2018年6月17日日曜日

「ブレス」の歌詞の意味を徹底解釈 (ポケットモンスター劇場版 みんなの物語 主題歌)







ポルノグラフィティの新曲"ブレス"を、うっかりと会社の昼休みにradikoで初めて聴いたら、おろおろと泣けてしまう大事故となった。

なぜかというと、"ギフト"とはまた違う角度で自分を肯定してくれるような名曲だったからだ。

では曲について書いていこう。





曲について









「ポケットモンスター劇場版 みんなの物語」の主題歌である。映画としては「名探偵コナン 業火の向日葵」以来で、またしても国民的アニメの主題歌を担当した。あとは「ドラえもん」しかない。

正直なところ、今の子どもにとってポケモンがどれほどのコンテンツであるのか分からない。
ただ、少なくとも僕の世代(1987年生まれ)にとっては、ポケモンはまさしく「社会現象」の名に相応しいコンテンツだった。

普段ゲームをやらないような女子まで、ポケモンポケモンを言っていた程である。
どうでもいいが、僕は主人公と同じ名前なので、親近感を覚えている。

そんな当時を経ているので、今現在でどれくらいの影響度があるのかよく分からないが、少し前の「ポケモンGO」のブームを見ても、その強さは健在といえるだろう。海外でも強いコンテンツということもあって、また英語圏に「PORNO」の名が広まると思うと胸が熱くなる。

このまま行くとポケモン考察になってしまうので"ブレス"の話に戻ろう。

「岡野昭仁作曲×新藤晴一作詞」という、ファンのなかでは近年最も期待が持たれる組み合わせである。

曲は明るく跳ねるようなリズムと、メジャーキーで裏打ちが似合うような曲となっている。

こめかみに血管を浮かべて歌う方の曲ではなくて、比較的口ずさみやすい優しく温かいメロディだ。とても温かみがあって「BUTTERFLY EFFECT」ツアーにおいての「引いた歌い方」もできるようにしていかなければならない、という想いがこの曲への伏線となっていたことにニヤっとしてしまう。

サウンドについて。打ち込みのリズムと軽快なストリングスが印象的で、合間に入るギターによるオブリガードが心地好い。

アレンジには2種類あって、"THE DAY"のように細かく色々なサウンドを詰め込んでいく足し算のアレンジと、必要なサウンドを選び削ぎ落としてゆく引き算のアレンジのものがある。

"ブレス"は後者で、そのサウンドの隙間が余裕となって、リラックスした雰囲気の曲として聴かせることができる。

しかし、そんな曲に乗せた新藤晴一の歌詞は、やはり一筋縄ではいかなかった。



メッセージソング




世に応援ソングが数多とある。

J-POPにおいて最も多いテーマは恋愛のものだろうが、それに次ぐのが、いわゆる応援歌と呼ばれる類いのメッセージソングではないかと思う。

その多くは「明日に向かって」、「頑張れ」というような希望を歌う。しかし、世の中にはそんなメッセージソングに自分を重ねることに嫌悪感を抱く輩がいるのだ。だれだ、僕だ。

元来、性格がねじまがってひねくれているので、八王子に住んでいながら、ファンキーモンキーベイビーズを聴くと軽くアレルギー反応を示す体質になってしまった。

そんな僕が聴くたびに無条件で泣く曲がある。それがポルノグラフィティの"ギフト"だ。
テーマとしては「応援ソング」の類いであるが、そのメッセージは押しつけがましさがなくて、自分にとっては一番好きで大切なメッセージソングとなった。






そんな"ギフト"があり、2018年にまた自分にとって、また新たな大切な曲となったのがこの"ブレス"である。折しも作詞作曲は"ギフト"も同じ組み合わせである。

掴みのワンフレーズから強烈だ。


ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート
頼んでもないのにやたら背中を押す


この言葉の強さよ。これだけ見ると、とてもポケモンのテーマソングとは思えない。

このフレーズを見て思い出すのが"ヒトリノ夜"だろう。


100万人のために唄われたラブソングなんかに
僕はカンタンに想いを重ねたりはしない


どれだけたくさんの人に共感を得られヒットチャートを賑わせている曲であっても、僕は僕であり、想いを易々と重ねることはしない。

僕くらいひねくれているのが"ヒトリノ夜"であるが、"ブレス"において語りかけている君は物事が上手くいかない今を嘆いているように感じる。

それでも「恋セヨ」と責める街も、背中を押そうとするヒットチャートも同じで、それに合わせなければいけない風潮を揶揄している。









"君は君でいい"




歌詞が伝えたいことは、全編を通して「君は君でいい」というメッセージである。しかし普通であれば、あまりに手垢にまみれたテーマであり、どうやってオリジナリティを出すかが作詞家としての腕の見せ所だろう。

では、そうした目線で"ブレス"を見てみよう。


ありのまま君のままでいいんじゃない?
格好つけずに声にすれば響いていく
聞いたことあるような名言に
知らない間にすり替わらないうちに

未来はただそこにあって
君のことを待ってる
小難しい条件つけたりはしない
迎えにも来ないけど


こうした応援歌において、「未来を迎えに行こう」となるのが、言葉は悪いがセオリーではないだろうか。しかし、新藤晴一はそこで一歩引いたスタンスで物事を見ている。

背中を「押す」のではなく、「支えてあげる」という優しさである。

そう。"ギフト"において自分が好きな理由がそこにある。自分自身を変えるのは自分だ、だからこそ、背中を押すのではなくて、今の自分を認めてあげるように諭す。そのバランスが絶妙だ。

特にポケモンの主題歌であるならば「君がいたから」というような、方向に歌詞を持っていきたくなるけど、あえてそうせず「自分は自分」というスタンスを貫いている。その優しさに僕はオロオロと泣いてしまうのだ。

「君は君でいい」

これは実は前作の"カメレオン・レンズ"と同じ意味を抱えているのではないか。それは「自分は自分」であるということ。

ヒットチャートの音楽がどれだけ流行っていようと、君がそれを重ねる必要がない、君には君なりの月が見えているように。



ヒットチャート




そして"ブレス"の歌詞において、最も心に響いたのが下の歌詞だ。


簡単に語るんじゃない夢を
分かろうとしない他人がほら笑っている
簡単に重ねるんじゃない君を
すぐに変わっていくヒットチャートになんか


ポルノグラフィティは1999年のデビューからヒットを飛ばし、以後ミリオンヒットを飛ばし、その後もヒットチャートの常連となった。

そんなポルノグラフィティが「簡単に重ねるんじゃない君を/すぐに変わってくヒットチャートなんかに」と唄うことの重みである。

ヒットチャートの常連、だからこそ、それに左右されてはいけない、100万人のために唄われたラブソングなんかに簡単に想いを重ねてはいけない、というメッセージが強く響くのだ。


なんだアーティストって?
悲しきTVスター?
身を切って創って それまで
グラム売りをするようなもんか…
~"TVスター"


アーティストは様々な理由で曲を書く。

自分の中にあるものを表現するため、成功するため、誰かのため。

君だけの歌は今
CDショップに並んでる
~"TVスター"


ミリオンヒットやヒットチャート上位のような特別な曲でなくたって、たとえ君にだけ響く曲であっても、それでいいというメッセージとなる。


そうして今日もミュージシャンは曲を書いている。

気まぐれなヒットチャートのご機嫌を伺いながら。

ギターという夢を描くペンを手に。

たった一つの音に真実を夢見て。

それが君にとっての「たった一つの Your song」になればいいと願いながら。


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