星野源の10枚目シングルとなる「Family Song」を購入。
ということでレビューという名の感想を書き連ねていく。
「恋」の社会現象レベルのヒットにより、注目度が上がる中、そんなプレッシャーもどこへやらというほど、星野源らしい曲が並んだ今回も魅力満載のシングルとなった。
星野源 10thシングル「Family Song」レビュー
1. Family Song
日本テレビ系ドラマ『過保護のカホコ』主題歌
ここ最近はアップテンポな曲が表題曲となっていたが、久しぶりにテンポを落としてリラックスした雰囲気を漂わせる曲である。
ドラマ側からのオファーが「バラードでもなく悲しい感じでもなく」というものだったことや、星野源自身も"恋"がテンポある曲なので次は違うテンポにしようと思っていた、という意図が合致したことによる。
歌詞のテーマもドラマに合わせ「家族」である。
折しも前作"恋"のテーマが「夫婦」であったこともあり、地続きである印象。
凄くどうでもいい話なのだが、「恋」のリリースが 2016年10月5日で、今回の「Family Song」は2017年8月16日なのだ。
つまり、リリース期間が"ほぼ"十月十日(とつきとおか)なのである。
まるで夫婦になった2人が子どもを授かり、誕生して家族になったかのようだ。
ドラマ側からのオファーを受け誕生した楽曲は落ち着いたテンポでありながらメロウにはなりすぎず、ゆったり身を委ねるような曲となっている。
敬愛するブラックミュージックを基調としながらも、とても歌謡曲的なストリングスとメロディ、これぞ星野源の魅力だろう。
歌詞をみていく。
「家族」の曲でもあり、つまりは「生活」の曲でもある。「生活」の歌はソロデビューしてからの星野源にとって一つの大きな特徴でもあった。
あらためて星野源のキャリアを聴き直していると"老夫婦"や"茶碗"のような人生を振り替えるような曲がまるで"恋"や"Family Song"で歌われている夫婦や家族の行く末のようにも響く。
ということは"ストーブ"や"ステップ"にも繋がっていくのかななんて考え出すと止まらない。
意図しているわけではないだろうが、星野源の1stアルバム「ばかのうた」や2nd「エピソード」は、まるで最初に示されている終着点のようだ。
何が言いたいのかというと、意識的にも無意識にも星野源の作家性は実は変わっていないのだなと、今回の"Family Song"を聴いていて感じたことである。
そしてその幸せを"テンプレート"な家族像に合わせなかったことがこの曲の功績となるだろう。
「個性と差別」というテーマについてちょうど考えていた時に聴いたので、あらためて見つめ直すキッカケになった。
2. 肌
花王「ビオレuボディウォッシュ」CMソング
ネオ・ソウルを意識し、「YELLOW DANCER」収録の"Snow Men"からの地続きとなる曲。
"Snow Men"が大好きなので、こんなアプローチの曲がきてくれて嬉しい。
メロディアスな楽曲でありながらも、意外とドラムの手数が多く、かなり細かく刻んでいる。
その点で"Snow Men"とはまた一味違う曲と感じさせる。
ワウを効かせた湿り気のあるトーンのギターの音色で艶やかさが加わり、曲に色っぽさを加えている。
しかし、本人のコメントを見ると、これもまたファミリーの曲である。
「その胸に口づけを」というのは、授乳の意味合いも込められているという。
CMについて知らずに聴いたライターたちが口々に「またエロい曲だねぇ」と感想を述べていたというエピソードが面白い。
完全に日頃の行いである。
3. プリン
プリンスを意識したナンバーで"プリン"とはこれまた。
奇しくも制作していた矢先にプリンスが他界してしまい、収録が見送られたという。
しかし内容は「音楽でふざける」の言葉通り、一音一音から瑞々しい音楽の喜びが零れ落ちる。
ファルセットの歌声も楽しいし、急遽レコーディング参加したOKAMOTO'Sのコーラスが楽しい。
途中のハマ・オカモトとの小芝居も初回特典のレコーディングドキュメンタリーを見ていれば更に笑える。
そして僕はやはり長岡亮介のギターが本当に好きだなぁと沁々聞き入ってしまう。特に"プリン"のギターのアプローチはプリン並に大好物である。
歌詞の「瞳に今日の数字光る」って何だろう。
考えてみていくと、これって体重計なんじゃないかと思えた。
めちゃくちゃダイエットしてる人がプリンを見つめる姿を想像すると、ここでもクスりとしてしまう。
だからこそ「明日はせめて 口づけを」なんだね。
それでも食べられない。
まさかこんなに共感できる歌詞がくるとは。
※太りやすいのでプリン控えてる
4. KIDS (House ver.)
恒例の宅録。
毎回書いているが、回を重ねる毎にやってることがどんどん達者になっていく。
TR-808のリズムに乗せ、重ねられたギターもコーラスの遊びが楽しい。しかしこの楽しさは"プリン"とはまた違う。
それはハウスバージョン特有の「一人遊び」の要素である。
星野源は毎回部屋でおそらく「こうやったら絶対楽しいだろうな」なんて思いながらRECボタンを押しているのだ。
みんなとワイワイ作り上げていった"プリン"と真反対の制作方法である。
星野源の音楽にはそのどちらも楽しくて仕方ないという喜びが伝わってくるのだ。
全身で音楽を楽しんでいる人の奏でる音
だからこそ僕は星野源の新しい音楽を受け取るのが楽しみなのだ。
その他の雑記
ということでシングル収録の4曲を書いてみた。
今回何より嬉しかったのは上にも書いたが星野源の"生活"の歌があらためて聴けたという点である。
目が覚めて涎を拭いたら
救急車のサイレンが
胸の糸を締めるから
~"Family Song"
救急車のサイレンが
胸の糸を締めるから
~"Family Song"
きつく 抱き締めても
二つしかなれないから
~"肌"
二つしかなれないから
~"肌"
あなたの髪が揺れる
風呂の水があふれる
明日はゴミを捨てる
その前の掃除機を忘れる
~"KIDS (House ver.)"
風呂の水があふれる
明日はゴミを捨てる
その前の掃除機を忘れる
~"KIDS (House ver.)"
など人からすれば当たり前に過ごしている瞬間を、当たり前としない。
やりたい音楽が変わっても、方向性が変わっても、実は変わってない。
『MUSICA』のインタビューを読んでいて印象的だったことがある。
インタビュアーの有泉さんの言葉を用いて引用したい。
60~70年代のソウル感を出すために当時のスタイルを真似するのではなくて、音像から受けるフィーリングを再現しようとした。
という点である。
これが星野源のやっている音楽の魅力ではないだろうか。
楽器をやる人なら特に分かるだろうが、全く同じ機材で同じセッティングで弾いても弾き手によってサウンドが違うというものだ。
それと同じように"当時"を再現しようとして、機材を揃えてもその当時の空気感は出せない。
ましてや、それがブラックミュージックであるなら人種もルーツも違う人間たちの奏でた音楽なのだ。
そうしたことを思うと、受けたフィーリングを昇華させて自分の音楽にするということをやってる人は、実は少ないのではないだろうか。
それを天下を取って一躍第一線を走り出した星野源が放ったということの意味は大きい。
今年を彩る重要な一枚であった。
初回盤のDVDのライヴ映像もレコーディングドキュメンタリーも相変わらず最高であった。
今はオーディオコメンタリーを聴きながらこれを書いている。
それにしても、
ライヴが見たい。
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