Mr.Childrenの20枚目のアルバム「SOUNDTRACKS」。
1曲目の”DANCING SHOES”に続き、今回はアルバム2曲目に収録されている”Brand new planet”について見ていこう。
Mr.Children ” DANCING SHOES”の歌詞の意味を考察する
「新しい「欲しい」
アルバムが内包するテーマの一つは「終わり」であり、2曲目でもう一つのテーマが歌われる。それが「未来」である。この「未来」は「希望」も内包している。
Mr.Childrenにおいて「終わり」と「未来」は表裏一体のものであると思う。それはまさに”未来”という曲で歌われているように、「始めること」というものには「いつか終わりがくること」が内在されているのだ。
曲調としてはアルバム中では最も開放的なサウンドだ。
桜井和寿自身は「ドームやアリーナを想定していない」というアルバムだが、この曲は星空の下のディスタンス、じゃなかったスタジアムで聴きたくなる。
立ち止まったら そこで何か
終わってしまうって走り続けた
でも歩道橋の上 きらめく星々は
宇宙の大きさでそれを笑っていた
終わってしまうって走り続けた
でも歩道橋の上 きらめく星々は
宇宙の大きさでそれを笑っていた
歌詞には”DANCING SHOES”へのアンサー的な意味合いもあると思う。
四半世紀以上の道のりを、一時は病気などで足を止めざるを得ない状況がありながらも、それでも歩み続けてきた。期待という名のプレッシャーを背中に、胸に消えない炎を灯している。
求められること、それを証明するように、このアルバムの収録曲の半分にはタイアップが付いていて、この曲もアルバム曲ながらドラマのタイアップが付いている。ファンだけでなく、あらゆる期待に応え続けてきた、Mr.Childrenの旅路は続いていて、その中でまだ新しいことへの挑戦を続けている。
世の中には、まさに宇宙の星の数ほど、無数の楽曲がある。
それでも新しい自分たちの音楽を求めて、ミュージシャンたちは今日も曲を創っている。
締め切りがあるとかもあるが、ほとんどのミュージシャンには曲を創ることに理由はない(とロマンティックな願いは持っていたい)。
自分の中で生まれた感情を音楽にする喜びと衝動が、彼らを動かしているのだ。
静かに葬ろうとした
憧れを解放したい
消えかけの可能星を見つけに行こう
何処かでまた迷うだろう
でも今なら遅くはない
新しい「欲しい」まで もうすぐ
憧れを解放したい
消えかけの可能星を見つけに行こう
何処かでまた迷うだろう
でも今なら遅くはない
新しい「欲しい」まで もうすぐ
サビでバスドラがかなり強く訊いていて、鼓動を促すように聴こえる。
「可能星」という言葉に思わず「やられた!」と叫んでしまった。こういう歌詞を読みながらでなければ判らないフレーズは大好物だ。もっとやれ。
このサビのフレーズを見て”Starting Over”を思い出した。
いくつもの選択肢と可能性に囲まれ
探してた 望んでた ものがぼやけていく
「何かが生まれ また何かが死んでいくんだ」
そう きっとそこからは逃げられはしないだろう
~”Starting Over”
探してた 望んでた ものがぼやけていく
「何かが生まれ また何かが死んでいくんだ」
そう きっとそこからは逃げられはしないだろう
~”Starting Over”
と対になっているように感じたのだ。
”Starting Over”のサビで繰り返し歌われる「何か」とは、まさに”Brand new planet”の冒頭に出てくる「何か」であり、それは「新しい『欲しい』」に通じているのではないだろうか。
そして最も胸を打つのがその「新しい『欲しい』まで もうすぐ」というフレーズだ。
近年「終活」のような言葉をよく見かける。それは身の回りの整理だったり、手放していくものを示すことが多いはずだ。それでも、人が今を生きていることに変わりはない。
そこでは時に、新しい可能星、新しい「欲しい」に出会うこともある。更に桜井和寿はそこから一歩先のメッセージを唄う、それが「見つけに行こう」なのだ。
こういったメッセージは、以前であれば若者へのエールで使われてきたことが多かったと思う。
しかしながら”Brand new planet”のメッセージは年齢など関係ない、全世代へ向けたメッセージとなっている。
それはひとえにメンバーたち自身が歳を重ねた今、それでもまだ瑞々しく、精力的に新しい音楽を生み出し、奏でる姿があるからこそ説得力を持つ。つまりは、楽曲そのもののポジティブ性だけではなく、それを奏でるMr.Childrenの姿そのものがメッセージとなっているのだ。
「重力と呼吸」で桜井和寿はこう述べた。
後輩ミュージシャンがこのアルバムを聴いたら、音楽をやめたくなるような、また、もう僕らを目標にするなんて思わないくらい圧倒的な音にしたいと、熱い気持ちでアルバム制作に向かいました
Mr.Childrenニューアルバム「重力と呼吸」を想って、ミスチルがいる世界を憎む
https://candy-store74.blogspot.com/2018/09/mrchildren-gravity-respiratory.html
Mr.Childrenニューアルバム「重力と呼吸」を想って、ミスチルがいる世界を憎む
https://candy-store74.blogspot.com/2018/09/mrchildren-gravity-respiratory.html
この記事で書いたように、僕はこれを後輩ミュージシャンたちへのエールではないかと受け取った。
多くのミュージシャンが圧倒的な音楽を聴いた時に持つ感情は、音楽をやめてしまうような熱意ではなく、メラメラと燃え上がる対抗意識と知っているからだ。
諦め切れない、消えない、消せない憧れこそが可能星なのだ。
2番ではその憧れについて、比較的ストレートに表現している。
どこにいようと、何を見つめようと、今そこにいる自分を見つめなおすという視点だ。
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