2023年12月29日金曜日

年間Myベスト2023 TOP10「映画編」







ここ数年さぼっていたので、年間の振り返りを兼ねて2023年の年間ベスト企画を久しぶりに。

今回は映画編である。
といっても映画しかやらないけど(音楽は過去作の率が高すぎて無理だった)。

今年は本当に良い映画にたくさん出会えたので、記録として残しておきたい

ちなみにフィンチャーの「ザ・キラー」も入れたかったが、Netflix配信作品なので、一応除外した。ただ、最高だった。

※ギリギリで観た作品をねじ込まなければならないため、3位が2作品に、結果TOP11になっちゃった。てへ。


2023年12月5日火曜日

【ジャンケットバンク考察】真経津 晨って何者?








──真経津晨とは何者なのか?


週刊ヤングジャンプおよびジャンプ+で連載中の『ジャンケットバンク』における最大の謎。

それは主人公である真経津晨の存在である。


「最高の遊び相手が見つかった時に 僕の人生は終わるんだ」


そんなことを公言し、過去が一切明かされないタンク型ギャンブラーの真経津辰について、3週休載の悲しみの間に考えてみたい。


この記事は基本的に13巻までのネタバレを含み、途中からコミック未収録の130話までのネタバレを含みますので、単行本派の方はご注意ください。
※触れるところには注意書きを入れておきます


2023年10月14日土曜日

【感想】Mr.Children 21thアルバム「miss you」





Mr.Childrenの21枚目となるアルバム「miss you」がリリースされた。

全曲ノンタイアップ新録曲という挑戦的なアルバムとなった。

アルバムを引っ提げたホールツアーはすでに始まっている。

ホールツアーって規模に、当初「お前ら自分たちの人気履き違えてんのか?」と思っていたが、アルバムを聴けば納得。なるほど、たしかにこれはアリーナやドームで鳴らすアルバムではない。

リリースされてから凄まじい賛否が飛び交った今作について、アルバム全体を通して感じた僕なりの記録を残したいと思う。

先に結論を書いておくと、「miss you」はMr.Childrenが残した最初で最後のアート作品だと思う。



ノン・プロモーション




まずはリリースの手法について。

先行配信された曲はあれど、完全新録の13曲か収録されている。

アルバムによってはシングルが溜まってきたのでリリースするという手法もある。
おい、星野源いつアルバム出すんだよ。

シングルというものはタイアップとかリリース時の状況とかで個性がより強くなりがちなため、アルバムの流れでは浮くことが度々ある。
「HOME」の"フェイク"を思い浮かべるといい(まぁ今回もシングル関係なく浮いてる曲がなくはないが)。

何が言いたいのかというと、シングルがない=今伝えたい曲を詰め込んでるってことだ。

ある種のコンセプトアルバムとさえ言えるくらい、テーマがまとまっている。

僕はそもそもそういうアルバムに弱いので、このアルバムを考えずにいられないのは、そういう面があると思う。

これを書いている今時点でまだインタビューなども出てこないところを見ると、本当にこのアルバムだけでメッセージを伝え切ったものだと考えている。

※FC会報やツアーで語っているかもしれないが、今の自分に知る由がないので、あくまで一般的な目線として


ということで、ここからアルバムテーマに踏み込んでいきたいと思います。



目的・手段・目標




「目的と手段と目標のバランス」


その一致が僕にとって、音楽を聴く悦びに大きな影響を与えている。

ということを念頭においていただけると、このトチ狂った人間の頭を多少理解いただけると思う。


①目的

明確に死をテーマを据えていた前作「SOUNDTRACKS」から、また一段強く死=終わりというものをより現実的に、生々しく残酷に見つめているように感じる。

折しも前作のラストトラック"memories"は、最後にレコーディングされた、桜井和寿以外のバンドメンバーは参加していない曲であった。

それから"永遠"と"生きろ"を経てはいるが、そのアルバムから「miss you」に繋がるのは、自分としては意外だった。

なぜかというと、「SOUNDTRACKS」が内向きなアルバムだったので、次作はもっとポップで「重力と呼吸」寄りになるんじゃないかと思ってたわけですよ。

それが、もっと内省的なもん出してきた。

「この人たちレディオヘッドかな?」って思った。
(レディオヘッドが2016年にリリースした「A Moon Shaped Pool」という異様にアンビエントでバンド感ないアルバムにも通ずる)

手段の話にも通ずるけど、何故あえてバンドサウンドを抑えているかというと、それが孤独の強調に繋がっているからじゃないかと思う。

年齢を重ねるほど人は失うものが増えていき、誰もが最後には一人で死ぬ。

このアルバムにはそんな境地さえ感じさせられる。


②手段

このアルバムは桜井和寿のプライベートスタジオで、メンバー4人を中心にして創られたという。

それでなお、これほどバンド感を薄れさせているのは、音楽性としてのバンドサウンドよりも、メッセージに賛同したからじゃないかなと思う。

正直「このアルバムツアーってメンバーやることなくね?」と思うくらいでもあるんだけど、内容は見ていないので、実際のツアーがどうなっているか、今の僕には判らない。

1つのトピックとして、こうした宅録的なミニマルな構成は、とても現代的といえる。

では何故その手法かというと、もちろん桜井和寿を中心としたモードもあるかもしれないけど、とにかく「自分たちの現在(いま)」を残しておきたかったからじゃないかなと思う。

移り変わりの早すぎる音楽界ではちょっとギリギリのタイミングではあるんだけど、あえて現代的なアレンジとモードを取り入れることで、2023年という今に足跡をつける、というニュアンスも含まれてるんじゃないだろうか。

