2018年9月29日土曜日

Mr.Children「GIFT」とポルノグラフィティ「ギフト」と2008年の夏







2008年7月30日Mr.Childrenの32作目となるシングル「GIFT」がリリース。

そして。

2008年8月20日 ポルノグラフィティの25作目となるシングル「ギフト」がリリースされた。

そう。表記こそ違えど偶然にもほぼ同じタイミングで、同じタイトルのシングルがリリースされたのだ。
しかもミスチルとポルノである。なんということでしょう。

前から書きたいと思ってたし、リクエストもあったので、この機会に書いてみよう。


この“GIFT(ギフト)”という曲、どちらも大好きで、思い入れが強い曲である。

同じタイトルでありながら、全く違う個性を持った曲たちを紹介したい。


それぞれのファンの方に響いたら幸いである。







Mr.Children”GIFT”









まずミスチルがリリースした”GIFT”。

この”GIFT”は「贈り物」という意味で歌われている。与えるものと、与えられるもの。

NHK北京オリンピック・パラリンピック放送テーマソングとして書き下ろされたのが本作である。

オリンピックがテーマでありながら「一番きれいな色ってなんだろう?」という問い掛けから始まる。

オリンピックで歌われる色として最初に思い浮かぶのは”メダルの色”だろう。

何かとメダルばかりが注目されてしまうが、本当に大切なものはメダルの色ではない。オリンピックという舞台に立つこと、それ自体が栄誉である。

そこで桜井和寿はあえて「一番きれいな色ってなんだろう?」と問い掛ける。

そしてもう1つ。


オリンピックで"色"といえば、もう1つ浮かぶのが「五輪の輪」






青、黄、黒、緑、赤の5つの輪、そしてもう一色地の色であるも合わせて6色で構成される。

5つの輪は五大陸を表し、6色の組み合わせで「世界の国のほとんどが描ける」という理由だそうだ。

つまりオリンピックマークとは「世界」を示す。

それを思い浮かべて考えて欲しい。

「一番きれいな色ってなんだろう?」

スポーツが世界を繋げ、音楽は国境を越えるものだ。

そんな祭典でこの問い掛けは、ある意味アンチテーゼな響きにも聴こえないだろうか。





25周年を記念して行われたツアー「Thanksgiving 25」まさにベストセットともいえるほどのラインナップがセットリストに並んだ。そこで桜井和寿はこう発言している。


そして『Thanksgiving』と題しているとおり、何をやるのか期待していることでしょう。今日はその期待を遥かに、遥かには言い過ぎ? いや、遥かに越えるように考えに考えてきました。その中でこの曲は外せないなという曲をやりたいと思います



そう、この曲が歌うテーマは誰しもに当てはまること。

“与えるもの””受け取るもの”、そして”分け与えるもの”

たとえば幸せとか愛とか、そういった感情を分かち合い、響かせ合うこと。

そこに選ばれしアスリートたちだけではなくて、全ての人が主人公で。メダルの色も、国の色も、肌の色も、比べる必要なんてない、そんなメッセージに聴こえたのだ。

しまった、いつもの調子で書いてしまうと、本題が。

ちょっと長くなってしまったが、次にポルノグラフィティの"ギフト"について。










ギフト










一方のポルノグラフィティの”ギフト”。

石原さとみ主演の映画「フライング☆ラビッツ」の主題歌となった。





生まれながらの才能のことを神様からのギフトと人は
呼ぶらしいけれど僕のはちっちゃい箱だな


こちらの”ギフト”で歌われるテーマは出だしの歌詞にあるように「生まれながらの才能」である。

これもまた「ギフト」の言葉が持つ意味のひとつである。
同じタイトルでありながら、違う意味で使われているのだ。

なぜ「ギフト」が「生まれ持った才能」を示すかというと、これも歌詞に登場するが「神様からの贈り物」という意味合いがあるからだ。

人と才能を比較して、卑屈になってしまう気持ち、それを肯定してくれる曲こそが”ギフト”なのだ。

それを表しているのが、2番の歌詞。


鳴り止まぬ歓声を浴びる人は遠い 世界さ どうせ
どうせ自分なんかって思う その度にギフトが


それを受けて歌われる2番のサビ。


少しは自分にも期待してみたらどう?って
意外に上手く飛び出せるかも 想像よりもやれるかも
信じてみることが甘いかどうかなんてさ
自分の舌で舐めてみなけりゃ がっつり噛みつかなきゃ分かんない


