2016年11月7日月曜日

【映画】「何者」あらすじ&ネタバレ感想 (朝井リョウ原作)






朝井リョウ原作、佐藤健主演、三浦大輔監督作品「何者」を見てきた。

自分にとって「何者」は不思議なタイミングで接した作品。自分は原作小説は映画化決定の数日前に購入して読んだ。
読み終わって数日後に朝のエンタメ情報で「映画化決定」のニュースが流れて驚いたのを覚えてる。

そして今年10月に映画が公開されたんだけど、最初は見る予定じゃなかった。
原作小説はとても面白かったけど、自分にはなかなか気軽に見れる作品じゃなかったからだ。だけど宇多丸さんのムービーウォッチメン評を聞いて、やっぱり見ておくかとなった。

その辺を含めて書いていきたいと思う。









あらすじ







就活の情報交換のために一つの部屋に集まった、5人の22歳。かつて演劇サークルで脚本を書いていた、人を分析するのが得意な拓人(佐藤健)。天真爛漫で何も考えていないようで、着実に内定に近づいていく光太郎(菅田将暉)。光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せ続ける、実直な性格の瑞月(有村架純)。人一倍「意識高い系」でありながら、結果が出ず不安を募らせていく理香(二階堂ふみ)。社会の決めたルールには乗らないと宣言しながらも、焦りを隠せない隆良(岡田将生)。海外ボランティアの経験、サークル活動、手作り名刺、SNS、業界の人脈…。様々なツールを駆使して戦っていく就活生たち。企業に入れば「何者」かになれるのか、自分は「何者」になりたいのか―。



感想



97分という決して長くはない上映時間、だけど見終わると「ズドーン」としたものが心に落とされる。
詳しくは後述。


就職活動の話。


だけど実際、就職活動は舞台であってら描かれるのは普遍的な「人間」だということ。
そこで描かれる「人間」というのはたとえどんな世界であろうと変わらないもの。この作品でよく引き合いに出されている「桐島、部活やめるってよ」。この作品(傑作!)も学校という限られた世界だけど、そこで描かれるのはどの世界でも変わらない人間性。


端的に言えば「あーこういう人いるわー」という気持ちになるということ。
そして「自分にもあのキャラのこういうとこあるわぁ」という共感性。


先日宇多丸さんのムービーウォッチメンの放課後ポッドキャストで語られていたなかで「桐島~」の話題が出た。その中で「桐島、部活やめるってよ」の映画を見て「うーん。よく分からなかった」と言える人が実は一番幸せなこと、という内容を言ってた。

これがかなり本質を捉えた言葉だなぁと思ってて、僕はこの「何者」もそれと同じ、もっと言えばこの映画の誰にも共感できない人がいたら、その人はこの作品を楽しめないだろうし、それこそが幸せなことと思う。

この映画は万人なら万人が絶賛するタイプではない。だけど、響く人にはとことん響きすぎてしまう映画だ。

それはこの映画が「認められること」を描いた映画だからだ。



認められること



映画の中で菅田将暉演じる光太郎の台詞がある「『内定』って不思議だよなぁ。内定出た途端に自分が全部肯定されたような気持ちになる。」
これは裏を返せば「内定が出ないと自分という存在が全て否定された気持ちになる」ということ。

主人公の拓人はその承認欲求がとても強い人間。それがかつては演劇で満たされていたわけですよね。それが瑞月(有村架純)の一言であっても。この瑞月の拓人へ「良かったよ」という言葉も中盤でのものと、最後に投げかけられるものとでは同じような台詞なのに全く違って聞こえる。


理香(二階堂ふみ)も同じように認められたい欲求が内定が出ないことで否定され続けてしまう。その捌け口の方向が拓人と違うだけ。


ちょっと気になったのが拓人が就活2年目ということが分かる場面。
映画版では隆良(岡田将生)がさらっと告げてしまうけど、原作では理香が拓人に対しての「トドメの一撃」としてこの事を告げる。