先にも書いたけど、このアルバムの曲たちを描くのに、僕はこのミニマルな宅録的なアレンジは正しいと思う。

このメッセージで、このテーマでビッグバンドなアレンジだったら、逆に面食らったと思う。

そこに対してこのアレンジを持ってくることに確信があって出してくるからこそ、僕はMr.Childrenというバンドが信頼できるし、心底怖いなと思った。


③目標

ここでいう目標というのは、ターゲットと言い換えてもいいかもしれない。

では、このアルバムでうたわれる「you」とは誰を示しているだろうか。

僕は"Fifty's map ~おとなの地図"で歌われる、
「孤独の意味を知った友」
「同じ迷路で彷徨う友」
のことだと思う。

このアルバムには常に「孤独」が纏わりついていて。

人と人は繋がるほど孤独の谷も深くなる。

なんとなくそんなようなイメージが浮かんで、その解釈が一致していくような印象である。


アートは大衆の理解を介さない。

アートとデザインを決定的に分けるのはクリエイターのエゴだと思っていて。
Mr.Childrenというバンドがこのタイミングでエゴを選んだことが、僕は嬉しい。

伝えたい想いやメロディがあって、それをどう届けるかにミュージシャンの苦悩と悦びが詰まっている。

だから僕は「◯◯らしさ」みたいなものはどうでもよくて、エゴが出れば出るほど喜ぶ性癖(たいしつ)である。

求められているものよりも、自分たちのやりたいことを選ぶミュージシャンが好きなのだ。
(そのわりにクリス・マーティン(Coldplay)はナポレオンジャケット脱いで、狭い部屋で"Yellow"歌ってろと言ってた自分が言うのもどうかと思う)

桜井和寿なら、Mr.Childrenならもっと大衆に寄せたアレンジの取っ付きやすいアルバムにもできたとも思う。

それでもあえて、伝わる人に伝わるように、自分たちの今の正解を信じてこのアルバムを創り上げたことは、ミュージシャンとしてのプライドを賭けた奢りだ。

そこには間違いなく「このメッセージが届く人がいる」という意図が込められていて。

だとすると、僕が心底失望した「重力と呼吸」リリース時の桜井和寿の言葉。


「リスナーの想像力をあまり信用していないっていうか、もうきっとここまでのことを深く掘り下げて書いても理解しないだろうな、ただ通り過ぎていかれるだろうなっていうのがあるんです。だから、意図的に淡泊に言葉を書いているところはあります」

という意識の真逆にあるもので、そうであるなら、僕はやはり桜井和寿という人をまだ全幅の信頼を置いて身を委ねることができる。

そうであるから、僕はまだMr.Childrenを信じていられる。


ちょっとゴチャゴチャしてしまったけど、改めて結論を書くと。

このテーマにおいてMr.Childrenは最適なアレンジを選んでいるし、そこにそつが無く仕込んだ毒と救いのバランスが異常値である。

たしかにこれは万人に薦められないし、これがミスチルデビューってなるアルバムではないと思う。

けれど、半世紀へのエントランスに歩み入れた
Mr.Childrenの今に、間違いなく必要な一歩になっていると思う。

Mr.Childrenなんてふんぞり返っていても三世くらい豪遊できるくらい売れてるんだから、本来こんな挑戦もいらないはずなんですよ。

そこにこんなアートを持ってくるから、そんなWonderが、僕の胸を掻き立ててくるのです。


以下は全曲というわけにはいかなかったけど、いくつか印象的な歌詞を抜粋したい。







「miss you」の言葉たち




"I miss you"
 
何が悲しくって
こんなん繰り返してる?
誰に聴いて欲しくって
こんな歌 歌ってる?
それが僕らしくて
殺したいくらい嫌いです


急なですます調オチに本気で怖いと思った。
完全に不意を刺された。「優しい驚き」ってそういうことじゃないだろ。

穿った見方をすると、「miss you」というアルバムタイトルに対して、あえて"I miss you"と表題曲を一致させなかった点。
これって「僕(I)を殺す=Iの消失」なんじゃないかと思って。



"青いリンゴ"

傷んだリンゴをゴミ箱に放り投げて
出掛けにコーヒーをすすりながら
少しだけ心が傷んだ

青さという青春のようなテーマの冒頭にこれをもってくる。

この微細な心の機微を「傷んだ」をリフレインさせて挟んでるところとか、凄い怖くて心が痛みかけた。



"LOST"

尖った分 その痛みが
走った分 その衝撃が
自分に返って来るから
星でも眺めて暮らしていたい

アルバムの中では比較的キャッチーな部類の曲かなと思う。

それでもなお、「こんな自分を見たくない」とか、想いが伝わらないことの絶望が歌われている。



"アート=神の見えざる手 "

安直にセックスを匂わせて
倫理 道徳に波風を立てて
普遍的なものを嘲笑って
僕のアートは完成に近付く

アルバムの中では最も異色の曲ではあるんだけど、自分は正直これは最も分かりやすく表面化させている曲だとも捉えている。ちょっと捻くれすぎた考えかもしれないが。

アルバムを通して良いアクセントと刺激にもなっているが、ちょっとこのわざとらしさを感じるほど直接的な攻撃性が、逆に冷静にさせてくれる。
本当に怖いのは"miss you"みたいに油断させといて最後に刺してくるやつ。

すごくサービス的に「このアルバムはアートです」「こういうテーマを内包してます」と宣言してくれている曲。

それでいて、この曲が騒がれるほど「刺激を求める」社会性の揶揄が強調されるのが、本当に意地悪で最高だなと思う。

このバランス感覚で出せるのは桜井和寿か新藤晴一しかいないと思っている。



"Party is over"

多分そうだ初めから
君が書いたシナリオの通り
キャリーオーバーできず
未来へ何も残せやしない
心の中まで空っぽさ

この辺りの展開で明確に終わりが歌われる。

ただ、未来についても触れていても、ここではやはりネガティブなままである。

この曲は「バーボンソーダ」「Party is over」「多分そうだ」「キャリーオーバー」と韻を踏みまくっていて、そういうそつがなさに"炎"が燻っているんじゃないかと思う。



"We have no time"