この歌詞と曲の流れはいつも僕の胸を打って、いつも涙してしまう。
※貼った動画では歌詞を間違えているので違うフレーズになっています

この曲を聴くたびに思い出すことがあって。


それは1997年~2000年に週刊少年ジャンプで連載していた「花さか天使テンテンくん」(小栗かずまた)というギャグマンガである。






このマンガで神様が産まれた子どもに"サイダネ"という才能の種を与えるという設定がある。
その才能に気付いて、目を出して育てることができれば才能が花開く。しかし、それができるのは100人に1人程度で、才能に気付かず芽も出せない人が多くいる。

この設定はまさに「ギフト」そのものだ。


ステージの上で歓声を浴びること、それ以外にも才能はある。それを支えるための裏方の仕事かもしれないし、或いは全く関係ない趣味かもしれない。

選ばれし者にしかスポットライトが当たらない世界。
たとえそんな世界であっても、自分自身にも"ギフト"はある。

先の”GIFT”でも触れたテーマと、実はここでリンクしている。違う意味合いで使われる「ギフト」という言葉でありながら、違う側面から同じテーマに行き着くというものになっている。


そして同時に問われる。

選ばれし者は本当にその才能を活かさなければならないのか?






↑「(500日)のサマー」のマシュー・ヴォーン監督作「gifted/ギフテッド」

まさに"ギフテッド"をテーマにした映画。僕は見る度号泣してます。
"数学のギフテッド(才能)"を持つ、子役の女の子が本当に可愛すぎてとろけます。

ハートォーミングで暖かい"家族"を問う物語、本当にオススメです。
主演はキャプテン・アメリカ。

【映画】「gifted/ギフテッド」ネタバレ感想

正直、この映画にこの記事で書きたかったテーマの全てが入ってます。



2008年という時代にこうしたテーマをMr.Childrenとポルノグラフィティが同時にリリースしたということがあらためて興味深い。

2008年は北京オリンピックの他にもバラク・オバマの大統領当選、リーマンショックなど変革の時代ともなった。

今思うと"全体主義"から"個"の時代に移り変わってきたのがこの辺りではないだろうか。

それを表すかのように、Twitterの日本語サービスが開始されたのが2008年4月23日からである。

それぞれが持つ才能があって、それを発揮していく時代への突入。それが2008年であるならばMr.Childrenの"GIFT"もポルノグラフィティの"ギフト"も、しっかり受け止めねばならない、ギフトであるのではないだろうか。

"個"の時代は始まった。

もうそこから逃れることはできない。

よく言われるように人は与えられたカードで勝負するしかない。

そのカードこそ"ギフト"なのではないだろうか。


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2 件のコメント:

  1. 読みました!久々にコメントを。


    2008年は、僕にとっても特別な年だったのを思い出しました。

    10年前何してかなぁ~と思ったら、結婚したのが2008年でした。忘れてました(笑)そして、思い出すだけで胃が痛くなるくらいボロカスにされながら一番必死で仕事してたのも2008年。

    ミスチルの『GIFT』には何度も救われたなぁー

    ≪「白か黒で答えろ」という難題を突き付けられ ぶち当たった壁の前で 僕らはまた迷っている 迷ってるけど 白と黒のその間に 無限の色が広がってる≫

    ボロボロになってもこの詞に答えを求めて、

    ≪地平線の先に辿り着いても 新しい地平線が広がるだけ 「もう やめにしようか」
    自分の胸に聞くと「まだ 歩き続けたい」と返事が聞こえたよ≫

    何度も辞めようと思ったけど、この詞が背中引っぱってくれたのを思い出しました。


    2008年の紅白で歌った『GIFT』が僕の中のベストです。リアルタイムで観てて、色んな思いが詰まってたのもあって、ホントに鳥肌が立ちました。


    ポルノの『ギフト』・「gifted/ギフテッド」も、僕にとっても縁のある作品な気がしてます。聴いてみます。観てみます。

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    返信
    1. いつもありがとうございます。
      "GIFT"は特にその時の心情で表情が変わる曲ですよね。

      コメント読んでいて、あらためて"GIFT"でたくさん書きたいことあるなぁと思い返して、書いてしまいそうです笑

      タイミングの話でいくと「gifted/ギフテッド」って亡くなった姉の子どもを主人公の叔父(キャプテン・アメリカ)が引き取って育てるという話なんです。
      それで昨年自分も兄の子どもが生まれて叔父になって、そのタイミングで見たので、色々重なってしまいました。
      同じくポルノの"ギフト"も、当時とても励まされて何度も救われました。

      あひろてさんにとっての"GIFT"のように大切な作品たちです。

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