全シングルレビューも遂に20枚目に突入した。
近年の作品はリアルタイムで書いているので、それを踏まえると約半分は終わったと言っていいだろう。
これを「ようやく半分かよ」と捉えた方がいるとすれば、これだけは言っておきたい。
至極その通りだ。
というかそもそも更新が二週間ぶりということに驚いた。
さて、今回も粛々と進めていこう。
ポルノ全シングルレビュー 20th「ハネウマライダー」
シングルについて
表題曲”ハネウマライダー”はポカリスエットという比較的大きめなタイアップがついたこともあり、メンバーやスタッフ間で「ヒット曲を創ろう」という意気込みで創られた本作。その狙いが見事に成就し、中期のポルノグラフィティにとってキーとなる重要な楽曲となった。
現役のバンドとして、こうして時代に残る曲を定期的に生み出していくことが大切だと新藤晴一は以前言っていたが、まさにそれを体現する曲となったのである。
世間に知られるヒット曲であり、もう一つポルノグラフィティのライヴにとっても、大きな爆発力を持つ一発となったのが”ハネウマライダー”だ。現在で最も高い頻度で演奏されてきた曲ではないだろうか。なぜなら、グッズのタオルが売れるからである。
結果「タオル売ったんだから回させろ」という、タオルの本来の使い方を忘れている観客からの無言の圧力となった。”ハネウマライダー”をアレンジでやりタオル回しがなくなった時に、”ワンモアタイム”でタオル回しをやろうとしたら不評を買い、もう1曲タオル回しを主とする” Ohhh!!! HANABI”が後に誕生することになる。
但し、それでも”ハネウマライダー”の力は凄まじいものがあり、ライヴのここぞというときには必ず演奏されているし、比較的初期の作品が選ばれることの多い音楽番組の特番でもかなり演奏されてきている。
こうして“ハネウマライダー”は、ポルノグラフィティの歴史を語る上で外せない1曲なのだ。
シングルとしては「ライダー縛り」として、3曲ともタイトルに「ライダー」が付いている。
もう1つ特徴として、3曲全てベースを亀田誠治がつとめている。
そして「"ハネウマライダー”とポカリ」という関係性については、ファンの中には吐き気を催すという人もいることだろう。
当時のキャンペーンとして、ポカリスエットを購入すると付いてくるシールを集めて応募するとプレミアムライヴのチケットが当たったのである。相当な倍率となり2006年の夏、ポルノグラフィティファンの血液の3分の1くらいはポカリスエットになっていたのではないかと思う。アルコール飲料のキャンペーンであったら大変なことになっていた。
僕も一生脱水症状で困らないのではないかというほど飲み、なんとかチケットを確保した。思い出すだけで口がポカリ味になる。
では、曲たちを見ていこう。
1. ハネウマライダー
作詞:新藤晴一、作曲:ak.homma大塚製薬 ポカリスエット CM曲
シンプルながら印象的なギターリフで、ライヴでもこのイントロこそが号令の合図となる。
ロングトーンのギターやシンセサイザーの音色が爽やかで、駆け抜けるような曲の世界観を表している。
ライヴでの演奏頻度が高いことから、新藤晴一の言葉でいう「神セブン」入りを果たした。「神セブン」はそもそも新藤晴一の言葉ではないけど。
ただ、あまりにも鉄板として定番化してしまったことで、メンバーも苦心していくことになる。時にはボサノヴァのアレンジが成されたり(「幕張ロマンスポルノ'11 〜DAYS OF WONDER〜」)、メンバー2人でのアコースティック編成での演奏をしたり「横浜ロマンスポルノ'16 〜THE WAY〜」と、様々なアレンジに挑戦している。
ボサノヴァアレンジは盛り上がりたいファンからは不評だが、僕はわりと好きである。ボサノヴァアレンジは35thシングル「2012Spark」のカップリングとして収録されているので、興味がある人は聴いてみて欲しい。
同時に、新藤晴一のギターソロも定期的に中身が変わっている。
歌詞のモチーフとしてバイクが登場するが、それは作詞した新藤晴一がバイクの免許取得に通っていたためである。
基本的にフィクションで書くことが多い新藤晴一だが、惜しげもなく当時の気持ちがそのまま書かれている。
それでいながらも冒頭の「新たな旅立ち」は、過去にとらわれず新たな挑戦をしていくポルノグラフィティの姿そのものに重なる。
穿った見方をすれば、登場するバイクは本人たちそのもののメタファであるかのようだ。
歳を重ね様々な経験を経てきた自分たちでも、何度でも甦り再び走り出すことができる、そんな決意ではないだろうか。
