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2019年11月20日水曜日

応援ソングが苦手だけどポルノグラフィティのギフトは泣ける







世にいう「応援ソング」というものが苦手だ。

全てが嫌いというわけではないし、大好きなものも沢山あるが、得手不得手で言えば後者になってしまう。

メロディとか歌が好きということはあっても、そこに強い共感を抱くというのがあまりない。

なぜかと思った時に、自分の人生がそこまで励まされるほどのものではないということもあるが、その言葉がプレッシャーになってしまうこともあるのだ。

そんな自分にも励まされて泣いてしまう曲がある。








ポルノグラフィティ"ギフト"









先日、「新藤晴一の距離感と生きていく」という記事で、新藤晴一の押しつけるでも突き放すでもない、「君は君だ」という距離感が好きだということを書いた。

ポルノグラフィティに"ブレス"という曲があるが、その中に「頼んでもないのにやたら背中を押す」というフレーズがある。自分の心を意図せず掛けられる言葉は、時に心の重荷となる。

少し、時代背景を書いておこう。

所謂00年代中盤。日本の音楽界は自分の中では「ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート」そのもので、ポルノグラフィティ以外のJ-POPを聴くことはほとんどなかった。
中にはもちろん違う曲もあったはずなのだが、それを思い出せないほど、前向きな曲が持て囃された。

ストレートでポジティブな曲が嫌いという訳ではない。しかしながら、あまりに世間の空気がそちらに流れていったように感じていたのだ。

僕はネガティブがあるからこそ、ポジティブな言葉に意味を持てると思っている。
たとえば、僕が高橋優の言葉を信じられるのは、彼がコンプレックスと怒りといったネガティブへの反動と反発がポジティブな言葉となって歌われるからだ。

それが00年代には、ただ単にポジティブな言葉を羅列した曲ばかりに感じたのだ(当時は高校~大学生な年代だったので、そうとしか思えなかった部分はあるのでご了承いただきたい)。

それは僕がひねくれまくって、こじらせた人間だからに他ならないが、00年代を振り返ってそういう前向きな曲が多いという印象を持つ人は、少なからずいると思う。


そんな風潮の中初めて聴いてから涙なしに聴けなくなったのがポルノグラフィティの"ギフト"なのである。肌で感じていた違和感、それがこの曲が出てくれたことで、自分にとって本当の意味で救いとなった(後にその違和感を言語化してくれたのが"ブレス"となる)


少しは自分にも期待してみたらどう?って
意外にうまく跳びだせるかも 想像よりもやれるかも
信じてみることが甘いかどうかなんてさ
自分の舌で舐めてみなけりゃ がっつり噛みつかなきゃ分かんない


「君ならできる」ではなく「君ならやれるかも」
この2つには決定的な違いがある。

全ては自分の心が決めることである。

だが人は物事に理由を探してしまう。

いったい、いくつ「やらない理由」を見つけてきただろう。

いったい、いくつ「やらない言い訳」を探してきただろう。

いったい、いくつ「跳ぶこと」を諦めてきただろう。


最初に空を飛んだ鳥は翼を広げた格好で
どのくらい助走をつけて地面を蹴ったんだろう


夢に重さはないんだけれど言い訳ばかりなすりつけて
やっかいなものを背負っている気になってる


"ギフト"に涙するのは、突きつけられるからかもしれない。
何もできなかった自分を、何もせず諦めた自分を。

「失敗すること」を恐れて人は二の足を踏んでしまう。

しかしながら、僕が尊敬し、憧れてきた人たちは、少なからず失敗よりも衝動を取った人々だ。
逆説的にいえば、だからこそ、そんな姿に惹かれてしまうのかもしれない。









明日に架ける橋




明日に架かる橋はもろくも崩れそうで


諦めることは、未来を狭めていくことだ。

しかし決意をすることもまた、道を確かにし未来を狭める行為といえないだろうか。

たとえば、右に行くか左に行くか、無限にある未来という橋から、日々人はどれかを選んで進んでいく。

明日に架かる橋はなぜ、もろくも崩れそうなのか。

それは、人は未来を夢見るあまり、未来を諦めるあまり「今」を見失ってしまうからかもしれない。

明日に架かる橋は明日にはない。明日の忘れ物が今日にあるように、それは今この時から続いているものだからだ。

きっと、新藤晴一は明日に架ける橋などないと思っているかもしれない。


地球 あるいは明日が消えてしまうと言いたいのだろうか
なぜこんなに暗い詩が あぁ溢れているんだろう
~"パレット"


"パレット"においても、新藤晴一は「今」を見つめている。

そのメッセージは「変わらずそこにあるものを歪めて見るのは失礼だ」「ただちゃんと見つめていて ありのままがいい」のように、感情によってそこにあるものさえ歪めてしまってはいけないというものだ。

