2020年2月11日火曜日

カラオケランキングにサウダージとアゲハ蝶が常連なのは狂気ではないか








少し前にヒルナンデスで「平成で歌われたカラオケソングランキング」※というものが放送され、なんと我らが変態ポルノグラフィティは、"サウダージ"が7位、"アゲハ蝶"が9位にランクインしたそうである。
※JOYSOUND

尾崎豊の"I LOVE YOU"を越え、BUMP OF CHICKENの"天体観測"をサンドイッチするという、これははっきり言って偉業と呼べるのではないだろうか。

なぜなら2曲ランクインしているのは、ポルノグラフィティだけである。そりゃ岡野昭仁が肥るわけである。

しかしながら、待って欲しい。

これは偉業というよりも、狂気なのではないか。







ポルノグラフィティをカラオケで唄うこと





ポルノグラフィティ、もとい岡野昭仁のヴォーカルはまさに唯一無二の歌声を持つ。

独特の歌声、歌の譜割りが詰め込まれ、さらに唄いづらいドSギタリストの歌詞を唄い上げる滑舌、ブレスのできない歌は誰も唄えやしないはずなのに唄う肺活量。

もうひとつ特徴的なのは声質だろう。
程よく高めの声、ミックスボイスっぽいけれど芯がちゃんと感じられる。

そんな人間は他にいやしない。だから僕らはポルノグラフィティを聴いているのだ。

それはポルノグラフィティに限ることではない。業界を生き抜いてきたヴォーカリストとはそれぞれが特徴的な声質を持っている。

ランキングを改めて見てみよう。


1位 高橋洋子"残酷な天使のテーゼ"
2位 一青窈"ハナミズキ"
3位 MONGOL800"小さな恋の唄"
4位 スピッツ"チェリー"
5位 GReeeeN"キセキ"
6位 DREAMS COME TRUE"未来予想図Ⅱ"
7位 ポルノグラフィティ"サウダージ"
8位 BUMP OF CHICKEN"天体観測"
9位 ポルノグラフィティ"アゲハ蝶"
10位 尾崎豊"I LOVE YOU"



