ハルカトミユキの3rdアルバム「溜息の断面図」がリリースされた。
ということで、アルバムについて書いていきたいのだが、ハルカトミユキのアルバムは毎回自分にとって大きな事件である。
今回のアルバムも僕にとってあまりに大きな存在であり、何度も聴き込んでいるが全貌はまだ掴みきれているとは思えていない。
しかし、様々な想いが頭を駆け巡っているので、ここで一度現時点での感想を残しておきたい。
アルバム全体についてはAmazonのレビュー企画に投稿したのでそちらを見ていただきたい。
今回は各曲の感想を書いていくことにする。
ハルカトミユキ 3rdアルバム「溜息の断面図」
アルバム全曲感想
1. わらべうた
見たまましか捉えられない世間へ「想像力のない奴ら」という痛烈な一撃。
僕の感覚なのだが、タッチパネルの普及とともに直感的に物事を捉える力が増えた分「考える」という工程が蔑ろにされがちではなっていると感じている。
わらべうたを用いているのは、そんな幼児性を強調している。
2. Stand Up, Baby
ギターリフから始まるロックナンバー。
ここでも「幼稚なのは、一体誰だ」という言葉が使われている。
純粋さを純真と履き違えているようなことへの苛立ちが、終盤の舌打ちに集約されドキリとさせられてしまう。
3. Sunny, Cloudy
"世界"~"光れ"からの流れを受け継ぐ曲という。
でも僕が真っ先に思ったのは"嘘ツキ"だった。おそらく東京を舞台にしているからだろうか。
アルバムの中でも最もパーソナルな曲だという。
「変わってしまった」
という歌詞にあるように、もう戻れないのは電車に飛び乗ること、青信号を渡った先に来てしまっていることからきているのだろう。
歌詞については後日深読みする予定。
そして歌い出しを見てブログのタイトル「飴色の黄昏」にすれば良かったとふと思った。
4. 終わりの始まり
アルバム先行となった曲。
ハルカトミユキ史上で最も怒りを詰め込んだと思われる歌詞が強烈だ。
しかし、それと同じくらい後半にかけてのアレンジが白眉であった。
「もういいかい」の問いかけにいつ聴いてもゾクっとしてしまう。心臓を指でなぞられるような感覚。
初めて聴いた時の曲展開があまりにも強烈で、これから初めて聴くという人が羨ましくもある。
5. Fairy Trash Tale
アルバムの中での個人的ベストチューンはこの曲。
曲、歌詞、演奏、歌、アレンジ全てが僕のツボに的確にクリーンヒットした。
この曲の歌詞は、僕個人としては歴代に入れたいほど好きである。
夢の中で素晴らしいと思っていたものは、全て空虚なのとなる。それは現実世界を映す鏡でもあったからだ。そんな現実をまざまざと突きつけられる
「おとぎ話を買いに行く」
というフレーズが強烈だ。
この曲は語り出すと止まらなくなる。
6. WILL(Ending Note)
Aメロの「~存在」という縛りが印象的。
面白いなと思ったのは
檻 壊した存在
壁 作った存在
など最初の文字の後にスペースが空いていること。
これは最初の漢字と後ろの言葉を線結び問題みたいに組み合わせているような印象だったんですよね。
上の歌詞でいくと、違う歩みをしていれば「壁 壊した存在」になっていたかもしれないというように。
しかし、そうして見ていくと、最初の文字と後ろのフレーズが結びついているもの2つだけある。それこそが2番の、
見捨てて消えた存在
愛せなかった存在
だ。それこそが、どんな運命であっても行き着いた果て、しかしそれでも「愛してる」と伝える主人公に胸を打たれる。
7. 宝物
この曲が裏のリード曲という。
ピアノが主体のかなりシンプルなバラード。だが、さりげなく入っているノスタルジーなシンセが印象的。
幼さや青さを抱えて忘れて、それでも大人になろうとする曲。「夜は明ける」という言葉は"夜明けの月"を彷彿とさせる。
そう、いつもそばにある月のように宝物は気づいていないだけでそばにある。
8. 近眼のゾンビ
ハルカトミユキでゾンビといえば"プラスチック・メトロ"が印象深い。
なぜゾンビなのか、僕は思考が停止して、ただなんとなくの欲望だけを携えて生きてる存在としてゾンビというモチーフはとても皮肉が効いてるなと思う。
サビのメロディラインがとても好き。
9. インスタントラブ
アルバムの中では最も軽やかなナンバー。しかし歌詞にはピリリとしたスパイスが効いてる。
この感じは、曲調は違うけど"Hate you"の感覚に似ている。
「うっかりちゃんと触れちゃって」
という歌詞がうっかり何気に気に入ってる。
10. 僕は街を出てゆく
曲調はど真ん中のフォークなんだけど、シンセのアレンジが入ってハルカトミユキサウンドになっている。
ただ、そこが好みの分かれ目にもなりそうな気も。
シンプルにギターだけの弾き語りだけでも聴いてみたいナンバー。
11. 嵐の舟
静かな入りから徐々に激しくなるサウンド。
文字通りの「嵐の前の静けさ」から嵐の激しさ、最後にすっとそれを抜ける感じがアレンジの妙だなと思う。
Aメロの最後のコーラスとかめちゃくちゃQueenぽくて思わず笑ってしまった。
インタビューなどではよく"近眼のゾンビ"~"インスタントラブ"の並びが話題に出てたけど、個人的には"インスタントラブ"~"嵐の舟"という並びにも面白さがあると思う。
"インスタントラブ"を受けての、
それは愛じゃないと
間違いだと言うけれど
正しい愛など
どこにあるというの?
なんて言われてしまうと思わずドキリとしてしまう。
12. 種を蒔く人
曲調のせいかもしれないが、最初に聴いた時に想像したのがイエモンの"球根"だった。
「でも希望の水を僕はまいて」なんてフレーズや、生命を種(球根)に置き換えて、植えて育てていくというテーマも共通している。
この曲は残された人の曲だという。つまり"世界"において旅立った人を見送った人かもしれない。
前回の野音は"世界"で始まって"光れ"で終わった。
それは"世界"で抜け出した世界が行き着いた先が"光れ"であるから。
そうであるとすれば、
「去り行く友の憧れの跡」
というフレーズは切なさを伴っている。
しかし、それでも人はそれを拾い上げ、種を蒔いて生きていく。
ということで、アルバム全曲感想でした。
正直まだ書きたいことの半分も書けてないので、後々個別に書いていきます。
特典ディスクについて
初回版特典である昨年の野音のライヴ音源。
大変素晴らしいです。
それだけに、欲を言えばフルで見たかったし、あわよくば映像化して欲しかったというのが本音である。
個人的にはクラウドファンディングしてでも欲しいんですけど。
だが今のサポート体制になってのバンドとしてのまとまりが、とてもよく分かるようにもなっている。
これを聴くことで今年の野音を見てみたいと思えるような魅力的な1枚になっていると思う。
なので買うなら断然断固として初回版をオススメする。
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