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2019年1月9日水曜日

新藤晴一 「Pg'z」ホームページから言葉を拾ってみる Part.1 デビューに向けて







「Pg'z」というホームページをご存知でしょうか。

それは新藤晴一が非公式に運営していたホームページである。
非公式であるものの、本人が運営しているわけだから、公式も非公式もないかとは思うが、一応は個人が運営しているものなので、非公式となっている。

そんなホームページに「ダイアリー」のコーナーがあり、そこにデビュー前からの心境が綴られている。

もう公開はしていなくて閉鎖されてしまっているけど、とある方法で掘り出してたまに見ている。なんか前にまとめたような気がしていたが、探しても見当たらないので、あらためて興味深いものを拾ってみたい。

なお、ある方法については未だに白黒でいうと限りなく黒に近いグレーみたいなイメージなので、濁すことにする。あまりツッコまないように。









6月5日
決まったよ!デビュー日!デビュー自体は前から決まってたんだけど、いろんな都合で日にちがなかなか決まらずにじれったい日々を過ごしてた。それが今日のミーティングですっきり決定しました。その日とは・・・ここまで引っ張っといてなんなんですが、まだ発表しちゃだめみたい。というのも、宣伝のインパクトとかを考えるといっせいに「ポルノグラフィティデビュー大決定!!」みたいにしたいらしい。ミーティングではそれと同時にデビューに向けてと、してからの活動予定シートみたいなのを見せてくれた。テレビや雑誌での宣伝展開が書いてあるんだけどあの歌番組たちやあの雑誌たちの名前が並んでた。当然これもまだ言えないわけでもどかしいけど、近い将来ポルノグラフィティをいろんな所で見てもらえるんじゃないかと思います。



6月8日

ただいま午後10:23。今起きました。新井さんからのデビューシングルの「文字校正」の催促があったので。ここで「文字校正」について話しましょう。CDには当たり前のように歌詞カードかつくよね。それのための原稿に誤字・脱字はないか、余白はどこにいれるか、漢字か平仮名か、といったことを念入りに確認する作業のことです。これを間違うともう大変。歌詞じゃなくて値段の文字が間違ってたりしたら工場を止めるか何万枚のCDに訂正のシールを貼らなくちゃいけなくなる。まあ、僕がやるのは自分が書いた詩の文字校正だけなんだけど、悩みだすときりがない。歌詞が実際に目にふれるということについて、歌詞カードも作品のひとつと考えることができると思う。「字ヅラ」ね。たとえば(愛の形)なのか(愛のかたち)なのか(愛のカタチ)なのかで雰囲気が変わってくる。ただ雰囲気としか説明できないけど。その雰囲気の重なりがゲイジュツなのだよ(笑)漢字にできる文字を全部そうしていたらかしこそうだけど固いし、平仮名ばっかりじゃアホっぽいし、カタカナが多ければ明治生まれ?って感じだし。効果的に歌と合わそうとすると考え込んでしまう。まあ、悩んだわりには最初、歌詞書いたときのとあんまり変わってないんだけどね。やっぱりファースト・インプレッションが大切。ジンセイナニゴトモ。それではおやすみなさい。



1999年6月。
まだ世界はポルノグラフィティを知らない頃。

この頃からファンの方とかは、この時どういう心境だったのだろう。
色々なことを想像してしまう。

歌詞の事が特に面白い。文字の表記、それひとつとっても作詞家は悩みに悩み抜いている。
正解がない世界、そして修正ができない世界だからこそ、出したものが全てである。そうした時に何を自分の正解とするか、誰もが頭を悩ませるのだ。

それにしても、ポルノチームはこの頃から発表に対しての箝口令がしかれていたのだな。
20年経つ今も、その姿勢は全く変わっていない。うっかりポロリグラフィティしてしまうようになったくらいか。




6月4日

アミューズの先輩の劇団「スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」の舞台を見せてもらいました。「未来マヤ文明の逆襲」というお芝居だったんだけど三宅祐司さんと小倉久寛さんの息もさすがにぴったしでとても笑わせてもらいました。いいよね、お芝居って。映画とも違うし。例えば映画なら客席が盛り上がっったてブラット・ピットがノリノリで演技してくれることなんてあるわけないし、その客席との一体感と緊張感が舞台いいところ。僕は役者の卵の友達がいることもあって何度かいろんなお芝居に行ったことがあるんだけど、その度に「いつかはやってみたいな」って気持ちが湧いてくる。でも僕らも今までプロモーションビデオの撮影とかでちょっと「演じて」みるけどすげえ難しいの。ディレクターから「ポルノグラフィティという仮面をかぶりなさい」と言われるんだけど、それこそ鼻たらしてる頃から知ってる昭仁と玉が横にいると流し目とか恥かしくてなかなかできない。横で昭仁が頑張ってキメてるとなんか笑ってしまう。昭仁も僕を見てそう思ってるでしょう。田舎の友達に見せたら「オマエら何カッコつけよんなー」って言われるで、絶対。でも写真撮影とかビデオ撮影とかテレビのコメント録りとか何回もやったけど、やる度に昭仁もそれらしく貫禄っていうか雰囲気みたいなのが出せる様になってきたみたい。さすがフロントマン。あなた変わったわ(笑)
明日はアミューズで福岡さんや品田さんたちとミーティングがあるらしい。デビュー日が正式に決まったのだと思う。そうであってほしい。



