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2019年4月2日火曜日

自分なりの歌詞解釈のやり方を実例で紹介します 後編+オススメ評論家編 "ワールド☆サタデーグラフティ"







前編はこちらから。

自分なりの歌詞解釈のやり方を実例で紹介します 前編






歌詞を読み解いていく②の続き





前編で2番のサビ前までいったので、サビから続けよう。

一番では上海やNYと対比させていたけれど、ここでは視点が一気に東京にフォーカスされる。

新宿、下北沢、青山。1番と同じように対比するなら、主人公の女の子は2番目の下北沢の南側に住んでいることになる。たぶん代沢とかそっちの方か。

↑こういうどうでもいいことを考えて書くから長くなる


面白いのが1番では地名の後に「ニハオ」「ハロウ」と来たけれど、2番では「新宿ナイト」「下北サウス」「青山R-20」時間、場所、年齢と全く違うベクトルのものが並ぶ。

「更けゆくほどに月も色づいていく」そして新宿や青山がギラギラとした夜の輝きを持つ中で、下北沢だけは輝くのは月である。

旧暦18日頃の月を「立待月(たちまちづき)」と呼び、旧暦20日頃の月のことを「更待月(ふけまちづき)」と云うらしい。月がいつ現れるか、昔の人が考えた呼び名なのだけど、それと想い人を重ねているようも見える。

下北沢は栄えている若者の街だけど、少し離れれば静かな住宅街で、夜はそんなに明るくない。だからこそ、新宿や青山ではネオンに負けてしまう月も、より強く輝いと見える。

「ねぇ そのまま眠ってしまうのかい?」というのは、街は眠らず輝いているのに、そこに新たな出逢いのチャンスがあるかもしれないのに出掛けないのかい?という問い掛けにも見える。

最後のサビのフレーズ。実は今までどういう意味か考えたことがなかった。改めて考えてみると、1番で呼びかけた上海とNYのLADY。どこか東京の主人公だけが置き去りにされたように感じてしまっていたが、実は違っていたのではないか。


↑さらっと流していたけどよく考えていくと、ということもよくある


夢の中で遊ぶ上海のLADY、誰かを想う東京のLADY、カーテンだけが静かに揺れるNYのLADY。
実は、それぞれの孤独を抱えていた。

「彼女を残し地球は廻る」それは、3人みんなに当てはまるものであった。これは東京の「彼女」の孤独を浮かび上げるための歌詞ではなく、そんな人は実は世界のどこにもいて、ある種「君一人じゃないよ」というメッセージなのではないだろうか。


↑結構な確率で書いていると、最初思ってもなかったところに着地したりする。だからやめられない(正しいかどうかはさておき)

1番で各地の語り部の天使(仮)に呼びかけているようだと書いたけど、本当は1人で彼女たちを見守っているのかもしれない。

ということで、大体こんな感じで一通り歌詞について、考えてから、文章に置き直してく感じだと思う。

これ、参考になるのか…?
結局のところたくさんの曲を聴いたり、映画を見たりして、引き出しは多いに越したことはないかと思う。


さて、ここからは、自分がやってて影響を受けた方々を紹介したい。名前を上げる方々の書いたり話す内容が、僕に強い影響を与えているので、参考になるかもしれない。









作家性




RHYMESTERの宇多丸氏
映画評論家の町山智浩氏
漫画家の山田玲司氏
"青年失業家"の田中泰延氏

以下は敬称略。

僕の尊敬している評論家たちだ。色々あるがここでは評論家と称させていただく。
音楽ではなくて、映画を始め多方面に活躍している面々ではあるが、僕は明確にこの人たちの影響を受けているので、参考になるかはわからないが書いておく。

この方々の共通点は作品を「クロニクル」で語る。何かというと、作品ではなく、その人そのものの"作家性"を追っているのだ。ちなみに厳密にいうと町山智浩の影響を宇多丸が受けていて、山田玲司も田中泰延もその2人の切り口を参考にしている、というイメージだろうか。町山智浩がラスボスである。






点ではなく線で追うことで、その作品がどんな作品なのか読み解く鍵にもなる。

たとえば、新藤晴一という人。

文学少年で、学校でタバコを吸ってるのがバレて書かされた反省文を先生に誉められたというほどのエピソードを持つ。

そんな新藤晴一は、村上春樹に影響を強く受けている。
そこで、本当は僕も村上春樹をしっかり読んでいれば、また色々と曲の景色が変わるのだろうが、それが出来ていないところに、僕の未熟さがある。数冊は読んでいるが。

