X-ファイル2018(シーズン11)のネタバレ感想。
今回は折り返し地点となる第5話「グーリー」。
単発エピソードに見せかけて、今シーズンのキーパーソンが出てくる重要なエピソードである。
EPISODE-5 グーリー
あらすじ
2人の女子高生が刃物で切りつけ合う事件が発生。現場となった廃船の写真を目にしたスカリーは、夢の中で何者かにそこへ導かれたと言い、引き寄せられるように現地へ向かう。大ケガをした2人の少女に話を聞くと、彼女たちは互いに相手の姿を見た覚えすらなく、“グーリー”という怪物に襲われたため反撃しただけだと話す。
ネタバレ感想
本エピソードでとうとう、キーパーソンとなるウィリアムが登場する。
ということで、完全にミソロジーエピソードであり、これを見てないと「闘争 Part.4」は間違いなく理解できない。
というよりも10話しかないのだから全部見るべきである。
まず、エピソードタイトルの「グーリー」について。
人に幻影を見せる能力。それがウィリアムの力の一つだ。かつて「X-ファイル」ではバウンティ・ハンターが姿形を変えるエイリアンとして登場したが、それとはまた異なる能力だ。
さて、では順を追って見て行こう。
船の廃墟で女子高生2人がお互いを斬りつけ合うというシーンから始まる。
まず、船の廃墟がスケール感があって、とても良い。後で昼のシーンでも出てくるがスタッフが「この廃墟が見つかって良かった。これをセットで作ったらとても予算が足りない」と言うのも納得である。
オープニングのタグラインは「汝 我の欲するものを見よ」。
タグラインが変わりすぎてシンプソンズのオープニングかと思えてきてしまう。
意識について2種類があるというスカリーの語りから始まる。「睡眠と覚醒」だ。
しかし、本当は第3の意識があって、それは”ヒプナゴギア”と呼ばれるものだ。睡眠と覚醒の狭間の状態で、奇妙な夢を見る。
スカリーは金縛りのような状態で知らない部屋で目覚める夢を見る。
その家には謎の影がいて、スカリーはそれを追う。追った場所にあったのは船の入ったスノーグローブ、それはX-ファイルの中にあった”キメラ号”と呼ばれる船の廃墟。
スカリーの見た夢が、以前見た幻覚の先にあるものではモルダーは読み解く。
女子高生2人が斬りつけ合った事件を調べ始める。2人は顔見知りではないが、斬りつけた傷にはあと少しずれたら頸動脈を切っていたというものまであった。
被害者が「グーリーは見つかったか」と証言していたことを知り、ネットで噂される都市伝説に行き着く。
ここでモルダーの言う「最近の怪物は薄っぺらい。フランケンシュタインや狼男には悲哀があった」という台詞が面白い。
グーリーのサイトがほとんど同一人物によって書かれていることに気付く。そこへ被害者2人が目を覚ましたと知らせが入る。
モルダーとスカリーは犠牲者であり加害者でもある、サラとブリアンナにそれぞれ聞き込みをする。すると「グーリーが目の前にいたから思わずやった」と証言する。そしてお互いの面識はなく、同じ奇妙な夢を見ていた。それは目覚めると知らない家で、どこへ行っても同じ場所に行き着く迷路のような場所、そこに影が現れる、追った先にあったのはスノーグローブ、というスカリーが見たものと同じだったのだ。
モルダーは「君は呼ばれたのでは」とスカリーに言う。
船の廃墟は地元では有名で、若者がドラッグをやるような場所になっているという。
2人とも彼氏がいるが、その名前は同一人物で”ジャクソン・ヴァン・デ・カンプ”だという。”ヴァン・デ・カンプ”はスペンダーから聞かされていたウィリアムの里親の家と同じである。
そういえばヴァン・デ・カンプって名前「デスパレートな妻たち」に出てくるよね。
ヴァン・デ・カンプ家を尋ねるが、家の中から銃声が聞こえ2人は慌てて飛び込む。スカリーは夢で見たのと同じ家であると気付く。そこで3体の死体を発見する。地元の刑事はジャクソンが両親を殺し自殺したと疑うが、モルダーはまったく相手にしない。
2階の部屋で見つかったのはジャクソンで、スカリーは気を落としていた。
ジャクソンは精神科を受診していて、向精神薬が処方されていたことからスカリーは統合失調症だったのではないかと疑う。
ジャクソンの部屋には「マルコムX」のポスターが貼られていた。
死体がウィリアムかどうか分からないというモルダー。
それでもスカリーはウィリアムがどんな子であったのか、調べようとする。そして部屋でスノードームを発見する。
モルダーはずっと付けてくる謎の2人組の男に声を掛けるが、はぐらかされる。
スカリーは運ばれてきた青年の死体から細胞を採取し、自分のDNAと照合する。
そして、横たわる死体をウィリアムとして謝罪をする。愛していないから手放したわけではない、守る為に手放したこと。それは当時の自分の弱さであった。
この場面はシーズンの中でも屈指の名シーンであると思う。
守る為に手放したウィリアムを結局失い、守ることのできなかったスカリーの後悔。その言葉は胸に迫る。
鑑定のため、部屋を出たモルダーとスカリーだが、誰もいなくなった部屋で、死体は起き上がっていたのだ。
病院のソファで目覚めたスカリーはまたしても金縛りと謎の影を感じる。なんとか起き上がり、病室へ行くと今度は風車のスノードームが置いてある。
そこへ医師が現れ、スカリーは夢から目を覚ます。すると死体が消えていたということを知らされる。同時にDNAが一致していたことも。
モルダーはスカリーに「僕も生きていて欲しいが」と語るが、スカリーは夢を見たことでウィリアムが生きていることの確信に近いものを感じ取っていた。そして自分を見つけて欲しいと思っていることも。
