ポルノグラフィティ歌詞解釈シリーズ。
手間だ何だといいながらも、なんだかんだやりだすと楽しい。
今回は伊坂幸太郎作品から抜け出してきたようなシニカルなヒーローの曲。
ラスト オブ ヒーロー/ポルノグラフィティ
ツェッペリン・リスペクト満載のロックナンバー。
ヒーローの存在
この曲は3rdアルバム「雲をも掴む民」に収録されている。
そして、この曲のことを考えなければいけないことは、9・11テロである。
ポルノグラフィティはこのテロが起こる少し前2001年8月にニューヨークでレコーディングをしていたのだ。
そして、そのレコーディングの後にあの悲劇が起きた。
アルバム1曲目の"敵はどこだ?"はテロと後のイラク戦争の影響を受けて書かれた歌詞である。
そして今回取り上げた"ラスト オブ ヒーロー"もその内容を踏襲している。
当時のことを晴一さんが連載してたエッセイ『自宅にて』で「戦争が始まった」と書いてる。
クリント・イーストウッド監督作品の「アメリカン・スナイパー」という映画があったが、あの映画でブラッドリー・クーパー演じる主人公のクリス・カイルはスナイパーとして名を馳せアメリカの英雄となる。
だが戦争の後遺症に悩まされた彼を見ていて、その姿にヒーローを重ねることができただろうか?
彼に憧れを抱けるだろうか。
定義という話になると色々な意見が出るかもしれないけど、ヒーローというものを定義する時に大切なことは「憧れ」を持たせる存在であることだと思う。
個々人の中にそれぞれのヒーローがいたとしても、社会に対してヒーローというものはもはや現代には存在しない。
ヒーローは逃げない、一度も
この曲について今でも覚えてることがある。
それは晴一さんの言葉で、カフェイレで掛ける時だったかな云っていたこと。
「自分で書いた歌詞だけど、『一度だって逃げたか』ってフレーズにハッとさせられた。あぁ、俺は逃げてばっかりだなって」
最近でこそ様々な作品でヒーロー像が描かれている。その中にはあえて弱さを持つヒーローを描いた作品もある。映画で例をあげるとすれば大傑作「キック・アス」や「スーパー!」のようなものだ。
だけど、昔の晴一さんが思い描いたような時代のヒーローは決して逃げなかった。
何があろうと悪に立ち向かっていたのだ。
何回か解釈記事で書いているように、晴一さんは音楽業界との向き合い方への葛藤が窺えることがある。
「壊すべきヒットチャート」に立ち向かうこと、昭仁さんの言葉だが「音楽業界を潰してしまうかもしれないくらいの音楽」を考えてきただろう。
晴一さんにとってロックンロールスターこそヒーローだったのだ。
ヒーローは仮面ライダーやウルトラマンのようなヒーローだけではない。
体制に刃向かい、反逆の狼煙を上げて鬱々とした社会を壊すために音楽を鳴らす。
そんな姿はまさにヒーローではないか。
しかし今、ロックンロールの力はなくなってしまった。
勝負の見えてきた現代は
立ちはだかる壁も探せない
~"プッシュプレイ"
立ちはだかる壁も探せない
~"プッシュプレイ"
ヒーローの不在と同時に世界を買えるロックスターが現れなくなった。
それでもロックンロールスターは歌う、叫ぶ。
もう一度オーヴァードライヴミュージックを掻き鳴らして。
ヒーロー不在の世界でも、確かにそこにヒーローはいる。
僕にはそれがミュージシャンであったらいいなと思う。
ヒーローよ歌え。
僕らもそれに応えよう。
世界をひっくり返せ。
住民税をちょっとだけ気にしながら。
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