2019年5月1日水曜日

ポルノ全アルバムレビュー「PORNO GRAFFITTI BEST RED'S & BLUE'S」








全アルバムレビューと全シングルレビューを書いてきている。

現在アルバムは4枚目まで書いているが、一つ悩みがあった。
それは「ベストアルバム」について触れるか否かである。

本来はベストは触れる必要がない気がしてスルーするつもりでいたが、あることに気づいてしまい、筆を取った次第である。

それは、最後に触れる。


ポルノ全アルバムレビュー
「PORNO GRAFFITTI BEST RED'S&BLUE'S」








アルバムについて




ポルノグラフィティのデビュー5周年を記念して発売されたベストアルバムが「PORNO GRAFFITTI BEST RED'S」(以下「RED'S」)と「PORNO GRAFFITTI BEST BLUE'S」(以下「BLUE'S」)の2枚である。

SONYらしい2枚別々の販売方法に、学生だった自分はかなり苦しい思いをして買った記憶がある(当時高校1年生くらいだった)。

今でも文句は言っているが、ほとんど持っている曲に3000円払うことがベストアルバムを前にしたファンの悩みなのである。しかも2枚となれば、尚のこと。

アルバムの構成はどちらもそれぞれ同じである。

・13曲収録
・シングル7曲
・アルバムやカップリングの人気曲5曲
・新曲1曲

という構成だ。

ファンにとっては、ほとんどこの新曲のために買ったようなものである。
それでもファン以外にもとても多くの人に届き、「BLUE'S」はミリオンを突破、「RED'S」もミリオンまでは行ってないものの約95万枚の、ほぼミリオンというヒットを記録した。


そして、ポルノグラフィティにとってもファンにとっては違う意味での「節目」となるのが、このアルバムである。

それがベースTamaの脱退である。

3人で活動してきたポルノグラフィティが、ベストアルバムを境に2人で歩み出すことになる。

ベストアルバムとして過去を振り返ると同時に、過去を受け止め、未来へ歩き出すポルノグラフィティの決意がこの2枚に込められている。

シングルだけで14曲というベストを出すこともできた。しかしそうせずに、アルバムやカップリングなどファンから強く支持される曲たちも選ばれているところが嬉しいポイントである。もちろん選曲になれば「あれがない」という話もあるだろう。

今でも絶大な人気を誇る"夕陽と星空と僕"や"月飼い"なども収録されていない。

それをもってしても納得というラインナップになっているのではないだろうか。
同時に、シングルではなくとも強烈な曲があるというポルノグラフィティの魅力を知る入門用としてはピッタリのアルバムではないだろうか。

では、ぞれぞれのアルバムの内容を見てみよう。









PORNO GRAFFITTI BEST RED'S








まずは赤リンゴこと「RED'S」。


1. ミュージック・アワー
2. Century Lovers
3. 愛が呼ぶほうへ
4. サウダージ
5. ヴォイス
6. ラック
7. 幸せについて本気出して考えてみた
8. Go Steady Go!
9. 狼
10. ヴィンテージ
11. ジレンマ
12. Mugen
13. フィルムズ


「RED'S」は「HOT」をキーワードに選出されている。

完全にバリバリの先入観によるものだと思うが、曲目を見ていても「赤」を感じさせる曲が多い。

個人的には"ミュージック・アワー"が海の色のイメージのせいか青というイメージなのと、"幸せについて本気出して考えてみた"が青かなというくらいで後は納得である。"狼"も海だけど、不思議と赤の方がイメージに合う。

逆に「BLUE'S」に収録されている"オレ,天使"(赤い空だから?)、"ハート"(赤く腫れてるから?)、"カルマの坂"(血?)などは、僕の感覚では「RED'S」の方が合いそうという印象を持っている。

「色聴」という音に色を見る共感覚の一種がある。この感覚を持つ人は少ないが、少なからず自分たちにもその感覚が宿っているのかもしれない。
僕のように思う人もいれば、そうでない人もいて、その辺りの違いも興味深い。


直近のライヴでも演奏されてきた曲たちが多いことからも、その選出が確かなことが伺える。根強い人気の曲が多い。
ちなみに僕は今だに"Go Steady Go!"を聴けていないので、やってください。後"フィルムズ"もだいぶ聴いていないのでお願いします。

その未発表曲として収録された"フィルムズ"

