NHK BSプレミアムで放送されたアナザーストーリーズ「We Are The World 奇跡の10時間」を見た。
結果はタイトルにも書いているが、後半ボロボロに泣いた。
心にあまりにも多くのものを残した1時間だったので、ここにその記録を残しておきたい。
7/9に再放送があるので、見れる方は是非見てから読んでください。
あらすじ
あなたも絶対に知っている名曲「We Are The World」誕生の舞台裏!マイケル・ジャクソンが手がけ、ボブ・ディラン、スティービー・ワンダー、ダイアナ・ロスら全米のスター歌手が集って作ったチャリティーソングなのは有名だが…!!たった一晩で行われたレコーディングでは事件続出!?一癖も二癖もあるスーパースターたちが起こした珍騒動と感動秘話とは?奇跡の一夜の知られざる真実!プリンス不在の真相も!
公式サイトより
プリンス、不参加の理由
アフリカのエチオピアで起きた大飢饉。
それに端を発して、アメリカのトップスターが立ち上がった。
アメリカのトップスター達を集めて10時間でレコーディングされた"We Are The World"。
発起人の歌手ハリー・ベラフォンテ、プリンスの恋人だったシーラ.E、プロデューサーの ケン・クラゲン等のインタビューを元に、今初めて語られる"We Are The World"の秘話が初めて語られる。
中盤ではシーラ.Eがプリンスがレコーディングに参加しなかった理由が明かされる。
ツアー中のためスケジュールもキツイ状態でありながら、実は参加する意思はあったプリンス。
レコーディングに参加しなかった理由はマスコミが騒ぎ立てたようなマイケル・ジャクソンとの不仲ではなかった。
プロデューサー達は、元々参加していた恋人のシーラ.Eにソロがあるとウソの言葉を伝え、プリンスを呼ぶ為のダシに使っていたことが判明する。
シーラ.Eからの電話でそれを見抜いて「君のソロが終わったら、行くよ」と言ってのけるプリンスの聡明さである。
シーラ.Eの言葉で語られたマイケルの「BAD」のレコーディングの話があまりに意外で面白い。
プリンスは"BAD"を自分なりにアレンジして録音していて、シーラ.Eもパーカッションで参加した。
それはあまりに素晴らしい出来だったが、プリンスは呆気なく消してしまったというエピソードである。2人はマイケルのコンサートにもバレないように何度も参加していたほどであった。マスコミの書き立てた不仲説はウソであったが、それでも共演が叶わなかったのは残念である。
音楽の力
そんなエピソード等が紹介され、前半は楽しく見ることが出来た。
それが後半である。
第三の視点として、ケニア人のクリッシー・キニャンジュイが登場してから、この番組が心に突き刺さる番組となった。
クリッシー・キニャンジュイはスティービー・ワンダーがアフリカの現状をミュージシャンの前で伝えるために、スカウトしてきたうちの1人である。
その言葉は当時の映像には残っていない。残っているのはその言葉に涙するミュージシャン達の姿だけである。
その空白の時間に何が語られたのか。
その前に。
クリッシー・キニャンジュイがインタビュー前にスタッフに問いかけるのが、
「日本で大きな津波があった時に、ミュージシャンは何かチャリティーをした?」
という問い掛けだった。戸惑うスタッフに「やったの? やってないの?どちらですか?」とクリッシー・キニャンジュイが問いつめる。
「("We Are The World"ほどの規模で)大きくはないですけど、やってました」とスタッフが答えると、
「大きさは いいの。やったのね。 よかった。悲劇が起きた時に立ち上がれるかどうかが人の本当の価値だから」
と云う。この一発の言葉の強さである。
ケニア人の彼女だが、お隣のエチオピアは長く続く独裁政治と、干ばつによる史上最悪の大飢饉、そこから逃れてきた人々が多くケニアにいたため、当時の状況を詳しく語ることが出来た。
ロサンゼルスに一年の半分、シッターとして働いていて、職場の人にスティービー・ワンダーがアフリカの現状を語れる人を探して面接していると紹介される。それがキッカケでレコーディングスタジオを訪れた。最初は「スターの気まぐれでしょ」という思いでいたが、そこで見たのはミュージシャン達の真剣に音楽に向かう姿だった。
「国境が隔てているというだけで、隣の国では多くの人が苦しみ、死んでいる」という現状。それが独裁政治によって都合の悪い事実が報じられなかったこと、その事実はミュージシャン達を揺り動かした。
2人の言葉を聴いて「誰に向かって歌っているのか」ということが明確になった。それはミュージシャン達に大いなる影響を与えた。
クリッシー・キニャンジュイの言葉が、とにかくどれも重く心に響く。
身も蓋もないことを言ってしまうが、音楽に世界を変える力はない。
それは、これだけの規模の作品が生まれても、日夜新たな音楽が生まれ世界に鳴らされても、人は争いをやめていないからだ。
それでも、ミュージシャン達は音楽の歌の力を信じた。
この歌が本当にアフリカを救うのだと信じていた。
だからこそ、6300万ドルもの売り上げに繋がった。
冒頭でも紹介されるがアメリカのミュージシャンを集めただけでも、年齢、性別、人種などバラバラなスター達だった。
それを繋いでいるのが、音楽で、音楽に国境も人種も関係ないという素晴らしさがここだけでも伝わってくる。そこにマイケルが書いた誰でも理解できて簡単に口ずさむことが出来る普遍的なコーラスのフレーズ、それは時代さえも超えて受け継がれる。
音楽も重要だが、更に重要なことはアフリカで起きている現状を「知らしめた」ということである。
今の世の中のように、簡単にスマホやパソコンで世界の今を知れることのない時代だ。アメリカにとってアフリカは遥か遠い国だろう。その国が抱えている現状が「知られる」こと。その情報はお金だけでなく、より多くの人を動かしているのではないだろうか。
この一連のエピソードで完全に泣いていたのだが、最後の最後に発起人のハリー・ベラフォンテの言葉がトドメとなった。
全てのアーティストに、全ての音楽好きに、全ての人類に、この言葉が届いて欲しい。
音楽に世界を変える力はない、そう諦めていた僕は、この言葉にとても救われた気持ちになった。
「争いはなくなると信じてる。それを出来るのがアーティストだ。彼らは表現者として、人々の目や耳を傾けさせることを喜びとしている。
もし 世界中のアーティストが力を合わせて『今は ここを見て』って、ひとつのことにスポットライトを当てる事に成功すれば、戦争だって止められるんだ」
「銃声の代わりに、歌を聞かせろ」
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