だけどスキルは
尚も健在
まだまだいけんじゃない?
とか思っちゃう

全体的にIとyouで歌われてきたアルバムで、ここでWeに変化する。
どう考えてもやはりこのWeはMr.Childrenそのものとしか思えないわけで。

"Party is over"に続いた明確な終わり。
けれど、ここでは諦めかけていた未来に「まだまだ行けんじゃない?」という匂わせを醸し出す。

まさに先の燻っていた炎が再燃するように、ただ消えていくだけでないというファイティングスタイルも垣間見える。



"おはよう"

賞味期限ギリギリの
チーズも入ってるはずだよ
ただそれだけの食卓
幸せすぎる食卓

全体的には毒を羽二重餅で包んだアルバムだと思っているんだけど、それが最後に優しすぎる解毒剤をくれて終わる。

とても精細な日常描写が、どこか懐かしさも感じさせる(なんとなく"Mirror"が浮かぶ)。

このテーマからしたらもっと突き放した最期を見せてもいいくらいなのに、なんでこんな優しいの。これDVの心理じゃね?

嘆きまくったアルバムの最後に今日という未来をそっと差し出してくる。

そつがなさすぎる。

怖い、本当に怖い。

チーズだけの食卓=削ぎ落とした音と言葉?
チーズ≒地図?

とか、実は……っていうものもありそうだけど、今は素直に受け取っておきたい。


ちょっとまとまりがなくて申し訳ない。
それくらい、リリースから10日以上経った今も、これくらいまとまらないのだ。

ひとつの確信としてこの今作はアート作品だと思っていて、今後これからこれほど振り切ったアルバムはないんじゃないかと思い「最初で最後のアート作品」と評した。


今後ツアーの映像作品とかで、またアルバムの片鱗が見えるかもしれないので、それまでこの怪作を味わうこととしよう。

マジでこのアルバムで「失望した」とか言ってる人は、関東圏なら僕にツアーのチケットを譲って欲しい。


Mr.Childrenアルバム「重力と呼吸」 が、物足りねぇ

【感想】Mr.Children「Tour 2018-19 重力と呼吸」Blu-rayレビュー

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2023年9月28日木曜日

アゲハ蝶の歴代ライヴアレンジを総括する








先日THE FIRST TAKEで"アゲハ蝶"が演奏され、瞬く間に100万再生を突破した。

それを記念してYouTubeで過去にライヴで披露した"アゲハ蝶"が5曲厳選され2時間限定でオンエアされた。

僕は都合で見られなかったんだけど、いい機会なので自分なりに今までの"アゲハ蝶"のアレンジを振り返りたい。

基本映像化されている作品が中心だけど、一部自分で書いておきたいものは映像化されていなくても取り上げることとする。

一応時系列でいきます。


2023年9月11日月曜日

【カルトクイズ】第1回「新藤晴一はどっち?」






新藤晴一という男がいる。

この男はポルノグラフィティのギタリストであり。ポルノグラフィティの代表曲の歌詞を手掛けている。

他にも多くのミュージシャンへ歌詞を提供したり、他にも小説を出版していたり、最近はミュージカルのプロデュースも手掛けている。

僕自身、記事を書くごとに「まさに新藤晴一の歌詞」みたいなことを書いているけど、改めてそこに向き合ってみようではないか。

元々「提供曲の歌詞を色々紹介したい」という記事にしようとしたんだけど、それだけだと面白くないので、クイズ形式で紹介したい。

我こそは新藤晴一フリークという方はぜひ挑戦してほしい。


2023年9月9日土曜日

【ライヴレポ】ポルノグラフィティTikTokライヴ @嚴島神社








ポルノグラフィティが24周年を迎えた2023年9月8日。

公式があまりに25周年を意識しすぎて24周年という言葉が全く出ないけど、24周年である。

TikTokにて嚴島神社でのアコースティク形式のライヴ配信を行った。
※ライヴ自体は録画

無料ということはあるけど、こっちはもうオジさんなんだからあんまりキラキラしたフィールドに引き摺り出さないでほしい。

30分という短い時間でありながら、多くの余韻を残してくれたライヴだったので、一つの記録として残しておく。

ていうか、これをアーカイブに残さないの人類にとって損失になりません?



嚴島神社




まずライヴ会場となった嚴島神社について。
……ライヴ会場って称していい場所ではないけど。

今回のライヴで大事な知識なのでコピペラッシュだけど読んでほしい。

1400年以上前の推古天皇時代に創建されたと伝えられていて、1996年に世界遺産に登録されている。

こうして海に面して潮の満ち引きの影響がある場所にあるのって、昔から不思議に思っていてこの機に調べたら、宮島(通称=厳島)そのものを御神体として捉えていたことで、土地や木を削ることで御神体を傷つけないようにという意図があったという。

海上に浮かぶように建つ社や鳥居にはそのような意味があったのだ。

祀っているのは「宗像三女神(むなかたさんじょしん)」という3柱の姉妹神。

市杵島姫命(いちきしまひめのみこと) 商売繁盛、芸能、金運、勝負、豊漁、交通安全、五穀豊穣、海の神
田心姫命(たごりひめのみこと):結び、夫婦円満、子宝
湍津姫命(たぎつひめのみこと):航海安全,交通安全の神


特に市杵島姫命は弁財天様を習合しているんだって。初めて知った。


引用:月刊モーニングtwo聖☆おにいさん』より



なので、広島という意味合いはもとより、今回の「奉納」という趣旨にとても合ってるんだよね。

ポルノグラフィティが周年の節目に選んだのは、そんな場所なのだ。



ライヴレポ




では本題のライヴレポに入っていこう。

まずはセットリスト。


1. アポロ
2. ハネウマライダー
3. ギフト
4. サウダージ
5. アビが鳴く


以上、全5曲。

ライヴはアコースティックと明言されていたが、サポートメンバー4人を含めたバンド編成であった。

サポートメンバーは以下の通り。


tasuku(ギター)
高間有一(ベース)
皆川真人(キーボード )
田中駿汰(ドラム)

