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2020年4月10日金曜日

【ネタバレ感想】水曜どうでしょう最新作が完璧な〇〇ミステリで感激した









先日「水曜どうでしょう」の最新作の放送が終わった。

個人的に、もう最高という内容だったので、その理由を残しておきたい。

もし見るつもりがいるという方は絶対に中身を知らないで最後まで見たほうが楽しめるので、見てから読んでいただきたい。









最新作「○○を×××」ネタバレ感想




さて、改めてネタバレにご留意いただき、話を進めよう。


さて、水曜どうでしょうの最新作は「北海道で家、建てます」であった。

ミスターの住む赤平に自分たちで「どうでしょうハウス」を建てようという企画である。場所も少しGoogleマップで見るだけでなんとなく当たりがつけられそうだが、今後公開も考えてるというので、正式に発表されることだろう。

家を建てる、ということについて。どの作品か忘れたけれど、副音声で「家を建てたい」という旨のことを言っていたのが印象に残っていたが、まさかそれをやるとは。

個人的な話になるが今「何かをつくる」ということについて考えることが多くなり、家が造られていく過程はとても興味深く、面白いものであった。

新作はあまりにも異例な事態ばかりが起きた。

最初の見所であり「水曜どうでしょう」の目玉である「企画発表」からそうだ。2017年1月8日に赤平のミスター宅に集ったどうでしょう軍団。

大泉洋から正月明けに「新作三ヶ条」が首脳陣に通達されていたのだった。その三ヶ条とは。


①アルコールは飲むな
②敬語を使うべし
③新企画をすべし


というもの。以前、僕はアフリカ編について書いたときにこう記した。


「アフリカつまらない、と云われますよ」という話を大泉洋自身も副音声で発言している。それに対しての藤村Dは「(動物をずっと見てても飽きるという思いを)お前らも味わえ」というつもりであった答える。

「番組を人一倍愛しているのは大泉洋だ」と今でも云われる。

そして、大泉洋というのはどこまでも「自分が面白い」ということに貪欲な人間なのである。

そんな男が「つまらない」と云われることに耐え続けられる訳があるだろうか。いや、ない。

ということで、その反動がまたその内(次ではなさそう)来るかもしれないという期待も込められる。


そして、やはり大泉洋は近年の作品を自分なりに分析し、三ヶ条を考えたのだ。特に①と②に関しては視聴者の多くも感じていたのではないだろうか。

そんな提案をした大泉洋をよそに、首脳陣はこう告げる。

「迷走してます」

それから一週目を使っても企画発表が始まらないという驚きの展開となる。それから第2夜となり、ようやくBプランとして企画が告げられる。

そうして新作「北海道で家、建てます」は始まった。雪の中の基礎づくりからの家づくり、それ自体も面白いが、何よりも特筆は久しぶりの登場となったシェフ大泉、そして(特に泊まる必要ないのに)雪のなか一泊をするという展開である。

しかしシェフ大泉は、思いの外料理がうまくいってしまい(ダッチオーブンは何をどうやっても美味しくなるらしい)、どんどん迷走をしだすのが見所だ。

テントでのやりとり(喧嘩)は、アフリカではほとんど夜のトークがなかったので、まさにこういうのが見たかったというもので、中盤の藤村Dの寝つきの良さといびきのくだりは、今年1番笑った。

家づくりとシェフ大泉を両軸に、話は進んでいく。しかし、視聴者は疑問に思い始める。

何話経っても話が2017年から進まないのだ。

新作が放送されたのは2019年。
その間を埋めるには、かなりの話数を費やすのではないかと思っていた。

ただ、要所要所を切り取れば明らかにアフリカ編よりも面白くなっているのだが、このままダラダラと同じことの繰り返しになってしまうのではないかという懸念が生まれた。

しかし、そうはならなかった。

また新しい展開が待っていたのだ。

なんと、大泉洋なしでロケを進めたのだ。大泉洋不在の展開に驚きつつも、それはそれで和やかとなり、不在ならではの新しい展開に舌を巻いた。

あっという間に放送は二桁の第10夜となった。
まだ家づくりが終わりそうにないなか、驚きの発表が。なんと、あと1話で最終回だというのだ。

広がりっぱなしの風呂敷が全く閉じそうにないのに、あと23分ほどでどうするのか。考えても全くわからない。

そんな気持ちで衝撃と笑撃が待ち受ける最終夜を迎えたのだ。








どんでん返し




僕は、ミステリ小説が好きだ。その中でも特にどんでん返しのあるミステリが大好きである。たとえば綾辻行人の『十角館の殺人』はその最たるものである。






そんな作品をよく読むのだが、これについて一つ大きなジレンマがある。

本を買うときに「ラストで衝撃のどんでん返し」という謳い文句があれば、「この作品は最後に衝撃のどんでん返しがあるのだな」という気持ちで読むことになるのだ。
これは、落とし穴が掘ってありますよという道を歩いているようで、ミスターくらいの存在にならなければ、面白くするのは難しい。

