2018年9月30日日曜日

ポルノ全シングルレビュー 12th「メリッサ」








シングルレビュー。今回は「メリッサ」である。



12thシングル「メリッサ」












シングルについて




シングルとしては、前作に当たる「音のない森」がノンプロモーションだったため、売上
としては落ち込んでいたがここで「メリッサ」がリリースされロングヒットしたこと
で、ポルノグラフィティにとっては大きな力となったシングルだ。

"ハネウマライダー"がリリースされた際に新藤晴一は「たまにヒット曲を出していかないといけない」と発言している。
これは、過去のヒット曲に縛られ、なかなか新しい作品が届かず"懐メロバンド"になってしまうことを危惧した発言である。

そうした中で"サウダージ"や"アゲハ蝶"がミリオンヒットし、キャリアを築いたからこそ、次に進むようなヒットソングが必要であったのだ。
結果的に「メリッサ」はその役目を十二分に果たしている。


それだけではなくて、他にも大きな功績をもたらすことになる。

「メリッサ」のシングルは3曲とも歌詞に"月"が登場し、1つのテーマとして貫かれている。

ポルノグラフィティにとって月とは切り離せないテーマである。もちろんデビュー曲からして"アポロ"だから、もう最初から貫かれている。

新藤晴一という作詞家にとって"月"や"猫"といったモチーフは度々登場する。

先日Twitterで「岡野昭仁は太陽、新藤晴一は月」というのを見て舌を巻いた。






なんて言い得て妙なのだろう。


だからこそ新藤晴一と月はこれほどに親和性が高いのか。
そうしたときにTamaはかなと思ってしまう。

ジャケットなどのイラストは新藤晴一によるものである。

では曲を見て行こう。



1. メリッサ








アニメ「鋼の錬金術師」オープニングテーマ。

このタイアップが強力な力となった。今でも「ハガレンの主題歌といえばメリッサ」というハガレンファンの方も多いのではないだろうか。
嬉しいのでどんどん言って欲しい。


あらためてアニメのタイアップの力の大きさを見せつけられたのが"メリッサ"という記憶である。

先でも触れたが、アーティストにとってヒット曲は非常に強い意味を持つ。
それはアーティストには、時代性が求められているからだ。

まだヒットソングが時代を映していた当時は、"サウダージ"や"アゲハ蝶"のあまりに大きなヒットから引きずっていた尾を断ち切る役目でもあった。

そう考えると「君の手で切り裂いて」という冒頭の歌詞は、本来の意味とはまた違った趣を感じることとなる。

タイトルの"メリッサ"はハーブのレモンバームのことである。
詳細や歌詞については以前記事にしているので、そちらを参照いただきたい。

冒頭のTamaによるベースの印象的なソロがカッコイイ。ベースのリフから始まる曲というのはポルノグラフィティではそう多くないが、世の中にあるすべての楽曲の中でも、かなり上位で印象的といえるフレーズではないだろうか。

僕も宅録用にベースを購入した際には、真っ先にこのフレーズを弾いた。


"メリッサ"がカフェイン11で初オンエアされた時に印象的だったのが、新藤晴一が「この曲は、ギターソロええよ!」と言っていたことだ。普段はあまりこうした発言はしないので、とても珍しい。

その言葉の通りチョーキングを多用したフレーズはサビのメロディを彷彿とさせ、かなりインパクトがある豪華なソロとなっている。ギタリストのチョーキングするときのか顔フェチとしては、ゲイリー・ムーアに匹敵するともいえる魅力を持っている。