特に高間有一は「しまなみロマンスポルノ’18」以来ぶり。
場所が神社ということもあってハットのイメージがある皆川真人や高間有一もちゃんと脱帽していたので、ちょっと新鮮だった。


バンド編成といってもサポートメンバーもアコギとアコベだったり、ドラムも時にブラシを使ったりしたアコースティック編成。


“アポロ”

嚴島神社の鳥居の空撮から"アポロ"の歌い出しで、もうチケット代の元をとった。
いや、これ無料ライヴだった。おい、こんなもん見せつけてんだから金払わせろよ。

うまく言葉にできないけどアコースティック編成なこともあって、いつもより一層、一つひとつの音が丁寧に紡がれているような印象を受ける。


アコースティックな演奏ってリラックスしたムードだったりするんだけど、今回は他で見てきたようなアコースティックライヴとまた違う印象を受ける。

それもそのはずで、舞台にもバックにも嚴島神社が映っているのだ。

普段であれば視聴者であるはずの僕らに向けて演奏しているんだけど、今回はもっと大きな存在(もの)に向かって音を奏でているように見える(実際、正面には赤い大鳥居と向かい合っていた)。

信仰とかそういうものを超えて、もっと普遍的な祈りを捧げるように。

“アポロ"は人類の技術の進歩と普遍的な愛を求めることを歌っている。
どれだけ時代が変わっても平和を求める心が変わらないように。



“ハネウマライダー”

アコースティックだからということではなく、頭の中で「=タオル回す」ってことが完全に抜け落ちていた。

それは悪い意味ではなくて、それくらい演奏に引き込まれていた。

普段のライヴだと前へ前へって感じでグイグイと容赦なく引っ張っていってくれる曲だけど、今回の演奏の印象は演奏の間の余韻でふわっと導かれて、気付いたらとんでもないところに辿り着いてしまったかのよう。人生をかけた飴と鞭プレイすぎる。

これ演奏している時、すごく良い風が吹いていただろうな。

あと確かギターソロが最近のライヴでやっているようなスタイルを踏襲していた(はず)。


MC
昭仁:今回はこうして嚴島神社で「奉納演奏」をしております。
晴一:長いことやらしてもらっているということを
昭仁:そんな感謝を込めまして。普段なかなかこんな場所で演奏できることはないので、身が引き締まる思いです。
ここには色んな願いを持ってくる方が集まっていると思います。そんな人たちのちょっとだけ背中を押せるような曲を届けたいと思います。





“ギフト"






もう情緒グチャグチャですが?


兎にも角にも直近のROCK IN JAPAN FES '23で喰らったのに、返刀でまだ切ります?

とりあえずハイボール飲みながら見てたんですけど、口から入れた水分が全部目から出るんすよ。

いや、ちょくちょくライヴでやってくれるのは嬉しいんだけど、こうしてフェスとか特別な場所でのライヴでまで選ぶって、もうなんか僕をピンポイントに刺しに来てるとしか思えないんですよ。思い上がりであればその方がいいわ。


それはさておき、これだけ大切なポイントで演奏されてきた曲ということは、メンバーにとっても特別な曲なのかもしれない。
今度もうちょっと「次、刺すから」とか予告してほしい。

新藤晴一メインの間奏のリフを、12〜15フレット辺りの結構高めの音で弾いていたのが印象的だった(確かサビでもちょっと高めのフレーズ弾いてた)



“サウダージ"
最初のガットギターの「ジャラーン」で身体がもう”サウダージ”だと判るようになっていて、なるほどこれがパブロフの犬かと思わず悟ってしまった。

全体的にはTHE FIRST TAKEとか、それを受けて「続・ポルノグラフィティ」で演奏されたガットギターとアコーディオンメインのアレンジを踏襲してるんだけど、そのどちらとも違う印象を受けた。

特に2番のAメロの最初が歌と高間有一のアコベだけになって、それがすごくハッとするくらい良いアレンジだった(優劣の”良い"ではない)。

こうしてさりげないアレンジの違いで、こんなにも印象が変わるなんて音楽って本当に面白いと思う。いや、そういうアレンジがポンポン出てくるこの人たちがおかしいんだけどさ。


昭仁:ここまで4曲を奉納してきたんですけど、次の曲、この曲をここで演奏する意味が色濃くなるんじゃないかと。”アビが鳴く"
晴一:広島で今年サミットがあって。世界の首脳が広島に集まることの意味があると思って、それの応援ソングとして書いたんですけど。
平和とかそういうものを歌詞にするのは簡単じゃなくて、言葉にしづらいものだから広島の鳥のアビとか、この厳島神社とか、こういう悠久の時間が流れるもののイメージを借りて書きました。
昭仁:そうじゃね。平和を願う気持ちって、皆さんお持ちだと思いますので、その気持ちがずっと続けばという願いを込めて創った曲です。
ここで演奏するということで、震えるような気持ちで演奏します。



“アビが鳴く"

見ている間。本当に何もできずただ画面を見つめていた。
最後の音が鳴り止む、その時まで。

場所、目的、手段が完璧に一致しすぎている。

本当にこの時のために"アビが鳴く"は生まれたんじゃないかって思えるくらい。

演奏も歌もとても良くて、特にさりげないけどサビ入前の「ナナナーナ」ってコーラスをギターで弾いてるのとか、すごく良かった。

これだけ完璧なまでにシチュエーションがマッチしてるのに、「しまなみロマンスポルノ」のライヴ・ビューイングの"愛が呼ぶほうへ"とか、因島ライヴの小学生たちの前でやった"愛が呼ぶほうへ"といい、何故映像として記録を残さない?

Why?

