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2025年6月24日火曜日

【ライヴレポ】ハルカトミユキ「青写真を描いた、その後」GRIT at Shibuya






2013年リリースされたハルカトミユキのメジャー1stアルバム「シアノタイプ」から12年経った。 

そんな2025年の夜、再現ライヴが行われた。

6月なのに梅雨を忘れた暑い真夏日の渋谷。

その夜をここに記録する。


※敬称略









「シアノタイプ」のアルバム再現ライヴ

もうこの響きだけで、自分は泣けてしまう。

「シアノタイプ」というアルバムが、思い入れ深いという次元を超えて、自分にとって大切なアルバムだからだ。

後で書いていくが先に書いておけば「人生を変えたアルバム」の1枚であることは間違いない。

このアルバムがなかったら、今の僕はいない。

15時の事前物販を息を荒くして待ちながらグッズを購入。意気込んで1万円以上購入してクジを引いたが、あえなく撃沈。

ちなみに当たるとシアノタイプのメガジャケサイズが貰えたのである。実は昔グッズで発売していたのだが、学生時代の友人への借金とギターのローンで買えなかった。純度100%の自業自得である。

このチャンスを逃すまじ、と意気込んでいたのである。そして外れたのだ。マジで誰か持て余してる人いたら譲ってくれないか。当時の定価で買う。

欲をいえばそれなら「シアノタイプ」のアナログ盤をいつか発売して欲しかったところでもあったが。クラファンしたらそれなりに俺は出すぞ?

いきなり脱線してしまったがグッズも買い、レコファンに行ったり時間を潰して入場を待った。

開場時間を目掛けて会場に戻る。FC先行でなかなか良い整理番号だったので、また息が荒くなる。

会場に入ると座席があってビックリした。スタンディングじゃないんだ。
とりあえず良い感じの席を確保して、ドリンク引き換え。缶とはいえヨナヨナエールのビールがあったの最高。

外が暑かったし、LINEで友人からクラフトビールの写真まで送られてきてそそのかされたので、一気に飲み干す。天国はここにあった。

開演は少し押してスタート。SEでレディオヘッド流れた瞬間にあまりに気持ちよくて酔っ払いそうになった。


オープニング映像が流れる。
これまでのキャリアを振り返るようなもので、「あの頃思い描いた未来はどうなったか?」というような問いかけからライヴのタイトルである「青写真を描いた、その後」と出る。

メンバーが登場。
古いファンには懐かしい面々。後述していくが、本当に僕はこの体制にしてくれたことが嬉しくて仕方なかった。

メンバーは全員板づいていたけれど、ハルカがアコギを手に一人で歌い出す。アルバムと同じく”消しゴム”で幕開け。

もしかして、何気に”消しゴム”をライヴで聴くの初めてか……?

2番からはミユキのキーボードが加わり、静かながらも切々とした想いを歌い上げる。

アコギからシンラインへ持ち替え”マネキン”
みんな立ち上がるか迷っていたが「立って!」という素振りのミユキを見て立ち上がる。心はもう沸き立っている。

距離が近いのもあるが、久しぶりのサポートメンバーたちの音圧は凄まじい。
まるで”消しゴム”の押し潰されそうな心情を振り払うように。

勢いそのまま”mosaic”へ。攻撃的な曲が続く。
特に初期のハルカトミユキが強く打ち出す「怒り」という感情。
世界への失望はきっと、それでも世界のどこかを信じたい心の期待の裏返しなのかもしれない。

お気づきだと思うが、アルバム再現ライヴではありつつ曲順はアルバムどおりではないので、次に何が来るかドキドキする。


軽快なカッティングの”Hate you”。大好きで久しぶりに聴けて嬉しい。梨本恒平によるベースのモータウンリズム(でいいのか?)に合わせてミユキがタンバリンを手にあのダンス。
この感じとても懐かしくて嬉しい。




「Hate you 君が好き …とか言ってもらえると思うなよ?」の部分で指さされると、分かっていてもドキッとしてしまう。たまらない。

”伝言ゲーム”も本当に久しぶり。この曲がリリースされた12年前よりも、世間のこういう風潮は酷さを増すばかりになってしまった、
今も誰かの怒りを誰かが勝手に代弁している。