病院の外でスカリーは男とぶつかり、スノードームは割れてしまう。
「広い視野を忘れないように」と謎の言葉を残す。
モルダーとスカリーはウィリアムのPCを調べるが、ポルノサイトなどの閲覧もない17歳らしくなく履歴に消したのではないかと疑う。しかしモルダーはダークウェブで拾った履歴の復元ツールを使って調べたので、他にPCがあるのではと疑う。
「ポルノグラフィティの履歴ばっかり出てくる」PCを持つ31歳はどう捉えられるのだろう……
ベッドの下から別のPCを見つけるが、同時に警察がやってきて時間がなくなってしまう。
ギリギリの時間で国防総省などにアクセスしていたことを知る。警察は司法省からの命令で国防総省の管轄になると告げる。
ここでモルダーはわざとジュースを零してPCを使用できなくし「これだから電子機器のそばにジュースを置いちゃダメだ」というのが面白い。それを受けてスキナーから「君の行動が他の調査期間からのクレームからしか知り得ないのは何でだ」と皮肉なジョークを言われるのもまた良い。
モルダーはスキナーを現地へ呼び出すが、スキナーの部屋にはスモーキングマンの姿があった。スモーキングマンは「彼は近づいている。きっとクロスロード計画に興味を持つだろう」と告げる。
結局現場となった船の廃墟に現れたスキナーは発端は人類と異星人のハイブリッドを作る試みから始まって、ここで終わったのだとモルダーに言う。ロズウェル以降政府は異星人の技術に興味を抱いた。マサオ・マツモト博士の主導のもと異星人とのハイブリッド計画が持ち上がったという。これがスモーキングマンの言った「クロスロード計画」である。
被験者に出る影響の予測が出来ずに失敗したというモルダー、スキナーはその通りだと言う。計画は打ち切りになったが、マツモト博士は被験者を守るために資料を焼却処分していた、そして国防総省がずっと被験者を捜している、そしてジャクソンもその1人というのだ。
モルダーはジャクソンこそがウィリアムであったとスキナーに告げる。
スカリーはジャクソンを診ていたショルツ医師を尋ねる。発作の薬は、脳に発作のような電気信号が確認されたからだという。
そしてジャクソンの幻覚は言えないがとても詳細で具体的なものだったという。スカリーはその幻覚が自分と同じ「終末世界」の幻覚だったと気付いていた。
全世界に疫病が蔓延し、必要になるのは人間と異星人の混合されたDNA。それを持つジャクソン。
ショルツはその言葉に驚く。スカリーの伝えた内容が事実だったからだ。
モルダーはジャクソンによる無理心中ではなく、鑑識結果から犯人は2人いたと断定する。
そしてスカリーがスモーキングマンを通してクロスロード計画に巻き込まれ、ウィリアムが被験者になったと推理する。
さらにウィリアムは”代替現実”を見せて、自分が死んだように見せかけたのだという。
つまり今までの死体などは全てウィリアムが見せていたものであったということだが、それをあっさり受け入れるスカリーが興味深い。
その頃ジャクソンはブリアンナの病室に現れる。
ウィリアムはグーリーのことについては軽いイタズラのつもりで、まさか人が傷つく事態になるとは思っていなかったと謝罪する。
そして特殊能力で頭の映像を見せていたことを伝える。ジャクソン・ヴァン・デ・カンプとして二股した挙げ句、結果的に彼女2人を傷つけ合わせる、クズか、ウィリアムよ。
ウィリアムが見た橋の上にUFOが現れるという幻覚は、誰かと共有していたという。それが産みの母親ではないかと思っている。
そして自分のそばにいると危険であることを告げる。その時警察が現れ、ウィリアムは慌てる。ブリアンナと会っているところを、サラに目撃され通報されていたのだ。
サラとジャクソンはお互いに謝罪し合う。サラに「私が全部悪いの」と言わせてしまうウィリアムよ、本当にクズになってしまうぞ。
国防総省の追っ手が現れるが、ウィリアムは能力によって捜査員にグーリーやスカリーの姿を映し、撃つように仕向け同士撃ちさせ、看護師に扮して脱出する。
結局ウィリアムは見つからず、モルダーとスカリーは車で帰路に着く。その道中立ち寄ったガソリンスタンドで病院でぶつかった男と再会する。
スカリーは彼がマツモト博士ではないかと思い聞いてみるが、やんわり否定される。
余談だが、スポット的に現れるマツモト博士。演じているのは、「LOST」でピエール・チャン博士役を演じたフランソワ・チャウである。
男は”信念を持たぬ者はすべてに流される”と言い残し去っていく。
その後、戻ってきたモルダーが、この言葉が「マルコムX」の台詞であると気付くが、車はもう去ったあとであった。
ガソリンスタンドの監視カメラ映像を見ると、その正体はマツモト博士の姿を見せていたウィリアムだったのだった。
「汝 我の欲するものを見よ」のタグラインは裏を返せば「自分の思うままに人に好きな映像を見せることができる」ということだ。ウィリアムはその力を使って、様々な事件や事故を起こすことになる。
「グーリー」はネット上で噂される都市伝説として語られる架空のモンスターである。
あらすじだけ見ると「都市伝説のモンスター"グーリー"が実在して、女子高生たちを傷つけた。モルダーとスカリーはモンスターを追う」という流れを想像してしまうが、それをここまでミソロジーエピソードにしてしまうところが初見特に驚きであった。
おまけ
— Gillian Anderson (@GillianA) 2018年2月1日
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