6月10日

最近、大好きなヒト君(昭仁)と玉ちゃんに会うことが少ない。なぜなら、最初の予定では夏前にデビューだったので今年の初めに、その準備を大急ぎでやったからです。3月くらいまでレコーディングばっかりで、毎日田村さんや本間さんたちとあーだこーだいいながら、毎週1曲ずつ完成させてた。デビューシングルによりよい曲があがるまではと、録音すること12曲!!シングルも出してないのにアルバムがつくれる程の曲数になりました。作っては録ってるという強行日程でした。しかし、積極的な意味でデビュー日変更のため100日近くうしろにずれたので、今は「待機」の時期になるわけです。したがって、ヒト君と玉ちゃんに会うことが少なくなってきてるのです。寂しいことです。しかしみんな曲作りに没頭してるらしい。僕も作詞の引き出しを増やすために2日に1冊のペースで本を読んでる。ギターもしてる。また動き出したらひとまわり大きいポルノになってるんじゃないでしょうか。



この5年後くらいに、このギタリストは別所というヤクザ(チンピラ)の役で映画に出ることになる。






演技というところまではいかないのかもしれないけど、これだけの本数のPVを創ってきて、もしかしたら役柄だけでいえば下手な役者よりもバリエーション豊富なのでは。


ヒト君……









7月9日

昨日、今日と取材というのを受けました。ポルノ初めての取材。なんとなく、それとなく、それらしく話した。ミュージシャンの人ってなんかかっこよく受け答えするじゃん。それができんのよね。ライターの人の質問をマジメに答えてしまう。なんかさあ、就職面接みたいに。気のきいたことが言えんのよね。「(ライター)3人の出会いは?」・・さあ?気づいたら友達じゃった。ほら、これじゃ記事にならんじゃろ?こう、「たまたまライブハウスに見に行ったら、心揺さぶるボーカリストがいて必死にくどいてメンバーになった」とか「雑誌でメンバー募集してオーディションしたら、一発でそのベーシストにノックアウトされた」とかないもん。でも「さあ?」じゃいけんし。ウソだけは言わないように、僕らなりにそれらしく答えました。でも取材うけるのっておもしろいよ。自分の考えをあらためて口に出して人に伝えることってないじゃん?自分で自分の考えを再認識したり、ちょっと自分の考えをおおげさに言ってしまった時でも、逆に「僕はこんなふうになりたいんじゃ」とか分かったりして。もし、つたない僕らのインタビューに興味があったらPATI・PATIチェックしてみて下さい。



7月13日

あれ?なんか忙しい。4月5月くらいは前はなしたとおり、けっこうゆっくりしてたんだけど、今月に入ってなんか忙しい。スケジュール帳に空きがなくなってきた。「来月はもっと忙しい」んだって。でも野球には行くけどね。
さて、本題。出来てきたよ!ジャケット。まだ完成形ではないけど、あとプラスチックに張ったら出来上がりってとこまでのやつ。歌詞とか入ったりしてさあ。それ見てた昭仁が「あっ!歌詞間違っとる!」って叫んだ。スタッフみんな一瞬凍り付いた。これも前に書いたけど、ここまで来てミスプリントがあったら本当に大変なこと。まあ、結局は昭仁が間違っとったんじゃけど。スタッフの激しいツッコミにあってました。


↑これもうその光景が目に浮かぶようでスゲー笑った。

今でこそ、当たり前のように見ているインタビューもジャケットも、こうやって色々な人の手で作られている。

インタビューとかって、やっぱり大変なんだなぁとあらためて。

ちょっと前に15周年の時とかに「当時を振り返って」みたいなインタビューがどうしても多くなり大変だったみたいなことを言っていた記憶があるけど、これから20周年でも同じことになるのだろうか。