サビのメロディラインが大好きで、これからもライヴでやってほしい。
あとグッズの4th DEMOにこの曲のデモが入ってたんだけど、めちゃくちゃテンポ早いしサビのメロディが一部違ったり興味深かった。







ハルカ:こんばんはハルカトミユキです。本日は1stアルバム「シアノタイプ」の再現ライヴ「青写真を描いた、その後」に来てくれてありがとうございます。
バンドメンバーも当時演奏してくれていた方々にまた集まっていただきました。
当時を知ってくれてる方も、最近知ったという方も皆楽しんでもらえるように頑張って演奏します。
アルバムのタイトルでもある”シアノタイプ”という曲を。




”シアノタイプ”はいつ聴いてもイントロで我を忘れてしまいそうになる。
アルバムの曲の物語は「今」や「過去」を切り取っているものが多い中で、この曲は未来を見つめている。

ハルカトミユキのキーとなる「青さ」とどこか漂う儚さが入り交じった名曲。この曲に凄まじい共感をしていた時期があって、そんなことを思い出したりもう涙が。

そんな流れで来たピアノ1音で涙腺が崩壊した”ドライアイス”。こんな流れズルすぎる。
もう何度か書いたと思うが、自分にとっては大切な曲以上に、自分の人生を変えてくれた曲。

自分の世界を広げてくれたというよりは、自分と世界を繋いでくれた、そんな曲だ。

佐藤亮のギターが本当に格好良くて、イントロでE-Bow使っていたり、ギターソロも「あーこれこれ!」と悶絶していた。

そして中畑大樹のドラム。この人が叩くハルカトミユキの音楽は、より一層力強さが増す。本当に大好きなドラム。
”ドライアイス”もそうだし、毎回曲の最後のサビでオリジナルのアレンジを入れてくれるのが大好き。

この曲にたまたまYouTubeで出会っていなかったら、自分はここまで日本のミュージシャンと出逢えていなかった。おこがまし過ぎるけど「日本の音楽死んでなかったじゃん」と思わせてくれた曲。
(この頃はポルノグラフィティ以外はほぼ洋楽しか聴いていなかった)


”長い待ち合わせ”へ。
こういう機会でないと聴けないような曲なので、1音も聞き逃すまいと耳を澄ませる。
この曲に漂うペーソスは12年を経てもやはり切ない。

序盤のロングトーンの重いベースラインが、この主人公の気持ちを表しているかのよう。


ミユキ:みんなの凄い熱量が伝わってきて、本当に今日やって良かったなって思ってます。
13年前に出来たアルバムを見て
ハルカ:12年前だね
ミユキ:12年前か。12年前に創ったアルバムで、自分たちがジャケットに写ってるじゃん?それを見ると、良い歳の取り方をしてるなって。
見てると来てるくれる人にも、みんなも良い感じの歳の取り方をしてるのかなって。
ハルカ:そうだね、みんなも同じように12年、歳を取って。それは良いことだと思って、12年間みんな生きてきたんだから。

(ここで話してる最中にメンバーのプライベートな話題を話しかける人いたけど、やっぱり自分はMCの流れぶった切って話しかける人は正直苦手でモヤモヤしてしまう……(以前にも似たような人いた))


ハルカ:これからもやっていこうと思います。大人になった話をしたということで、”未成年”という曲をやります


アルバム曲以外に何を演奏するんだろう?と思っていたけど、まさかの”未成年”もやってくれる嬉しい驚き。
字数とかは違うんだけど、出だしからどこか短歌的な響きがある曲だと思う。

やり直しのできないことは
いつも何でもない顔で
そこらじゅうに紛れてる

そして、Bメロにあたるフレーズ。12年の歳月を経て聴くと、またより深い心の機微に触れる。
自分はどれだけやり直しのできないことをしてきてしまったのだろうか。


続いて、シーケンスから始まった”7nonsense”
途中からバンドinしたんだけど、息をするのを忘れてしまいそうなほど引き込まれた。

演奏の強度がとても高く、圧倒されながらも身体が踊ってしまう。特に原曲よりもハルカのコーラスが全編に入ったことで、より幻想さが増したと思う。

一瞬の音の狭間から”プラスチック・メトロ”へ。
なんて恐ろしい流れ。

”7nonsense”から明らかに空気の色が変わった。
ヒリヒリとした空気が会場を覆う。
それでも。そんなヒリヒリとした、自分の内側をぶちまけるような闇に、僕は心地良さを感じるのだ。だから、ハルカトミユキが好きなんだ。

