2018年8月21日火曜日

ポルノグラフィティのサボテンは本当に失恋ソング?歌詞を今一度読みとく








ポルノグラフィティの歌詞で、すっと疑問に思っていたテーマがある。

"サボテン"は失恋ソングなのか?というものだ。

一般的な認識にしても、失恋の曲だという見方が強いだろう。

そもそも以前『自宅にて』か何かで「結婚式で"サボテン"と"サウダージ"を演奏したが、どっちも別れの歌だった」みたいなことを新藤晴一が書いていたような気がする。

それを読んだ時に尚更疑問に思ってしまったのだ。

自分の中で"サボテン"は失恋の歌ではなかったからだ。

この度徹底検証したいと思う。






失恋ソングではない?








まず、僕がなぜ"サボテン"を失恋ソングだと思えないのか。

それは最後の歌詞から想像してしまったことに他ならない。


何処にいるの?こんな雨の中
僕の気持ち見つかった
僕らきっとうまくやれるはず
ほら 薄日も射してきた
小さな花を咲かそう


この歌詞がとてもポジティブなメッセージに聴こえた為だ。

"サボテン"における恋人たち、それは近くにいるからこそその有り難みを忘れてしまった2人だ。

呼びあうように出逢ったはずなのに、いつしか過去のハシャイだ記憶も忘れ、すれ違っていってしまう。

しかし、指に刺さったトゲ、そこから最後のサビで主人公はそれに気づく。

だからこそ最後の歌詞が君の大切さを噛みしめ「もう一度やり直そう」と思い立つ、そんなラストを想像したのだ。

そして、カップリングである"サボテン Sonority"は歌詞が過去形に変わっている。だからこそ「僕らきっとうまくやれたはず」「小さな花を見せたい」という悲しいメッセージとなる。

だから、より取り返しのつかない状況になったのだと。

そう思っていた。







失恋と別れ



しかし、あらためて考えてみよう。そもそも「失恋ソング 」と「別れの歌」というのは違うものではないか。

僕の疑問はそこからもうすでに道を誤っていたではないか。

"サボテン"は失恋の歌ではない。
"サボテン"は別れの歌だ。

そうして見たとき、また曲の世界が違って見えてきた。

"サボテン"の主人公は確かに君の大切さに気づいた。しかし、そのことに気づくのが遅かったのだ。

君は雨の中飛び出していった。

そこで主人公は追いかけることができない。

この時、ふでに2人の未来は決定されてしまったのだ。

だからこそ、どれだけ主人公が嘆いても君は戻ってくることはない。

よくネットでも目にするが、女性がある出来事がキッカケで怒りをぶつけるのは、その出来事だけが原因ではない。それまでの積み重ねが、そのキッカケによって限界を越えて溢れてしまうから、だという話だ。

注ぎすぎてしまったものは、愛情だけではなかった。

そこに少しずつ溜まっていってしまった君の気持ち、その「ささやかなサイン」を見過ごしてきてしまった主人公は、元よりもう戻れない道を歩んでいたのだ。

そうした時に、僕には微かな希望に見えた主人公の想いが、もう決して叶うことのない、手遅れになってしまった願望であるとわかった。

それは、叶うかもしれない微かな希望よりも、遥かに絶望的な終わりなのだ。










サボテンの花




"サボテン"にはいくつかのバージョンがある。インディーズ時代のバージョンとして、2つ"サボテン'99"と"小さな鉢のサボテン"である。

"サボテン99"(99年のバージョンということだろう)にはこんな歌詞がある。


僕ら同じさ 何処にも行けない
身を寄せ合うしかないよ
小さな鉢に生きてる


君が出て行ってしまい、主人公は為す術もないまま、サボテンに語りかける。

雨は君を隠し、サボテンに問い掛けても何も答えてくれない。

鉢の中のサボテンは、追いかけられなかった主人公そのものなのである。

小さな花、それは主人公にとって残された唯一の希望なのである。

サボテンが花を咲かせることで、君がそこにいた確かな証、そして確かな記憶となる。

サボテンは何も答えてくれない。

しかし、いつか花を咲かせてくれるかもしれない、そう信じて。


最後に、実は今まで何故重ねなかったのだろうと思っていたことがある。


ほんの小さな出来事に 愛は傷ついて
君は部屋をとびだした


君が育てたサボテンは 小さな花をつくった
春はもうすぐそこまで 恋は今終わった






そう、チューリップの"サボテンの花"である。

世代とか関係なく、本当に大好きな曲だ。
大袈裟に言えば僕にとっても、歌詞、メロディどれをとっても"理想的"な曲だ。

何故これが繋がらなかったのだろう。

サボテンは、冬の歌

それでも、季節は巡る。

この長い冬が 終るまでに
何かを見つけて 生きよう
何かを信じて 生きてゆこう
この冬が 終るまでに






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