そう、可能であるならば「どんでん返しがある」と知らずに読みたいのだ。そこで起きたどんでん返しこそ、思いもしなかった展開という気持ち良さをくれるのだ。

数多あるミステリ小説でそういう宣伝文句があるのは仕方ないし、それでも読んでいるけれど、平坦だった道が突如覆るという体験に出逢いたいと願っている。

なぜこんなことを書いたかといえば、水曜どうでしょうの新作「北海道で家、建てます」こそ、まさにどんでん返しミステリの構造だったからである。


最終夜。

まず、最初に。僕はTOKYO MXで見たのだが、最終夜は始まった時点で衝撃である。都知事の小池百合子の会見でコロナウイルスの重大局面を告げているところをぶった切って水曜どうでしょうが普通に始まり、オープニングが流れたのだ。

この時点で爆笑である。
惜しむらくは、僕は録画で見たので直前の部分からしか見れなかったことである。これほどリアルタイムで見れば良かったと後悔したことはない。

いきなり2019年2月まで時間が飛び、久しぶりに大泉洋も参加した。その間にミスターとD陣で作業は進めていたと告げられる。時にはミスター1人でやっていたという。

そこで、視聴者は無意識に「2018年は大泉洋も忙しく参加できない状態だったので、淡々と進めて完成させたのではないか」と思わされる(ミスターたちも芝居をやってたりしていたのも重なっている)。

そして大泉洋と視聴者は基礎の土台しかなかった場所に家が建っているのを見て驚く。いきなり見せられる完成図に、視聴者としてはまたしても「家づくりに飽きてダラダラやってるのは潔く編集で全カットしたのか」と思わされる。

ダラダラとした展開になるよりは良いのではないかとさえ思って、あとは適当にトークして終わりだと思わされる。

しかし、デッキで大泉不在の作業シーンを見せた辺りから様子が一変し始める。

大雪によって、つくっていた家のデッキは脆くも崩れ落ちて崩壊していた。階段の手すりだけ残って飛び出しているのは、衝撃の光景である。

掘り起こしてみると完全に雪によって潰れたデッキ跡が発掘される(YouTubeの副音声で嬉野Dが「大泉がちゃんと水平を取ってたので、ちゃんと真っ直ぐ潰れた」と言ってて爆笑した)。

そして藤村Dとミスターは真相を告げる。


「われわれのデッキはあれです」


「ここ大泉さんがつくったデッキじゃないから」


ミスターが指さした先には、そのままになった残骸が。

大泉も視聴者も疑問が生じる「じゃあ、ここはなんなんだ」

虚を突かれる、とはこういうことをいうのだろう。

文字通り土台そのものが覆えされたのだ。

大泉洋の「なんか怖い」という言葉のとおり、これはもはやホラーである。ホラーは日常のなかに非日常が訪れることもあれば、今の世界そのものが揺らいでしまうことで感情が揺さぶられるのだ。

疑問にすら思っていなかったことが、突然訪れると、まさに大泉洋のあんな表情になるのだろう。

掘り起こされた残骸を前に完全に意気消沈した首脳陣は、その日に大工に丸投げすることを決め、夜には企画を全て固めたのだ。

前枠でミスターがデッキにいるのが映るのさえ伏線だったのである。

水曜どうでしょうにおいて、ある種あった型こそが「騙される大泉洋を見る視聴者」というものだ。

たとえば、ジャングル・リベンジではアンコールワットに行くと信じてシンガポールで豪遊する大泉洋を、ドラマ「24」風の演出で滑稽だと笑って見ていた。

水曜どうでしょうで大泉洋だけでない。かつてはon安田顕も騙されハワイに連れて行かれ「僕は(いつも騙される)大泉くんがバカなのだと思っていたけど違った。この人たちが騙しのプロなんだ」と言った。

そう、どうでしょうの首脳陣は騙しのプロフェッショナルなのである。

騙されている人間は騙されていることすら自覚しない。
ただ騙されている人間、そんな姿を画面の向こうに見て楽しんできたのである。

まるで深淵に覗き返されるかの如く、新作の"騙し"では大泉洋もろとも、画面のこちら側まで騙し切ったのだ。

この時、視聴者たちは震撼し、まざまざと見せつけられたのだ「この人たちは騙しのプロフェッショナルだ」と。

こんな気持ちになったのは映画「ユージュアル・サスペクツ」を見て以来である。

そして、最後に痛感するのだ。

騙されることは、こんなにも快感なのだと。

甘美な蜜の味を噛みしめながら。



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