いや、今回は特に本当に思っていて。

僕らはまた今日を記憶に変えていけるかもしれないけど、これを記憶だけに留めてしまうのは、人類にとって損失になると思う。


今年、8月6日ROCK IN JAPAN FES ‘23でも演奏された。
改めて、その時の岡野昭仁のMCを引用する。


今日、8月6日は僕らにとって大きな意味がある日です。わしらは広島出身なんだけど、今日は世界で初めて、原子力爆弾が落とされた日です。
政治的なこととか世界情勢がこととか、難しいことを言いたいんじゃありません。
たとえばね、ここにいる一人一人が平和であると思います。その身近な人たち、旦那さんとか嫁さんとか子どもでもいい、そんな身近な人たちを傷つけたくない。それが平和の根本にあるものだと思います。
だから、次の曲でその気持ちを歌わせてください。この気持ちが、この小さな場所から広がっていくようにという気持ちを込めて、次の曲を聴いてもらおうと思います。

この時にも直前に”ギフト”が演奏された。

こうなるともはや意図的だとしか思えなくて。

「ギフト」ってなんだろうと、改めて考えた。

それはきっと一人一人が持っているもので、ある人にとっては大切なものだろうし、ある人にとっては気づかないものかもしれない。また、ある人にとっては見て見ぬ振りをしているものかもしれない。

「身近な人たちを傷つけたくない。それが平和の根本にあるものだと思います。」

そう思うこともまた。


「人類にとって言葉より早く音楽が存在していた」

しばしば、そう言われる。

例えば「物を叩く」それがリズムになる。

そうして発する音に意味を持たせたものが「言葉」になったんだと思う。
もちろん諸説あるだろうし、僕はただのポンコツなので何の理論も持っていない。

けれど、こうして音楽というものに言葉にできないほど心を動かされるのは確かである。
いや、こんだけ書いてる自分が言っても説得力ないが。

音を出すということは意思表示なのだ。
何かを伝えたいと思うことが、音となって相手に届く。

そう思えば、音楽もまた悠久の時を経て今も繋がる存在だと言える。

歴史を紡いだこの場所で、変わらない、変わってはいけない願いを”アビが鳴く”に込めて。

それはあまりに大きなテーマで、決して答えがあるものではない。

答えを出すことが正解ではない。

自分にとって大切な人を傷つけたくない、その思いは世界から見たら小さなことでも、自分の人生にとっては大きな存在で胸に抱いているものだ。

このたった30分のライヴで、またポルノグラフィティが好きになってしまった。

また彼らを誇らしく思ってしまった。

この時代に生まれてよかったとさえ思ってしまった。

それが、ただただ嬉しかった。


島から海を渡り。

人と人の縁を繋いで。

この場所で音楽という芸能を見せ。


「奉納演奏」と言っていたけれど、それは宗像三女神からもたらされたものではない。

彼らが一歩ずつ重ねてきた足跡の先にあったものだ。

それが信じ続けて重ねた日々の結果だから。

きっとこの先も同じ願いを抱え、また歩いて行くことだろう。

なぜなら、その先に”THE DAY”が待っているのだから。





【ライヴレポ】ROCK IN JAPAN FES 2023「ポルノグラフィティ」セットリスト+ネタバレ感想

【ライヴレポ】ポルノグラフィティ CYBERロマンスポルノ'20 ~REUNION~



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2023年9月8日金曜日

【音楽文 再掲】あの日の少年と未来図 ポルノグラフィティと共に歩んだ20周年イヤー




※この記事はrockin' onが運営していた音楽文を再掲したものです。サービス終了に伴い、当ブログへ移行しました。


2023年8月24日木曜日

【完全ネタバレ】『シヴァリング・ファイア編』ジャンケットバンク感想







※本記事ではジャンケットバンクのゲームシヴァリング・ファイアの結末(125話まで)に触れてます。
単行本未収録部分もあるため、単行本派の方は御注意ください


ヤングジャンプ・ジャンプ+で連載中のマンガ『ジャンケットバンク』。

今回は初の1ヘッドとなったゲーム《シヴァリング・ファイア》の考察をしていこう。

読者が増えてきたことと、オチ予想が過熱してきているので『予想どおり』と言われていることも多いけど、その辺りについても触れておきたい。

先に僕の結論を書いておくと、僕はこのゲームの結末に大満足だ。

特にラストシーンなんて、俺涙が止まらなかったよ……



2023年8月12日土曜日

【ネタバレ】ほんとにあった!呪いのビデオ100






劇場版「ほんとにあった!呪いのビデオ100」を見てきた。

最近感想もだいぶ書いてなかったんだけど、久しぶりにお祭りだし、楽しんできたので記録として残しておきたい。

マンガですら100巻超えるなんて異常なレベルなのに、心霊実録もののホラーでこれはもはや金字塔と言う外ない。
(そもそもナンバリング以外のスペシャルとかXシリーズ入れると軽く超えてる)

そんな記念すべき作品がどんな内容になっているのか見ていこう。

※忙しくて見てから1週間開いてしまい細かい部分の記憶が曖昧なのでご了承ください
※ネタ部分以外は敬称略

2023年8月8日火曜日

【ライヴレポ】ROCK IN JAPAN FES 2023「ポルノグラフィティ」セットリスト+ネタバレ感想






ポルノグラフィティが4年ぶりに「ROCK IN JAPAN FES」に出演した。

前回2019年は、ポルノグラフィティの20周年の直前であった。

そこからの4年は、大きく時代が変わった。いや、変わってしまった。

様々な変容を経て迎えた2023年のROCK IN JAPAN FES。そこでポルノグラフィティはどんなステージを見せたのか。

ではライヴレポをはじめよう。


2023年7月29日土曜日

【ライヴレポ】にしな「クランベリージャムをかけて」セミファイナルZepp Diver City






にしなのツアー「クランベリージャムをかけて」のセミファイナルの記録を残しておきたい。

春にやった「1999」のツアーも行ったりしていたのだけど、レポを書きたいと思いながら色々重なってしまって書けていなかった。

と言いながら「書かなくていいから何も考えず存分に楽しもう」というスタンスで参戦していたので、所々記憶が薄いのはご容赦願いたい。

ほら、映像収録もしたらしいから……

2023年7月18日火曜日

ELLEGARDENの日本語歌詞について語らせてほしい







僕は1987年生まれだ。

この世代には避けて通れないバンドが2つある。 

それがBUMP OF CHICKENと今回の主題であるELLEGARDENである。

ヴォーカルの細美武士のカリスマ性は、圧倒的で後の世代にあまりに多大な影響を与えた。

バンプとエルレがいなかったら、僕の世代のバンド人口が3割は減っていたと思う。

そんなELLEGARDENなんだけど、音楽性は語れるけれど歌詞については実はそこまで深く語れる機会が少ない。

ということで、今回は日本語の歌詞を中心に掘り下げていきたい。

 

