少し昔の思い出話をひとつ。
ある日、iTunes storeを眺めていたら、オススメにあるアーティストが表示された。
それが「羊毛とおはな」というアーティストである。
羊毛とおはな
~好きになったアーティストがもうこの世にいないこと
あまりこういう「あなたへのオススメアーティスト」みたいなものは聴かない天の邪鬼なのだけれど(機械ごときに好みを判別されたくないわという思い)、この時は不思議と、自然と視聴していた。
アコースティック・ギターを主体にした音色に、優しい歌声。思春期の学生が一瞬で恋に落ちるように、僕は羊毛とおはなの音楽に惹かれた。
初めて知ったアーティストだったので、検索をしてみた。
そして知ったのは羊毛とおはなが、ヴォーカルの千葉はなと、ギター市川和則によるアコースティックデュオどあること。
そして、ヴォーカルの千葉はなが2015年4月8日に乳ガンによって、この世を去っていたこと。
僕が知ったのは、2016年である。
時は、世界は残酷なのだと思った。
その歌声は、あまりに美しかった。
だからこそ、僕はそれを生で聴けなかったことが、あまりに虚しく、今でも自責の念に駆られてしまう。
よくこのブログでも「アーティストが明日どうなってるかわからないから、ライヴは行けるなら行っておけ」と書いている。
それの根底にあるのは、実はこの羊毛とおはなの出来事があったからだ。
人は時に抗うことはできない。いつだって後悔は、過去にある。
僕は、どれだけ悔やんだだろう。こんな素敵なアーティストと、なんでもっと早く出会えなかったのだろう。
「音楽はいつまでも残る」
その言葉の有り難さも、悔しさも味わったのだ。
音楽が残るからこそ、もう生でその声を聴けないということを感じさせられてしまう。
アルバムにはオリジナルとカバー曲が収録されている。
カバーでは特に、oasisの"Don't Look Back In Anger"のカバーは、とても面白く、原曲とまったく異なる魅力である。
オリジナル曲も素晴らしく、落ち込んだ気持ちの時など、心の傷に沁み入るようだ。
日常の何気ない瞬間に、そこで鳴っていて欲しい音楽、それが僕にとっての羊毛とおはななのである。
あとから知るが、年代ごとに出していたミニアルバムのタイトル「LIVE IN LIVING」というというのはまさに「リビングルームでライヴをしているような感覚」というコンセプトを宿している。
残された音楽。
残された人々。
羊毛とおはなのメンバーであり、ギタリストの市川和則は現在はThe BOCOSというギターユニットとして活動している。
そして不思議な縁だと最近になって知ったのは、羊毛とおはなのバンド編成では、ポルノグラフィティのサポートベースとしてツアーに参加した須長和広が居たこと。
気づかないうちに、色々なところで、色々なことが繋がっている。
最後に、少し長くなってしまうが、千葉はなが生前残したメッセージを引用したい。
死を悟りながらも、これほど前向きなコメントが遺された。
これを見たからこそ、これからも羊毛とおはなの音楽を日常に、大切に聴いていきたいと願うのだ。
※改行はこちらで入れています
こんな形で報告ということになり、驚かせてしまい申し訳ありません。私、千葉はなは2012年7月に乳がんが発覚し手術いたしました。化学療法の治療はしなかったのですぐに復帰することが出来、仕事に戻ることが出来ました。ですがその1年後の2013年9月に同じ場所からの再発が発覚しました。それはちょうど10周年コンサートの1ヶ月位前で、ライブを中止にするか迷いましたが、今度は東洋医学のほうで治療しようと決意し、ライブとの両立が可能だったので、10周年ライブを無事終えることが出来ました。
その後食事療法や漢方などを徹底して行いましたが、徐々に体力も落ちていき2014年6月再手術を決意しました。手術後は実家に戻り、家で療養しておりましたが病状は悪化してゆきました。2014年11月に地元の病院に行きましたところ、他に治す治療はないと言われ、クオリティー・オブ・ライフ(QOL)を上げる治療に入り、12月ごろには歩くのもままならなくなりました。2015年に入ってからは酸素マスクが欠かせなくなり、車いすに乗りだんだんと外出することもできなくなって、食事もとれなくなりました。
今の時点で私は余命1カ月を切っていると自覚しています。そんな中、東京から相方の羊毛くん、マネージャーでもあり大親友でもある小山奈々子さん、友人や地元の仲間であるグラーバたちも来てくれ、心が晴れやかになりました。実は病気のことはほとんどの人に話していません。なので寝耳に水だった方も多いかもしれません。本当は治癒するつもりでした。そしてその経験を本に書いて同じような病気を背負っている方たちを励ますことができたらとずっと考えていました。ですが悲しい本は書きたくないので出すのを断念します。
人は面白いものです。自分が死んでゆくのを悟れるものだとわかりました。その悟りをしたあとは気持ちが晴れ、すごく楽になりました。私はもともと人が死ぬことを悲しいという風に思っていませんでした。むしろ卒業というような喜ばしいことだとどこかで感じて生きていました。なのでそれもあり全然死に対しての恐怖もなくつらさもなかったです。周りで支えて下さった方には寂しい気持ちにさせてしまったかもしれません。ですが私は今とてもワクワクしています。皆さんとひとつになれるような気がするからです。私の身体はなくなっても、私は存在します。だから悲しまないでください。
そして羊毛とおはなの曲はもちろん、羊毛さんの新しい活動「THE BOCOS」の曲も聴いて下さるとうれしいです。これまでたくさん羊毛とおはなを聞いて下さった皆様、応援して下さった皆様、ライブに来て下さった皆様本当にありがとうございました。ライブは出来ませんがまたお会いできると信じています。
2015年3月21日
千葉 はな
おっさん臭く言わせて欲しい、"また今度"なんて言ってる間にそのバンド死ぬぞ
明日ポルノグラフィティが解散しても幸せといえますか
戦争やテロから生まれた音楽を愛せるか ジョン・レノンのimagineは永遠の名曲になってしまうのだろうか
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