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2018年7月7日土曜日

ハルカトミユキ"Sunny,Cloudy" 歌詞解釈~それでも生きてく人たちへ






ハルカトミユキの2017年にリリースされたアルバム「溜息の断面図」。






その中で最も「パーソナル」な曲だという"Sunny,Cloudy"について、色々考えてみたい。

と書きつつ、こんなに時間が経ってしまったのは、考えても考えても掴みきれないでいたからだ。

それでも、自分なりに辿り着いたものをここに記したい。





曲について



作曲はプロデューサーでもある野村陽一郎。

僕はこの人の音楽に対する"感性"が好きである。

創るメロディは好きだし、アレンジの仕方も面白いものが多い。そしてギタリストとしても音作りだったり、アプローチが好みなことが多い。
プロデュースとしての曲のアプローチについては、色々意見はあるようだが、僕はとても肌に合う感覚とでもいうか。

この人がいてくれたからこそ"夜明けの月"が生まれたので、感謝しかない。

賛否はあるかもしれないが、こうした感覚的に合うなぁという人の手掛けた作品は個人的には毎回楽しみである。

この曲、"Sunny,Cloudy"は実は良い曲だなとは思ってはいながら、最初はそこまで入れ込むほどではなかった。
しかし何回もアルバムを聴いているうちにとても馴染んできて、今ではかなりお気に入りの一曲となった。

イントロから高揚する。そこからの途切れぬメロディとリズムが心地好い。
ほぼ休みなく、駆け抜けるように突き抜けていく曲だ。

ピアノが良いアクセントになっていて、曲に爽やかさをプラスしている。



"世界"と"光れ"の先に



この曲へのコメントを引用しよう。

実は最後まで歌詞に苦労しました。今の等身大の自分自身にもっとも近いノンフィクションな物語だったからだと思います。
「世界」で外に飛び出して、「光れ」でふと立ち止まり、それに続く現在地の歌を書きたいと思った。
自分で傷つけたくせにその罪悪感を抱えたまま続いていくのが人生ならば、いっそそんな荷物を捨ててしまうことも生きていくためのひとつの術。
初めて、こんな自分を許してあげられた歌かもしれません。


"世界"で旅に出て、"光れ"で立ち止まって感じたこと。電車に飛び乗り、辿り着いた場所。理想と現実。

"世界"において「明日は光れ」という願いが歌われ、"光れ"では「断ち切れない影も許していたい 光 追うならば」という決意に変わる。
「断ち切れない影」とは過去の自分で、全てを肯定して歩み出すという決意だ。

"世界"では「変われない僕」と歌われたが、"光れ"の最後では「それでも僕らは変わってく」と歌われる。

望む望まないに関わらず変化は、必要なものだった。

「変わらぬものを探す間に こんなに変わってしまった」
それでも変わらぬ夢へ向かっている、そう信じて。

もう引き返すことはできない。別れを告げた場所、戻らない過去、好きだった公園も横顔もそこにはないのだから。

全ての過去を受け入れ、許したからこそ、また歩き始めることができる。

全てを抱え生きてゆく。

この、東京という街で。









Sunny,Cloudy



路地裏に夜がきて
そそくさと逃げていく


夜はまだ怖くて
また崩れていくバランス
~嘘ツキ

さんざめく東京の夜、どこへ居ても照らされてしまう。

"光れ"において、


断ち切れない影も許していたい
光 追うならば


と歌われるように。旅立ちは光を追うためであった。それがいつしかその光から逃れるようになり、東京の夜を彷徨うことになってしまう。

タイトル「Sunny, Cloudy」の意味をずっと考えていた。晴れの日のように輝く場所は東京、曇りから連想される灰色は故郷。夜と朝。

そう考えていた。それでも色々しっくり来なくて、ずっと考え込んでしまっていた。

しかし、先日気づいた。
違うではないか。


この空が
いつまでも青くないことを
君は知ってるの?
~"マゼンタ"


白昼の夢は覚め、最終電車は行ってしまった。
それと同時に旅立った誰かがいる。

電車はもう動き出したのだ。

信じて歩みださなければならない。変化をし続けたとしても、変わらぬものを探して。

優しさは弱さではないけれど、甘やかす言葉でもなければ、甘えることでもない。

優しさは許すことであり、肯定すること。

許せない 許せない
許してあげたい
あの頃の僕たちを
~"Vanilla"

だからこそ、ハルカトミユキは「肯定する」と宣言した。

何も書いてなかった切符に、今は目的地が書かれている。


光 生きていて。


光とは希望であり、夜を照らし、自分の心を照らし出す。

ひとりで生きる勇気、それを照らし出したとき、人はひとりではなくなる。

肯定するよ、生きてく君の 全てを


止まらない心臓が、あたたかい命がある限り、そこに光がある。

ハルカトミユキはそう唄ってきた、叫び続けてきた。

変わってしまったもの、変わらぬもの、まるであらゆる角度から光を当てようとするかのように。

届けたかったからこそ、受け入れて欲しかったからこそ、

本当はすべて聞いて
欲しかったんだ


そう願うのだ。



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