とても熱量の高いバラードで、ペーソスのある歌詞を助長する。

このブログでも何度も触れてきたが、


さよならの意味なら深く知っている
君なのにさよなら お別れね


という歌詞が持つ切なさは、ポルノグラフィティの中でも群を抜いているものだ。
この歌詞をはじめ、全編通して美しい日本語で綴られており、僕は教科書に載せるべきではないかと思っている。




PORNO GRAFFITTI BEST BLUE'S








続いて青リンゴこと「BLUE'S」。



1. アポロ
2. サボテン
3. オレ,天使
4. アゲハ蝶
5. ラビュー・ラビュー
6. 音のない森
7. 渦
8. ヒトリノ夜
9. ハート
10. パレット
11. カルマの坂
12. メリッサ
13. まほろば○△



「BLUE'S」は「COOL」をキーワードに選出されている。

ベストアルバムの売り上げで差が出ているのは「BLUE'S」に"メリッサ"が収録されていることが大きい。
オリジナルアルバムが出なかったこともあり、"メリッサ"が入っているということで買う人が多かったのではないないだろうか。

改めて"音のない森"、"メリッサ"、"愛が呼ぶほうへ"、"ラック"が収録されたオリジナルアルバムが出ていたらと考えてしまう。
出ていたとしたら、とんでもないものになっていたことだろう。

「RED'S」は自分から見える世界という視点の曲が多いように思うのに対して、「BLUE'S」はどちらかというと世界にいる自分の内面を見つめるような曲が多いように思える。

旅人、つまり自分への問い掛けである"アゲハ蝶"や、「僕は本当いっしょうけんめい愛されてるね」という想いが溢れる"ラビュー・ラビュー"、そしてその最たる例といえる岡野昭仁による内向的な"音のない森"。

「COOL」だからといって、熱がないわけではない。ドライアイスのように、極限まで冷たくなった感情はそれによって火傷する熱のように。


未発表曲は"まほろば○△"。

読み方は「まほろばまるやま」である。
「まほろば」は「素晴らしい場所」、「○△」は渋谷の円山町(ラブホ街)を意味する。一応繰り返すが、ミリオンヒットを記録したベストアルバムに収録されている新曲である。


身も蓋もないことを言ってしまえば、渋谷の円山町でワンナイトラブを決めるだけの曲なのだが、そんなテーマをなぜここまで歌詞として昇華できるのだろうか。天才なのだろうか。

新藤晴一が描く"行為"の曲はエロさがあっても、そこに下品さがない。
だからこそ、どこか爽やかさすら感じる曲になる。


今回改めて考えたのだが、どこか肉感的ではないからではないかと思った。

例えば岡野昭仁が描く"行為"の曲では"デザイア"があるが、それは肉体と肉体がぶつかり合うような感覚が、汗の感覚まで伝わってくる。そんなエロさを持っているのが魅力だ。

一方で新藤晴一の描く"行為"の曲は"Jazz up"もそうだが、身体よりも心と心がぶつかり合う(通わせ合う)ような印象を受ける。
だからこそ、そこにどこか俯瞰したような視点の感覚が宿るのではないだろうか。

両者の違いがあるからこそ、ポルノグラフィティの楽曲は多様性に富む魅力を持っている。どちらも素晴らしくて、そのバランスが絶妙なのだ。


新藤晴一は3作目に官能小説を書くべきではないだろうか。



ベストアルバムとして、このCDはコピーコントロールが付いていたせいで僕の持っている初回版はPCに取り込めない。
おかげでiTunesで"フィルムズ"と"まほろば○△"を買い直した。

アルバムとしてはCDで通して聴いて、その濃さに驚愕するばかりであった。

5年にして、この集大成感。

しかし、そこからの15年のポルノグラフィティも負けない魅力を持っている。

そんな今に至る大切な一つの区切りとなったのが「RED'S」と「BLUE'S」なのである。

なぜなら。

このアルバムの裏ジャケットを見て、気づいてしまったのだ。

ポルノグラフィティが掲げた決意が、今も続いていたことに。












★アルバムレビュー


ポルノ全アルバムレビュー1st「ロマンチスト・エゴイスト」
ポルノ全アルバムレビュー 2nd「foo?」
ポルノ全アルバムレビュー3rd「雲をも掴む民」
ポルノ全アルバムレビュー4th「WORLDILLIA」

【全曲感想】ポルノグラフィティ 11thアルバム「BUTTERFLY EFFECT」
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