2023年6月23日金曜日

【ネタバレ感想】ジャンケットバンク11巻





そういえば書いてなかったな、と思いマンガ『ジャンケットバンク』の11巻の感想を書いておきたい。

といっても「ライフ・イズ・オークショニア」編は以前まとめて書いているし、改めて書く必要ないかと思ったんだけど、書きたいから書く。

ということで一部重複するのはご容赦いただいたうえで書いていこう。

11巻までのネタバレ含むので、未読の方はいますぐ全巻買うように。


2023年6月2日金曜日

【ポルノ】岡野昭仁のソロアルバムが出るということ






岡野昭仁が夏くらいにソロアルバムをリリースするらしい。

なぜ「らしい」なのかというと発表した本人がふわふわとした受け答えだったからだ。

こちとらポルノグラフィティの進退、一挙手一投足に日々神経すり減らしているというのに「出るよね?」みたいなテンションで片付けるな。

さて、このソロアルバムについて、ファンは比較的肯定的に受け取ってはいるが、詳細がまだふわとろなため、熱はまだそこまで高まっていないように見える。

もちろん母屋であるポルノグラフィティの活動とは異なるものなので、その気持ちもあるというのはとてもよくわかる。

だが、岡野昭仁のソロアルバムは相当ヤバいのでは?と危惧している僕のような老害もいるので、少し書いて行きたいと思う。


2023年5月26日金曜日

ポルノ新曲"アビが鳴く"が凄すぎて怖くなった




ポルノグラフィティの"アビが鳴く"。

広島G7サミットの応援ソングとして書き下ろされた新曲である。

先日、突如発表されてファンたちを驚かせた曲だが、カフェイン11でフルサイズが宇宙初披露されたことで、ファンたちを更に恐れおののかせた。

僕自身も大驚失色(たいきょうしっしょく)の心地で、あまりの衝撃に、本気で感想記事を書かずに逃げようかと思った。

しかしながら、これだけの大役とテーマから逃げずに、真っ向から向き合ったポルノグラフィティに対して、ファンとして逃げるわけにはいかない。

ということで、かつてないほどのプレッシャーの中、書いていこう。まぁプレッシャーは勝手に感じてるだけだが。

※途中で理由には触れますが、いつも以上に情緒不安定、支離滅裂状態です

2023年5月7日日曜日

【予算2万円】ジュンク堂書店 立川高島屋店で好きなだけ本を買う





人が本を買っている姿を見る、人の本棚を見るのが好きである。

YouTubeの動画やオモコロでそんな記事を見たりして、 自分でもやりたくなった。 

ということで今回は、僕が永住したいと思っている立川ジュンク堂で2万円分本を買おうと思う。

なぜ2万円かというと、とある理由で急に2万円分のクオカードを貰ったからだ。

宵越しのクオカードは持たないので、使い切ろうと思った次第である。

「本屋さんで1日じっくり本を探す」
「本屋さんって面白い」

そんな事を共感してくれるために、この記事を書いていきます。

2万円分好きに本を買っていいと言われたら、あなたは何を買いますか?


2023年4月15日土曜日

【人生を歩み直せ】ジャンケットバンク「ザ・ショートホープ」名言10選




ようこそ、ダメ人間の巣窟へ


週刊ヤングジャンプで連載中のマンガ『ジャンケットバンク』。

その面白さに対して語る人が少なすぎる。
なので引き続き語らせてもらう。

今回はコミック7巻で繰り広げられるダメ人間博覧会「ザ・ショートホープ」を語りたい。

実はこの前に全体の名言集的な記事を書こうと思ったのだが、『ザ・ショートホープ』だけで一記事書かないと追い付けなくなりそうだったので、独立させた次第である。

では名言、名セリフと共に語っていこう。

※コミック7巻までのネタバレ含みます

2023年4月5日水曜日

【ネタバレ感想】ジャンケットバンク 『ライフ・イズ・オークショニア』というBESTバウト


※当記事には『ジャンケットバンク』のライフ・イズ・オークショニア編完結(101話)までのネタバレを含みます。

単行本派の方はご注意ください


『ジャンケットバンク』は今連載されている日本のマンガで一番面白いと思っている。

どれくらい好きかというと、単行本でノンビリ読んでいた僕が、ジャンプ+で単行本追い抜いた段階から、ヤンジャンアプリで最新話を読むようになってしまったほどだ。

こんな毎週待ち遠しいのは、『DEATH NOTE』と『ネウロ』を毎週待ちわびていたとき以来だ。それだけ最近まで週刊誌でマンガを読んでいなかった。

中でも10巻(88話)から始まったギャンブル"ライフ・イズ・オークショニア"が、あまりに最高のゲーム展開であった。 僕はこのゲームを『嘘喰い』のエアポーカーと並ぶ、ギャンブルマンガの最高傑作と位置付けたい。

