星野源のエッセイ集『いのちの車窓から』を読んだ。
雑誌『ダ・ヴィンチ』の連載をまとめたものである。
星野源好きとして感想を書いていこうと思う。
連載ものだけに一編は短いし、全体の文量としてもそんなに多くないエッセイなので、サクッと読める。
だけど、自分は一編一編をじっくりと読んでいった。好きなエッセイはそうやって読んでしまう。
星野源『いのちの車窓から』感想
星野源という人
まず、はじめに断りを入れておきたい。このエッセイは星野源好きはもとより、星野源のことをよく知らない、なんとなく最近よく見かけるけど、なんか人気だしあんまり好きじゃないという人にも読んで欲しい。
このエッセイではそんな星野源という人間の魅力が詰め込まれている。
売れたものに対してはほぼ相対的にアンチを生む。それは「自分には魅力が分からない」という気持ちから派生していることが多い。
このエッセイにはそんな人たちがもしかしたら星野源という人間を見返すようなものがあるのではないか、読んでてそう思ったのだ。
エッセイは他にも何冊か出ているんだけど"SUN"や"恋"、なんならガッキーの話題もあるので、最近知った人はこれが一番取っ付きやすいと思う。
でも他のも面白いので、これを気に入ったら是非違う本も手に取って欲しい。
星野源の文は特筆しているという点ない。自分を棚に上げて偉そうなことを書いてしまったが、僕は地獄に堕ちるので許して欲しい。
星野源の文章はとにかく淡々とリズムが安定しているのだ。
何故か、自分が星野源を好きになった理由がこの文章の随所に表れているからだ。
それは「日常」を切り取る目線である。
何気ない日々
僕がエッセイを好きな理由は、書き手にとって世界はどう見えているのかを垣間見ることができるからである。
たとえば同じ景色でも抱く感情は千差万別である。
「この人にはこうやって見えているのか!」という驚きと発見が詰まっているからこそ、僕はエッセイを読むのが好きなのである。
同様に自分が今後も経験しないであろう事象を文章の上で体感できるという点もある。
最近の歌詞は別のベクトルになってしまったが、星野源がソロデビューしてしばらくは日々の生活を歌った曲が多かった。
たとえば"ステップ"の
両手の花を 君の側に生けよう
願う また来る 待ち合わせはここで
大手振って 帰る
願う また来る 待ち合わせはここで
大手振って 帰る
たとえば"キッチン"の
いつかなにも なかったかのような顔で
飯を食べて 幸せなどとほざくだろう
飯を食べて 幸せなどとほざくだろう
とか好き。
何を言いたいかというと、このエッセイ集には今は少なくなった星野源の"日常"を描いた歌詞を感じることができたのだ。
"日常"
例を出すと「ある夜の作曲」という編。
作曲の合間、深夜3時に入った行きつけの立ち食い蕎麦屋。
そこで起きたいつもとは違う"日常"。
いつものおじさんがいなくて、いつも掛かっている演歌ではなくアメリカのオールディーズのポップスが流れている。
とても些細な出来事だけど、読み終えて不思議と心が残る。
まったく同じ経験はなくとも、似たような感覚になった経験はないだろうか。
繰り返される日常の中のちょっとした変化。優れたエッセイを書く人はそのアンテナがとても鋭い。
これは"日常"のエピソードであるが、『いのちの車窓から』には「非日常が日常になること」も書かれている。
紅白に出ること、新垣結衣と競演すること、大泉洋。
ものすごく個人的なことなのだが、大泉洋のエピソードを読んで驚いた。
内容は大泉洋との関わりから、紅白での大泉洋とのエピソードで終わる。
星野源は歌い終わったステージから審査員席を見るそこには
『椅子から飛び上がり、目をキラキラさせながら全力で拍手をしてくれた。』
そんな大泉洋が目に映っていた。
僕は知っている。この時の大泉洋の気持ちを。
なにかというと、この回を読む前日、僕は「おにぎりあたためますか」を見ていた。
スカパー!のテレ朝チャンネルで放送しているのだが、スカパー!では本放送の1年遅れで放送されている。
その回の最後に大泉洋が紅白に審査員で出演した際のエピソードを話していたのだ。
内容はずっと審査員席から紅白を見ていると"歌いたくなる"そうだ。その中で「星野源ちゃんとかが歌ってるんですよ」とも言っている。
嘘みたいなタイミングでステージと審査員席が繋がった。
まさに昨日の今日というタイミングだったので、驚いてしまった。
話が脱線して長くなってきたのでそろそろ終わる。
とにかく、このエッセイにはそんな様々な"日常"が書かれている。
連載も続いているし、あとがきからも2巻以降の発売も間違いないだろう(そもそも背表紙にも"1"ってばっちり描いてある)
あらためて書くが星野源を好きな人だけでなく、様々な人に読んで欲しいエッセイだった。
まぁ発売数日で買った僕のがもう再販になってるくらいだし、僕の余計なお節介だろうか。
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