2018年6月28日木曜日

ポルノ全シングルレビュー 11th「音のない森」








ポルノグラフィティ全シングルレビュー。今回は11枚目のシングルを取り上げよう。


11thシングル「音のない森」










シングルについて




ポルノグラフィティのシングルの中でも、かなり異色のシングルである。

岡野昭仁が作詞作曲を手掛けた初のシングル作品である。

この頃の岡野昭仁の楽曲は鬱々としたトーンのものが多く、ファンからは精神状態を心配する声さえ上がるほどであった。

3曲入っているが、通常の表題曲+カップリングというものではなく、3曲通してひとつの作品として完成するような構成になっている。

この作品については雑誌の記事程度で、テレビでのプロモーションを行わなかった。テレビで見たのはCMとランキングでチラッと流れた程度であった。
ノンプロモーションは岡野昭仁本人の提案のようだ。

ポルノグラフィティの夏の楽曲というと、"ミュージック・アワー"や"アゲハ蝶"などのような派手な楽曲がイメージにあるが、これだけ内に向いたバラードをリリースしたことは、かなり冒険だったのではないだろうか。

夏の曲ではあるが、その湿度の高い梅雨の時期のイメージが近いのではないだろうか。

それを表すかのように、MVは雨が降っている。決して雨バンドだから偶然、とは思わないでおこう。

DVD付の初回限定版は今はなかなか見かけることはないが、もし売っていたら、是非とも買ってMVを通して見て欲しい。

それだけ、このシングルを味わう上で重要な要素を占めていると僕は思っている。



1. awe




タイトルは「オーウ」と読み、「畏怖」の意味である。
深い森に分け入るような、緊張感が漂う。

それを最も強く示しているのが、最後に入っている鼓動の音だ。バイオハザードでしか聞かないような音をしている。

スリリングなストリングスと、警告音のような無機質なシンセの音が不安を強調している。



2. 音のない森




浮遊感あるイントロから、歪みを効かせたギターのロングトーンが鮮烈な印象を与える。

精神状態を表した「森」それは、迷い、戸惑い、恐怖の象徴。そこに迷い込んでしまう。

救いを求めて天を仰いでも、そこには救いがない。しかし、身を屈めて目を閉じ、耳を塞いだ時に、変わらぬ鼓動が響いていた。

"awe"では恐怖を司っていた鼓動が、"音のない森"の終盤では「生きていること」を実感させる役割を果たす。
とても鮮やかな転換だ。

どんなに暗くて先の見えない場所であっても、呼吸をし、鼓動を鳴らし続けていれば、その森を抜けられる。

暗闇があるから光があって、僕らは光という未来や希望を胸にまた歩き始める。

ライヴではここぞという場面で披露されることが多い。その時の熱量がとても高く、メンバーにとって大切にされている曲だとよく分かる。









3. sonic




荘厳なオーケストラが始まり、波のような音や、葉擦れの音。

あらためて、聴いていて途中に高い音が入っていて、それが風鈴の音(風のイメージ)のようにも聴こえた。

そこからイメージされたのが森羅万象だ。

それらの音たちは"音のない森"との対になっていて、主人公の塞ぎ込んでしまっていた心が外に向き始めていることを表している。

"音のない森"とは、自ら耳を塞ぎ、何も聞こえなくしてしまっていた心の中にある。

最初に暗い曲と書いたが、本当のメッセージはそこにあって、暗闇が光を教えてくれるように、" 音のない森"とは、希望を描いた曲でもあったのだ。


ということで「音のない森」について書いてきた。

是非あらためて通して聴いてもらいたい。


★シングルレビュー


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