※どちらが良いかとかでなく『ジャンケットバンク』と『嘘喰い』はどっちも最高のマンガなので読んでほしい。

では、その理由を書いていこう。

2023年3月31日金曜日

【ライヴレポ】PUNKSPRING'23 TOKYO~シンプルプラン・マイケミ




2023年3月25日幕張メッセ

PUNKSPRING'23に参戦した。

当初は記事を書く予定はなかったのだが、どうしてもシンプル・プランとマイ・ケミカル・ロマンスについて書きたくなったので、自分のための記録を残しておきたい。

そもそもをいえば入場した瞬間の「クリエイティブマンのフェスに戻って来た」感で、もうヤバかった。洋楽フェスもとい、ライヴは自分にとっては2016年のサマソニ以来だ。それでもどこか、遠い昔みたいな郷愁。


あと記事ではしっかり触れないが、TOTALFATから見ていて、見たバンドどれも素晴らしかった。

特にTOTALFATのShunの『パンクに裏切られたことはない』って言葉すごくよくて、そこから最後の"Place to Try"はちょっとズルいくらい感動させられた。

Hey SmithやThe Interruptersのカッコ良さも、忘れがたい瞬間がたくさんあったフェスであった。

唯一惜しむらくはSUM 41の直前でのキャンセルであった。
Simple Planに乱入するデリック見たかったなぁ。


では本題へ。


2023年2月16日木曜日

"サウダージ” の主人公に未練は残っていないのか?



ここのところで急に"サウダージ"の歌詞が話題になっていた。

僕はホグワーツで真面目な学業と、ホグズミードで人様の家に勝手に入って金銭や衣服を強奪することに追われていたので、ちょっと後追いで知った。

発端はCDTVのラブソング特集に"サウダージ"が取り上げられたことで、そこで街角の声に「未練ない感じがいい」という類のコメントがあったことに起因する。

僕のTLでは過激派の方々が熱く意見を交わしていた。

僕もTwitterで書こうかと思ったけど、ちょっとツイートだけだと誤解を招きそうなのでこちらに書く。といっても早くアバダ ケダブラの撃ち放題をしたいので、そんなに長くは書きません。




サウダージの行間





結論から書こう。

僕は「未練がなくていい」という意見は正しいと思う。

ただ、その「正しい」はあくまでもコメントを寄せた人の中にある"サウダージ"の形としてである。

僕自身はこのコメントとは異なる解釈を持っているが、それもまた「僕の中にある"サウダージ"像」に過ぎないということだ。

今回の「未練がなくていい」というコメントについて、僕はすごく興味深いと思っていて、改めて"サウダージ"の歌詞を見返した。

結果、自分にはなかった視点だったので考えたことがなかったが、実は"サウダージ"を「未練がなくていい」と受け取ることもできるのでは、と思えたのだ。

補足がいると思うので、少し説明させてもらいたい。

当然ながら"サウダージ"は「あの人に伝えて 寂しい…大丈夫…寂しい」という名フレーズに代表されるように、ほぼ全編で強い未練を歌っている。

主人公に未練があることは間違いない。

しかしながら曲を最後まで聴いたとき、そこにいる主人公の姿をどのようにイメージするかで、解釈に余地があるのではないだろうか。
具体的にいうと、次の2つが想像できる。


・主人公は未練を抱えたまま生きていく決意をした
・主人公は未練を乗り越えて生きていく決意をした


どちらを想像するかで、"サウダージ"の印象はだいぶ変わらないだろうか。

曲を聴いた人の多くが想像するであろうに、"サウダージ"の主人公は凛とした強き女性像だと思う。
だからこそ、この曲で語られる未練と垣間見る弱さに、僕らは強く心を動かされるのだ。

仮に後者の心情であったならば、悲しみを超えた姿が、とても凛々しいものに見えるはずだ。

そうするとラストの転調が絶妙に効果的で、まさに再び一歩を踏み出す姿に重なるようになっていて、更にそこで紡がれる言葉がまた違う意味を持つ。

あなたのそばでは 永遠を確かに感じたから

ここの「から」が全てを受け入れた決意でもあるようにも見えないだろうか。


これは今回の言葉から僕が勝手に妄想を脹らませた結果だが、多少かなり強引ではあるけど、そう捉えることもできなくはないと思えた。

これだけ様々な解釈が生まれるほど、"サウダージ"は魅力的な楽曲で、受け継がれていくマスターピースなのだ。

ということで、この話題に感じたことを残しておく。








なんか、嬉しかった話




そしてもう1つ、歌詞を読み解くうえで大切なことがある。

それは共感性だ。

音楽、とりわけ歌詞の聴き方は大雑把に分けると2つある。


・歌詞に出てくる登場人物のキャラクターを想像して聴く
・歌詞に出てくる登場人物に自分を重ねて聴く


特に失恋ソングというジャンルであるなら、後者の気持ちで聴く人も多いかと思う。
もちろん、必ずどちらかという訳でもなくて、その時の気持ちでどちらかに心が変わったり、そもそも何も心を重ねないという人もいるだろう。

曲のキャラクターの心情に自分の心情を重ねるときって、「自分が同じ立場だったらこう思う」と想像している部分もあるはずだ。

世の中には失恋に対して未練を抱える人もいれば、特に未練はないという人もいる。

0か100かではなくて、その間には無数のグラデーションがある。

だとすると中には「未練を受け入れ、それでも乗り越えた」という女性もいるのではないか。

それを「未練たらたら」と呼ぶこともできる。しかし僕は決して他人が決められることではないと思う。
それを未練を吹っ切った強き女性と捉えることを、僕は間違ってはいないと思う。

