2022年4月28日木曜日

ポルノ全シングルレビュー 22nd「リンク」





アルバム「PORNO GRAFFITTI」について意気揚々と書いていたのだが、よく考えたら「リンク」のレビューをやっていなかった。

一応アルバム収録のシングルは先に書くという自分なりの何も意味がないルールがあるため先にこちらを書く。

かといって投げやりな訳ではなくて、大好きな曲なのでもちろん真剣に書く。



ポルノ全シングルレビュー 22nd「リンク」






1. リンク


作詞・作曲:岡野昭仁
富士重工業『スバル・インプレッサ』CMソング





表題曲の"リンク"はインプレッサのCMソングになった。爽やかだけれど力強い曲がとても合っていた。

それもあって当時事あるごとに父に「次に車を替えるならインプレッサにしよう」と車を薦めていたが叶わずにいた。けれど巡り巡って、いま父はインプレッサに乗っている。

ウェルタースオリジナルくらい特別な縁を感じる。なぜならポルノグラフィティもまた特別な存在だからです。


シンプルながら力強いイントロのギターリフ。
東京ドーム公演でストリングスのイントロからこれがきたとき「死ぬかな」と思った。

ギターソロもそうだけど、ペンタトニックを用いた王道なギターなのだけど、王道だからこそそれを表現に昇華させる新藤晴一の力が、この辺りでまた一段と高まったのではないかと思う。

岡野昭仁の詞曲もまた、とてもキャッチーなサビでありながら、葛藤と向き合う歌詞の展開は、今まで以上に真に迫っている。

自分自身と向き合うというテーマは岡野昭仁の歌詞ではもく見られるものだ。

例えば僕は君を抱きしめているのに
こんなにも激しく求め合っているのに

そしてもう1つ岡野昭仁の歌詞で特徴的なのは、とても肉体的だということだ。

順番が前後してしまったが、そのことは"空蝉"の歌詞について書いた時にも触れた。新藤晴一は精神的に、岡野昭仁は肉体的に愛を描く。

身体も心も知っているんだ

心にさえ手を触れるほど、手探りをして。あなたの深くを知ろうとするほど、自分と深く向き合うことになる。

だからこそCメロの「僕は自分で自分は僕だってわかってるのに怖くなった」という叫びにも似た咆哮に繋がる。しかしながら"リンク"はそこから。

まだ君も君のこと 探しているんだ

ここまで想いが突き抜ける。

まさに"ROLL"の「僕はそれを恐れてたんだ」というワンフレーズが心を突くように、認めることこそが互いを理解し合う第一歩なのだ。

そして、これこそが真の優しさなのではないかと思う。

そんな想いに寄り添ってくれる優しさこそが、岡野昭仁というミュージシャンであり、ヴォーカリストなのである。

だから僕は"リンク"が大好きで大切な曲なのだ。

ではカップリングに移ろう。










2. Stand for one's wish


作詞・作曲:岡野昭仁


"リンク"と共通するテーマだ。

こちらも世界と自分、君と僕という対比の中で自分を見つめなおす。

等身大の君と背伸びした僕が
通わせているよ two hearts

というフレーズがいい。このフレーズって"MONSTER"の、

知らないのは自分だけ 等身大の自分を
他人はすべて知ってる 悲しきピエロの夢

という歌詞にも通ずるものだ。「自分を見つめなおす」としても、それが背伸びした自分である限り、決して意味のあるものにはならない。

岡野昭仁の歌詞にはよく「自分を見つめなおす」というテーマが見受けられる。というかここまでも記事中で何回も書いてるくらいだ。

ではなぜ「自分を見つめなおす」ことが大切なのかというと、そこに本当に大切なものを見出だすことができるからである。

どこか幸せについて本気出して考えてみることにも似ている。


反対に、歌詞の中で今見るとちょっと皮肉だなと思うフレーズがあって。

世界の叫び声を今僕らは受け止めるべきだ
目を逸らし黙り込んでそばにある幸せだけを見ても
満たされない気持ちになる

この曲が出た2007年はまだここまでSNSが発達していなくて。前に記事にしたけど、初代iPhoneや初音ミクが出てきたくらいの時代である。

ある意味"Zombies are standing out"に出てくる「無感覚と無関心」みたいな感じで、最近の人は社会の出来事への関心が薄いみたいなことを云われていたこともあった。

逆にここまでSNSが浸透して腐る寸前まで成熟してしまうと、何事にも関心を持ちすぎてしまうという結果も招いてしまった。

バカッターとか言われ始めていたくらいから特に顕著だけど、自分が気にくわないことに対して人を追い込まないと気が済まないような人が増えた。
この増えたというのはあくまでも「可視化される数が増えた」という意味合いである。

こうなると逆に「目の前にある幸せ」を見つめなおすようなタームにまた戻りつつあるということを感じてもいる。

何事もバランスで、無関心すぎることも過剰に関心を持ちすぎることも、人々は見失ってしまっているのではないだろうか。

時代を経て色々と考えることはあるけれど。

とりあえずライヴでやってくれ。

話はそれからだ。


3. It's on my mind


作詞・作曲:新藤晴一


イントロからBメロにあたる部分までがギターインストになっている珍しい構成の曲。

1番のサビから歌が入る。
2番ではAメロにあたる部分までがまたインストになり、Bメロからは歌が入る。

説明が面倒なのでとりあえず聴いて欲しい。

前にライヴレポか何かで「新藤晴一のギターは唄う」と書いたが、まさにそんな感じでメロディをギターが紡いでいく。

カップリングならではの遊び心ある曲で、ゆったりしたテンポと温かみのあるヴォーカルとギターが重なって、穏やかな気持ちになれる。

それでいて歌詞は切なくて。

風だけが知っている涙に、夏の終わりのような気持ちになる。

郷愁感溢れる歌詞の中に、ひとつ仕掛けがある。

古いメロディは何時もひらひらと漂っている
そっと この唇に留まった歌をあなたに

それは2番のBメロで、ここだけは主人公の視点とは異なるものになっている。
では誰かというと言葉を紡いだ新藤晴一であり、それを歌っている岡野昭仁でもある。つまりはポルノグラフィティだ。

歌詞を見てピンとくる人もいるかもしれないが、このフレーズは後の"ひとひら"に繋がっている。

あれは一人で行った海の 冷たい風が吹く風景
あれは飽きもせず聞き返したメロディ
わかっていなかった歌の意味
今なら少しわかる気がする まるで違う歌のようさ
~"ひとひら"

時が歌の意味を変える。
それが、音楽と共に人生を歩むということだ。

そんな僕らの日々に寄り添う気持ちが、ポルノグラフィティの優しさで。共に歩んできて、これからもポルノグラフィティの音楽と共に歩んでいく。

古い曲たちも今の僕らに新しい意味をくれる。

なぜなら。

ひとつとして色褪せはしない物語






僕らは彼らの曲が決して色褪せることはない、「UNFADED」なのだと知っているのだから。

だからこそ。

とりあえずライヴでやってくれ。

話はそれからだ。


ということで「リンク」のシングルについてのレビューという名のラブレターでした。


とりあえずカップリングの曲たちをライヴでやってください。


★シングルレビュー


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