どれも声に顔が書いてあるような歌声ばかりではないだろうか。

まぁ、GReeeeNとか顔知らんけど。

皆が皆、唯一無二の歌声。だからこそ、生き残ってきたのだ。

それにしても、岡野昭仁を唄うというのは三次会のノリなどでは無謀である。

岡野昭仁の唄は音楽の時間ではない、体育の時間だ。
スポーツなのである。

そもそも唄えないし、3階まで階段で上がっただけで体力が尽きる僕のような人間は、とても気軽に唄えやしない。

何より恐ろしいと思うのが、そこで唄われるのが"サウダージ"と"アゲハ蝶"ということだ。

ミリオンの人気を持つ"サウダージ"と"アゲハ蝶"であるが、果たして「カラオケの定番曲」に成りうるのか?という疑問が、ファンとして湧かないわけにはいけかない。

云うまでもないが、どちらも歴史的な名曲である。
しかし、どちらも「ただ盛り上がる」という次元で語れる曲なのだろうか。

"サウダージ"でいえば、いうまでもなく失恋ソングだ。

そして"アゲハ蝶"は、"アゲハ蝶"だ。

ポルノグラフィティを唄うことは大変だと先に述べたけれど、その上でこの2曲は唄うにはかなり難易度が高い楽曲だ。

リズム感と詰め込まれた歌メロを唄いこなすには素面でも難しい(基本的にカラオケ=飲み会の二次会とか三次会前提なのは、呑んだくれの発想ということにして欲しい)。

歌詞も"アゲハ蝶"など、これだけ聴いてる僕ですらまだ掴みきれてないのだから、よく唄おうと思うと感心してしまう。

これまで歌われてきた曲たちには、様々なドラマもあったことだろう。







「カラオケ」








営業の一ノ宮博之は、失恋真っ只中の営業二課の望月加奈子を更に落ち込ませていた。

長年付き合ってきた恋人。将来さえ考えていたのに、スレ違いからできた溝は徐々に深く、もう戻らないものとなっていた。

会社の飲み会に参加するつもりはなかったが、酒に逃げたくて、一人になりたくなくて気づけば参加していた。呑みながら加奈子は、私は大丈夫と自分に言い聞かせていた。

いつしか気持ちを取り戻し、二次会のカラオケにまで参加していた。

一方、熱唱する一ノ宮も失恋のなかにいた。
意中であった佐伯ゆりえに告白するがフラれていたのだ。

酒に弱い一ノ宮だが、この日は失恋の辛さから飲みすぎてしまった。勢い任せに回らない舌で"サウダージ"を熱唱する一ノ宮。その目からは今にも涙が溢れ出しそうである。

ほとんどの社員が笑って一ノ宮の唄う姿を見るなか、加奈子だけは違った。これは、私の大好きなアーティスト。そして、これは私の大好きな。


諦めて恋心よ 青い期待は私を切り裂くだけ
あの人に伝えて 寂しい大丈夫 寂しい


──大丈夫、なんかじゃない。

いつしか加奈子も泣いていた。

──寂しい。

ただ、それだけが加奈子の心を満たしていた。

アウトロで一ノ宮は声にならない声を上げていた。普段だったら恥ずかしくてフェードアウトして消していた歌詞にもならない感情の爆発。今日はなにかが乗り移ったように

一ノ宮は唄い終わって、そのまま座り込んで力尽きた。寝たのだ。
誰かがポツリと言った

「なんだ、一ノ宮寝ちゃったよ。じゃあ次、望月さん唄おうよ!」
「えー。わたしですか……じゃあ」

「お。なんだ一ノ宮のと同じアーティストじゃん」





目を覚ますと二次会もお開きとなっていた。
そこにいたのは、望月加奈子だけであった。

「みんな、帰っちゃったよ」

「そうか」

そこで一ノ宮は加奈子が一人で残って寝ていた自分の面倒を見てくれていたことに気づいた。

「望月さん……もしかして」

加奈子は何も答えない。

「ありがとう」

一ノ宮は、ただそれだけ言って延長料金の会計を済ませた。

別の部署であっても、望月加奈子の存在を知らないはずがない。美人でテキパキとした仕事で、社内の男性陣にとって加奈子は高嶺の花であった。

しかし、佐伯ゆかりに目が向いていた自分は、今まで彼女を意識したことがなかった。

店を出ると、真夜中を過ごし過ぎた街に包まれた。
街唯一の娯楽施設であるカラオケ屋の眩い明かりから離れ、空を見ると一面の星がそこには広がっていた。まるで飛び散った花火のように。

二人で自然と見上げていた。

さっきまで静かだった加奈子の顔はどこか晴れやかだった。白い息だけが、夜に溶けていく。

ふと見ると、そこには星の中に月が浮かんでいた。人類があそこに行ったなんて信じられないほど、それは遠くに、でも確かに存在している。

「月が、綺麗……」

加奈子がそう言った気がした。
けれど、聞こえなかったフリをする。

「よし!」

加奈子が夜空に叫んだ。

驚いて加奈子を見ると、加奈子はこちらを見てニヤッと笑う。


「呑み足りない! 呑もう!」
「え、もうどこも店開いてないですよ」
「じゃあ、うちに行こう!」


勢いに押され、加奈子についていく。

彼女はずっと唄を口ずさんでいた。

「あーなたにあーえたーそーれだけーでよかったー。せーかいにーひかりーがみちたー」

加奈子の部屋に着いた。
女性の部屋にいきなり入るのは躊躇われたが残った酒で足はフラフラしているし、加奈子もだいぶ酔っているので、そのまま上がる。

「とりあえずビールね」

冷蔵庫からビールを出す加奈子。彼女の足取りもフラフラしている。
台所でガサゴソと何かを漁りだした。部屋を眺めてふと目に入る。

「あ、これって」
それは一枚のCDだった。あぁ、だから。

「一ノ宮!なにもない!」
いきなり加奈子が声を上げる。
「何がですか」
「つまみ」
加奈子は小さくいう。
「仕方ない、ないなら作るか」
ぶつぶつと何かを言いながら、冷凍庫から何かを取り出して、レンジに入れて解凍し始めて言った。

「一ノ宮くん、つまみを作るから手伝って」
「はい」

「望月さん、これなんですか」
「なにって?グッズ
「は?グッズって?」

部屋の片隅から臼を引っ張りだし、加奈子は杵を構えて言った。


「一ノ宮くん、つまみ!餅つこう!

彼女には敵わないな、一ノ宮は窓の外の夜空を眺めた。








何を書いているのだろうか。
とりあえずセイさんに土下座謝罪しなくてはならないレベルで引用しなければならないので、宣伝しておこう。






『パステル家族』みんな読もうね。
ちなみに原作遵守するならば、ゆかりに告白するために近づく男に「望月さんがあなたに気がありそう」と遠ざけていたのがバレて、一ノ宮はグーではなくて杵で殴られてると思う。



※イメージ図
(『パステル家族より』)


これだけ唄われているならば、そこに様々なストーリーがあったことだろう。

単純に盛り上がるということでいえば、ファンとしては"ハネウマライダとか"ミュージック・アワー"の方がよっぽどカラオケ向きのような気がする。"

もちろん、そういうことを置いておいても、そこに理由はある。

それは「みんなが知ってる」という至極日本人的な感覚なのだろう。至極日本人の僕がいうのだから間違いない。

スカパーで毎週土曜とかに音楽チャンネルで「カラオケランキング」とかやっているけれど、毎週やる必要あるのかという気がするほどそうそう変化がない。

そういう「カラオケランキング常連=定番」というスパイラルが続いて、「それならみんな聴いたことある」という思考回路となる。

カラオケで易々と唄える曲じゃないだろうと思いつつも、これだけ長い間愛されるポルノグラフィティの音楽は凄いなと思わされる。

これを書いている時点で、今の高校生にとっては生まれた頃に発売された楽曲たち、だ。

いつか"アポロ"の歌詞のように、ずっとずっと先の世代まで愛されていて欲しい。

いや、きっとそうなることだろう。


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