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2019年8月18日日曜日

「喉からCD音源」が出る男、岡野昭仁








岡野昭仁の歌は凄い。

ただそれだけの話。











ロマンチスト・エゴイスト








最近ではクレープを少年に奪われたり拾ったインコを警察に届けたらただの野良インコだった岡野昭仁はヴォーカリストである。

そして岡野昭仁を評する時によく「喉からCD音源」(或いは「口からCD音源」)という言葉を耳にする。

アーティストによっては、ライヴで悲しいほど声が出ていないヴォーカリストがいる。

それを思うと、ライヴでの岡野昭仁は恐ろしさを感じるほど、ライヴでも強烈なヴォーカルを聴かせてくれる。







特に、近年は年齢による劣化どころかむしろメキメキと歌声が進化している。たとえば「"BITTER SWEET MUSIC BIZ" LIVE IN BUDOKAN 2002」のDVDを見ればわかるが、連日の武道館公演でツアーファイナルということもあるが、かなり掠れて辛そうな声だ。

それから歌い方を変えたり、近年では改めてボイトレに通ったり、努力を続けた成果が今の岡野昭仁を築いた。

何度も書いているが2018年のシングルたちを振り返れば、同じような楽曲は何ひとつとしてなく、どれもがヴォーカリストにとって挑戦的な要素を持つ。

それを越え、ライヴで同じどころかそれ以上の歌を聴かせたことに、感動を越えて恐ろしさすら感じさせられる。

それでも1stアルバム「ロマンチスト・エゴイスト」を聴けばわかるように、ポルノグラフィティはデビュー当初から楽曲の振り幅が異常に広い。

その表現について。






FCUW5で「ロマンチスト・エゴイスト」の再現した内容であった。ファンクラブイベントだが映像作品としてリリースされているので、是非見て、感じて欲しい。1stアルバムとの違いを。

若々しさ、今の深みとどちらが良いかではなく、どちらもポルノグラフィティであり、岡野昭仁の歴史でもある。

岡野昭仁だけでなく新藤晴一のギターの進化も感じられる貴重な映像作品なのである。










Amuse Fes





先日、Amuse Fes 2019で岡野昭仁が出て来て唄った瞬間に泣いていた。

元々、見れる予定でなかったアミューズ・フェスだったこともあるが、それよりもやはり僕はこの人の声が好きなのだと、心の底から思わされた。

今はCD音源でさえそう思うのに、ご本人登場はヤバい。大変ヤバい。
最近特にそんな感じになってきた。

日常を解放する場所がライヴなのだけど、解放され過ぎて、もはや自分がなくなってしまうのではないかとさえ思ってしまう。

もしかしたら、粒子になって音の粒子と混じって消えてしまうのではないかと。

そして。ポルノグラフィティのステージを見て実感させられた。

岡野昭仁は「喉からCD音源ではない」、岡野昭仁は「喉から虹が出る」のだと。プリズムしてスパークするような。

"愛が呼ぶほうへ"から"カルマの坂"へ繋がれたバトン。
それはかつて「レコーディング当時はその世界観を表現しきれなかった曲」として唄われた曲。

あれから10年以上経ち聴いたそれは、さらに洗練され曲のスケール感に追いつくのではなく、より広げる唄となっていた。

声の出る出ないを越えて、音域を越えて。

歌のテクニックは見せびらかすためにあるのではない。
テクニックとは最良の表現をするためのツールでしかない。言葉を、メッセージを音楽を通して伝えること、それこそがロックのヴォーカリストなのだ。

少し前に発売された2回目の表紙を飾った『音楽と人』のインタビューを読み、デビューからの葛藤を語った岡野昭仁。

最近のシングル"キング&クイーン"まで歌詞に対して迷いがあったという。そんな岡野昭仁が何よりも新藤晴一が書く歌詞に対しての信頼が語られ、電車で読むものではないと痛感させられた。

ポルノグラフィティのヒット曲たち、その多くはメロディに合わせた最良の言葉を書く新藤晴一の歌詞によるものだ。

決して平易ではない歌メロをここまで歌えるのは、新藤晴一の歌詞による功績もまた大きい。

その割に自分で曲や歌詞を書くときは、やたらと自分を追い込むような並大抵ではないドMストイックな曲創りをするところがこの人の恐ろしいところだ。








咽からCD音源




ここからは、かなり語弊しかない話になってしまう。

本来であれば「喉からCD音源」というのは褒め言葉にはならない。
なぜなら、本人が歌っているのだから。

本人が歌って録音している限りはCDはヴォーカリストの喉から出た音を録音したものであるはずだ。

考えてもみて欲しい「CDの声が出ないヴォーカリストの方がおかしくないか」と。
無論何度も録り直してベストテイクを選んで繋げて1曲にしているにしても、本来であれば「喉からCD音源」は褒め言葉には適さない。

テクノロジーの進歩は凄まじい。

人類は遥か昔に月に降り立った。そんなテクノロジーは、人の歌を"直す"という力を与えた。

フォトショップで顔が変わるどころか、本人のような動画を見せるディープフェイクなんて技術まであるのだ、ヴォーカルくらい、いくらでも補正できる。

それに感動してもいい。

けれど、その感動を生で味わえる瞬間は掛けがえのないものだ。

ましてや、CD音源以上の歌声が聴けたらなんて。

自分の大好きな曲が年々アップデートされていく。

最近の岡野昭仁の声には、そんな感覚すら覚える。

「喉からCD音源」「歌上手すぎ」と言われる男、岡野昭仁。

その魅力にこれからも魅了され続けることだろう。



【ライヴレポ】ROCK IN JAPAN FES 2019 スキマスイッチ・スカパラ・ポルノ・フジファブリック

【ライヴレポ】Amuse Fes in MAKUHARI 2019 ~恋とか愛とか~


《前編》ポルノグラフィティ岡野昭仁という才能を褒めちぎる記事
《後編》ポルノグラフィティ岡野昭仁という才能を褒めちぎる記事




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