そう考えると時代に食らいつくために「ヒット曲が必要」という意志のもと制作された”ハネウマライダー”の歌詞と呼応する部分が大きくなるのではないだろうか。
2. ジューンブライダー
作詞・作曲:岡野昭仁本当に、タイトルだけ「ライダー縛り」に寄せているが、中身はしっかりと結婚式に似合う曲である。
友人が結婚式のエンドロールにこれを選曲し、うっかり涙してしまった。
もちろん友人が結婚したことへの感動ではなく、岡野昭仁の歌声はなんて素晴らしいんだと再認識したためである。式2月だったし…
岡野昭仁らしい、飾らない真っ直ぐな心が唄われていて、ヴォーカリストだからこそより心に響く言葉になっている。
この頃の歌声でそこまで沁みるので、今の岡野昭仁が唄ったらライヴが披露宴会場になるのではないだろうか。
そういえば「ジューンブライド」の由来ってなんとなくしかイメージないなと思って調べると、いくつか説があるようだ。
ひとつは結婚や出産を司る女神「Juno(ジュノ)」が守護する月が6月(June)だからという説。
もしくは農作業のため3~5月は結婚が禁じられていて、6月に解禁されることから、みんな一斉に結婚してめでたいという説もあるようだ。
あとはヨーロッパで6月が気候的にも安定しているからという説などもあるようだ。まさにこれを書いている6月の今、日本は夏日を記録し、物憂げな6月の雨に打たれて梅雨入りを果たした。
この説であるならば、現代日本の気候としては全くそぐわないような気がする。ちなみに、ある調べでは12の月のうち6月の件数は8位だったという。ちなみにその調査では3月がダントツで件数が多かったらしい。
ところでヨーロッパの風景で春になるとみんなでお祝いみたいな映像を思い浮かべたときに、どうしても「ミッドサマー」の光景しか浮かばないのでなんとかして欲しい。
3. タネウマライダー
作詞:新藤晴一、作曲:ak.homma「ライダー縛り」という名のただのダジャレが発端となり、タイトル先行で書かれた歌詞。
結果的に13年後のギタリストの眉をひそませるような楽曲に仕上がった。書いたのはそのギタリストなので全て自分の蒔いた種である。
とてもカップリング的な、カップリングでしかありえない曲。
本人も自負するように、中身はあってない、種だけのピーマンのような曲なので、考察せず聴けるというのは考察脳の人間にとっては案外いいものである。あと馴れすぎたのもあるが、もはやこれ以外の歌詞になったら、違和感しかないだろう。
また、こちらも本人が自負するように歌詞を差し置けば曲としてはカッコイイ仕上がりになっている。初めてのスタジアムライヴのオープニングに選ばれるだけある。
ちなみに、最後の歌詞のフレーズ。
WOW WOW YEAH YEAH これも愛
WOW WOW YEAH YEAH それも愛
WOW WOW YEAH YEAH たぶん愛
は1979年に出た松坂慶子の”愛の水中花”が元ネタである。
他にも随分と奔放な歌詞が散りばめられている。
秘書室のHall caught chance.
受付に立つ I call!
You meet cool me Kathy and Jessie.
隣の席 Would main
では英語部分が空耳で女の子の名前になるけど、Kathy and Jessieという直球が惜しげもなく入っていて、そりゃコイツは全社員メール使ってしまうわと思う。空耳だとしても冷静に考えて「You meet cool me」ってフレーズ、どんだけナルシズムの極みだよ。
それもそのはずで、種馬つまり種牡馬(しゅぼば)は基本的に血筋で判断と期待をされる。
しかしながら、その判断には生まれてから4~5年掛かりようやく競走馬として優秀か判断されるのである。優秀な馬の子だからといって、優秀になるは限らない。
さて、では我らがタネウマライダーを見てみよう。
If there was no woman in the world.
Men would be more honest than a sheep.
こんなとこで一人にしないで 一人はやだな
間違いなく社長の使えないドラ息子である。
そう捉えれば。なぜこの男が無駄にこんなにモテるのか判るだろう。
同族会社でコヤツがトップになったら、間違いなく倒産だろう、
よくわからないけど”ジューンブライダー”に土下座して謝れ。
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