明日はただそこにあって、そこへ向かう橋がなくても明日はやってくる。
それでも明日へ期待を抱けなかったり、明日に期待するあまり、心が架ける明日への橋は崩れそうになってしまう。

"パレット"で伝えられるメッセージのように、夢に何かをなすりつけて歪めてしまってはいけないと新藤晴一はそっと教えてくれる。

もし、心の中の明日へ架ける橋が崩れそうなら、とべるのは、自分自身に他ならない。

或いは。

「明日」とは心の日付なのかもしれない。

東京ドーム公演の"THE DAY"に感じたこと。それを引用しよう。


"THE DAY"がやってくるのは、時計の針が0時をさした時ではない。自分自身が一歩成長した時に、初めて日付が更新される。

何を言っているかわからないという方は『魔人探偵脳噛ネウロ』を読むこと。

説明するとライヴレポあと1000字長くなったし、以前 I WISHの"明日への扉"について書いた際にも触れた話題だが、ここで改めて補足しよう。


『魔人探偵脳噛ネウロ』という作品が少年ジャンプで連載していた。女子高生の主人公である桂木弥子(かつらぎやこ)が魔人である脳噛ネウロと出会ったことで探偵とSMプレイの相手をさせられ、色々な事件に巻き込まれていく物語だ。

その中である事件がキッカケで弥子は失敗をして犯人に拘束され殺されかける。その後ネウロに言われるのが。


『期待外れだ
ヤコよ

貴様の日付は
いつになったら
変わるのだ?』


この言葉に弥子は落ち込むことになる。
ちなみにここで背景に描かれる時計は「23:59」辺りを指している。

後に、ある事件で弥子はネウロから投げられた難題を乗り越える。そこで、ネウロが言うのが。


日付も変わった
帰るぞ


このシーンに描かれる時計は「0:01」辺りを指している。弥子が精神的に成長したことを示す伏線のお手本のような名シーンだ。

長くなったが、この精神的な成長によって日付を越えるということと、"ギフト"においての「明日」は同じなのではないかと思えたのだ。



清潔な衝動




夢に重さを持たせてしまうことも、自信が持てないことも、全ては自分の心が決めることだ。

「やってみれば?」というメッセージは、背中を押すようでそうではない、とても無責任なメッセージだ。その無責任とは、誠実な無責任なのである。

なぜなら、ミュージシャンとは聴き手の心を揺さぶることしかできないからだ。アメリカ人でさえ「お前が踏み出してみろ」って歌ったからだろうとミュージシャンを訴訟を起こすことは(たぶん)ない。

無責任ではなく、責任を持つことができないのである。
だからこそ新藤晴一は、つかず離れずの距離感を保ってくれるのだろう。


10だけ数える NoかYES 決めるんだ
心の扉は自分でしか開けられはしないから
~"m-FLOOD"


突き放すこと、それが新藤晴一の優しさなのである。
折しも僕はあるミュージシャンの言葉がダブってしまう。





Please don't put your life in the hands
Of a Rock n Roll band
Who'll throw it all away
お前の人生を任せちゃいけない
ロックンロールのバンドなんてのは
全て投げ出しちまった連中なんだから
~oasis/Don't Look Back In Anger


オアシスの不屈の名曲だ。CMなどで耳にしたことがある人も多いだろう。ノエル・ギャラガーによる歌詞は、こちらも無責任なようだが「お前はお前だ」と諭してくれるものではないだろうか。

ロックとは共感ではないのだと思う。

ロックとは自分の足で立ち上がらせるための音楽なのだ。


最初に飛んだ鳥は翼を広げた格好で
どのくらい助走をつけて地面を蹴ったんだろう


初めて陸に上がった 魚の見た空は?

運命が僕を追いかけるくらいに
清潔な衝動に正直でいたいんだ
~"Search the best way"


答えは最初から自分の胸の中にある。
自分の中にある「清潔な衝動」、それこそが人に与えられた「神様からのギフト」なのではないだろうか。

"ギフト"の主人公はリボンがないことや、色が地味なことに惑わされてしまう。しかし、本当に大切なものはそこに入っているギフトの中身そのものだ。


自問自答きっとそこには意味がないことを
意外と前に気付いてたかも 悩んでる自分に酔っていた


自問自答は夢に重さを持たせてしまうことかもしれない。


自分がいくらかでも成長したなとか、変わったなと思う時、それはいずれも踏み出して何かを始めた時だ。

たとえばこのブログもそうだし、今の会社に入ったこともそうだ。

踏み出すことで、人は否応なしに変化する。

その翼をくれるのが、僕にとって"ギフト"という曲なのである。



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