音楽はなぜ『希望』なのかということを考えた。
そして、最近最も希望を感じた曲はなんだろうと考えた時に浮かんだのがMr.Childrenの"Your Song"であった。
なぜそう思えたのか書いてみたい。
Mr.Childrenの"Your Song"はなぜ希望の歌なのか
命と時
"Your Song"はアルバム「重力と呼吸」において、華々しいオープニングを飾る。
音源ではあまりないJENによるスリーカウントからイントロが流れ、桜井和寿の咆哮が鳴り響く。
この時点で、すでに心が充たされてしまう。
それほど誰しもが心を掴まれるであろう、期待と希望に充ち溢れているオープニングナンバーなのだ。
こう書くと語弊があるかもしれないが、"Your Song"は何一つ特別なことをしていない曲である。
サウンドもミックスの諸々はあるものの、Mr.Childrenらしいバンドサウンドだし、歌詞も平易な言葉が使われていて、「優しさの死化粧」的な比喩もなければ、社会を皮肉るような言葉もない。
とてもフラットな、純粋な想いが歌われている。たとえば「飛び込んでくる嫌なニュースに心痛めて」というフレーズが2番のサビにあるが、以前ならニュースに対して怒りを抱いたり、そこに隣にいる君を重ねたりしていたと思う。たとえば"ひびき"でクラッカーに銃声を重ねていたように。
しかし、ここで流れる「嫌なニュース」は日々のエピソードの1つにしか過ぎない。ただそこに流れていたニュースが描かれている。
それは似ているようで、実は全く違うニュアンスを秘めているのだ。
そこに重ねられているのは銃声の先にある命ではなく、誰しもに平等に流れる「時」を歌っている。
時は平等だからこそ、時に残酷に、時に喜びとなる。音楽とは、時を刻む秒針なのだ。
だからこそ時とは命でもあるのだ。
桜井和寿は今回のアルバム曲の歌詞であえて平易な言葉を増やしたという。
それが自分としては物足りなさを感じさせる結果となり、個人的にはそこがちょっと残念な点ではあったのだけど、"Your Song"に関しては、だからこそ生まれた普遍的な時と命を描くことができたのではないかと思う。
そしてMr.Childrenが鳴らすスタンダードなナンバー、「いつものミスチル」、だからこそ、これほど胸に響くのではないか。
ミスチルというスタンダード
「REFLECTION」前後でMr.Childrenは挑戦を繰り返してきた。
それはプロデューサーである小林武史から離れたことで、歩み出した新たな荒野で、Mr.Childrenの音楽を探す旅の始まりでもある。
それらの楽曲はどこか、僕の中で時代を越えた響き方をするように思えていた。
つまり、10年先も20年先も色褪せないような、時代に流されないような楽曲である。
今までであっても、多くの名曲たちが時代を築いてきた。
それでも自分の中ではその名曲たちを思い浮かべることは、同時に時代を思い浮かべることでもあった。
しかし、たとえば"Your Song"を20年後に聴いたとしても、そのイントロに今と同じ新鮮な感動が抱けるように思えるのだ。
先にも書いたように"Your Song"はサウンド、言葉、メロディ、歌、どれをとっても何一つ奇をてらっていない。それでいて、Mr.Childrenだからこそ鳴らすことができるスタンダードな魅力を秘めている。そのどれもが奇跡的なバランスで成り立っていて、それこそが、アルバム曲の中でもずば抜けて響く要因なのではないか。
その普遍性とは、なぜ生まれたのか。それは「Thanksgiving 25」のツアーがあったからこそではないかと思えるのだ。
「Thanksgiving 25」で、この曲だけはどうしても外すことができないと言われて演奏されたのが"GIFT"であった。
"GIFT"もまた希望の歌である。
君から僕へ 僕から君へ
最高のGIFTを
ライヴでは本来の歌詞にない、このフレーズが歌われる。この祈りに似た気持ちが"Your Song"に受け継がれているのではないだろうか。
"GIFT"もMr.Childrenが鳴らす僕と君の歌であり、Mr.Childrenと僕ら一人ひとりの間で与え、与えられる曲なのである。これはある意味で"彩り"が描いた与えるものからの視点だけで終わらない、本当の意味での「僕らの歌」になったということを示してもいる。
桜井和寿も、田原健一も、中川敬輔も、鈴木英哉も、ファンも、ファンじゃない人も、僕も、そしてあなたも。誰しもが平等に与えられた今という時を生きている。
そうした中で、今流れているメロディも、いつも胸に流れるメロディも、過去も未来も現在も、ふとした瞬間に心が重なる、そんな瞬間こそLIVEということではないのだろうか。
そんな瞬間があるのは、Mr.Childrenが今も変わらずそこにいて、演奏しているからではないか。
それだけではない。音楽が生まれ響くのは、そのGIFTを届ける相手がいるからである。
10周年、そこで斜に構えていた桜井和寿が「いつか離れてしまっていくだろう」と考えていた「君」。それでも一緒に時代を重ねてきた「君」、そう僕らそのものである。
そう、まさに「君じゃなきゃ」鳴らせなかった曲こそ"Your Song"なのだ。
この曲に希望を感じたが、それだけではない。そこに確かな未来への期待を見るからだ。
一緒に生きていく日々のエピソードが特別に大きな意味を持っている
そう君じゃなきゃ
君じゃなきゃ
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