カナダのギターのブランド「Larrivee(ラリビー)」をご存知でしょうか。
日本ではそこまで馴染みのないギターブランドかもしれない。しかし、そのギターは計り知れない魅力を放っている。
そして僕が敬愛するハルカトミユキが使用しているということで、興味を抱いた。
Larrivee(ラリビー)
Larrivee(ラリビー)はカナダのトロントで1967年にジャン・ラリヴィーというおじさんがギターを製作したことに由来する。1944年6月6日生まれの74歳だ。
ジョンはクラシックギターを作っていたドイツ人のエドガー・メンヒというおじさんに弟子入りし、ギター製作を学んだ。
エドガー・メンヒのクラシックギターはもちろん、ヴィンテージとして、高値で取引されている。ギター全般にも言えるが、クラシックギター界のヴィンテージ価格競争もかなりヤバイと思う。
1967年頃にクラシックギターの製作を始めて、1971年にフォークミュージックのコミュニティの人々と知り合ったことで、アコースティックギターの製作を始める。
まぁ、経歴について、本家ホームページにしっかり書いてあるので、それくらいにしよう。興味がある方は是非目を通してもらいたい。
なのでブランドとしては比較的若いブランドであるということを認識して欲しい。
近年ではソリッドギターも手掛けるブランドだが、主戦としてはアコースティックギターを取り扱う。
その音はきらびやかで、プレイアビリティからソロギターの演奏者にも愛されている。
代表としては僕の叔父にあたるトミー・エマニュエルおじさん、僕の兄に当たるラウル・ミドン、そして僕の祖父にあたるブルース・コックバーン等そうそうたる面々。
海外アーティストについては公式ページで一覧になっているので見て欲しい。
他にも国内ではハルカトミユキはもちろん(贔屓目)、中川イサトなどが使用している。Mr.Childrenの桜井和寿も使用していた時期がある(2012年の「TOUR POPSAURUS 2012」でL-10を使用している)。
ここから少しラリビーというよりもアコギの雑学になってしまうが、とりあえず動画でその良さを聴いて欲しい。
さて、こんな素敵なラリビーのアコースティックギターにはいくつか特徴がある。
ひとつずつ見ていこう。
ノンスキャロップブレイシング
「ノンスキャロップブレイシング」という言葉、ピンとくる方は多くないのではないだろうか。もちん僕は全くピンと来ない。
順番から行くと「ブレイシング」を先に説明したい。
「ブレイシング(ブレーシング)」とは、ギターのボデー、いやボディの裏側にある「力木(ちからぎ)」と呼ばれるものである。
これを付ける目的は補強のためである。なんせ、ギターの弦の張力は強く、レギュラー弦で75kgくらいあるという。それほどの力が常時掛かっているアコギのボディは、補強しなければ、簡単に割れてしまう。
そして、このブレイシングの貼り方ひとつで、ギターの音色が変わると言われている。
なので、各メーカーでは特色がある。
ラリビーの特徴としてはそのブレイシングを「左右対称」に配置しているという特色がある。
「スキャロップ」という馬の名前みたいな言葉は、ブレイシングを波状に削ることである。
ブレイシングは大切だけど、補強しすぎてしまうと所謂「鳴り」に響くことになる。
なので、「補強しつつ丈夫に」という意思からギター製作者が考えたのが「スキャロップ」なのである。
波状にブレイシングを削ることで、可能な限り軽く仕上げようとしたのだ。その波状から「スキャロップ(帆立貝)」と名付けられた。
それを踏まえて見ると分かるように「ノンスキャロップブレイシング」とはつまり、スキャロップ加工をしていないブレーシングが付けられているということ。
スキャロップは加工をしないものは、比較的「直線的な鳴り」をし、ノンスキャロップは「鳴りがより響くようになる」と言われる。
どちらが「良い音」ということではなくて、それぞれに特徴があって、自分のプレイスタイルに合わせたギターのセレクトが重要なのである。
単板
「単板」と「合板」もアコギを見ているとよく聞く言葉ではないだろうか。
なんとなく知った気になっていたので、あらためてちゃんと調べることにした。
単板は文字通り1枚の板から造られ、合板はベニヤなどの薄い板を貼り合わせたもの。
ギターは大きく分けてトップ、サイド、バックに分かれる。サイドとバックは見分けるのが難しいが、トップ材についてはサウンドホールの断面で見分けがつけられる。
合板は接着剤で貼り合わせている分、鳴りが単板に比べると良くないと一般的に言われる。繰り返すが、鳴りが良い=良いギターではない。好みの問題だ。
メリットとしては単板よりも頑丈で安価だという点。
そして鳴りという部分でも鳴り過ぎない分、ハウリングは単板より起きづらいというメリットもあるそうだ。
単板はその逆と思えば良いだろう。貼り合わせたりしていない分、鳴りは良いと言われる。しかし高価である。
そしてラリビーは「全て単板」であることがウリである。
なので耐久性の部分では、いくつかトップ材が割れてしまう事象を見掛けた。
ハウリング対応として、トップのみを単板にしてサイドとバックを合板にしている
シトカ・スプルース材
雑学メインとなってしまったが、知らないことを知るのは楽しいことである。
ラリビーでは「シトカ・スプルース」という木材が使われている。
特徴としてスプルースは「明るくて張りがある音」といったところだろうか。といっても、アコースティックギターに使われるほとんどの材がスプルースである。
そしてシトカ・スプルースはこの中でも定番のものだ。
その中でラリビーは、ブリティッシュ・コロンビアに生育している中から選りすぐったシトカ・スプルースを伐採している。
そこでこだわっているのが、自然を大切にする姿勢だ。闇雲に伐採するのではなく、1~2本を選び、時には嵐で倒れた木を使用したりと、環境への配慮もなされている。そのこだわりは公式サイトにさらに詳しく載っている。
もう1つラリビーの特徴があるのが、美しいインレイである。思わず目を引かれるようなインレイばかりである。なお、安価なモデルにはインレイがないものもある。
そんな多くのこだわりが詰まったラリビーのギター、ご想像の通り、高価である。
モデルによって様々だが、中古でもほとんどのモデルが10万円を越える(それもあくまでも下の価格帯の製品)。
新品であれば60~70万円のものもあり、特にヴィンテージとなれば、庶民には関係ない世界になる。
いや、しかしその音は動画でも伝わるだろう。
そして何より僕はハルカトミユキで、何度もその音を痛感させられているのだ。
そもそも球数が少ないこともあるが、もし出逢いさえあれば、僕は多少無理しても手に入れる所存である。
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