僕は個人的にはあの場で理香から言われるこそあの言葉が重いものになると思ってる。それは理香にとって拓人のようになりたくないという気持ちが根底にあるから。どれだけ肩書きを並べても上手くいかない就職活動に、2年目でも上手くやれない拓人の姿を見てるからこそ、あそこで理香は拓人にこの台詞を云わずにいられなかったんじゃないかなと思うのです。

ここに関しては隆良に変更したことは失敗じゃないかなぁと。そもそも原作ではあるように隆良も裏アカで結構やらかしてるしね。





ここからちょっと個人的なこと。


僕はリーマンショックの影響をもろに受けた世代なので、就職活動には苦労した。今の会社に入れはしたものの、スクリーンの中の就職活動の光景が懐かしくもあり、もう味わいたくないものでもある。


そして、もう1つ。

僕もこんなブログやってるくらいなので、それなりの承認欲求がないと言えば嘘になる。
もっと言えば、拓人のような裏アカこそないけど、そういうモノの見方をしていることだってある。それをまざまざと見せつけられて、心を抉られるような気持ちになるのだ。


僕にとってこの映画をホラーとして見たらどんな作品よりエグい


変に意固地になったり変にプライドが高くなる瞬間がある自分の大嫌いな部分、それと向き合わなきゃいけなるからだ。
だからこそ僕はあらためて映画としてまでこの作品に触れることが怖かった

僕はホラーもそれなりに見るけど、ホラーというのは「自分がされたら嫌なことを劇中あるいは家という安全な場所から見る」ということを前提にしているから楽しめるもの。
だからどれだけ血みどろの作品だろうと、それはあくまでスクリーンの中の話だから、怖さよりも面白いかどうかということを優先できるわけだ。

しかし、この何者は拓人と同時に「心当たりのある人」には自分自身にも理香の言葉が突き刺さる。
13日の金曜日見てたらエンドロールでいきなり後ろにジェイソンがいたような恐怖。





その他の感想


色々書きたいことあるけど収拾つかなくなりそうなので箇条書きで。

  • 拓人と理香や劇中の隆良とギンジのように、隆良と瑞月、拓人と光太郎、拓人と隆良など色々なことが対比
  • 出てくるだけで画面が安定する山田孝之
  • いくら先輩でも達観しすぎだ山田孝之
  • 配役どれも素晴らしかった
  • 事前に「ファッションには興味ないけど、とりあえずこれを着ておけばバカにされないだろうということからのFRED PERRY」というのを聞いてたせいでFRED PERRY着てる佐藤健が映るだけで笑える(パンフレット、ポッドキャスト参照)
  • ラストの面接シーンは原作の方が好きかな
  • でもラストカットのビルから出るカットは映画ならではで素晴らしかった
  • そもそもの就職活動の在り方さえ考えさせられる





あと、さりげないシーンなんだけど、最初に光太郎の引退ライブ拓人が見てるシーン。拓人は二階からステージを見下ろしているんだよね。
これだけでも拓人の思っていることや物事を達観して見ようとしてる人間性がとても上手く出てると思う。


部屋の小道具とか音楽なんかの使い方、最後の拓人の回想を演劇の舞台に見立てた演出とか本当に上手い部分がたくさんある作品。
だけど、僕は決して気楽な気持ちではこの映画を見返すことは出来ないだろうな。


少なくとも僕は拓人の舞台を見た光太郎のように「なんかよく分からなかった~」と一蹴できるような人生を歩みたかった。


個人的には好きな作品だし面白いと思うんだけど、決して人に「オススメ!」と言えない作品だなと思う。この作品は面白いけど、どこがどう面白いかって説明できない。
「シン・ゴジラ」とかは「御託はいいから見とけバカ野郎」と言えるんだけどね。

でも、終わった時は映画として面白いと思ったし、原作も読み返したいと思った。だけど、可能ならこれを気楽に見られる人生を歩みたかった。






余談



自分が面接官だったら

俺「まずはうちの会社を志望した動機を」
有村架純「え~?なんとなく!」



「採用!」


ムービーウォッチメンの映画評および放課後Podcastも是非どうぞ。








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