アウトロの盛り上がりもそのままに”ニュートンの林檎”。まさにライヴにおいて必殺という流れ。




演奏全部カッコイイんだけど、特に自分は中畑大樹ドラムで毎回変わる最後のサビのドラムアレンジが楽しみなのである(特に”ニュートンの林檎”と”ドライアイス”)

自分が音楽において、最後のサビで歌い方や演奏が変わるアレンジが性癖ってだけなのだが、毎回本当に興奮してしまう。

このダークな流れできたので、地下鉄のように鬱屈した空気を雰囲気を振り払うように拳を突き上げる。

バスドラムに合わせて心より先に身体が動く。
何が来るかはわかってる。もう身体に染み付いてるんだ。

”振り出しに戻る”へ。ミユキが「最後に」って言ってた気がして「まさか本編もう終わり?」とビックリしてたら最後じゃなかった。聞き間違いかもしれない。

それでも確かに踊れる曲、ということで言えばここまで盛り上げる曲はラストとも言えるだろう。まだあの曲とあの曲が残っていると、みんな分かっているんだから。

少なくともライヴは終盤で、あまりの楽しさに本当に終わってほしくなかった。

この怒涛の流れが終わりハルカが「ちょっと、休憩させて……」と申し出てブレイク。
いや、本当にこの流れはそうなる。観客側も一度着席。


ハルカ:2013年にアルバムが出て、12年経って。その間、みんなはどうだったでしょうか。考えてみてください。
想像以上だったって人もいれば、こんなはずじゃなかったって人もいると思います。私たちも同じで、これから未来どうなるかって言えたら良いんだけど言えなくて。それでも、やめない限り未来はある。
私もミユキも巳年の女なので、ここまで折れずにしぶとくやってきました。


ちなみに凄くどうでもいい余談だが、自分は卯年なので彼女たちの2つ上(なんとなく世代近いとは思いつつちゃんと知ったの初めて)なのでこの話印象的だった。


曲に戻る時、ハルカ先生の「よし、休憩終わり!」でみんなスッと立ち上がるの面白すぎる。

ハルカ:”ナイフ”という曲を。

この日最も自分がずっと待ちわびていた瞬間である。
”ナイフ”兎に角、大好きな曲なのだ。


何が好きなのかというと説明するとすれば「この曲をつくる全ての要素が好き」としか言いようがない。

曲名を告げられたからこそ、身構えていたのに最初の歌声からもうダメだった。何回泣くんだよ、俺。
なかなかライヴで聴けない曲なのも大きいと思う。毎回聴きたいと思いながら、こうして待ちに待って聴けるのも代え難い喜びだ。喜び方がドMすぎる。

ステージの上手側から照明が一筋差し込む。まさに歌詞にある「穏やかな昼間の差し込む日差し」のように。
これも最後のサビのドラムアレンジ最高だった。


ハルカ:どうもありがとう。最後の曲です。




アルバムと同じく"Vanilla"が最後に演奏された。
静かに始まり、曲が進むにつれて激情が増してゆく。

細かすぎるところだけど、Aメロの佐藤亮のデジタルディレイが効いたギターが本当に好き。

アウトロの締め部分でミユキが左手を掲げている姿が印象的だった。

共感という言葉が飽和した今の時代で、それでも僕は「狂えない」という主人公の感情に、それでも共感という言葉しか選べない。
くだらない世界に怒っていて、くだらない自分に怒っていて、それでも狂えない自分がここにて。

違う明日を選べた日があって、それでも僕は同じ朝が来ることを選んでしまった。

だけど、そちらを選んでなかったら、僕はこの夜ここにいなかったかもしれない。

それぞれの選択の先に、この今があるのだ。



アンコール

メンバー紹介
ギター:佐藤亮
ベース:梨本恒平
ドラム:中畑大樹


このメンバー体制が好きだということは最初にも書いたけど、演奏でいえば
「SCHOOL OF LOCK! 音楽室 LIVE SESSION #1 -ハルカトミユキ-」という映像作品をぜひ見てほしい。今はもう中古しかないかも。






