうだな。
なんか御手洗が飛行機であった謎のギャンブラーとかここに属してそう。





④御手洗 暉



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)



良かったな。


※いやもっと面白いシーンたくさんあるんだけど、その一言に尽きるので



⑤村雨 礼二



(引用:集英社『ジャンケットバンク』より)




ハムを盗るな。



ダメだ、ツッコミが追いつかない。

先生が生きてたらフレンズのツッコミ枠になれたのに……

ごめんなさい、本当に眞鍋先生ロスで結構やられております。


ということで脱線してしまったけど「シヴァリング・ファイア」について書きました。

ゲームそのものというよりは、やっぱり物語性が抜群で、『ジャンケットバンク』でも屈指のエピソードになったのではないだろうか。

正直アニメ化は通過点で「ライフ・イズ・オークショニア」と「シヴァリング・ファイア」で映画化決定しか未来が見えない。

少なくとも10回は映画行くよ、俺は。


『ジャンケットバンク』って本当に良いですね。



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