そうした解釈を巡る意見を踏まえたならば僕は、意外かもしれないが、「未練がなくていい」というコメントについて、むしろ嬉しいという感情さえ浮かんだ。

たぶん普通に暮らしていたら僕にこんな解釈は浮かばなかったからだ。

そもそも、このブログは「自分はこう思うけど、あなたはどう思いますか?」と問いたくて運営している側面もある。

それに僕は一時期「”サボテン"は本当に失恋ソングなのか」という疑問を抱いていていたことがあるくらいなので、そもそも人のことを言えない。

自分の価値観が絶対的に正しいとは思わないし、むしろ、歪んだ愛情を言葉に換えてきたのが、このブログだ。

それはひとえに、ポルノグラフィティの優しさがそこにあるからだ。

何かというと。




ポルノグラフィティの魅力




ポルノグラフィティ、特に新藤晴一については「聴き手に解釈を委ねる」というスタンスを貫いている。

それが信頼できる要素ですし、僕もその言葉に全力で甘えて好き勝手に書いてきた。
たぶん訴えられたらギリギリ負ける。

ただ、新藤晴一という人は作詞者として、曲の歌詞にはほぼ必ず「作詞者の意図」を潜ませていると思う。これは「作詞した本人なりの正解」と読み替えてほしい。

しかしながらそれを「曲解釈の正解」とは呼ばない。

※もちろん詩人がたったひとひらの言の葉に込めた意味を尊重することも大切である

受け取った人の中で曲は育まれ、新しい顔を覗かせることもあって。

"愛が呼ぶほうへ"や"∠RECEIVER"なんかを思い浮かべればわかると思うが、時に時代や人によって創り手の意図を超え、曲が大きな意味を持つことがある。

行間を読むことは、人を思うことだ。

それが自分かもしれないし、他人かもしれない、或いは架空の登場人物かもしれない。


人と人は最後には決してわかり合えない。


"カメレオン・レンズ"でもこれに近しいことを言っているが、新藤晴一はそう歌詞で伝えてきたように思う。
もしかしたらそれは、自分の心もきっとそうなのではないだろうか。

しかしながら、それは欠陥でも欠落でもなくて、それこそが人間の魅力なのだ。

分かり合えないからこそ、人は人と繋がり続けている。

だから僕は色々な人の様々な解釈を読むのが好きだ。それが、自分の視野を広げてくれるのだから。

皆がみんな作詞者の意図を読み解く必要はない。いいよ、俺が勝手にやってるし。それに、たとえ読み解いたものが僕のそれと違うと思ったら、その解釈を大事にしてほしい。
それがその人にしかできない解釈なのだから。


ちょっと今回は無理矢理な擁護みたいになっちゃったけど、あまり1つの解釈に固執しすぎてもいけないなと、自分を戒めたくてこんな記事になりました。


おわりに。


日本語ってやっぱり難しくて、それだけにとても面白くて、同じ文面でも人によって全く捉え方が違う。

日本語の受け取り方としておかしい解釈はさておき、特に行間に関しては本人の考えや想いが強く反映してくるので、これもまさに"カメレオン・レンズ"のように人それぞれ見え方が違ってくる。

というか皆同じ価値観だったら評論なんていらないし、僕はこんなアホみたいに文章を書く必要もない。

そもそも自由な考察がなかったら、こんなこじつけ歌詞解釈を書いているどこぞのポンコツの存在価値などなくなるのだから。


おいでよサンタモニカ(instrumental)を歌詞がないのに歌詞解釈します


なに書いてんだこのポンコツは。


それにしても、これだけ聴いて読んでるはずなのに、改めて読み返した"サウダージ"の歌詞は、やはり打ちのめされるような化物だ。

音が届き、それぞれの人の形になって心に止まるから、"サウダージ"はこれだけ多くの人の胸を打つのだろう。

色んな解釈が生まれるくらい、世の中に”サウダージ”が浸透していることを喜ぼう。



ポルノグラフィティのサボテンは本当に失恋ソング?歌詞を今一度読みとく







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2023年2月7日火曜日

ポルノグラフィティのライヴで演奏して欲しい曲 TOP20





ポルノグラフィティの18回目のツアーとなる「暁」が無事閉幕した。

今のところ次回のライヴ予定は発表されていない。

だが、今年はデビュー丸24年、25周年イヤーの開幕があるので、ポルノチームはきっと年の後半に向けて何か企んでいることだろう。


さて、本題に入ろう。

アルバムの特典映像である「稀・ポルノグラフィティ」で、ライヴで一度も演奏したことのない楽曲のスタジオライヴが収録された。

ツアーでもそこから"Stand for one's wish"と"オニオンスープ"が披露された。更にファイナルの日本武道館公演では、こちらも未披露だった"プリズム"が披露された。

それでもポルノグラフィティにはまだライヴで一度も演奏されたことがない曲があったり、長い間披露されていない曲がある。

ということで25周年に向けて、そんな曲たちの中から独断と偏見で20曲選出したので、ランキング形式で発表したい。

一応セットリストのサイトで検索したので、たぶんライヴで未披露の曲は合っているはずだが、間違っていたらごめんね。

皆さんの聴きたい推し曲はなんですか?


2023年1月31日火曜日

【ライヴレポ】「暁」ツアー FINAL @日本武道館 セットリスト+徹底考察




日本武道館は1966年にThe Beatlesがポップミュージックとして初のライヴ公演を行った。

以降、ミュージシャンたちの"聖地"として、多くのミュージシャンたちがそのステージに立ってきた。

ポルノグラフィティ以外で何組ものミュージシャンたちのライヴをここで見てきたが、特に日本の音楽家たちは皆一様に「日本武道館は特別な場所」として語っていた印象だ。

・収容人数は1万人前後
・整ったコンサートホールに比べれば、正直音響はそこまでよくない(そもそも"武道"館なのだから当たり前)

それでもこの場所がミュージシャンを惹き付ける理由とはなんだろうか。

そして、

2023年1月24日

「The dice are cast」ツアー以来約7年3ヶ月ぶりにこの場所に立つポルノグラフィティは、日本武道館でどんな姿を見せたのか。

これは、そんな夜の記録である。

※大分公演のレポと被る部分もあるだろうけど、今この時に武道館公演を見た気持ちを残しておきたいので、ご了承ください

※今回いつも別に分けている考察(妄想)記事もまとめてライヴレポにぶちこんだので、大変長いです(要所要所に癒し休憩スポットとして可愛いうさぎのフリー素材を置いておきます)

ごゆるりと、あの日を思い返していただければと思います。