30分と短いけれど、スタジオライヴの映像なので音もまとまっていて素晴らしい。※言うまでもなく普通のライヴはライヴの音の良さがある。

サポートメンバーを紹介してからメンバーをお互いに紹介。

ハルカ:以上のメンバーで今日はライヴをやってきました。ライヴだけじゃなくて会うのも久しぶりだったけど、リハをするとすぐに感覚が戻りました。
12年、歳を重ねて「歳を取ったから」とか「もう昔みたいには」と大樹さんは言ってましたが。"消しゴム"の歌詞みたいに
中畑大樹:負けそうになった
会場:爆笑
ハルカ:そんなこと言って、今日ちゃんとこうでしたからね


ここスゲー爆笑して終わって真っ先にメモってた。


ハルカ:12年、というか未来ってあっという間に来ちゃうんだなって。だから大事にしなくちゃいけないんだと思いました。そんな限られた時間の中で今日ここに来てくれて本当に感謝しています。
そんな我々ですが今日新しい曲が配信になりました。"かわいいひと"という曲で、昔に創った曲を改めてレコーディングし直しました。これからもできるだけ曲を出したり、ライヴができたりと思うのでよろしくお願いします!最後にその曲をやって終わろうと思います。


ライヴ当日に配信となった"かわいいひと"。行きがけにリピートしていてサビが耳から離れなかった。以前にもライヴで演奏されていたようだが、おそらく自分は初聞き(のはず)。

右チャンネルのギターカッティングとか爽やかだったりするんだけど、歌詞は結構な悲しみを抱いていて。それはまさにタイトルのかわいいひとに「なりたかったな」という言葉に表れている。

爽やかな曲調だけど、特にサビのキーがそこまで高くなかったりするのは、なれなかったからこその哀しみも帯びているようにも感じた。

(過去に披露されているにせよ)ライヴでこうして新しい曲を演奏してくれるのってすごく嬉しいんだよね。新曲が聴ける嬉しさはもとより、やっぱりそこに未来を感じるからだろう。
終演後には秋の黒沼英之とのツーマンが発表されたことも、その喜びの一つだ。

MCで何度も感謝してくれたけど、こちらこそありがとうだ。


急に話が逸れるが少し前にThe Yellow Monkeyのライヴを見て、そのコンセプトは「1996年のライヴと最新アルバムのハイブリッド」というものだった。ノスタルジックでありつつ、最新の姿を見せるというものであった。

それを見ていたので、今のハルカトミユキが12年の時を経て「シアノタイプ」の曲たちを演奏するとどうなるかという気持ちになっていた。
見ている最中そういう想いもありながら、それでもノスタルジーがどうしても勝ってしまう。それも悪いことではないと思っていて。

過去を改めて見つめ直すから、また未来に目を向けられることもある。
そして、当然ながら同じ曲であっても、当時の自分と今の自分では全く違う響き方をする。

メンバーも観客も、みんな12年の歳月を生きてきた。

正直、個人的には色々と紆余曲折しかない12年ではあったんだけど、ハルカトミユキのおかげで出会えた音楽があり、何よりハルカトミユキの音楽が一つの支えでいてくれた。






終演後に2人からサインをもらう時、最後に何言おうか考えていたけど(いつも照れて悩む)。

「これからもよろしくお願いします」

と自然に口から出ていた。これからも青写真を描き続けていこう。


ハルカトミユキ「青写真を描いた、その後」
GRIT at Shibuya

【セットリスト】
01. 消しゴム
02. マネキン
03. mosaic
04. Hate you
05. 伝言ゲーム
06. シアノタイプ
07. ドライアイス
08. 長い待ち合わせ
09. 未成年
10. 7nonsense
11. プラスチック・メトロ
12. ニュートンの林檎
13. 振り出しに戻る
14. ナイフ
15. Vanilla

En-1. かわいいひと





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虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。



 真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。










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