1999/08/08 5:15:36 AM


今まで日記というものを書いたことがなかった僕が、このダイアリーを書き始めて発見したことがある。日記って誰よりも自分がおもしろい。たかが2ヶ月前のを読み返しても、心境の変化はある。ということで、デビュー1ヶ月前の今日、どんなことを思ってるか、デビュー日の僕やその後の僕に書きたいと思う。
今一番考えるのは、音楽をもっと楽しみたいということ。もちろん、今なりに楽しんではいるけど、鼻水たらして「バービーボーイズかっこええよのぉ」って言ってた中学生の時とは楽しみかたが当然違う。高校に入って読めない譜面を「ド・・レ・・ミのフラット・・」っていちいち数えてた時よりは、いくらかギターもうまくなったけど、そのころより音楽を楽しんでるかと言えば簡単には答えられない。また違う楽しみだということもできる。同じように玉や昭仁と最初にバンド始めた時の感じと、職業としてバンドを選んだ今、アイツらとの関係もやっぱり変化はしてる。良くも悪くも。でも会えて良かったなと、今は思えるのでまだ大丈夫。くさい話はヤなのでやめる。こんなことを全部ひっくるめて「大人って、けっこう楽しい」って思えてる自分がいる。中学生・高校生・ポルノグラフィティを始めた時と、何も考えずに楽しかった時代もあるけど、それに返りたいかといえば遠慮する。だって大人も楽しいもん。で最初に戻ると、音楽をもっともっと楽しめるようになったら、僕の大人時代はもっともっと楽しめるんじゃないかと考えてる。このダイアリーは読んでくれる人がいるということを前提に書いてるわけで(それもおかしな話だけど)、その中には「そう思えるのは、お前がデビューだなんだと騒いでるこの時期だけよ!」と言う人もいるかもしれない。そうかもしれない。でも、大人になるのがあんなにヤだったのに、いち時期でもそう思えてることがなんか嬉しい。ロックの歌詞には大人とそうじゃない若者のあいだに、致命的な境界線を引くことが多いけど、すこし違った歌詞も書けそうだというのを、今日の読んでもらうにはあんまりおもしろくないダイアリーの結論としとこう。



ダイアリーとはその日に思ったことを綴るもの。
1年前のダイアリーを書く事は、そうない。

つまりは、その瞬間の自分を記憶から記録に残す事で、僕もそれがやりたくてこうしてキーボードを叩いたり、スマホに文字を打ち込んでいる。

同じ曲を聴いても1年前の自分、今の自分、1年後の自分の自分が思うことは、確実に違っている。

それが成長なのかどうかは置いておいても、その楽しさはいつまでも変わらない。




1999/09/09 9:53:41 PM

皆さん、ありがとうございます。おかげさまで、僕らポルノグラフィティは昨日、無事デビューできました。

さて、いそがしいぞ!このやろう!!もう、いっぱいいっぱい。7日に久しぶりに大阪に行ったんだけど、滞在時間6時間。その時間の中にぎっしりつまったスケジュール。よく、こんなに詰め込めたねってくらい。東京に帰ってすぐラジオの生放送。人間けっこう働けるもんだと、思いました。最近は、こんな感じにも慣れてきた。いつも新井さんに、毎日別れ際に集合時間しか聞かないようにしている。明日は何の仕事?だとか、終わるのはいつ?とか聞かない。2日後のことなんてとんでもない。だいたい覚えきれないし。そんな風に、ひとつひとつ目の前の仕事に挑んでいってる。大事に。えらかろう?


この先でダイアリーでよく見かけるようになるけど、アーティストはとにかく多忙。
作曲、作詞、レコーディング、ミックス、マスタリングなどCD製作において沢山の行程がある上に、そのプロモーションは多岐に渡る。

その上でライブのリハや本番などもあるのだから、あらためて身体が資本みたいな商売だなと思う。

端から見たら取材やライヴで全国回って楽しそうなんて気軽に見てしまうけど、遊びではないし、プロモーションとはつまりオープンであり続けるということ。人前で何度も話したりすることは、コミュ障の僕からすれば、なんと凄いことか。


あらためて、プロとしてデビューって大変なんだなと、プロとしてデビューする予定のない人間は思ってしまった次第。


余談。


2000/12/16 01:35:56 AM

嬉しいぞ!!今日の有線大賞で、僕が新しいギターを使ったのを気づいてくれてる人がいて。掲示板で。新しい僕の恋人紹介します。「Gibson LesPaul GoldTop」ちゃんです。59年製じゃないけど似たようなもんです。今まではTVでは「LesPaul Jr」、黄色いやつ。一昨日、買った。昨日のアルバム用のレコーディングでも使ったし、ああ可愛い。今日は短いけど、ギターといちゃいちゃせんといけんけぇもう終わる。じゃあね。



僕がどうしても反応してしまうのは機材関係
主に機材をゲットしての生の声。

痛い程その気持ちが分かる、分かるぞ。

ということで、次回はその辺りをまとめたいと思う。


AmazonのCM風にポルノグラフィティの曲をレビューする
明日ポルノグラフィティが解散しても幸せといえますか
【産業ロックとは】正直、最近ポルノグラフィティファンだと言うことが恥ずかしくなくなった



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2 件のコメント:

  1. Pg'z 懐かしすぎて…
    夢中になって読み漁っていた日々を思い出しました。

    今読むと、また違った印象を受けますね…

    それでも、何年経っても、やはり私は晴一さんの紡ぐ言葉が好きなんだなぁと、再認識させられました。

    素敵な記事をありがとうございました(о´∀`о)

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    1. ありがとうございます!
      いつの時代も、この人の言葉は本当に凄いと思わされます。

      折しも、ギターマガジンのやつで昔を振り返るインタビュー読んだら、色々重なって泣けてきました。

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