村上春樹の比喩表現、つまりは言葉を言い換える行為の巧さは、新藤晴一の歌詞にも影響を多く与えている。例えば。


「一昨日と昨日が入れ替わったとしても何の不都合もない」





これは『眠り』という短編の言葉だが、これを見ると「明日があるも慰められても 土台/しょうもない今日の続きのわけで」という"ライラ"が思い浮かぶ。


他にもラジオにゲストで呼ぶほどのファンである伊坂幸太郎氏の軽妙でシニカルな語り口も影響があるだろう。

歌詞の面では「作詞家」という職業が今より色濃かった時代の先駆者たちの影響を受けている。たとえば、交流もある森雪之丞氏や、対談をした阿木燿子女史など。

そして、自分が育ってきた時代の音楽の影響も大きい。

たとえば"サウダージ"は、小泉今日子が1986年に発表した"木枯らしに抱かれて"に通ずるものがある。ちなみに"木枯らしに抱かれて"の作詞作曲はタカミー(高見沢俊彦)である。


泣かないで恋心よ願いが叶うなら
涙の河を越えて全てを忘れたい
せつない片想い あなたは気付かない


白い季節の風に吹かれ寒い冬がやって来る
激しく燃える恋の炎は誰にも消せないの
せつない片想い あなたは気付かない
せつない片想い あなたは気付かない



これは片想いの曲であるが、その切なさ、秋が連想させる哀愁は"サウダージ"や、Buzyに提供した"パシオン"を彷彿とさせる。それは意識的ではなく、感覚的にそのメロディとアレンジが、記憶から"木枯らしに抱かれて"が合うということを選んだのではないか。

時代背景などを通じ、点ではなく線や面で見ることで、作品がまた違った姿になる。

その辺に関しては上記に挙げた方々の評論を見ていただければ、わかるのではないだろうか。

僕が例に出すのもおこがましいほど、この人たちの知識量は半端ではなく、比べるとすれば僕は浅瀬はおろか、水溜まりでちゃぷちゃぷやってるくらいなのだ。

そこに正解がない限り、人の数だけ解釈が生まれる。

それがまた音楽の世界をさらに押し広げてくれるのだ。

機会があればトライしてみてはいかがだろうか。


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2 件のコメント:

  1. こんにちは。

    今回、歌詞解釈を教えて欲しいという意見を取り入れ記事にしていただきそれもわざわざ実例で教えてくださって本当にありがとうございました!
    とても参考になりました!!


    記事を読んでふと思ったのですが
    このような素晴らしい解釈になるのは長年の経験などから得た膨大な知識があるからこそなのだと思いました。
    今回、歌詞解釈を実例で紹介してくださってサトシさんの知識量の多さが知れました(他の歌詞解釈でもよく分かりますが…)
    読解力ももちろん必要ですがそこに詰まっているメッセージをまず知っているかどうかで辿り着けるかどうかも変わるのかなと個人的に思いました(変な事言っててすいません��)
    知識量の多さで歌詞解釈の奥深さがより深く深くなるのですね
    知識量が全くない私では薄い解釈になりそうですが挑戦したくなりました!

    改めて私の自分勝手な申し出に貴重な時間を割いてわざわざ記事にしていただき本当にありがとうございました
    これからもサトシさんの記事を楽しみにしております!


    追伸
    サトシさんのiPodさん相変わらずSな性格が出てますね笑
    さすがです
    iPodさんの活躍もご期待してます

    返信削除
    返信
    1. こちらこそありがとうございます。あまり参考にならないような内容で、すみません。

      歌詞解釈も色々なやり方があるので、あおいさんなりの解釈の仕方は絶対あると思います。確かにひとつとして曲の伝えるメッセージから読み解くのがいいと思います。
      それなら、曲についてのインタビューとかコメントでどこかしら「こういう曲にしたかった」という部分があるので、そこから歌詞を見て「そういうメッセージを伝えたいからこういう表現にしたのか」と見ていくと、歌詞の見え方も変わったりしますし。

      知識もあれば面白いですけど、そうでなくても歌詞からストーリーを自分なりに広げて「この歌詞の人はこんな人生を送ってるんだろうな」とか考える(妄想する)ことだって解釈のひとつです。

      ポルノは特にそういう楽しみ方できる歌詞が多いので自分の特に好きな曲で是非トライしてみてください!

      追伸
      iPodは絶対許しません笑

      削除