さらに、こうした曲に対して岡野昭仁の声質が驚くほどマッチングしている。この力強さというのは、他のヴォーカリストではなかなか表現しきれないのではないだろうか。

つまりポルノグラフィティでしか表現できないのが"メリッサ"なのである。

そして"メリッサ"で忘れてはならないのはPVだろう。

初めて見たときの衝撃は、誰しも忘れられないはずである。


"道化師" 岡野昭仁
"剣士" 新藤晴一
"学者" Tama


道化師は奇術で、剣士は剣で、学者は知恵で"女神"を手に入れようとする。

その女神の正体とは。

残念ながらYouTubeにはフルバージョンはないので、気になる方はPV集を買って欲しい。

簡単に書いてしまっては学生時代に金がないのに「COMPLETE CLIPS 1999-2008」を買ってしまった僕が浮かばれない。
15000円って、学食のかけそばが100杯食えたんだぞ。

現在はバラバラに分けての販売になってしまったけどそれぞれ売っているので、手にとってみてはいかがだろうか。

というかあの限定版のPV集が大きすぎて置くとこがないので、僕はこのバラバラで発売した方が欲しいくらいだ。





続いてカップリングを見ていこう。

「メリッサ」のシングルはカップリング2曲も素晴らしく、ファンからの人気もとても高いので、是非チェックしてもらいたい。











2. 見えない世界




イントロのギターの掛け合いが素晴らしい。
このギターを聴くと、外の自分と内なる自分が呼び掛けあっているように聴こえる。

内省的な精神を表現している歌詞は、岡野昭仁が手掛けた歌詞の中でも随一の力を持っている。

少年にとって世界はあまりに広く、未知数の存在である。

それを「無限の可能性」とも表せるが、この曲では未知数で故に「見えない世界」と表される。

世界が大きいからこそ、自身の未熟さや小ささを写してしまうのだ。

たとえば家から学校、学校から社会、自分の成長と共に世界は変わっていく。

時に志はそれに怯まされ、時に痛みを受けることもある。

しかし。だからこそ少年は成長する。

痛みを引き連れて。

このまま書いていくと「少年よ神話になれ」と書いてしまいそうなのでこれくらいにしておく。


そのために必要な力とはすなわち、困難に立ち向かうこと。愛なき時代に愛を見出だすこと。

その決意の強さは2ndアルバム「foo?」に収録されている"愛なき…"にも通ずるテーマである。

いつになっても大切にしたいテーマがこの曲では唄われている。

本当に素晴らしい曲だ。



3. 月飼い




ポルノグラフィティのカップリングの中でも絶大なる人気を誇る曲。

間違いなく、シングルとタメを張れるほどのクオリティとインパクトを持った曲である。
これをカップリングに持ってくるなんて、という驚きを今でも覚えている。

しかしながら緻密に組み立てられ新藤晴一の歌詞は、シングルとしてワンコーラス或いはサビだけなどに落とし込むことはできない。

フルで聴くからこそ、"月飼い"の物語は成立し完結する。

似たようなことは以前にも書いた気がするが最近では"夜間飛行"などもそうである。


歌詞についてはこちらも以前書いているので、そちらを。しかしながら、この度1つ気づいたことがあるので、それを書きたい。

池田聡というシンガーソングライターがいる。その池田聡が1988年にリリースした曲に"月の舟"という曲がある。この曲の作詞をしているのが新藤晴一が尊敬し親交が深い作詞家の森雪之丞なのである。






この曲においても月を舟と表現し、「ふれてすぐ離れた 硝子のキスは/眩しくて脆くて 胸を熱くする」などの美しくも儚さを孕んだ歌詞となっている。
名曲である。


他にも月を舟に見立てた曲はあって。個人的に面白いなと思ったのがMY LITTLE LOVERが2009年に発表した"月の船"という曲である。






永遠のそばで 光続けてる月の船
は何かを伝えることもなく


あなたをもっと知りたいけれど
知れば知るほどにわからなくなる


やはりそこには切なる想いがあって、どこか根底で繋がっている、そんな感覚になってしまうのだ。

そして、どれも神秘的で美しい名曲である。


ということで月がモチーフでありながら、月の姿は三者三様。そんなシングルこそが「メリッサ」なのだ。







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