斉藤和義の"歌うたいのバラッド"が好きだ。
本当に大好きな曲で、ライヴで聴いた時には思わず感極まってしまうような曲である。
しかし、数年前とあるお店のBGMでこの曲のカバーが掛かっていた。
なぜかやたら明るい曲調で、女性ヴォーカルが歌っていた。
若干ダンストラック寄りのアレンジとなっていた。
それに対して凄まじい憤りを感じたのだ。
自分の作った歌でも何でもないのに。
そのことについて書いてみたい。
曲のテーマ性
店のBGMだったし、正直誰のカバーかさえも分からないままであったけど、今でも強烈な印象を与えられた。悪い意味で。
ということを思い出し、念のためiTunesで調べたらそれっぽいのが見つかった。
細かいことは書かないが、要はよくあるヴィレッジ・ヴァンガードで掛かっている謎のハウスアレンジのカバーアルバムみたいなやつの1曲であった。
これ異常踏み込むと僕のボルテージが限界を迎えるので、もう書きたくありません。
カバーする自体には反対ではないし、良いカバーだって沢山ある。カバーを聴いて原曲を聴こうと思う人もいるだろう。
だけど"歌うたいのバラッド"とは、女性ヴォーカルで明るい感じにカバーしたらあまりにテーマの本質に背いていると思わないだろうか。
この曲の魅力は不器用な男がずっと寄り添ってきたあなたへ、言えなかった「愛してる」という一言を振り絞るように伝えるところにある。
女性ヴォーカルであっても、その部分がしっかり表現されていれば間違いなく良いと思う。逆にいえばそこが表現されなかったら、この曲の本質は崩壊してしまう。
それで聞こえてきた偏見のイメージもあるかもしれないが「名曲をカバーしちゃう私素敵☆」みたいなのが透けて聞こえてくるようだったのだ。
エモーショナルもへったくれもない代物である。
たとえば"歌うたいのバラッドの"カバーで有名なのといえばBank Bandで桜井和寿がカバーしているものがある。
しかしそれもアウトロでこれでもかと「愛してる」を連呼する「愛してる」祭を催してるのもどうかと思っている。連呼しては「愛してる」の言葉が薄まってしまうではないか。
こっちはアウトロ以外はかなり好きなカバーなのに、そこが残念である。
話がそれてしまったが、 カバーするのであればするなりで、ちゃんと原曲の持つ意図は大切にして欲しいと思ってしまうのだ。
僕は毛皮のマリーズ好きだけど、イエモンのトリビュートアルバムの"SUCK OF LIFE"で何故ヒロTのコーラスを混ぜたのか理解できない。
"SUCK OF LIFE"って要するに同性愛のゲイの歌なわけじゃないですか。だから女性ヴォーカルをそこに入れてしまうとダメではないかと。
志磨遼平の意図を今でも知りたい。
あれほどイエモン好きの志磨がこの曲のテーマを分かってないはずがないし。
もちろん曲の解釈は人それぞれだし、一つの解釈として捉えることはできる。
ただ、どうしても気になってしまうと素直には楽しめないもの。
ノリでカバーしましたみたいなカバーアルバム
それとは別に先日TSUTAYAに行くとヒット曲のカバー集みたいアルバムが掛かっていた。
男女混合でBUMP OF CHICKENの"天体観測"とか、YUIの"Good-bye Days"とか。
バンプは当たり障りない大学生がコピーしちゃいましたみたいな感じだったのでもう好きにしてくれという感じだが、YUIの"Good-bye Days"は儚さも何も感じないカラオケを聴かされている気分であった。
心の中で「止めてー!俺のYUIを返せ!」と叫んでいた。
※何一つ俺のものではない
どうやらそんな感じのカバーを集めたコンピレーションアルバムが出ているらしい。
泣いた。心の中で。
今まで"Good-bye Days"で流した類いの涙でないものだ。
アメリカとかイギリスの映画で、ヒット作のパロディみたいなのがあるじゃないですか、あれってふざけてるようで最大限のリスペクトを込めて作ってるものばかり。
たとえばエドガー・ライトの「ショーン・オブ・ザ・デッド」なんて、完全にコメディだけど、しっかり「ゾンビ」へのリスペクトを込めていて本家監督のジョージ・A・ロメロからもお墨付きを得ている。
それにつきましては、ジョージ・A・ロメロ監督のご冥福をお祈りいたします。
真剣にふざけてるというか、しっかり原作を理解して愛していることが映画から伝わってくる。
音楽も一緒で、そういうカバーってやっぱり聴いてても気持ちいいし楽しいんだよね。
いや、分かってるんですよ。
音楽なんだから、楽しめたら良いじゃんとか、良い曲なんだから広めたいみたいなのも。
"歌うたいのバラッド"の件も、斉藤和義本人は絶対「まぁ、いいんじゃないの?印税入るし」とか言うだろうけど。
それでも、安直にカバーするならニコ動とかカラオケでして欲しいなと思うので今日この頃。
真面目すぎるのだろうか。
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